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ヤマメ釣り幻想 ~ モンスター見参 ~

目印が動きを止めた。異様な気配だ。それは釣り人の勘としか言いようがない。間違いなく大物だ。狩猟本能が全身に漲る。始めて経験する言いようのない昂ぶりだ。

巻き返しを流れて行く目印の先には沈んだ流木の小枝が水面から突き出ていた。数十センチも走られたら根掛かりは必須だ。ハリスは0.8号。千載一遇のチャンスなのに絶体絶命だ。

先に右腕が反応していた。そっと竿を立てる。・・・重い・・・。根掛かりか・・・。ゆっくりと竿を立てる。じりじりと竿先が上ってくる。ここで奴を刺激してはならない。が、いきなり疾走が始まった。奴は気付いたのだ。あああ~。流心に向かっている。上、下・・・どっちへ行く。ついている。下流へと目印が移動していく。下流に広がるヒラキへと向かっているのだ。そこなら障害物はない。もう、こっちのものだ。逃れたと思ったらしい。走りが止まった。竿を立ててみる。重い。
小さくチョンチョンと竿先を上げ下げして奴を適度に刺激する。そのたびに竿先が絞り込まれる。竿を立て、全身を鞭にして矯めに矯める。果てしなく続いた気がする。

ようやく抵抗が弱まったのを見計らい流心の際を引いてくる。布っ切れを引っ掛けたみたいだ。いつまた奴が暴れるかとハラハラドキドキだ。
澄明な波間に、奴は姿をさらした。まさにモンスターだ。尺上のそれは体高も体幅も見慣れたヤマメの2倍はある。軟調の竿先では水面まで上げられそうもない。道糸を掴み、ズルズルと、足元の川原石の上まで引き摺ってくる。
とっさに小石を掴み、頭部を殴りつける。二度、三度と。奴はぐったりと川原石の上に横たわり動かなかった。

この日は雪どけ水を集め斉内川は水嵩を増し、色は笹濁り。そのせいかヤマメは警戒心が薄かった。いつもなら22~23センチ級が大物の部類なのだが、この日は25センチを超えるヤマメも食ってきた。そしてクライマックスはコマチが通る鉄橋の下でのことだった。よく肥えた尺上ヤマメ。以後、これ以上の大物には出会っていない。

2024年02月05日

2022年春アジ釣りの記録Photo

4月30日 22年の蓋開けだった。

5月1日

5月7日

朝釣り

夕釣り

5月8日

5月9日

5月11日

5月16日

5月17日

5月18日

5月20日

5月23日

5月24日

5月28日

5月29日

5月30日

各日付毎の記事はブログ「紙魚のつぶやき」でご覧ください。

2023年04月16日

スミイカ釣りを語り尽くす

スミイカのプロフィール


 スミイカはイカの中でも特異な格好をしている。周りにヒラヒラがついたジャンボコロッケみたいだ。申し訳程度に短足がついているのもご愛嬌だ。 別名コウイカとも呼ばれているが、その名の通りに背のほうに立派な甲羅が入っている。白い船形をしていて、小鳥のカルシウムの補給に鳥かごの中に入れるあれだ。体の模様がまた素晴らしい。墨絵のようでもあるし、びっしり描かれた唐草模様にも見えるし、ペルシャ絨毯の切れ端を貼り付けたようでもある。

 例年、10月ごろから乗合船が出る。初期は300gほどだが、最盛期には7~800gぐらいまでに成長する。その名が示すように、釣り上げると真っ黒な墨を大量に吐き出す。
 釣り場は内湾の砂礫地で、初期は水深30m前後を最盛期の2月、3月は50~60mを攻める。東京湾内の主なポイントは、中の瀬、大貫、竹岡、鴨居、久里浜、下浦、金谷沖などだ。
 相模湾ではこの釣りは殆ど行われていないが、イカは棲息している。ヤリイカやマルイカ釣りで、外道でたまに釣れたりする。釣れるのは、同種のシリヤケイカやヒメコウイカが多い。茅ヶ崎沖のキス場にもいるようだ。
 鴨居沖などでは、越冬マダコが混じる。通常マダコは子育てが終わると死んでしまう。しかし、数の中にはあぶれた独身のタコもいるようだ。正月用のタコとして、釣り人はこれを珍重する。
 夏場に水中眼鏡で浅瀬を覗くと、スミイカの子供が2,3尾固まって泳いでいるのを見かけることがある。親指の頭ぐらいの小さなやつだ。近づくと、稲妻模様の軌跡を描いて、すばしっこく逃げていく。
 この種のイカは、子供の時から大きな群れは作らないようだ。スミイカ釣りは群れを作る他のイカたちと違って、拾い釣りになる。
 4,5月頃に海岸縁を歩いていると、このスミイカがプカリプカリ浮いて流されていくことがる。時化後に、海藻とともに浜辺に打ち上げられていることもある。
 これを拾って食べたことがあった。さすがに刺身では食べる気がしなかったが、煮て食べたらそこそこ食べられた。これは産卵の大役を終えたイカたちだ。一年でその一生を終わる。
 卵が孵化する頃に真水が入ると、その年の湧きが悪いといわれている。夏場に雨が少ない年には期待ができる。


スミイカ釣りはボウズ覚悟で

 スミイカ釣りは数が釣れない釣りの典型だ。5尾も釣れたら大漁の部類に入る。私などは2,3尾ということが多かった。坊主も何回かあった。寒い北風に終日吹かれながら、冷え切った体に空のクーラーボックス提げて帰る日は、何とも惨めなものである。人生哲学の真髄に触れたような気にもなってくる。
 拾い釣りだから、潮先が断然有利だ。大抵潮先には常連さんが陣取ることになっている。腕もいいからその人だけが釣れることになる。
 釣況欄を見て駆けつける時は、ユメユメ竿頭の数字を見ないことだ。


シャコよりトトスッテがお好き

  スミイカ用のテンヤは、昔からの形を踏襲している。本体は細身の羽子板状をしている。根元には円錐の頂上を切り落とした形の鉛を鋳込んである。この鉛がミソで、テンヤのハリが常に海底で上向きになるように姿勢を整える働きをする。
 オモリと反対の側には、2本の大きなハリが扇型に広いた形で取り付けられている。ハリの付け根には、餌のシャコを縦に突き刺して固定する為に、先のとがった竹串の一方が結び付けられている。この竹串の結び目には多少遊びがあって、蝶番のように動いてシャコが取り付け易いようになっている。
 最近は、この専用のテンヤの30cmほど上にトトスッテを付けるのが一般的になってきた。このトトスッテは、プラスチックの地そのままのものもあれば、魚の模様をプリントした布を貼り付けたものなど様々である。
 その日の状況でアタリヅノが変わる。船内の状況や自分の釣れ具合から、種類を選択する。乗ったのがほとんどトトスッテだった日もあった。


コヅキは不要

 馴れた手つきで竿先を小刻みに上下させる姿は、いかにもベテランらしくて格好がいい。見よう見真似でやっていたら「オメーナ。タコ釣りじゃねんだからコヅクことはナカンベヨー。テンヤが底に着いていねーとよ。イカがノラネンダベよー」と怒鳴られてしまった。
 「テンヤを底に着けたまんま、7つ、8つ数えてよー。イカが乗ってるつもりでシャクるんだ」これが鴨居港の又エム丸の先代から教わった釣り方だ。
 少し慣れてくると、すぐ小細工に走りたがる。普通にやればいいのだ。釣れる時は釣れるし、釣れない時は何をしても釣れないものだ。だまって、時を待つしかない。これが釣りの奥義だ。


潮先にはかなわない

 スミイカは群れを探して釣る訳ではない。流れに乗せて、船をゆっくり移動させながらポイントを探っていく。大流しと言われる操船方法だ。確かにイカが固まっている場所もある。しかし、同場所で4,5尾も出れば上々だ。
 スミイカは結構獰猛なところがある。それほど神経質でもなさそうだ。出会い頭に見つけた餌には無条件で飛び着く。だから、一番先頭を行く潮先のテンヤが標的になる。
 他の遅れてくるテンヤはおこぼれ頂戴と言った按配だ。だから、潮上に座ったなら遠投して道筋を変え、離れたポイントを探るしかない。遠投する時は夢中になりすぎて、隣の客を釣り上げてしまわないようにすることだ。必ずアンダースローで飛ばすように心掛ける。
 オーバースローでやられると、傍に居る人はその度に身構えなければならなくなる。あの大きなハリが引っかかると、目玉の一つや二つは簡単に持っていかれてしまう。


スミが飛んだらスミマセン

 水面に顔を出したら、隣近所の誰かがタモで掬ってやるのがルールだ。しかし、入れ食いタイムは、お互い他人のことどころではなくなってしまう。水面から抜きあげたら一呼吸間を措き水を吐かせてから、そのままそっと船の中に持ち上げる。その時、船の甲板にドサット置いたりは決してしないことだ。それをすると、周りが墨だらけになること請け合いだ。
 空中で、なるたけ体から離れた位置で、右手で仕掛けを受け止める。その時、ロートのある腹側は必ず海のほうに向けるようにしなければならない。そうしなければ、自分が墨攻撃を受ける羽目になるからである。そして、左手の指を回し一気に足の付け根を締め付けるようにして持つ。
 これで敵さんも墨が吐けなくなる。ここまでしたら、後はどっち向きでも構わない。しげしげと獲物を見つめて感動に浸ってもいい。
 眺め飽きたらハリから外し、腹側が下になるようにして足元のバケツにそっと入れる。勿論バケツには海水は入れないようにする。理由は明白だ。敵も生き物だ。細心の注意を払っていても、どこかで墨攻撃を受けることがある。幸か不幸か、こんな時は大抵隣が墨を被ることになる。あとは、隣が偏屈ものでないことを祈るだけだ。


スカリは必需品

 そのうちバケツの中はネットリとした墨に覆われて、イカの姿が分からないほどになる。納竿の合図が出たらバケツの中身をスカリに開け、船縁から水中に下ろしてやる。パーッと水面に煙幕が広がる。濯いでも濯いでも、真っ黒な墨が際限なくにじみ出てくる。煙幕の色が薄れてきたら、ビニール袋に一旦入れてからクーラーボックスに仕舞い込むようにする。
 帰宅するまでの間にもまだまだ大量の墨が吐き出される。以前は港に着いた時点で、甲や墨袋を取り除いてきれいに洗い流してから帰路についたものだが、今はそんな光景も見られなくなってしまった。
 船体や衣服に着いたイカの墨は、乾いてしまうとなかなか落ちないものだ。船体に付着した場合は濡れている間に手早く海水をかけて洗い流しておく。そのまま放りっぱなしだと、必ず船頭の雷が落ちる。
 船には柄付きのブラシが何本も積んであるはずだ。船頭に言われる前にこれを使って手早く洗い流すことだ。それがスミイカ釣りのささやかなマナーだ。


タコの取り込み船べりから離して

  この時期に外道として釣れるマダコはキロ級の良型が多い。イカとは異なる重量感なので、乗った瞬間に大抵タコであることが分かる。
 タコだったら駄目押しのアワセをくれてやる。タコの身は固いので、スミイカ流のアワセではハリが通らないことがあるからだ。アワセがきかなくても抱きついただけで上がってくることもあるが、大抵水面近くで餌を放して逃げてしまう。途中でばれるのはタコの場合が多い。
 水面から抜きあげる際も要注意だ。もたもたしていると、そのうち船縁にぴったりと吸い付いて二進も三進もいかなくなる。こんな時は慌てず下にタモをあてがい、糸を緩めてやればいい。ポロットと落ちて、見事にタモに収まる。


イカの中で最高に美味いと言う人がいるが

 スミイカも刺身が一番だ。一日二日冷蔵庫の中に寝かしてから食べるほうが美味いともったいないようなことを言う人も居る。モンゴウイカのようなネットリした食感が、この人は好きらしい。要は好き好きだ。
 私は釣りたてのを、すぐに食べるほうが好きだ。シャキットした歯ざわりがいい。このイカの特徴は、多少粉っぽさが舌に残ることだ。刺身を食べて、粉っぽさとはおかしな表現だが。
 アオリイカに似ているが、甘さでは多少劣るような気がする。ただ、何となく上品で捉えどころのない味わいがある。女房に言わせれば「ヤリイカの方が美味い」のだそうだが。
 ゲソは軽く湯がいて、ワサビやしょうが醤油で食べる。ネギヌタにもいい。居酒屋風だがオデンダネにしてもいい。


テンヤに夜光塗料を塗ってみたら

 或日グリーンのウイリーをテンヤに巻きつけてやってみた。ところが、これが利いたのか、苦手にしていたスミイカ釣りで初めて竿頭になった。それからいろいろやってみて、最後にたどり着いたのがグリーンの夜光塗料だった。
 まず、白のラッカーで下地の凸凹が隠れるほど厚めに下塗りを重ねる。その上に蓄光性の蛍光グリーンを重ね塗りする。このテンヤを使うようになって、釣果が格段に向上した。これは、単なる思い込みのなせる技かもしれない。しかし、釣りでも何でも思い込みも必要だ。今ではこのテンヤが定着しているが、自惚れかも知れないが私が一番早かったと思っている。
 釣れなくなると、腕ではなく餌やスッテが気になってくる。無闇に交換してみたりする。釣りも、自信を失い、あれこれと迷い始めるともう駄目だ。チャンスが再び巡ってくるまで、嘘でもいいから確信をもって押し通すことだ。待っていれば、日に1,2回は必ずチャンスが回って来るものだ。


1尾釣れたらもう一度同じ道筋を探ってくる

 1尾釣れると、その近くでもう1尾釣れることが結構ある。船筋だと他の人に釣られてしまう確率が高いが、遠投して釣れてきた時にはすぐに入れなおすともう1尾立て続けに釣れることがある。
 スミイカは雌雄のつがいで居ることが多い。ハリにかかった相棒を追っかけて、もう1尾が水面近くまで追いかけてくるのを見た人もたくさんいる。
 私はマルイカ釣りでもそんな光景を何度か目にした。


大潮が狙い目

 湾内の潮は、潮回りの影響を強く受ける。中潮から小潮にかけては潮の流れが緩やかになり、中潮から大潮にかけては段々と潮の流れが早くなる。
 湾内の大抵の海域で、満ち潮と引き潮では潮の流れる方向が反転する。そして、潮の流れが反転する前後の小一時間ほどは潮の流れがほぼ止まる。
 魚の食いが立つのは、何故か大潮時のこの潮どまりの前後だ。早い潮が緩みトロトロと流れ出した途端に入れ食いが始まったり、止まっていた潮がトロトロと動き始めたらバタバタと釣れ出したりする。
 スミイカも同じだ。潮回り、潮時がある。

2023年01月31日

ハズレ無し 長崎のガタ釣り(後編)

野母崎沖 八目釣り 平成24年9月22日

    エソ

     アカネキントキ

    シロサバフグ

    カイワリ

     イトヨリ

     ホウボウ

     レンコダイ

      アオナ

 この日釣れた魚をずらりと並べてみる。五目釣りならぬ八目釣りである。左上から順番に、エソ(これは大漁だった)、アカネキントキ、シロサバフグ、カイワリ、イトヨリ、レンコダイ(関東ではキダイ)、ホウボウ、アオナとなる。
 船中は、私がスソを引いたが、地元のベテラン諸士はさすがで、特に後半は入れ食い状態。キロ級のイトヨリを連釣していた。

 敗因を分析してみると、まず軟調の竿、小さな針、仕掛けに尽きる。まず竿だが、微妙なモタレを取り、素早く合わせるには向かない。カワハギ釣りの要領が、そのままガタ釣りにはあてはまると見ている。小さな針は針掛かりに問題がある。巻き上げ途中のすっぽ抜けはこれが原因だ。
 仕掛けだが、底に小形テンビンを付けて、そこから70センチ前後の枝ス(地元の諸氏は30センチ前後と見たが・・・)を出すのが、イトヨリ仕掛けの定番らしいのだ。
 それと、メインの部分の枝スだが、これも極端には5センチの長さと書いてある資料もある。やはり、これからもエサ取りの上手なカワハギ対策を思い出す。枝スの短くして遊びを小さくすることで、アタリを敏感に感じ取る工夫である。
 魚はいる。あとは腕次第だ。

 蒲鉾の最高の原料とされるエソを初めて持ち帰り、フードプロセッサーですり身にして魚ハンバーグにした。若干パサパサするが結構いけるのである。これは、イワシのすり身を加えるなどすると粘りがでて食感が良くなるらしい。
 アカネキントキは初めて釣る魚だった。これとホウボウを刺身で食べたが、どちらも上品と云えば上品、淡泊過ぎるくらいに淡泊で、私には感動する味ではなかった。


野母崎沖 レンコダイ入れ食い 平成25年3月16日

 咲知丸は、いつも乗せてもらうI氏の宝生丸の近くに舫ってあった。I氏は本業の福祉関係の事業が忙しくて、持ち船は半年以上も出船していないはずだ。そのI氏から、友達が釣り船を始めてから乗ってくれないかという電話が入った。
 上りダイのシーズンで、大潮廻りになったら大瀬戸から釣行しようと狙っていた矢先だった。潮廻りが多少気になったが、即、快諾した。ずっと時化続きで釣行ができずにいて、ストレスがたまっていたのもあった。

 I氏の話では、レンコダイがハリ数全部に食ってくるという。レコダイそのものは、そんな美味い魚ではない。淡泊で、水っぽいのである。アマダイも混じるという方に惹かれた。この海域のアマダイは、釣れると大きいのだ。胴付き仕掛けとは別に、アマダイ用に片天仕掛けも用意した。
 今回は電動リール初挑戦だった。水深は130mということなので、落とし込み用に買ってあった竿リールを持ち込んだ。沖釣りにのめり込んで40年以上にもなるが、ずっと手巻きリールでやってきた。随分昔の話だが、沖の瀬や相模湾でアコウダイ釣りが流行ったことがあった。まだ、電動リールが出現する前で、水深300m~500mを釣る過酷な釣りだった。ヤリイカ釣りは冬場の釣り物の定番だが、これも水深200mぐらいまで仕掛けを落とし込むことがある。これらの釣りの全てを手巻きリールでやってきた。
 しかし、今回使ってみて、電動リールの使い勝手の良さに驚いている。初期のゴツイイメージが払しょくできないできた自分が何やら哀れで可笑しかった。   

 釣り場までは航程2時間。タイ釣りの名所・アジソネの直ぐ近くらしい。ポイントについて辺りを見回すと、釣り船らしき船影が5隻ほど見える。いつもなら、ほとんど周りに船影を見ることはない。ここでは珍しいほどの多さだ。
 4本バリの胴付き仕掛け。一番下に小さな片テンビンを付けて、30cmほどのハリスを出してある。結構のこの下バリに掛る確率が高いからだ。地元のベテラン諸氏は7~8本ハリスを出し、中オモリを付けて、食いだしたら、仕掛けを送り込めるようにしてある。レンコダイにしろ、アマダイにしろ、べた底を釣ることになるからだ。
 初回から食ってくる。型は大小混じりで、30cm級から手のひらサイズまでだ。平均20cmといったところ。エサが残っていれば必ず食ってくるという状況が続いた。エサ取りが多くて、魚が付いているハリ以外は殆ど空バリで上がってくる。エサは冷凍エビとオキアミ。冷凍エビの方がエサ持ちが良さそうだ。イカ、キビナゴ餌を持ってきている人がいた。潮が動かないから食いが悪いと船長がぼやく。数が付かないのが不満らしい。型も小ぶりだとか。それでも、ほぼ入れ食い状態だから不満はない。
 夏の時期の時期のヤリイカ釣りもこの辺りだったと思い起こしていたら、スルメイカがっちりと針掛かりして上がってきた。「この前も上がったよ」と、船長が云う。次回はイカヅノ持参もありだ。
 1キロ超級のアマダイが、船中でポツポツと上がる。アマダイを期待して天秤仕掛けに変えたら、途端にオマツリ。早々に断念する。沖カサゴの1キロ超級もあがる。魚の切り身を持参しなかったことが悔やまれる。
 一時、潮が流れて、船が程よく移動し始めたら、ハリ数全部に鈴なりといった状況に。型も20cm超級が多くなる。終日切れ目なく釣れて、私の釣果は60尾前後。大満足の一日だった。やはり、数が釣れると楽しい。数少ない外道は、メッキ(カイワリ)とキントキ。
他に、エソ。エソは、船長も初めて見たと驚くほどの大物。1キロ超級だった。これは大事に持ち帰り、すり身揚げに。これが一番美味かった。


野母崎沖 ガタ釣り絶好調 平成25年10月29日

 今日は、上の写真のH氏の激励会。名目は何でもいいのだが、一年ぶりにこのメンバーが集まった。釣りは、一人で行くも良し、気の合った仲間同士でいくも良し。ただし、私の場合、仲間と呼ぶなら大人の感覚を持ち合わせていてくれることが必須。それぞれが自分の釣り世界に没入できるような気遣いは最低限要ると思っている。このメンバーは、何れもそのことに関しては超一流。終日、マイペースで釣りが出来て、それでいて連帯感が味わえるから嬉しい。

 あとの二人はH氏の友人で年に一度か二度釣りで顔合わせるだけに過ぎないのだが、しょっちゅう会っているような心安さを覚えるから不思議だ。ともかく、自分とは合う人種なのだ。

 今日の船頭さんは「咲知丸」の浜里さん。今回二度目のお邪魔だったが、初対面で浜里さんの人柄に魅入られてしまった。長くインドネシアやタイなどでエビ漁の船に乗ってきたというだけあって、生粋の海の男を感じさせるところがある。大洋のように気持ちが広いのである。もっとも、たくさん釣らせてくれるのが一番の魅力ではあるのだが・・・。
 近々、中古のタグボートをシンガポールに運ぶアルバイトがあって一月ほど留守にするらしい。このようなアルバイトが年に数回あるようだから、なかなか釣り船業に専念できないのも実情らしい。

 釣り場は野母崎半島の沖合140メートルダチ。船は長崎港に係留してあるが、そこから2時間強かかる。4時半に集合して、5時に出船。釣り場近くでようやく明るくなるといった感じだ。小潮まわりとあって100号のオモリがストンと着底する。乗り子兼務で乗船した船長の知人に落とし込んですぐにアタリ。これは300~400グラム級の本命レンコダイ。このポイントはレンコダイしか釣れないが、500~600グラム級の良型が結構混じるし、魚影がすこぶる濃くてほとんど入れ食い状態が続くのも嬉しい。

 この日も、頻繁にアタリがきてメンバーの狩猟本能は高揚しっぱなし。良型のチカメキントキ、カイワリも顔を出す。大瀬戸沖で釣ったカイワリはたっぷり脂が乗ってすこぶる美味しかったが、ここのはパサパサで不味かった。エサの違いなのかも知れない。

 帰港間際に、イトヨリを狙うべく浅場に移動。100mダチを狙う。ここも第一投目から良型のイトヨリがガクガクと竿先を振わしてくれる。1キロ近い大物も。しかし、フグの猛攻にお手上げ。全員道糸まで噛み切られる始末。仕掛けを上げてくると10尾ほどが群れて水面まで上がってくる。降参して早めに納竿。

 私の十分すぎる釣果は、レンコダイ26尾、イトヨリ4尾、他にキンプク、カイワリ、アオナ、エソ、チカメキントキだった。

2023年01月28日

ハズレ無し 長崎のガタ釣り(前編)

H22年1月6日 樺島沖

 Iさんの持ち船で、樺島沖65mダチのイトヨリ狙いに。途中、右手に軍艦島を見る。長崎港からのツアーは大人気で、予約なしでは乗れないらしい。

 この日の天気予報は、北東の風1m。沖に出ると、結構波立っている。釣り場は、航程4~50分ほどの、樺島沖70mダチ。いつもの様に、Iさんに初物が来て、あとはポツリポツリの釣り。イトヨリ狙いだが、型のいいアラカブ(カサゴ)が、結構混じるのが嬉しい。釣りたては、煮魚にすると、味よし、ポクポクした食感よしで、最高だ。人によってバラつきがあったが、私はイトヨリ25~30cmを10尾前後の釣果。他にアラカブ、ウマヅラハギ、ナベタなどが混じった。

 Iさんと私の釣果


H23年10月10日 樺島沖

 Iさん(兄)は相変わらず見せてくれます。レンコダイの一荷。

 T先生には大きなエソ

 私は、初めてサンマの短冊を餌にしてみた。イトヨリ、レンコ、キンプク・・・何でもOKのようです。ちなみに、サンマ2尾分で、終日釣ることができた。

 I(弟)さんは、良型のイトヨリの一荷です。船のオーナーだけに、このご兄弟には、いつもかないません

 I(兄)さんの分と私の分を合わせた釣果


平成24年5月19日 野母崎半島沖

 イトヨリ

 レンコダイ(キダイ)

 アオナ

 五月の連休は他の予定が入っていてお誘いをパスしたが、その日は随分と釣れたらしい。船中、10キロ超のヒラメ(?)や大アマダイが上がったとか。 釣り場までは長崎港から17~18ノットの船足で1時間半。途中まで進行方向左側に見えていた野母半島が徐々に薄く小さくなり、やがて見えなくなるとポイントに到着だ。

 水深は90m前後。海底はいわゆる潟(ガタ)で、水中アンカーを引きずって長時間船を流し放しにして釣るのだが、この海域はかなり広いガタが広がっているようだ。どこまで流されても水深はほとんど変わらない。  

 同乗者は片舷3名の計6人。うち二人は新顔。訊けばこの船に乗るのは3度目だとか。前は自前で船を持っていて、五島の向こう側まで遠征したことがあるという。長崎の人々は車の免許を持つように船の免許を持っている。

 前回大アマダイが釣れたポイントから始める。いきなりトモの同乗者に良型のイトヨリが来た。私にもアタリがあったが針掛かりせず。しょっぱなから嫌な雰囲気だ。他の人にもどんどん当たり始める。レンコとイトヨリの交じりだ。ミヨシのベテラン氏はレンコ、レンコ、イトヨリ、イトヨリの4連釣り。7本バリの胴付仕掛けで、中錘を付けている。これは、仕掛けを這わせるようにして海底ぎりぎりを狙うためだ。

 それにしても、潮が速い。私にも待望の針掛かりで、ガクガクと首を振るような強い当たりが手巻きリールのハンドルに伝わってくる。と、船が風に押されて道糸が引っ張られたのと敵さんが大きく引き込んだのとが同時で、ふわっと軽くなり、痛恨のバラし。仕掛けを見たら、ヨリ戻しに連結した幹糸が結び目の近くで見事に切れていた。

 ポイントは狭いらしい。今日のように潮が速く流れる時は一気に流されてポイントを外れてしまうらしい。船長の移動の合図で、場所替えだ。  また、しばらく南に走って入れ直しだ。こちらも水深は90m前後。私は天秤仕掛けに、ご当地で獲れる冷凍エビを餌にしたが、ベテラン氏はオキアミを併用している。ここでも、彼は好調で、2尾掛け、3尾掛けを連チャン。どうも、今日はオキアミ餌に分があるようだ。 

 私の隣はエソの入れ食いだ。大きいのは30セン以上もある。これの蒲鉾は最高だという。しばらく中弛みが続く。船中思い出したころにイトヨリ、レンコが上がってくる。

 一時だが、私に連釣の時間が回ってきた。もっとも気分のいい時間だ。これもイトヨリ、イトヨリ、レンコの3尾で終わってしまう。本日のクライマックスはアオナ。小さなモゾモゾが2、3度続き、竿をあおると確かな手ごたえ。タイのような垂直な引きも結構強烈だ。ハリスを手繰りあげると、草色っぽい獲物が見えてきた。これは、ご当地の人がアコウとともに珍重するハタ科のアオナ。

 帰港間際にミヨシの二人だけが入れ食いとなり、他は指を咥えて見ている状況が続き納竿。私はイトヨリ3尾、レンコ2尾、アオナ1尾の貧果だった。

 神奈川の三浦半島でやったアマダイ釣りの仕掛け、釣り方で挑戦したが、次からは現地のやり方に変えようかと思っている。

2023年01月15日

マダイ釣り苦戦日記

平成23年2月18日 乗っ込み まだかな・・・

長崎県大瀬戸沖 けいせい丸にて

 食い渋りました。というよりも、今一番魚釣りに酷な季節かも。水温は、一年の中で、一番低い時期。回遊するベイトも、カタクチイワシぐらいのもの。漸く釣れた、らしき一匹。これが本日の全釣果。鯛は35センチ級です。海の季節は例年より遅れ気味とか。3月の半ばぐらいからかな。

 この日の釣行記には、上の数行し書かれていなかった。この時の船宿は大瀬戸漁港(長崎)のけいせい丸。大瀬戸の沖には、島と瀬が点在し、長崎有数の釣場だ。マダイはもとよりイサキ、ヤリイカ(ケンサキイカ)、クロ(メジナ)、ヤズ、ワラサ、ブリ、カンパチ、ヒラマサ、ヒラメなど多彩な魚種の旬の釣りが楽しめる。当時住んでいた長崎市内から漁港までは、長崎県の西岸を縫うつづら折りの路を車で1時間強かけて辿ることになる。途中の断崖の高台に隠れキリシタンの里外海(そとめ)がある。した

 釣り方は「タイラバ」。この釣り方では、私は全くの初心者だった。マダイ釣りは、オキアミ餌で、オキアミをコマセて釣るビシ釣りしかやったことがなかったのだ。新調した竿はタイラバ専用竿だったが、リールは手巻き。他の乗船者は皆が皆小型の電動リール。これが、のちのちまで祟ることになる。タイラバ釣りの肝は、定速での巻き上げと、早合わせの我慢にある。竿掛けに掛けたまま電動で定速巻き上げ、前アタリのコツコツは受け流し、竿先が深くおじぎするまで待ってやおら合わせる。これがオーソドックスなタイラバ釣りだ。手巻きだと、前アタリに過敏に反応してどうしても早合わせになるのだ。コツコツの前アタリで反射的に合わせて、何度失敗したことか。


平成23年3月18日 乗っ込みマダイ本番 

平成23年3月18日(大潮)大瀬戸・けいせい丸から出船。

 河岸払いは6時半。鯛ラバに餌を付けての釣り(邪道らしいのだが)は何度かやっているいるが、鯛ラバオンリーの釣りは今回初挑戦。
鯛ラバの選定と巻き上げのスピードがカギだと森内船長は言う。
釣り場は航程30分ほどの、80~90mダチ。ポイントには職漁船が5~6隻。いつもならけいせい丸の独り舞台なのだが、さすがにマダイの乗っ込みシーズン、期待が膨らむ。

 第1投目。トモの常連さんに早速アタリ。竿受けに掛けたまま電動リールが勝手に巻き上げてくれている。時々竿先が水中深くに引っ張り込まれるのを眺めていると、手巻き派は心配になる。タモに収まったのは、2キロ超級のまずまずの型。電動リールで、巻き上げのスピードはバッチリとセットしてあるから、手釣りよりは有利だと船長は言う。

 船長の釣り方を見本に、底上5mから30mの間を探るが、一向にアタリが来ない。その間、右も左も後ろも「アタッた」「アタッた」の連呼。イライラは最高潮に達する。こちらもアタルのだが竿に乗らない。巻き上げ途中でのバラシも多い。午前中は型見ずで終了。

 午後の潮変わりになってから(釣り座的には有利になる時合)、船長が見かねて、アタリ鯛ラバを持ってきてくれる。と、不思議なもので、早速アタリ。しかし、油断していたから、竿が絞り込まれる前に反射的に合わせて、これは失敗。しかし、その後は、また、沈黙の時が流れていく。

 再び、船長にフォームをチェックしてもらう。「うん、ちょっと速いかな」。で、リールの巻き取り速度を緩めた瞬間竿先にモタレるようなアタリ。瞬間的に合わせてしまい、これも大失敗。でも、何となく分かりかけてきた感じ。釣りはやっぱり体で覚えるしかない。

 残り2時間で、2キロ弱を2尾。0.5キロ級を2尾。おまけ良型のにアラカブ1尾。初回としてはまずまずの一日だった。


平成23年3月30日 乗っ込みダイ釣り三度目の挑戦

 上の写真は、残念ながら私ではない。今回の私の釣果は、他のお客さんに比べたらあまりにも貧弱で、絵にならないのである。釣果は絶対だ。その日の運と当人のウデがそのままでる。負けは負けなのである。ちなみに、この日は、何と船長がボウズ。一筋縄ではいかないからこそ釣りは面白い。写真の彼だが、3キロ前後のまさに桜鯛を3尾。さらにおまけが付いて、3キロ級のワラサ一尾と、何ともうらやまし~い限りだったのである。

 平成23年3月30日(若潮)大瀬戸・けいせい丸から出船。河岸払いは6時半。鯛ラバを何とかマスターしたと思ったら、今からは「インチク」だと言う。

 これも鯛ラバと同じで、巻き上げのスピードがカギだと森内船長は言う。そして、鯛ラバとは、そのスピードが違うのだとも言う。そして、「手巻きではなー」と首を傾げ、「電動リールならスピードを合わせれば必ず釣れるのに」とのたまう。手巻きこだわり派には、絶望的な宣告だった。

 釣り場は航程30分ほどの、80~90mダチ。前回とほぼ同じ海域だ。周囲には職漁船が2隻。状況はあまり良くないようだ。一流し目に、トモとその隣に2.5キロ前後が来る。左舷ミヨシ側の私と右舷ミヨシ側の写真の彼はカラ振り。
 大抵は、一人にアタルとバタバタと2~3人にはアタルものだが、この日は完全に拾い釣りの状態で、アタリも少ない。私の釣り座からは道糸が前方に流されて行くから船は後方に流されていく。、釣り座としては終日非常に不利状況が続いたのも事実だった。

 アタリもなくなり、皆がだれて腹ごしらえ入った時に、私に待望のアタリ。これは1キロオーバーの桜鯛。他のシーズンなら十分良型と言えるが、のぼりダイシーズンでは小物の部類だ。仕掛けを下ろす時に喰ったものだから、この時点でも巻き上げのスピードには自信が持てないままだ。私にアタッタのを見ていた写真の彼が、仕掛けを入れるとすぐに喰ってきて、これは2.5級の良型。それと並べてみると何とも見劣りがしてがっかり。

結局、この日のアタリはたったの3回だけ。それも、そのうちの2回は回収の時に、30~40mも底を切ったところでアタッタもの。回収の時は油断しているから、反射的に早合わせをして、竿に乗らないという最悪のパターンに。まだまだ、修行が尽きないのぼり鯛釣りなのである。


平成23年4月24日 乗っ込みダイの名所 アジゾネにて

 新三重漁港からはつしお丸で出船。前日の電話では午前3時の河岸払いということだったので、携帯電話のアラームを午前1時に設定する。アラームより早く起きるのが、いつもの習慣。前夜10時半に一旦目覚めたら、そのまま眠れなくなってしまう。
 狙いは、のぼりダイ釣りの名所アジソネの桜ダイ。船頭が言うには「今年はよくない」らしい。前日は、赤潮気味で、汚れがひどかったようだ。いわゆる「ベト」が浮遊していて、繊維状の汚れが仕掛けにまとわりつく最悪のコンデションだったと言う。
 アジソネまでは高速モードで1時間半。広いキャビンでうとうとしている間に到着した。この船宿の料金は他の船の二倍だが、船は豪華だ。まだ、夜が明けきらず、僚船の灯りが点々と闇に浮かんで見えている。さすが、桜ダイの名所だ。長崎ではめずらしいほど釣り船の多さだ。

 この日はウキ流し釣り。仲間4人のウキが適度な間隔を保ちながら舟べりと垂直に流されていく。今日の潮はよく澄んでいる。期待が膨らむ。一投目で隣の本田氏にアタリ。50mぐらい流された比較的近場だった。フタ開けは「クロ(メジナ)」。500~600グラムと小ぶりだ。続いて岳下氏に。これはマダイ。これも500~600グラムと小型だ。乗り子と常連さんが立て続けにタイを上げる。こちらは1キロ前後のマズマズの型だ。
 何投目かで私の浮きにもアタリが来て、水中に没する。手巻きにこだわる私に、「船頭は電動リールを買えば・・・」と気の毒そうに云うが、その手元にはあまり手ごたえがない。これも500~600グラムのクロ。船頭が、私の仕掛けを見て、「ここの仕掛けは15m~20m」とアドバイスをしてくれる。イサキのウキ流し釣りでは、せいぜい全長10m。その仕掛けでもタイは食ってくる。急遽仕掛けを作り直す。が、その後もアタリはゼロ。

 やがて、潮変わりが来て、全員釣り座を右舷から左舷に移動。タイは潮変わりにバタバタと釣れることが多い。予想通り、潮先の乗り子と常連さんが2キロ前後の良型を連釣し始める。仲間では岳下氏がキロ級を追釣。と、私にも120m前後流されたあたりでアタリ。糸のタルミを取ると、グイグイと引っ張る手ごたえが伝わってくる。キロ級は間違いない。しかし、30mほど巻き上げたところで外れてしまう。合わせが効いていなかったか、掛りが浅かったかだ。~口惜しい。
 気を取り直して、次のチャンスを待つもアタリは相変わらず遠い。仲間も同じだ。半分諦めていた時に、浮きがボコッと水中に没した。先ほどの外れたシーンが頭をよぎり、反射的に思いっきり合わせをくれてやる。と、すっぽ抜け。仕掛けを上げてみるとハリスがチモトのところで見事に切れていた。切り口から判断すると歯に擦れて切れたらしい。結局、これが最後のアタリになり、写真のような貧果に終わってしまった。自称ベテランも、新場所では初心者だ。


岳下氏に良型

氏の全釣果(仲間4人の竿頭)

私の貧果

2023年01月06日

季節ハタハタ釣り苦戦日記(2020年)後編

12月12日 いよいよ季節ハタハタがやって来るかな~

 まだ本隊が姿を見せない季節ハタハタ。今後の天気予報と波浪予測が気になる。12月に入っても、この時期としてはウソのように穏やかな天気が続いている。しかし、天気予報によると、それも14日までだ。14日のお昼ごろからは陸上でも風速8m/sを超す季節風が吹き始める。そして海は大時化となる。その時間帯は、ちょうど大潮の上げ潮にあたる。上げ潮は夜まで続く。だから、この日は、夕方から夜にかけて季節ハタハタが大挙してやって来る確率は非常に高い。さて、いつ出動するかだ。
 この日から雪マークも続く。15日は零度以下の冷え込みとなっている。夜間の運転で、ホワイトアウトと路面凍結は大敵だ。釣り場でも厳しい寒さが予想される。防寒具は当然だが、靴も靴下も防寒バージョン。腰と腹を温めるホッカイロも揃えた。時には車の中に避難することも想定しなければならない。例年だが、車中泊もありと考えて寝袋を車に積んでおく。防寒具を着こみ、寝袋にくるまれば車の暖房を切っても耐えられる。
 あと迷うのが釣り場の選定。裏付けはないのだが、今季に限っては、各釣り場には一斉に季節ハタハタがやって来るような気がしてならない。できれば通いなれた酒田北港が一番だ。しかし、ここは秋田県県南地区に比べると例年1週間から10日は遅れる。象潟、金浦は、距離にすると酒田北港と大して変わらない。しかし、海沿いの道が続くので、強風、ホワイトアウト、路面の凍結が気になる。
 西目や本荘マリーナは圏外と決めている。自宅から遠いのが一番の理由だが、厳重な立ち入り規制だったり、狂気的な大混雑には腰が引けてしまうからだ。と、残るは象潟、金浦になってしまう。しかし、象潟は昨年に続く灯台側への立ち入り禁止規制に加えて水路入り口付近の護岸工事が重なって竿を出すのが難しくなっている。地元の住人によれば、それでも夜に結構人が入り込んでいるらしいのだが。
 金浦には港嶋、飛蚊港と2か所の釣り場がある。まず飛蚊港に群れがやって来て、それから港嶋の順になる。昨年は港嶋の水路を通って大群が入り込み、本港全体どこでも釣れたこともあった。

閑話休題 以下無用な事ながら・・・

 新型コロナの感染拡大が止まらない。季節ハタハタ釣りは接近戦だ。コロナ対策が必要だ。当然マスクは必須で、防寒具もウィルスを貰う恐れがあるので、自宅に戻ったら屋内に持ち込まず、屋外に吊るしておくことにしている。東京や大阪での街頭インタビューがしばしばTVで流されるが、殆んどの人が強い危機感を持っていないように見える。国家としては危険な兆候だ。
 go to トラベル、go to イート、・・・、政府は、経済の活性化のために、国民には死を賭してでも協力させると言ったスタンスだ。時の政権としてはそれも大いにありだ。いや、当たり前かもしれない。かつて赤紙一枚で国民を戦争に駆り立てたのに比べれば、今回は餌をぶら下げてある。我々はその意図を読み自己防衛しなければならないのだが、平和ボケした国民はあくまでも能天気だ。
 世界はこの機をのがさず、さらなる覇権を求めてせめぎあいをしている。敵はコロナだけではない。今は世界大戦真っ盛りなのだ。我々は協力するところは協力する、自己防衛するところはしっかりとそうする。そういう洞察力と行動が求められていることを意識しなければならない。・・・と、愚直に思う。

昨年12月6日の釣果


12月13日 道川漁港で500キロの水揚げ

 いよいよやって来ました。待望の季節ハタハタが。ABS秋田放送によれば、12月12日道川漁港で500キロを超す季節ハタハタの水揚げがあったらしい。ただし、港内にも入り込んで釣れたかどうかは分からない。ここは狭い漁港だ。例年過密な状態になる。だから、釣れたと聞いても出かけたことは一度もない釣り場だ。だが、季節ハタハタの接岸がいよいよだと言う実感が伝わってくる。それにしても八森や男鹿方面はどうなっているのか。例年ならそちらが先だが、まだそれらしい水揚げがあったとは聞かない。

 昨日も風がほとんどなく、時には日が射す穏やかな天気だった。一昨日、さきおとといと空振りだったので昨日は出かけるのを止めた。散歩がてら地元の波止を歩き回る。駐車場で良型のクロダイを3尾ぶら下げて帰ってきた釣り人に出会う。蟹の落とし込みで釣ったらしい。つい最近まで随分と混雑した波止も竿を出しているのは4人だけだった。先端で竿を振っていた釣り人はサゴシを4尾釣り上げていた。ルアーはミノーだ。
 波止から海中を覗いて気になるのが、今季はモクが殆んど生えていないことだ。昨年は、至る所にモクが生えて、釣りの邪魔になるほどだった。ハタハタはモクに産卵する。ハタハタがやって来れば、岸壁の喫水線付近に生えるモクにはブリコが付く。そして、このブリコの周りにオスハタハタが群がる。メスは産卵を終えるとすぐに深場へと戻っていくが、オスはしばらく居残る。ここにも釣りのチャンスがある。餌やワームで良く釣れる。
 さて、今日の予定だが、これから支度をしてでかけるか、午後からの時化と上げ潮に合わせてでかけるか迷っているところである。

追記:
 最新の天気予報は今日もハタハタ起こしの風が吹かないとなっている。そして、風が強まるのが明日14日の午後以降だ。15日からは猛烈な時化が予想されている。出かけるのは延期だ。

ABS 秋田放送の記事から


12月14日 本荘マリーナ

 夜半から激しい季節風と吹雪。床に入っても、待ちに待った季節ハタハタの接岸が今にもありそうな気がして落ち着かない。早めに朝食を摂り、暗いうちに家を出る。国道7号線を北上する。路上の雪を分けて黒い轍の後がくっきりと刻まれている。今年初めての雪道運転だ。慎重に車を進める。路面が凍結していないから運転は楽だ。
 まず、象潟漁港に寄る。水路にも波止にも人影はない。次に、金浦漁港だ。まずは、昨年大釣りがあった港嶋に車を停める。先行車が2台あったが、釣り人は車の中だ。人影がない漁協を通り過ぎて、本命の飛蚊港へ。横殴りに吹き付ける雪もなんのその、4~5人だが熱心にシャクリを繰り返している。だが、釣れている気配はない。駐車している車の数は10台を超すが、他は車の中で様子見だ。
 これでユータンでは諦めきれない。「せっかく出てきたから、本荘マリーナまで様子見に行って見るか」と、さらに北上を続ける。途中、西目漁港を覗く。外側の防波堤を超えて波が内側になだれ落ちる。大時化だ。今日も人っ子一人いない。
 
 いよいよ本荘マリーナに到着。駐車スペースは入り口付近しか残っていない。凄い人出だ。岸壁に沿いぐるりと人が並ぶ。もう割り込む余地がない。一番西寄り、外側防波堤のすぐ下が何故か空いていた。ここは一番のポイントのはずだ。端にいたおっさんに聞くと、そこのあたりまで時おり波が防波堤を飛び越えて落ちてくるらしい。この防波堤は高さが7~8mはありそうだ。海は大荒れだ。
 そのおっさんの話だと、昨日の午後1時ごろから季節ハタハタが入って来たらしい。今来たばかりだとは言っていたが、布バケツには4~5尾入っていただけだった。ズラリと竿の放列だが、見ていると10~20人置きぐらいの割合で竿が上がる。釣れても、一人1時間に10尾ぐらいのペースだろう。竿を出すのを諦めて、ちょうど正面方向、子吉川の側の防波堤に移動する。両手に半分ほどハタハタを詰めたゴミ袋を提げた若い釣り人とすれ違う。20キロはゆうにありそうだ。「何時から?」「6時ころ」。3時間ほどの間の釣果だ。相当忙しかったに違いない。
 こちら側の波止は短くて、せいぜい30人も並べばいっぱいになる。私が着いたときは、もう割り込む余地がなさそうだった。仕方なく手前の波止から投げ釣りだ。この波止は一段高くなっている。そのせいで風当たりが極めつき強い。踏ん張っていないと体が風に持って行かれそうになる。さらに悪いことに、糸が強風に流されて、思ったポイントに着底しない。狙いが定まらないのだ。そんなこんなで苦労しているうちに、根掛かりで二組も仕掛けをロスってしまった。そして、その間に釣れたのは3尾。3尾とも、産卵、放精を終えた痩せハタハタ。雪混じりの強風が一向に弱まらない。尻尾を巻いて退散だ。
 3尾とも、自製の仕掛けで釣れた。今季の自製仕掛けは十分使えそうだ。

 帰路、西目、金浦、象潟と巡ったが、どこも群れが入った様子はなかった。今夜以降に期待だ。本荘マリーナも夜に爆釣だったらしい。本当は夜が狙い目なのだが・・・。

 私の初物

大盛況の本荘マリーナ

私がいたポイントから撮ったもの


12月15日 金浦漁港に先発隊

 季節ハタハタの接岸は、大時化+大潮+深夜に満潮が、必要十分条件と言われている。まさに、今日もその条件にバッチリ当てはまる。日付が変わった頃に起きて外に出てみる。積雪は3~4センチだが、猛烈な吹雪だ。街灯の光の中を雪片が空に舞い上がる。防風林の松の木の枝が大きくしなる。諦めて布団に潜り込む。次善の策だが、朝マズメ狙いに変更だ。

 今季二度目の雪道運転。今日も慎重に車を走らせる。途中、車が後ろにピッタリくっついてきた。いやらしい奴だ。50~60キロで走っているから文句を言われる筋合いはない。無視だ。象潟漁港の入り口までマイペースを続ける。象潟漁港の例年の釣り場には、今日も人影はない。そのまま通過し金浦へと向かう。順路は、港嶋~本港~飛蚊港。港嶋では一人が竿を出していたが、車の中から見ているとすぐに竿を畳んでしまった。本港に通りかかると結構な車が並んでいる。港内に車を乗り入れてみると岸壁には人の列。ハタハタも釣れている。車のドアを開けて外に出ると体ごと持って行かれそうな雪混じり強風が吹き荒れている。正面の高い防波堤を超えて波が崩れ落ちる。あれだけの防波堤を波が超えるなどまずないことだ。

 風を遮ってくれる建物を探し、その陰に車を停める。まだ夜が明けていなかった。ヘッドランプを点けてポイントへ移動。ハタハタは光に集まる習性がある。周りとは距離を置いて、灯りの下で竿を出す。と、一投目で良型のメスが掛かってきた。20センチは超えている。以降、一時間10尾ペースぐらいでポツリポツリとアタル。向かい風が顔にモロに当たる。それも半端じゃない。時々体ごと持って行かれそうになる。雪が混じると目が開けていられなくなる。過酷だ。何度か車の中に避難する。
 周囲が明るくなるとアタリが遠くなる。雪混じりの強風は依然として吹き荒れている。潮が変われば再びアタリが出るはずだがギブアップ。正味二時間ほどの釣りになった。
 ハタハタ釣りの時期になるとよく顔を合わす象潟の住人と、別の場所だが今日もバッタリ会った。彼によると、金浦本港には午前1時頃季節ハタハタが入って来たらしい。ちょうどその時間帯を狙って行って、大型のブリコハタハタが半数混じって40尾ほど釣ったと言う。

追記:
秋田魁新聞によると、今日の金浦の季節ハタハタの水揚げ量は1トンほどあったらしい。先発隊と言うよりは本隊のようだ。

今日の釣果 最大のメスは24センチあった。


12月16日  隣の名人に脱帽

 ともかく冷たい。敵は真正面から攻めてくる。アラレ、雨雪、ミゾレが強風に乗って顔を直撃する。踏ん張らないと飛ばされそうになることも度々。何度も釣りを中止して車の中に逃げ込む。漁協の建物前は本荘マリーナ並みの混雑だ。午前4時前だと言うのにである。それでも、あちらこちらでハタハタが風に舞う。まさにハタハタだ。私もめげずに竿を出す。昨日の灯りの下はふさがっている。端っこで竿を出す。
 一投目に良型のブリコハタハタが来る。幸先が良い。テンションが上がる。しかし、その後はアタリが無い。残されたスペースは限られていたが移動しつつ群れを探す。が、どこにも濃い群れはいなそうだ。
 少し離れた場所に二人連れがいた。そのうちの一人はほぼ入れ掛かり。あ~、こんなのを見ると、簡単にマイペースを忘れてしまう。心情的メロメロと飛ばされそうな暴風雪に負けて、まだ暗いうちにこの場を退散。釣果はブリコ3尾にオス2尾。

 諦めきれずに港を半周して港嶋へ。ここの水路の西側は風陰になる。釣れても釣れなくても良い。そこで明るくなるまでいて、帰宅までの時間稼ぎだ。本格的な吹雪が続いている。暗い雪道の運転は苦手だ。
 お目当ての場所で、すでに一人が竿を出していた。シャクリ具合は相当のベテランだ。挨拶して隣に並ぶ。「ダメダメ」と言う割には1時間10尾前後のペースで釣っている。私は開始早々1尾釣れただけで、その後はまったくアタラない。隣と時々言葉を交わす。本荘の住人だった。私も秋田県生まれだから秋田県人は話をしてみると大体見当がつく。言葉が一番だが、人のなつっこさが全身に出るのである。もちろん、都会暮らしが長かった私はとっくに失ってしまっているものだが。
 先日は、地元本荘マリーナで小型クーラーボックス3個分ほど釣ったと言う。「すごいな~」と言うと、「何百キロも釣るから」ちっともすごくないらしい。こちらはまったく釣れないのに、彼はどんどんペースが上がる。「名人!」「腕が違う!」とぼやいていると、「腕じゃない仕掛けだよ」と言いながら自分の仕掛けを分けてくれた。あ~、やっぱり彼は秋田県人だ。なんかジーンとくる。この仕掛けに変えてすぐに1尾釣れたが、その後は再び沈黙が続く。残念ながら腕の差だ。諦めて竿を畳む。ここではオス3尾。

 帰路は朝よりも雪が多くなっていた。場所によっては轍が結構深い。運転は気が抜けない。なんとか無事帰宅したが、積雪が朝より増えていて10センチを超えていた。
 明日も今日と同じような荒れ模様だ。明日は休竿日にして仕掛けの改良だ。


12月17日 酒田北港に第一陣

 酒田北港の季節ハタハタが気になってしょうがない。日に何度かインターネット検索をするのが日課になっている。BSシネマの途中で、「季節ハタハタ」でキーワード検索。当たりました。上州屋酒田店の釣り情報。今日の正午前に水路に入って来たらしい。。BSシネマはヒッチコックの映画だった。それを中途で切り上げて酒田北港に向かう。着いたのは午後4時ごろ。南側から2本目の風車がターゲット。やはり、皆さんよくご存じだ。一本目から3本目までの駐車スペースはもちろん、道路に並行して広がるその付近の空き地も車で埋まっている。一本目と二本目の中間ぐらいの位置にある空き地に駐車スペースが空いていた。ポイントまでは遠いが、しょうがない。
 
 水路は予想通りナイアガラ状態。沖堤に当たった波が砕けて上空高く舞い上がり、それが堤防を越えて水路に崩れ落ちる。季節ハタハタ釣りの風物詩と割り切って、水路に降りていく。ナイアガラからの海水が水路の喫水線にと続く斜面の中間ぐらいまで這いあがっては引いていく。荷物の置き場所には注意だ。油断すると波にさらわれてしまう。舞い上がった海水が顔面を叩く。こんな大時化はかつてなかった。それでも、水路にはびっしりと釣り人が並びシャクリを繰り返している。頻繁にハタハタが強風に舞う。
 何とか割り込める場所が水路の降り口t近くに残っていた。そこで竿を出す。隣の一人は、ゴミ袋に1/3と布バケツに一つほどすでに釣っていた。多分15キロは超えている。「何時から」、「一時ごろから」。ほぼ3時間の釣果だ。接岸したばかりの季節ハタハタはまったく不用心にハリに掛かってくる。新群れはブリコがパンパンに詰まったメスが多い。大抵3割方混じる。これが、一晩で産卵を終えた痩せハタハタに変わる。接岸したばかりの新群れには特別価値がある。

 私事だが、今日も全くのスランプ。入れ掛りの隣に対して私はボウズが続く。自製の仕掛けを2種類付け替えてみても状況は変わらない。ついには、半分自棄で市販の安い仕掛けに交換。すると程なく第一号が掛かってきた。「オイ、オイ。最悪じゃないか」。奈落の底に突き落とされてますます意気消沈。
 私は癖のある釣り師だ。おそらく、私の個性が邪魔をしているに違いない。シャクリが難しいことはハナダイのコマセシャクリ釣りで経験済みだ。この釣りでも私は長く悩まされた。それでも乗合船の頭をを取ったことは一度ならずある。私の癖が利することもないわけではないのだ。釣りは奥が深い。

 閑話休題

 酒田北港の季節ハタハタはそれなりの大きな群れのようだ。結構広い範囲でまんべんなく釣れていた。おっつけ第二陣も期待できる。ここ何日かは目が離せない釣り場だ。

今日も見事なナイアガラ

今日の釣果(正味二時間)
今季はメスが見事なほど大きい
*スランプの中の貧果


12月18日  酒田北港 朝から大盛況

 今日一日は、久々に穏やかな天気になるらしい。このチャンスを見逃すわけにはいかない。思えば本荘、金浦、そして昨日の酒田北港と、極めつけの暴風雪の中での釣りだった。
 今朝は4時ごろから竿を出す。ハタハタも夜明け前後が良く掛かる。夜に第二陣が入っていれば束釣りも夢ではない。期待に胸が膨らむが、そうそううまくは事が運ばない。車から降りて水路を覗く。風車の灯りの下で竿を出す姿が見える。人の姿は、まだまばらだ。さて、釣れ具合だが、ハタハタは滅多に宙に舞わない。第二陣はまだで、掛かるのは昨日の居残り組のようだ。
 竿を出すも、今日も、私は周りに比べて見劣りがする。距離にして2~3mしか離れていないから場所ではない。今日は柔らかい竿に替えてある。皆さん結構軟調子の竿を使っている。今まで私が主に使っていたのはシーバスロッドだ。これは硬めだ。今朝は短めの投げ竿に変えた。だからシャクリに差はないはずだ。違うのは仕掛けだ。仕掛けの違い効くはずだ。釣り場に投げ捨ててある仕掛けは、矢島型のハリを使ったもの予想以上に多い。先日話を交わした本荘の達人も、矢島型だと普通のハリの3倍は釣れると強調した。矢島型は伝統的かつ洗練されたアユ掛けバリだ。

 さて釣況だが、ペースは昨日の半分。アタリが遠い。一人置いた左隣だけはかなりの確率で釣り上げている。場所はNPOが設置した産卵床のすぐ傍だ。場所もありそうだ。他人より釣れない時は、じっくり観察するのも良い。毎年シーズンも終わりになると、ああすれば良い、こうすれば良いといろいろノウハウがたまっているが、翌年になるとすっかり忘れてしまっている。
 今朝は、岸壁スレスレで釣ることもあったことを思い出す。仕掛けが根掛かりするリスクが大きいが、かつてこの釣り方が的中することも多々あった。ハタハタは岸壁に沿って移動するからだ。それに変えてからペースが上がる。25センチ級の良型のブリコハタハタは結構重量感がある。身切れしないように大事に抜き上げる。一荷釣りも二度あった。私にも、魚が仕掛けの傍を通過さえしてくれれば釣れるのだ。周りが明るくなると、それも続かなくなった。諦めて竿を畳む。大型ブリコハタハタが4尾混じって14尾の貧果だった。

 今日は暴風雪が大分和らいだ。しかし、酒田北港名物のナイアガラは相変わらず派手に水しぶきを送ってくる。足元を洗う波も昨日ほど高くはないが、それでも防寒具の裾はすぐにびしょ濡れだ。時おり大きな波が来て、クーラーを流されそうになった人もいたから注意だ。見ていると比較的波をかぶらない場所もある。釣れることとは必ずしも両立しないが、そんな場所で竿を出す選択肢もある。是非是非、ご安全に。

今朝7時頃の酒田北港


12月19日  季節ハタハタ釣り 余聞

 このブログを始めて3件目のコメントを頂いた。投稿者は、季節ハタハタ釣りにはかなりの経験と造詣がある方のように見受けられる。季節ハタハタ釣りに関するブログでは、私が隣人に引けを取り、意気消沈している文章が、毎回出て来る。それに対するような言及もあった。その中で、ハットする一文があった。それは後述する。

 恥ずかしながら、度々講釈を書く割には、この釣りは、他の釣りもそうだが特に季節ハタハタ釣りは、ファクターが多くて、まだ自分なりのスタイルが十分確立していないのである。私の季節ハタハタ釣りは当地移住後から始まった。だから、今季で6シーズン目である。地元の何十年生に比べれば、まだ小学生だ。秋田県内陸部の出身だからハタハタは年に一度の大御馳走で、子供のころからのいわば憧れの魚だった。都会暮らしを始めてからだったが、ハタハタが岸から釣れると言うことを知ってからは、ハタハタ釣りが、様々な釣りをしてきた私だが、心の奥で最終目標になったようだ。おそらく、今の場所に移住したのも潜在意識の中にハタハタ釣りがあったからだと思っている。移住先を選ぶにあたっては、男鹿、潟上、にかほと随分探し回った。思えば、どこもハタハタと関連付けが出来なくもない。

閑話休題

 さて、昨日釣り上げた十数匹のハタハタだが、隣のHさんに全部おすそ分けした。大黒様には間に合わなかったが、25センチ級のブリコハタハタも混じっていたから随分と喜んでくれて、その日のうちにカブとダイコンのお返しがあった。あと、近所ではWさんとMさんにも届けたいのだが、さっぱり数が釣れなくて保留状態だ。他に秋田県内陸部に住む中学の同級生宅が3軒も残っている。
 私はあまり人づきあいが好きでない。それでも、釣った魚を介して何人かとはつながっている。釣りに出掛けるには強い意志が必要で、釣っている最中は精神の集中と体力が要る。高齢者に括られている私には極めつきの老化防止対策になっているはずだ。随分と長い間高い授業料を払い続けてきたが、釣りは本当に一生ものだとつくづく思う。

 釣りに付随して、私には料理の趣味がある。現役時代は単身赴任が多かったせいもあるが、釣った魚を自分で処理しなければならなかったこともある。今では、ハゼやキスなどの小魚からサケやタラなどの大型魚まで捌くことが出来る。
 私のハタハタの食べ方だが、まずは味噌田楽で、ついでしょっ汁鍋、しょっ汁は本場のしょっ汁の代わりにニョックマムやナンプラを使うことも。あとは、キムチ鍋も良い。私は韓国で8年ほど仕事をした。そのせいでコチュジャンをベースにしたメウンタンが好物なのだ。
 居残りの痩せハタハタは三枚におろして天ぷら、フライに。三枚おろしは冷凍しておくと随時取り出して使える。保存食としては、鮓とぬか漬け。特にぬか漬けは大好物なので、毎年大量に漬けることになる。発酵のうまみと水分がほどよく抜けて旨味成分が凝縮するので絶品に仕上がる。おふくろの味と違うところはザラメを多めに加えることだ。

 講釈はさておいて、まずはハタハタを、そこそこ釣らないと始まらないのである。ブログのコメントからのヒントだが、「仕掛けを流す・・・」とあった。私もシャクっている最中の他人の竿先の曲がりを気にすることがある。「うん・・」ありだなと思った次第である。


12月20日  釣りの極意閃く

 今回の寒波は半端じゃない。家の中に居て時々外の様子を見に出るのだが、外気の冷たさ、ヒュウ―ヒューと金切り声を出して通り過ぎる強風、視界をかき消すように舞い揚がる雪。釣りキチの私でも腰が引けてしまう。昨日は休竿日。今朝も起床早々天気予報を見たのだが、昨日と変わらない。多分休竿日だ。だが、今この時、酒田北港にも、金浦にもハタハタは来ている。何とも落ち着かない。

 釣行計画を立てる時は、いつも10日間天気予報を見る。それによると、21日月曜日の午後からは、それまでは日中でも0℃前後で推移していた気温が3~4℃と上昇する。加えて風も6m/sとやや小康状態になる。あとは、気になるのが潮回り。この日から小潮が続く。酒田港の満潮が6:30と21:42、干潮が14:08だ。それぞれの前後1時間ほどは潮止まりで、普通は魚の動きが止まる。狙いとすれば、15:00~21:00或いは24:00~6:00の間になりそうだ。
 翌22日火曜日は終日雨。しかし、終日、気温は4~6℃、風速も1~2m/sと、雨対策さえ完璧なら好条件だ。この日の満潮は7:52、22:13、干潮は14:51が一回。狙いは17:00~21:00或いは24:00~7:00の間だ。
 23日水曜日も良い。特に午後からが午前中の雨も止んで、気温も7~8℃と上昇する。居残りのオスを釣ることになると思うが、飛ばされそうになりながら顔に風雪をまともに受けることは避けられそうだ。潮時だが、満潮が9:22、22:42、干潮が5:04、15:34となっている。夜の方が釣れる確率は高いから、17:00~22:00或いは24:00~4:00が狙い目だ。

 さて、冒頭の極意だが、これは全くの独善でベテラン諸氏には笑われるかもしれないが、早く試したくてしょうがないのである。度々経験することだが、仕掛けを入れ直した時に掛かることが多い。以前、群れを見ながら釣りをしたことがあった。その時は、落ちていく仕掛けにハタハタが敏感に反応する場面を何度も目にしている。釣れる確率が高いのはそのせいとばかり思っていた。だから時々空で巻き上げては入れ直すことなどもしていたのだった。
 だが頂いたコメントやら、隣の達人の竿先の動きなどを思い合わせてみて、私に釣れない理由が閃いている。私は船釣り主体で半世紀も釣りを楽しんできた。船釣りの多くは胴付き釣りである。だから、根掛かりを避けるために着底したら素早く底立ちを取るのが鉄則だ。私にはこれが習慣になっている。ただ、いくら気を付けても、着底時は少しは糸ふけが出る。この糸ふけがハタハタをスレで掛けるのに有効だったのだ。と言うのが私の仮説である。
 シャクリ上げて竿先を元に戻して一瞬待つのだが、今になってだが、この時に竿先が水平になっているいくつかの場面が目に浮かぶ。根掛かりのリスクとの兼ね合いだが、フワリと糸フケを出す、聞くようにして竿を立てる、これの繰り返しと、そして時々大きく竿をシャクって底立ちを取り直す。多分、これで私の季節ハタハタ釣りも状況が一変するかもしれない。・・・などなど、釣りに出掛けられない暇に飽かしていろいろ考えてしまうのである。


12月21日 地震のせい? ハタハタ舞わず

 夜中に起きて外を覗く。欲目かも知れないが、ここしばらく吹き荒れた暴風雪もやや小康状態にもなったようにも見えてしまう。今日は、夕方から夜にかけて季節ハタハタ釣りに行くつもりだった。それまで待てずに、即釣り支度だ。
 酒田北港に着いたのは午前3時ごろ。南から数えて2本目と3本目の風車付近の駐車スペースは、例の通り満車だ。が、そこから離れるとガラガラだ。嫌な予感がする。不安が的中。車から降りて水路を覗くとほとんど無人状態だ。竿を出している人は10人もいない。ほとんどが車の中で様子見なのだ。
 それでも、せっかく来たからと竿を出してみる。名物のナイアガラは相変わらず豪快に飛沫を吹上げ、流れ落ちてくる。その度に足元を波が洗うが、前回のように膝近くまで上がってくることはない。確実に天候は回復している。反応が無くて30分ほどの間に2度場所替えをする。風車の灯りが届く場所も、産卵床の近くも全くアタリが出ない。他の人の竿にも一向にハタハタは舞わない。

 さっさと切り上げて金浦に向かう。途中象潟漁港を覗く。少なくとも水路近辺には人影が無かった。素通りして金浦本港へ。いつもなら漁協の周りは駐車した車で溢れんばかりになる。ところが、今朝は無人状態。前回私が竿を出した漁協の南側で竿を出している人は二人だけ。暫時車の中で様子見だ。待てども二人の竿には一匹のハタハタさえ舞わない。ここはパスして港嶋へ向かう。
 
 水路の東側の駐車スぺースにはたった二台の車しかない。二人連れと一匹オオカミが、それぞれ水路の両側に分かれて竿を出している。私は橋を渡り、前回の場所に向かう。そこは風陰になるからそこそこ快適だ。先行者に挨拶をして隣で竿を出す。が、しばらくしても、隣にも、私にも全くハタハタの気配がない。地元のベテランに見える隣は「帰った方が良さそうだ」と早々に帰り支度だ。「昨日も良くなかったようだから」とも。それを聞いて私も竿を畳む。

 帰宅して我家の玄関を開けると「出かけた直後に地震があったよ。どうだった?」と、珍しく家内が出迎えた。地震があると魚が釣れないと云う経験をしている。昨日も今日も、もしかしたら明日も、地震のせいで釣れないかも・・・。そんな事を思いながらも釣り道具は車に入れたままだ。

追記:酒田北港 夕方もハタハタ舞わず
 午後4時ごろ再び酒田北港を覗く。100台近い車が並ぶも竿を出している人数はその半数以下。誰にも全く釣れていない。明日の釣行は迷ってしまうな~。もう一荒れが来て、それに乗じて第二陣がやって来るのを待つか・・・。


12月22日 釣り場を巡るも

 昨日の午後あたりから、一転、庄内は穏やかな天気になっている。国道7号線は雪が消えて地肌が出ている。未明の釣り場通いも苦にならない。昨日の様子見から、今日も期待できないと分かっていても一縷の望みは捨てきれない。家内と夜明けのコーヒーを飲んで、おもむろに釣り場へ向かう。

金浦漁港
 まずは、金浦へ。途中、いつものように象潟の水路を覗く。まだ、午前5時前だというのに西側の水路では重機が動いていた。釣り人の姿は今日も無い。それにしても、国道7号線から外れて象潟漁港に向かう道の除雪は杜撰だ。10センチを超す積雪が覆おう道路には轍が錯綜し、車のハンドルが左右に振られる。
 金浦では、漁協の北側で3人が竿を出していた。「今来たばかり」と云う釣り人はまだ型を見ていなかった。他の二人も気配は皆無だ。すぐに港嶋に向かう。ここには2台の先行車があった。着いたばかりのようで後部ハッチを開けて釣り支度をしていた。水路に降りてヘッドランプを照らすと水中が見える。水路伝いに魚影を探す。無風状態で海面は鏡のようだ。潮の流れも止まっている。残念、どこにも魚らしい影は見えない。竿を出さずに金浦を後にする。

吹浦漁港、女鹿、鳥崎
 地元吹浦漁港にも年に1~2度は季節ハタハタが入ってくる。狙いは凪の日。金浦からの帰宅前に吹浦漁港に寄ってみる。第一堤防の内側には0.5m前後の波が打ち付けている。波が高すぎる。ここは見送りだ。
 第三堤防に向かう。内側は波が静かだ。岸壁に生えたモクが手がかりだ。しかし、波気があり、潮が濁っているのでよく見えない。去年は、ブリコが幾つかくっ付いているのが見えていた。モクの周辺を探ってみる。しかし、反応はない。そのうち一人の釣り人が追い越していった。まだ、若い。ハタハタスズキ狙いかと思ったら、去年新群れを釣った実績のある周辺で竿を出している。が、すぐ返って行った。彼もハタハタの様子見だったのだ。私もその場所を探ってみたが反応はゼロ。この場所で、去年は餌釣りとワーム釣りで何日間は楽しめた。明日も凪の予報だ。今日はひとまず退散だ。
 金浦からの帰路、女鹿と鳥崎も車中から見てみたが釣り人はいなかった。

酒田北港
 一旦帰宅し、朝食を摂り、小休止。上げ潮に合わせて午前10時ごろに家を出て酒田北港に向かう。水路脇にはびっしりと車の列。着いた途端に雨脚が急に強くなる。傘を差しながら、「さては新群れか」とはやる気持ちを押さえて水路を覗きこむ。水路には100人をゆうに超す釣り人がズラリと並びシャクリを繰り返している。が、ちょっと緊迫感に欠ける雰囲気だ。三々五々引き上げてくる釣り人もいる。竿を出さずに水路の降り口の高みで下をのぞき込む人々もいる。全く釣れていないのだ。早々そこを後にする。
 去年は温排水路側の小さな港の中で、オスだけだったが100尾を超す好釣りもあった。そこへと向かう。着くと、温排水路に一人、実績のある港内に一人竿を出していた。私も車から降りて釣り支度にかかる。ところが酷い異臭だ。工場からの排ガスだ。たまりかねてそのまま退散。毎年この匂いに悩まされる。それにしてもい毒々しい、や~な匂いだ。環境基準をクリアしているのかな~。

今日の午前11時ごろの酒田北港


12月23日 酒田北港 大漁旗揚がらず

 「昨日、一昨日とボウズよ」と、様子見の私の隣のおっさん。竿を出す気はないらしい。見れば、午前5時前だと云うのに、50人を超える釣り人が水路に沿って並ぶ。私がここに佇んでから10分は経っている。その間、上がったハタハタは1尾だけ。「帰ろう」と、いつもの弱気が誘惑する。「風も無い、波も無い、顔に当たるアラレも無い」と、もう一人の私。今日は餌釣りの準備をしてきた。「これでやってみるか」と、水路に降り立つ。釣り人は、上州屋酒田店ご推奨の風車2番目と3番目の間に集中。空いている2番目と1番目の間に入る。同場所で粘るも全くアタリが無い。ハタハタはいない。間違いなくいない。それなら、攻めに転じて、NPOが設置した産卵床まで探り釣りだ。結構な距離だ。丹念に餌を流していく。が、1時間ほどしても反応は皆無。諦めて場所移動だ。
 途中で集魚灯を灯してシャクリを繰り返すプロがいた。さりげなく近づいてバケツを覗いてみる。10尾ほど入っていた。寂しい限りだ。進むと、もう一組水中集魚灯組がいた。隣には別人が竿、クーラーを置いて場所取りがしてあった。その隣で竿を出す。・・・釣れない。・・・釣れない。結局、午前7時頃まで粘って、3年物のオスが1尾。三日続きのボウズは免れたが、何とも情けない。
 私が竿を畳む直前に場所取りをしていた釣り人がやって来た。あれよあれと言う間に2尾ゲット。今日も自信を無くして家路につく。

 波が治まった日は、火力脇の防波堤にハタハタの群れが回遊する。昨日は1人、今日は2人竿を出していた。しかし、昨日も、今日も、ハタハタは回って来ていないようだった。


12月24日 酒田北港 水中集魚灯がお好き

 午前5時ごろ。国道7号線から外れて火力側から進入し、直角に折れて水路沿いに車を走らせる。と、北側2本目あたりに車が集中して停めてある。気になって車を停めてのぞき込む。水路の降り口付近に二人の釣り人が程よい間隔を空けて竿を出していた。すぐに、一人が立て続けに2尾ハタハタを上げる。「お!今日はいけるか」と勢い込んで二人の間で竿を出す。しかし、30分ほど粘ったがカスリもしない。その間、件の釣り人は2尾追釣。もう一人も1尾上げた。「あ~、腕が違う」と、またまた迷路に。引き上げる時に気が付いたのだが両側の二人とも水中集魚灯を沈めていた。「なるほど、彼らだけに釣れるのは腕だけじゃなさそうだな」と納得。私に限らず、彼ら以外は全く釣れていなかったのだ。
 そこを後にし、温排水路側で餌釣り仕掛けで探り釣りをするも全く反応が無い。さらに、南側の水路入り口付近を広く餌で探り釣り。が、ハタハタもさることながら魚の気配は皆無。前日同様午前7時頃に納竿。ボウズで帰路に就く。

追記:
 午前中、買い物で象潟、にかほへ。途中道の駅象潟「にかほっと」の土田水産の店頭を覗く。土田水産ではいつもプロが目利きした良質の魚が買える。この日も見事な季節ハタハタが箱売りされていた。メスがキロ2千円、オスはキロ4~500円か?店頭は買い求める客で大賑わい。聞けば、これが今季最後の季節ハタハタだとか。昨日で漁は打ち止め。網を引き揚げるから、これからは、季節ハタハタの群れはすべて港内に入ってくる。チャンスだ。

今朝7時頃の酒田北港である。

 手前に見えるのは南から2番目の風車。2番目~3番目の間で竿を出している釣り人は10人に満たない。そして、誰の竿にも季節ハタハタは舞わなかった。私はオキアミ餌をぶら下げて水路沿いに探り釣りをしたが、いつまで経っても餌はそのままだった。

 初めに竿を出した水中集魚灯組のあたりには、まだ釣り人が集まっていた。が、ハタハタは舞っていなかった。


12月26日 今季初の入れ食い 堪能

12月25日 某所(訳アリにつきご容赦を)

 未明、酒田北港に見切りをつけて、秋田県県南地域に向かう。いつもの視察ルートを順にたどる。最初に着いた某所の水路は相変わらず無人。しかし、灯台側にはいくつかヘッドランプの灯りが見える。ここをスルーして次の場所へ。ここでは誰一人として竿を出していない。即ユータンして最初の場所に戻る。辺りがやや明るくなっていた。ヘッドランプがチラチラしていた場所には10人ほどの釣り人が並んでいる。最初に覗いたときはよく見えなかったが、今ははっきりと見えて、頻繁にハタハタが舞う。「しまった。最初からここにすれば良かった」。ここは訳ありなので敬遠していたこともあった。しかし、背に腹は掛けられない。毎日のように、酒田だ金浦だと通っているが、今季の釣果は合わせて50尾にも満たない。

 やはり、行って見ると、場所限定だが、入れ掛り状態だった。大きな布バケツ半分ほど釣り上げた釣り人に尋ねると「5時半ごろから」だという。100尾は軽く超えていそうだ。足元よりはチョイ投げで釣っている人が多い。私の立ち位置のすぐ先には産卵用の網が入っている。まずは足元で釣ることに。水深は2mあるかないかだ。右隣はチョイ投げ。1時間に20尾ペースの感じで好調に上げている。しかし、私はその1/3のペース。まだ、コツが掴めていないのだ。もちろん、入れ掛り組は、そこに濃い群れが居るだけの話なのだが。そのうち、入れ掛り組も一段落したらしく、隣にそのうちの二人が移動してきた。そして、一人は、これ見よがしに、次々と足元で釣って見せてくれるではないか。私が渓流釣りに使っているルアー竿相当の柔らかい竿で、チョンチョンと小刻みに竿先を揺らしているだけで、次々と掛かってくる。またまた、迷路だ。それにしても、柔らかい竿を使っている人がどこでも多い。かつて磯竿で良い釣りをしたことがあった。ただ、この竿は5.4mと長いので風が強い時はあおられて使いにくい。だから、今年は車にはいつも積んでくるが、まだ使っていない。正味二時間ほどだったがオスばかり15尾の貧果。3年物が主体で良型がほとんどだった。

 夕方、再び某所へ。車から道具を取り出しているところ二人組が帰ってきた。彼らも庄内Noの車だった。私の先に停めてあったのは山形Noだ。こんなのを見ると、地元の人も感じるところが多々あるだろうな。概して、山形衆はマナーが悪いと云うことが定着しているし。無神経な車の停め方、やらずぶったくりの釣り方、サビキの残骸は散らかし放題、・・・などなど。

 閑話休題

 釣り場に向かう前に、二人連れと話を交わす。昼間はじっと酒田北港で我慢したがボウズで、こちらに回ったと言う。ここでは2時間で6尾。「無くした仕掛けの数と同じだ」と苦笑い。チョイ投げは仕掛けのロスが多くなる。こちらは夕マズメに期待だ。昼間は概してハタハタは釣れないものだ。
 朝よりはずっと端っこしか空いていない。とりあえず竿を出す。釣れているのはごく限られた場所だけ。周りはほとんど釣れていない。私も30分ほどで2尾と振るわない。ボツボツ帰り始めている人もいるから、いい場所が空いたら移動だ。辺りが暗くなった頃、朝に竿を出したあたりにいた二人連れが帰って行って空きが出来る。そこに場所移動だ。ここだと目の前に網が張られていないからチョイ投げも自由だ。まずは、好調に釣れているチョイ投げから開始だ。オモリが軽いのと風に糸が流されるのとで着底が取りにくい。勘で糸の出を止め、軽く聞くように竿をあおる。と、一投目からヒット。以後、一投ワンヒットが続く。ダブルもある。潮の流れもある。仕掛けが流され、海中を漂い、それにハタハタが引っ掛かるパターンを思い描く。この釣り方の難点は、根掛かりが多いことだ。ハタハタが群れる場所は海藻が生える障害物の周りだ。だから致し方ない。魚が釣れている時は根掛かりが少なくなるのが救いだ。
 ややアタリが遠のいた6時ごろに、根掛かりを機に竿を畳む。普通サイズの布バケツに7~8分目。後で数えたら57尾あった。正味1時間ほどの間の釣果だ。今季初めて満足のいく釣りになった。


12月27日 某所 爆釣続く

 未明、午前4時頃、某所に到着。昨日は休竿日。一日置いての釣行だ。風が殆んどない。国道7号線も乾いていた。季節ハタハタ釣りの気候としては稀だ。
 予想した通り、青灯側の堤防にはヘッドランプが点々と並んでいる。そして、今までは人影を見ることもなかった水路の入り口付近にも人の列だ。そこは工事半ばで、土嚢が詰まれている場所もある。そこにも釣り人が入り込んでいる。水路には街路灯が点っている。人々の所作が良く見える。ひっきりなしにハタハタが宙を舞う。誰もが入れ食い状態だ。

 車の中から近くの若者に声を掛けてみる。「釣れた?」「バケツ一杯」。何時から始めたかなどは聞きづらかった。今、爆釣の真っ最中なのだ。水路の反対側が空いて見える。そこに行くには車をおいてからしばらく歩かなければならない。関門も設けてある。でも、しょうがない。そちらに回り、湾口から離れた一番端で竿を出す。湾口付近は皆入れ掛り状態だ。しかし、そこに割り込みをかけるにはプライドが許さない。諦めだ。
 ここは街灯の近くだ。ハタハタは灯りにつられて寄ってきているはずだ。以前実績のあった餌釣りを試してみることにする。少しづつ歩きながら群れの有無を探る。魚がいれば必ず餌に飛びついてくるはずだ。程なく1尾がハリを咥えて上がってきた。しかし、2尾目はなかな来ない。しばらくして同場所で2尾目がかかったが、効率が悪すぎだ。これを機に餌釣りを断念。

 ハタハタは湾口付近に集中しているようだ。湾口付近の集団の隣でサビキ仕掛けを垂れる。オモリが着底したまま糸ふけを出し、聞くようにシャクル動作の繰り返しだ。1時間に10尾前後のペースで釣れてくる。すでに竿を出して中型クーラーに1/3ほどハタハタが入っている隣は私の倍のペースで上げている。入り口に近いほどペースが上がっている。一に場所、二に場所、三に場所だ。
 先端で入れ掛り連発している釣り人のさらに先っちょに、ちょうど一人は入れるようなスペースがあった。断りを入れてそこに入れてもらう。背に腹は代えられない。
 彼は昨日の午後10時から釣り始めたと言う。並のクーラーと、ゴミ袋と、並の布バケツにパンパンにハタハタが詰め込んであった。「皆青灯側に行くから、ここは最初一人だったよ」。彼にハタハタ神が運をくれたようだ。この周辺は、いまだに工事中で皆が敬遠していた場所だ。
 それからは、私にもハタハタ神が微笑んで、先日の入れ掛りパターンが始まる。チョイ投げして竿を立てると、もう掛かっている。それでダメな時は、二、三度シャクルとドシッと来る。三年物主体の良型揃いだから手ごたえも十分だ。潮が流れ出してからはリールを巻くにも結構な力が要る。

 明るくなり始める時分になると網船が水路を通り始める。その網船が水路を出外れたすぐ目の前に網を下し漁を始める。そして、ほんの短い時間で、重ねた大樽にハタハタを満載して帰っていく。その船がハタハタを港に水揚げするとまた漁に出ていく。三隻の網船が変わるがわるこれを繰り返す。数日前に、道の駅象潟の「にかほっと」の土田水産を覗いたときに「季節ハタハタは昨日で終わり、網を上げた」と聞いていた。大きな群れが入ったために急遽再開したようだ。

 さすがに明るくなると、さしもの猛攻も一段落。他はまだ熱心に竿を出したままだが、私は潔く納竿。今日の入れ掛りタイムは一時間ほどだった。帰宅して数えたら62尾。内、メスは2尾だけ。今日もご近所への普段の義理返しに季節ハタハタは大活躍だ。


12月29日 さしもの某所も 一段落

 この3日間、某所では釣り人もさることながら網船も繁忙を極めていた。初日などは、季節ハタハタを溢れんばかりに詰め込んだ大樽が甲板を埋め尽くした網船が目の前を何度も通り過ぎて行った。「あ~、これでハタハタはどんどんいなくなってしまう」と、愚痴が出る。

 今朝も薄闇の中を網船が目の前を通って漁場へと向かって行った。だが、今日は一隻だけだ。昨日までは3隻がフル操業だった。いやな予感がする。今朝の網船の最初の漁場は、青灯近くの岸壁で釣りをする人々のすぐ前。チョイ投げすると届きそうな距離だ。「釣り人たちの心中や如何に」だ。私も地元の漁港で似た経験をしている。凪の日でハタハタの群れが岸壁からよく見えていた。我々は、右になり左になり、その移動する群れめがけて仕掛けの上げ下ろしを繰り返していた。そこに漁師が割り込んできて船から刺し網を仕掛けたから、必然的に網揚げまでは釣りは中断。ようやく引き揚げられた刺し網にはハタハタがズラズラと掛かっていた。が、後の祭りで、そこそこの集団だった群れは完全に姿を消してしまっていたのである。

 昨日は朝に続いて、夕マズメを狙って釣行。青灯側の岸壁は鈴なりの釣り人だが、水路には一人、二人。閑散としている。朝に竿を出した場所も空いている。即、そこに移動。朝は水路入り口からほど近いチョイ投げエリアでよくアタッタ。まず、そのエリアを攻めてみる。がダメで、沖目を狙っての遠投に切り替えだ。これが的中。ほぼ入れ掛り状態だ。そのうちに、隣に酒田から来たと言うおしゃべり好きのお父さんがやって来た。彼は足元狙いだったが、釣れないからと早々に帰って行った。
 次に、青灯側からの移動者がやってくる。私の釣れ具合を見て遠投を始めたが、立ち位置がちょうど投入時の私の仕掛けが舞う位置なのでご遠慮願う。遠投はやみくもにあちらこちらと投げているわけではない。探って、群れの居るポイントを見つけて、そこに集中的に仕掛けを送り込んでいる。隣に人が入ったからとて道筋を変えるわけにはいかないのだ。
 彼は私の釣れ具合が気になるらしい。後ろ向きで竿を出している私の周りで彼のヘッドランプの灯りが行ったり来たりする。本来、ヘッドランプは手元足元を照らす道具なのだが、真正面に向けて意気揚々とやって来るまぶしい釣り人に時々出会う。
 夕マズメも過ぎややアタリが遠のいたころに、二人連れがやって来る。それを潮に竿を畳む。25センチ超のメス一尾と、3年物主体のオス50尾の釣果だった。

 そして今朝。4時ごろから竿を出す。昨日の私の場所には先行者が居た。そして、盛んに上げている。仕方なく反対側へ。ハタハタがたまるポイントに遠投するかたちになるが、根掛かりが激しいので苦戦する場所だ。立て続けに2尾釣れて、以降立て続けに根掛かりで3組の仕掛けを失う。そこは断念して、別のポイントを探る。昨日釣ったポイント近くだ。反対側にいる先行者は岸寄りの根に近い辺りを攻めている。時々根掛かりするが上手に外している。若そうだがかなりの熟練者だ。やはりハタハタは藻場の近くに集まっている。これを攻略するにはかなりのテクニックと集中力が要る。私には難しい。
 
 結局安全地帯での釣りに終始して、3時間で12尾の貧果だった。私の側の釣り人は入れ代わりだったが私を入れて4人。先行者の側は2人。青灯側も昨日に比べたらダントツに少なくて20人ほど。ほとんど釣れていなかった。ここも一段落のようだ。


12月29日 我家のハタハタ鮓

 昨日で、一応2020年の私の竿収めとなった。移住後、その年の〆の釣りはずっと季節ハタハタだ。去年金浦で大釣りして、今年もそれを期待したが、ついに鰰神は微笑んでくれなかった。不徳の致すところである。一番の要因だが、常に釣り情報の収集は怠らない方だが、強欲に欠けるところがあるのだ。
 今年酒田北港に第一陣がやって来た時も、その日の夕方にはその情報をつかんでいた。本来なら徹夜覚悟で出かけるべきなのだが、私はそれをしなかった。行っていれば、ブリコ混じりで三桁の釣果は期待できたはずだ。私が釣りに集中できる時間は、釣れても釣れなくてもせいぜい3時間が限界だ。この時も、いつものパターンで、翌日の朝マズメ狙いとなった。夜通し釣って、全身がリズミカルな機械と化している先行者の隣に行っても、勝敗は明らかだ。大抵竿を出してから調子が出るまでには少し時間が要る。その間、隣との差に愕然として、「ああでもない、こうでもない」と考えすぎて迷路に入り込む。

 閑話休題

 一昨日、昨日と釣った季節ハタハタが5キロほどあった。それをハタハタずしに仕込んでいる。参考にしているんが下の写真の情報だ。

 このHPには、他にも秋田県の伝統食のレシピがいっぱい掲載されている。秋田県人で料理好きの私には見逃せない情報源だ。多くは保存食についてなので、どれも塩分が極めつき多くなっている。今は冷蔵庫、冷凍庫が普及しているから、塩加減だけは「俺流」としている。
 
 ①頭と内臓を取り、流水(水道)にさらしてヌルや血を洗い流す。ヌルはしつこいので、流水に晒す前に塩もみしておく。
 ②2日以上軽く重しをして塩漬けする。塩の量はHPとほぼ同じだ。
 ③塩出しは、まず手もみで表面の塩分とヌルを洗い流し、水を切った後酢につけて本格的に塩出しをする。時々酢をなめてみて、頃合いを見極める。酢につける時間はHPのレシピに従う。ただ、今年のハタハタは大きいので、中骨が柔らかくなるのを見極めながら時間を決めようと思っている。
 ④いよいよすしご飯の中に漬け込みだ。すしご飯の調整だが、塩加減はHPのレシピの1/3に減らしている。あとはレシピに準じる。漬けけ込む前にハタハタは一口サイズに切っておく。
 ⑤漬け込みだが、笹の葉を仕切りにして、すしご飯~ハタハタの切り身~すしご飯と、一層ずつ積み重ねていく。そして、最後に重しをする。日にちが経つと水が上がってくる。これを順次掬っては捨てる。
 ⑥一月ほど漬け込むと完成だ。我家のは塩分が薄いので、容器から出して冷凍庫に入れて保存する。
 

 あと俺流のアレンジは、すしご飯の作り方だ。人肌ぐらいに冷めたご飯に麹を混ぜて、炊飯器を保温にして5時間ほど置いておく。その間発酵が進むので本漬けも早く仕上がる算段だ。
 去年は隣近所におすそ分けして絶賛だった。今年のリクエストも来ているが、「今年は全然釣れない」と煙幕を張ってけん制している。

2023年01月05日

季節ハタハタ釣り苦戦日記(2020年)前編

11月28日

 秋田県水産振興センター(男鹿市)から、この24日に季節ハタハタ漁の予測が発表された。それによると、初日は12月3日前後の三日間となっている。昨年は11月24日となっていたから十日ほど遅れる予想だ。季節ハタハタ漁に先行して、すでに底引き網漁が解禁されているが、漁獲量は昨年比で1割程度と絶不調らしい。獲れるハタハタも1年魚が主体と言う。それに比べて山形県沖では3歳魚がほとんどで、それも例年以上に好漁が続いているようだ。


 秋田県水産振興センター(男鹿市)の発表は男鹿市周辺海域を対象とするもので、県南、庄内地区はそれから多少遅れる。去年の例だと、男鹿地区の季節ハタハタは予測から2日遅れて11月26日に来ている。県南の金浦、象潟は11月27日とほぼ同時だった。酒田北港も2~3日遅れでやって来ている。
 季節ハタハタは時化に乗じて大潮の滿汐に乗って深夜に接岸すると言われている。大潮前後の時化が狙い目だ。新群れに出会うなら未明を狙う方が確率が高い。昨年は暖冬で、未明でも道路が凍結すすることもほとんどなく、釣行はすこぶる楽だった。夜の雪道に車を走らせるときは神経を使う。今年は、道路事情が良ければ空振りでも情報が出る前から通ってみようと思っている。新群れに当たったときの快感は何物にも代えがたい。

 漁業予測から考えると、大型魚が期待できる庄内浜が狙い目だ。となると、酒田北港になる。地元漁港にも接岸する可能性はあるが、季節風がもろに吹き付けるのでなかなか竿を出せる日がないのが実情だ。鳥崎、女鹿は釣り場が狭すぎる。やはり、酒田北港の長い水路が一番安心だ。200~300人は竿を出せる。
 秋田県南地区だが、昨年は象潟と西目は立ち入り禁止だった。象潟はルールが守られて禁止場所に立ち入る人はほとんど見えなかったが、西目は二重三重の塀を乗り越えて、大勢の釣り人が入り込んでいた。やはり、県南なら昨年大釣りしたこともあった金浦が本命だ。まず、飛蚊港に来て、それから港嶋にもやってくる。昨年は、港内どこでも釣れた日もあった。
 本荘マリーナの混雑ぶりは常軌を逸している。安全な釣り場だし、駐車場も広い、そして毎年のように大群がやってくる。混雑さえ我慢できるなら一番の釣り場だ。しかし、私はまず行くことはしない。

 自製のサビキ仕掛けもほぼ作り終えた。船釣りのアジ、イサキ釣りに使った残りのハリなので大振りだ。これでだめなら市販のサビキにしようと思っている。ワーム仕掛けと餌釣りの仕掛けもほぼ揃っている。居残り組はこれで攻略だ。さ~て、初日を何時にするか、まだ決めかねている。

 昨日、酒田港のマイワシ釣りに4度目の挑戦。自製仕掛けの試し釣りを兼ねての釣行だった。しかし、スレたイワシは思惑通りには行かなかった。まず、天候だ。日が射していた。さらに、風がないために海面は波っ気なし。コマセに群がる魚たちが良く見える。と言うことは、彼らからもこちらが良く見えていると言うことだ。潮が動き出した時合には良型のイワシが突っ込んでくるもハリがかりしない。ところが隣のお母さんには良くかかるのである。イライラが募る。
 仕掛けをとっかえひっかえやってみたがいずれも不発。写真の通りの貧果。帰りにホームセンター(チャンピオン)に寄り、常連さんが教えてくれたミックス6号のサビキを購入。ミックス5号は売り切れだった。本当はそれの方がよさそうなのだがしょうがない。まもなくハタハタ釣りが始まる。酒田北港でのハタハタ釣りが不調な日に、これでイワシ狙いだ。


12月2日 季節ハタハタ釣りの情報源

 季節ハタハタ釣りの開始時期が迫ってきている。各地の情報が気になってしょうがない。そこで情報収集に励むことになる。我が釣友の多くはハタハタ釣りを釣りだと思っていない。ハタハタスズキは釣りに出掛けるがハタハタなどは眼中にないらしい。彼らからの情報は期待できない。いや、毎日のようにハタハタを釣りに行くなどと言いづらい。結局インターネットの検索だよりになってしまう。

秋田県県北
 ハタハタ釣りは秋田県の県北から始まる。秋田音頭にある「八森ハタハタ」の八森方面が最初だ。まずは、上州屋能代店の情報サイトにアクセスする。上州屋も、新聞社などと同様公器的要素が強いので釣り場に関してはボカした表現になるが、来たかどうかは読み取れる。

男鹿方面
 次にやって来るのは男鹿方面。この地域なら上州屋秋田店と外旭川店の釣り情報だ
 すごく参考になるのが男鹿の魚屋さんのHPだ。はたはた日記|はたはた通信社|男鹿海洋物産 。

秋田県県南
秋田県の県南地域は、上記の各情報プラス上州屋酒田店のHPから読み解く。

酒田北港・庄内浜
 そして、最後のランは酒田北港になる。以前は、トミヤマの情報が迅速かつそのものズバリで重宝していたが、店主が急逝してからは釣り情報のUPがなされていないようだ。そうなると、やはり頼みの綱は上州屋酒田店だ。ここは、個人あてに情報をメール配信してくれているらしいが、私は利用していない。

地方紙
 後は、ローカル紙だ。
 秋田魁新報はハタハタ好きの県民を抱えるだけに結構詳しい記事が掲載される。私には生まれ故郷の記事が読めるので毎日アクセスしている。
秋田魁新報電子版(さきがけ電子版)|秋田のニュース・情報サイト:
https://www.sakigake.jp/

山形新聞も酒田北港に新群れが入ると記事が出る。
やまがたニュースオンライン|山形新聞 :
https://www.yamagata-np.jp/


12月5日 秋田魁新報の連載ルポ

 新聞社の電子版は有料記事がほとんどを占める。それでも、各社無料会員の登録制度を設けていて、日経新聞は無料会員登録すると月に10本までは無料で読むことができる。
 季節ハタハタの記事では見逃せない秋田魁新聞も無料会員登録をすると一日に1本だけ有料記事が無料で読めるようになっている。
その秋田魁新聞に、ハタハタの本場秋田県ならではの記事が連載されている。「ルポ 季節ハタハタ」と題して、県内の主な漁場を直接取材している。これは目が離せない。

閑話休題

 昨日から餌釣りの仕掛け作りに入っている。3本バリの胴付き仕掛けである。ハリは秋田ソデ8号。ヤマメバリだ。ハリスは1号、幹糸1.5号。夜光パイプが残っていたので、チモトに差込んで使っている。餌はオキアミS。
 今年はケミ蛍も準備した。暗いうちは効果がありそうな気がする。昨年準備して使わなかったが「集器」も試してみるつもりでいる。随分昔になるが、カワハギ釣りで流行ったことがあった。つまるところは反射板で、貝や鏡面を持つ金属板を加工したもので、ヒラヒラと踊り、カワハギの好奇心を誘うというものだった。
 道具も心の準備も出来ているのだが、ハタハタはやってくる気配がない。強い季節風、横殴りの雪、そして雷、その後に季節ハタハタはやって来る。だが、今年はずっと穏やかな天気が続いている。


12月7日 男鹿相川漁港に季節ハタハタ第一号

今朝の秋田魁新聞の「ルポ 季節ハタハタ」の記事からの抜粋である。待望のニュースだ。

 凪が続いた日本海も、夕べから荒れ模様だ。秋田沖には海上風警報が出た。「いよいよかな」と思いながら眠りにつく。そして、今朝の秋田魁新聞の電子版を開くと「男鹿市北浦相川漁港の季節ハタハタ」の記事が。読み進むと、メスの三歳魚が1尾となっていた。期待が大きいだけに拍子抜けしてしまったが季節ハタハタ到来の予兆であることは紛れもない。胸が高鳴る。朝飯を食ったら、自宅から車で30分もすれば行ける秋田県県南の釣り場を覗いてみようと思っている。もちろん、季節ハタハタの釣り道具一式を積んでである。

 今年の季節ハタハタの道具入れは2個になった。一個はサビキ釣り用。もう一個は餌釣り用とワーム釣り用だ。移住早々購入したクーラーボックスに寿命が来て、一回り大きいのを新調した。これなら20キロはゆうに入る。車のトランクには青いコンテナが1個入れてある。後は、町のゴミ袋を何枚か入れれば準備OKだ。昨年の大当たりだった日には、クーラーボックス、布バケツ、町のゴミ袋各1個にパンパンに詰めて帰った。まだまだ釣れ盛っていたが、入れ物が無くて竿を畳んだ経緯がある。あんなことは年に1回あるかないかだが、それを夢見て今年は入れ物も余分に準備する。
 あとで思うのだが、どうも私にはハングリー精神に欠けるところがある。絶好のチャンスなのに、大抵「まあいいや」と途中で切り上げてしまって、とことんやると言うことがないのだ。山形からアジの徹夜釣りでやって来る二人組のうちの一人はハタハタ釣りにも執念を燃やす。水中集魚灯を装備し、昼夜なく、時を忘れて釣りまくる風だ。30キロ釣った、50キロ釣ったなどと平然と語る。私にはこの執着心がなかった。去年のことだ。2~3人しか釣り人がいないなかで、せっかく群れを見つけたのに雷がなりだしたのですぐ退散してしまった。大当たりの時も、入れ物がいっぱいだと自分を納得させて引き上げた。だが、今年こそは、チャンス到来ならとことん釣りまくるつもりでいる。が、自信はない。

 たくさん釣ってもタハタの処分に困ることはない。季節の野菜を頂く隣近所、家内の体操仲間、秋田県内陸部にいる中学の同級生、親戚へのおすそ分け、そして、ぬか漬け、鮓などの保存食つくり。放精したオスは開いて天ぷらやフライにすると結構いける。面倒だが、開いて冷凍しておくとこれも大事な食材になる。特にお薦めなのがぬか漬け。糠~ハタハタ~塩+ザラメ+唐辛子~糠~・・・と重ねて樽に漬け込む。一月もすると、発酵の力でうまみ成分が増し、水分が適度に抜け味が凝縮し、絶品となる。


12月8日  西目漁港でも水揚げ

 西目漁港と男鹿方面で季節ハタハタ初漁 

 12月6日西目漁港で季節ハタハタの初漁があった。量はわずかで1.2キロほど。斥候隊だ。それでも、2歳魚、3歳魚と大振りで期待が膨らむ。12月7日には男鹿でも季節ハタハタが上がった模様だ。いよいよシーズン開始も間近に迫っている。
 昨日あたりからここ庄内の海は時化ている。陸ではそれほどでもないが、沖合はかなり強い季節風が吹いているに違いない。季節ハタハタは体を持って行かれそうな強烈な季節風と一緒にやって来る。毎年、横殴りの雪を顔に受け、水っぱなをすすりながらの釣りになる。

 狙いは、12月14日前後か

 気になるハタハタ起こしの季節風だが、天気予報は12月14日(月)から雪混じりの強い季節風が吹き始め、12月18日(金)までそれが続くとなっている。潮回りも良い。12月14日から16日までが大潮。本隊が接岸する確率は極めて高い。
 先発隊は、その前から接岸する可能性があり目が離せない。


12月9日 象潟、金浦漁港を覗いてみれば

 象潟漁港
 西目漁港で、わずかだったが季節ハタハタの初漁があったので気になってしょうがない。昨日の夕方、秋田県県南地区の漁港の様子見に出掛けてみた。家を出たのが午後4時ごろ。すでに車のスモールランプが自動で点灯する暗さだった。象潟までは20分ほど。水路の東側に出る。小型重機が護岸の内側に置いてある。水路の入り口は、両側とも護岸工事中だった。灯台の前のあたりには例年通りロープが張られたらしく、ブイが点々と水面に浮かんでいる。沖は暗くて網が入っているかどうかは分からなかった。港内をぐるりと回り、灯台側への通路に出る。障害物がガッチリと道をふさぎ、そこに立ち入り禁止の看板が貼りつけてある。昨年に続き、今年も灯台周りの一級ポイントには入ることができないようになっていた。
 この近くで、何年か前に漁業関係者と立ち話をしたことがあった。季節ハタハタの時期になると、波止はサビキの残骸、サビキの台紙、空き缶、空き瓶、食べ物が入っていた袋などで足の踏み場も無くなる。そのために、毎日のように掃除をしていると言う。また、乱雑に停めてある車は漁師の通行に支障をきたしているとも言う。これは何も象潟漁港だけの話ではない。どこの港も同じような状況だろう。
 空にカモメの姿を探したが、たまに視界を横切るだけだった。

 金浦漁港
 昨年、ここ金浦漁港には一時大群が入り込んで大盛況が続いた。私も3時間ほどで数百匹も釣り上げる。これは自己最高記録だった。この時は、まだ釣れ盛っているのに、あまりの猛攻に飽きてしまって、途中で竿を畳んだような次第だ。
 港嶋に着いた時にはもう辺りが暗くなっていた。水路の対岸にヘッドランプを点けて移動しながらシャクリを繰り返している釣り人が一人いた。様子をみるもハタハタは掛かってこない。私が車を停めた並びに5台他の車が停めてあったが、竿を出している人は他に見当たらなかった。漁協の方に行って見る。駐車を規制する柵列が整然と並んでいた。竿を出しているような人影は見当たらなかった。
 飛文港には5~6台の車が停まっていた。車から出て立ち話をしているのが一組、竿を出しているのが一人、あとは車の中にいるらしい。ここの釣り人にもハタハタは掛かっていなかった。もう辺りは真っ暗で、これから西目漁港に向かうには遅すぎる。ここでユータンだ。

 去年の西目漁港は、沖の潮がぶつかる一級ポイントの波止が立ち入り禁止になっていた。それでも、二重三重の防護柵を掻い潜り、数十人を超す釣り人が入り込んでいた。おそらく、今年も立ち入り禁止の柵は撤去されてはいないだろう。漁業者側の気持ちもわかるが、年に一度の祭典だ。隣接して広い空き地があったりする。そこを臨時の駐車スペースにして漁業者の邪魔にならないようにするとか、両方に良いようなやり方はないのだろうか・・・。もちろん、我々釣り人のマナーの向上が大前提だが。


12月10日 待ちきれずに二度目の釣り場巡り

朝食を済ませ、季節ハタハタ釣りの道具一切を積み込んで秋田県県南地区の釣り場へと向かった。

 象潟
 水路入り口東側の路上に車を停め、写真を撮る。灯台の沖で季節ハタハタ漁の船が一隻操業中だった。例年盛期には空に夥しい鴎が群舞する。今朝はカモメの姿がない。

 水路の入り口付近は両側とも護岸工事中だ。車を停めた東側には作業員の姿がなかったが、向かい側には作業員の姿があった。

 漁協を通り過ぎて灯台側へ通じる路を辿ると障害物が道をふさぎ、立ち入り禁止の大きな看板が立っていた。

 金浦
 港嶋の水路を跨ぐ橋のたもとに車を停めたら、ちょうど若者4人組が竿を片手に帰ってきた。季節ハタハタの影も形もなかったようだ。
橋から港内を見渡しても釣り人の姿はなかった。

 飛蚊港にはシーズンインを思わせる車が並び、波止には30~40人の釣り人の姿も。しかし、竿は出しているものの大抵は置き竿にして談笑だ。傍にいた釣り人に聞くと「昨日は午後に釣れた」らしい。「今日は誰にも釣れていない」と言うことだった。波止に沿って海中をのぞき込んで歩いたがハタハタの姿はどこにもなかった。ハタハタは潮の流れに乗って港内に入ってくるが、潮は全く流れていなかった。
 帰路に再び覗いてみた。午前10時半ごろだった。人数は朝の半分ほどに減っていた。依然として魚が釣れている様子はなかった。

 西目
 三重の防護柵が設けられ、立ち入り禁止の看板がある波止は人っ子一人見えなかった。港内も無人だ。

 本荘マリーナ
 まばらだが釣り人の姿があった。大抵は車の中で様子見だ。まだ季節ハタハタは姿を見せていない。


12月11日 金浦漁港で竿を出すも

 今朝は2時に目覚めて、床の中で季節ハタハタ釣りに出掛けるかどうか思案をしていた。ところが、屋根に叩きつけるような雨の音が。これではしょうがない。諦めて布団に潜り込む。
 そして先ほど、いつものように電子版の秋田魁新聞を開いてみる。ハタハタの本場のローカル新聞だけあってルポ季節ハタハタの記事には力が入っている。今朝は心躍る記事が掲載されている。
 10日の状況だが、西目で270キロ、金浦60キロの水揚げとあった。本隊が来るとトン単位の水揚げになるので、まだまだ斥候隊、先発隊のレベルだが、朗報だ。9日には象潟でも3キロの水揚げがあった。秋田県南地区は、いよいよ本番間近だ。今日は朝飯を食ったら出掛けるつもりでいる。
 それにしても気になるのが「新型コロナ」だ。ハタハタ釣りは「密」の典型だ。肩幅間隔で割り込みが入るから、屋外だからと安心してはいられない。それに、日曜日ごろまでは風もほとんど吹かない予報だ。釣りの最中はマスクを着けるようにしようと思っている。そのマスクだが、使い捨ての不織布製のものは水分を吸収してくれないので使っているうちに濡れてきて冷たくなる。吸水性が良い家内手作りの布製マスクを着けるつもりだ。
 昨日の釣り場巡りではどこでも釣れていなくて竿はださずじまいだった。さて、今日はどんなことになるやら。

秋田魁新聞12月11日版から転載

追記:
 ボウズで、金浦から先ほど帰宅。今朝は、地元のおっちゃんもおばちゃんも姿が見えなかった。ハタハタの季節になると顔を合わせる象潟の住人がいた。一昨日は釣れたが昨日はダメで、今朝も気配がないと言う。一昨日は、大きいのは30センチ近いのもあったと、ドキドキするような話をしてくれた。駐車スペースの近くの人々は立ち話だ。竿を出しているのはわずかに二人だけ。象潟の住人は早々に引き上げていった。私は潮が差してくるのを期待して待つも、海面に変化なし。7時半ごろに竿を畳む。

2023年01月03日

目出度い(タイ)話

  2010年10月11日

この日の第1投。いきなりだった。左舷のI氏(持ち船のオーナー)に2キロ級のマダイ。

続いて、同じく左舷ミヨシのSさんに良型のアラカブ(カサコ)。

そして、再びIさんに小ぶりのマダイが。

またまた、Sさん良型のカサゴを追釣。

で、不調をかこっていた私に、中層で、ドラッグを滑らせるほどの重量感が。

これは、釣り師炊煙の的・アコウ(キジハタ)

700~800グラム級のイトヨリがポツポツと。

最後の流しで、Tさんに名物「のもんアジ」が。

本日の釣果はご覧の通り。

I氏が経営する茂木の料亭で、早速宴会です。

ノモンアジの姿造り

アコウとマダイのお造り

マダイの兜焼き

あら炊き

 茂木の海が窓越しに見える内風呂で塩っ気を落とし、見事な器に盛られた板前料理を食し、美人女将のお酌で至福の時が過ぎてゆく。

 Iさんは電気工事会社を自ら立ち上げ、長崎有数の企業に育て、数年前に息子に社長を譲り、今は会長だ。事務所には、さりげなく、故安倍総理とのツーショット写真が飾ってあった。

 Tさんは当時大学教授。国の産学連携事業でご縁が出来て、私的な交流も続いた。今は、故郷滋賀に戻られたと聞いた。長崎時代の忘れられない方々である。

2023年01月03日

季節ハタハタ釣り苦戦日記(2019年)後編

12月9日 酒田北港 ~ 金浦漁港 ~ 象潟漁港

 昨日は、午後3~4時ころ、酒田北港~金浦~象潟と偵察に回ってみた。まず、酒田北港だが、数人が竿を出していた。しかし、釣れている気配はなかった。次いで金浦港へ。港嶋の駐車スペースは今日も満杯だ。釣り人たちだが、港口に集中している。前日と違って、水路、本港内は閑散としている。本港口に並んだ釣り人たちは熱心にシャクリを繰り返すも、ハタハタはまったく舞わなかった。
 漁協の建物の後ろを通り抜け、飛蚊港へ向かう。漁協前の岸壁には肩幅間隔でかなりの数の釣り人が並んでいた。一時は釣れたのかもしれないが、通りかかった時は誰にも釣れていなかった。飛蚊港は北側の岸壁に4人ほどの釣り人が見えた。釣れていそうもないで手前でUターンする。

 帰路は、素通りした象潟港を覗いてみた。路上には車が連なり、水路の東側には肩幅間隔で数十人を超える釣り人が並ぶ。水路の入り口側よりは水路が尽きて船溜まりになる港内側寄りの方が頻繁にハタハタが舞う。足元ではなく、チョイ投げと遠投で遠目を狙っている。この辺りのポイントはカマスのそれと一致する。魚の群れが滞留するところのようだ。まだ、象潟はいけそうだと思いつつ竿を出さずに帰路に就く。

 そして、今朝、金浦港へ直行。夜中は釣り人の数が少ないのでマイペースで楽しめる。午前3時半ごろ着くと、すでの港嶋の駐車スペースに結構な車が停まっている。それにしては竿を出している人数が少ない。その彼らだが全く釣れていない。どうも大半は車の中で様子見のようだ。
 早々に見切りをつけて、昨日釣れていた象潟港へ。水路東側では20人を超える釣り人が竿を出している。しかし、しばらく見ていたが誰にもハタハタは上がらない。路上駐車の車の数は20台などと云うものではないから、他は車の中で様子見のようだ。ここも竿を出さずに、酒田北港へ向かう。

 酒田北港では、先日1尾釣れたと写真付きで某釣具店のHPに情報がupされていた。火力側の防波堤ではルアー釣りらしい釣り人が数名竿を振っていた。水路に並行して走る道路沿いの駐車スペースにはポツンポツンと車が停まっている。いつものポイント付近に車を停める。付近には4~5台の車が停まっているだけだ。しかし、実際に竿を出しているのは二人だけ。そのうちの一人に様子を聞いてみる。全くダメらしい。彼も、某釣具店の1尾釣れたの情報に誘われてきたと云う。もう一荒れしないと期待出来そうもない感じだ。


12月10日 仕掛けづくりも、また楽し

見てくれはあまり気にしない。人間の見てくれと魚の見てくれは違う。

釣りの楽しみの一つに仕掛けづくりがある。私は船釣りが多かったから仕掛けは自分で作るのが習慣だった。スポーツ新聞の釣り欄に竿頭としてたまに名前が出るのが嬉しくて随分と工夫したりした。釣果と仕掛けの関係は明らかにある。もちろんその仕掛けにあった使い方も含めてだが。
 
 今季の季節ハタハタ釣りは、ずっと自前の仕掛けを使い通している。実は、自製の仕掛けはその前から使っている。この秋のアジ釣りからだ。吹浦漁港も釣り人の数が増えて思うようにポイントに入れなくなっている。混雑する前はマズメ時の1~2時間を足元で釣るやり方をしていた。これでいい時は40~50尾も釣れた。しかし、その場所がいつも塞がるようになってカゴ釣りに変えた。そのカゴ釣りも、今季から特に混雑し始めて、ポイントに立てない日が多くなっている。それまでは多くても3~4人だったのに。
 しかし、釣り人が増えるといいこともある。人それぞれいろんな釣り方をする。その中には釣果をげるための結構ためになるヒントがあったりする。秋田エリアのサビキがそうだった。ライバルが増えると仕掛けやコマセの撒き方、誘い方などで釣果に差が出てくる。この秋田エリアのサビキがそうだった。私は大抵一個100円程度の安サビキを使っていた。ところがこの秋は、このサビキにはアジが食ってこないのだ。そこで結構な数を買い込んでいた安サビキを、秋田エリア風に改良してみた。そしたら、これが的中して人並みに釣れ始めたのだった。たしかに、フラッシャーなしの白スキン巻きはアジの食いが良い。

 さて、ハタハタ釣りの仕掛けだが、去年は渓流バリを使った餌釣りで釣果を上げた。去年の酒田北港は一月の半ばまで居残りのハタハタが釣れた。毎日のように夜明け前に竿を出し、9時ごろには竿を畳むパターンを繰り返した。朝マズメは活発に餌を追うらしく束釣りもあったりした。
 今季は餌釣りを主体にと考えて餌釣りの仕掛けを事前に準備しておいたが、金浦で始まった爆釣は餌付の手間が要らないサビキで十分だった。そこで、秋田エリアからヒントを得たサビキを考案して自製してみたのである。

 釣りに行ったら釣れている人の動作や仕掛けの観察は必須だ。前々から気になっていたのがハリだった。良く釣れているのは矢島型なのだ。そこで、昔アユの転がしに使い道具箱の隅に残っていたハリ(単バリ)を持ち出して、フラッシャーと白スキンで巻いてみることにした。1セットが5本バリ、そのうち2本はフラッシャーなしにした。フラッシャーなしのハリは軸が長いキスバリだ。いい群れにあったのが一番だが、爆釣モードに、今季はずっとこの仕掛けを使い続けている。
 矢島型のハリだが、元々スレで釣る用途に開発されたハリだ。ハタハタ釣りはスレで釣ることになるので理屈は合っている。しかし、それだけではない。魚は外しやすいし、返しがないので着衣などに刺さった時でも簡単に外すことができる。

 実際使ってみての感想だが、掛かり具合についてはキスバリも矢島型も大差がなさそうだ。居つきの群れには食わせ釣りが有効だが、これにはフラッシャー無しのキスバリ(下から2番目という位置も関係ありか?)に分がありそうだ。なんやかんやで、年金爺の頭の中はハタハタ釣りのことでいっぱいなのである。


12月11日 金浦漁港 ~ 象潟漁港 ~ 酒田北港

 昨日も竿を出さずじまいだった。午後の上げ潮に合わせて金浦、象潟に行ってみた。まず、金浦港嶋に車を停めたが数日前とは様変わり。停めてあるある車は10台にも満たない。そして、実際竿を出している人は数人。その彼らだが、まったく釣れている気配がない。他は車の中で様子見だ。凪の水面を覗いてみるも魚影はない。もう、帰ってしまったようだ。

 漁協を通り抜け、飛蚊港に向かう。漁協前でも釣り人はパラパラ。ここも釣れている気配はない。飛蚊港には20人ほどが竿を出していたが、ここも釣れていない。
 早々に退散して象潟に行ってみた。ここも閑散としている。水路脇には季節ハタハタ漁の網が揚げてあった。もう、季節ハタハタ漁は終わりか・・・。そのまま7号線を南下し、酒田北港へ。火力側の防波堤にずらりと車が停まっている。いよいよ来たかと胸が高鳴るも、誰にも釣れている気配がない。それ以前に釣れた時もあったのか・・・?しかし、釣り上げただろうハタハタの姿はどこにもなかった。そこを通り過ぎ、水路を覗くも2~3人が竿を出しているだけ。これも釣れていない。竿を出さずに退散だ。

 そして今朝、午前4時半ごろ酒田北港について様子見を。火力側にも水路側にも釣り人は数えるほど。どちらでも竿を出さずに車の中で様子見だ。水路に降りてヘッドランプの光で水中を覗いてみる、凪なので水中の様子がよく見える。ハタハタが居れば直ぐ分かる。100mほど歩いてみたが、たまに見えるのは小フグだけ。早々に退散だ。

 昨日は、鮓にしようと下漬けしてあったハタハタ10キロほどを本漬けにした。ブリコが7割ほどの贅沢なハタハタ鮓だ。正月ごろには漬け上がる。美味しく漬け上がるといいのだが。


12月12日 地元漁港

 いつものように早起き。釣りの身支度を終え、夜中のコーヒーを飲んでいると激しいい雨音が聞こえてきた。雷も鳴っている。ハタハタ起こしの嵐は金曜日ごろと記憶していたのに・・・。すぐに、お気に入りに登録してある天気予測のサイトにアクセスしてみる。冒頭に赤字で暴風の文字。おらが庄内地方には暴風警報が出されているではないか。終日西の風7~8m、10mの時間帯もある。これは期待できそうだとニンマリ。季節ハタハタは時化に乗じてやってくる。酒田北港の偵察は夕方にのばそう。
 
 昨日の地元吹浦漁港の様子である。朝と午後の上げっぱなに偵察に出掛けた。もちろんハタハタ釣りの道具一式携えてだ。防波堤の上にはハタハタのブリコ交じりのカモメの糞がわずかに残されている。ハタハタがやってきたかもしれないだ。しかし、本体ではなさそうだ。
 例年、ここの防波堤は、2、3回はブリコ交じりのカモメの糞で埋まることがある。こんな時は確実に群れが入ってきているはずなのだだが、風も大波も遮る所がないので釣りにならなず、見送るしかないのが実情だ。しかし、たまにだが、時化後にウソのような凪が訪れ時があって、波が収まった水面から海中のハタハタの群れを覗き見ながら釣ることができたりする。

 午後に行った時はカモメが数十羽ほどに増えていた。いよいよ期待を持たせる光景だが、あちらこちらと探り釣りをしてもハタハタは姿を見せなかった。ルアー釣りも低調で、十人ほどいる中で大サバが一尾上がっただけだった。吹浦漁港は第三堤防が延長されてから沖の潮が近づかなくなっている。そのためイナダのナブラを近くでほとんど見ることができなくなってしまった。砂防工事としては成功でも、我々釣り師にはなんとも残念な結末だ。そのせいかハタハタも、その工事以来釣れていない。
 
 ちょうど近所のSさんが岩ノリ採りをしていた。もちろん、Sさんは海藻採りの鑑札を持っている。今年は異常なほど少ないそうだ。たしかに、例年なら波しぶきがかかる防波堤の平らな所にも岩ノリが付く。今年は、その気配さえない。
 その彼が、もらったものだと魚の入った買い物袋を見せてくれた。アブラッコとソイが5~6尾入っていた。昨日も顔を合わせた穴釣りの釣り人がくれたと云う。今の時期、波が静かな日は穴釣りも面白い。たまにだが良型のアイナメも混じったりする。

 そんなわけで、酒田北港はこの時化後に期待と云ったところだ。


12月13日 酒田北港 ~ 象潟漁港 ~ 金浦漁港

 昨日の海は荒れに荒れた。地元吹浦漁港でさえ大波が防波堤を超えて、いわゆるナイアガラの様を呈していた。これがハタハタ起こしと言われる気象だ。時化に乗じてやってきたハタハタの群れが接岸し、打ち寄せる波間に無数のカモメが突っ込む姿を見るのもこんな日だ。しかし、吹浦漁港では一羽のカモメも飛んでいなかった。

 今朝も早起きして偵察に出掛ける。季節ハタハタは夜の大潮の上げ潮時に接岸すると言われている。ここ2、3日は、まさに絶好の条件だ。偵察を怠るわけにはいかない。まずは、酒田北港へ。大時化の時は火力側の道路を通ると潮を被ることがある。高速入り口の交差点から入って行く。水路に沿った駐車スペースはガラガラだ。いつも駐車する場所には、着いたばかりらしい車が一台停まっていただけ。他に釣り人がいないので竿を出さずに様子見とはいかない。自分で竿を出してみた。少しづづ場所を変えて探ってみるも、どこも気配がない。もう一人の釣り人にもアタリはなさそうだ。早々に道具を仕舞い、象潟、金浦方面へと向かう。

 象潟の水路近くの路上には4台の車が駐車していて、竿を出しているのは二人だけ。全く釣れていない。ここもパスして金浦へ。港嶋の駐車スペースには数台の車が泊めてあった。しかし、竿を出しているのは遠く灯台の近くで一人だけ。しばらく眺めていたがケミライトのグリーンの光はただ上下を繰り返すだけだ。手前の水路で試しに竿を出してみたが、まったく気配がなかった。早々に竿を畳み、飛蚊港に。北側の駐車スペースには10台に満たない車がパラパラと停まっていたが、竿を出しているのは2、3人。全く活気がない。すぐに諦めて帰宅した。午後の上げ潮時に、もう一度酒田北港へ行ってみようと思っている。

追記:
 酒田北港の季節ハタハタは、午後の上げ潮にも乗っては来なかった。水路沿いには待ちわびる釣り人たちの車が50台ほど駐車していたが、実際に竿を出しているのはほんの数人。後は様子見。誰にも釣れていなかった。


12月14日 酒田北港 ~ 袖岡ふ頭 ~ 地元漁港

今朝も夜明け前に酒田北港へ行ってみた。土曜日の割には車の数が少ない。水路のいつものポイント付近で竿を出しているのは二人だけだった。降りて行き、そのうちの一人に話しかけてみた。まだ若い人だった。まったく釣れないと言う。そして言うには、象潟、金浦を回ってきたが、金浦では一部で釣れていて、象潟はまったくダメだったらしい。釣れていたなら何で移動してきたのかと気になったが、混んでいたとも話していたから、そのせいかもしれない。

 実は、昨日から始めたのだが、北港がダメだったら袖岡ふ頭のイワシを釣るべく、コマセを用意してあった。そこのイワシだが、半年近いロングランが続いている。昨日は、コハダとイワシが各10尾ほどと振るわなった。時化の直後で、潮が濁り条件が悪かったようだ。
 そして、今朝、まだ暗いうちから竿を出してみる。他に3台駐車していたが、彼らは車の中で様子見だ。やはり、暗いうちはイワシの回遊が無い。明るくなり始めたころからポツポツ掛かり始める。そのうちに三人が加わったが、一人はやおらタモを水中に突っ込んで掬いの態勢だ。水面にコマセを一つまみ投げ込み、それに寄ってくるイワシをタモで掬うのである。これが、結構効率が良くて、5~6尾も入ることがある。聞けば、良い時は一度に数十尾も入るという。今日は不調だと引き上げて行った。
 明るくなるにつれだんだん釣り人が増えてきて、と言っても10人ほどだが、イワシの回遊も活発になった。コマセを撒くと10~20尾の群れで代わる代わる押し寄せてくる。しかし、なかなかハリには食いついてくれない。それでも10~20センチ級を30尾ほど釣り上げた頃、隣の釣り人に電話がかかってきて、釣れ出したとつぶやいて急いで竿を畳み始めた。どこで釣れているかは言葉を濁して教えてくれなかったが、気になって私も竿を畳む。大浜ふ頭、酒田北港と覗いてみる。しかし、どちらでも魚が釣れている気配がなかった。やむなく、帰宅の途に。
 
 帰宅間際、気になって地元漁港に寄ってみる。大時化だ。大波が堤防を越えて内側に流れ落ちて来ている。帰りかけた時、遠くに一人堤防の上で気になる動きをしている釣り人が目に入った。明らかにハタハタが釣れている動きだ。道具一式を抱えて行ってみる。やはりハタハタだった。
 クーラーを覗かせてくれたが、30尾ほど入っていた。食いが一段落した時だったようで、彼は入れ替わりに帰って行った。移動しながら群れを探す。程なくして待望のアタリが。3年物のメスだった。その場所中心に攻める。ほぼ入れ食い状態だ。それもほとんどがメス。新群れだ。会心の笑みが湧く。そのうち、夫婦者がやってきて隣で釣り始める。彼らも好調だ。しかし、程なくして体が持って行かれるほどの突風が吹き始めて、泣く泣く竿を畳む。駐車場に戻る前に雨まで降り出した。予報通りだ。今日の午後から明日いっぱいは悪天候が続くとなっていた。

 帰宅し、釣った魚の処理をしながら天候の回復を待つも、近くで雷が頻発するし、雨脚も一段と強くなるばかりだ。断念するしかない。おそらく、明後日に行っても群れがとどまっている保証はない。釣り人にとっては不運だがハタハタにとっては幸いな天気具合に、なぜかホッとしている部分もあったりする複雑な心境だ。


12月15日 酒田北港

 午前4時ごろ酒田北港の水路脇に車を停める。いつも竿を出す南から数えて2番目の風車付近は肩幅間隔で釣り人が並び全員爆釣モードだ。竿を出す余地がない。ヘッドランプの灯りが延々と続く。最盛期の賑わいだ。水路には昨日の夕方ごろ新群れが入ってきたらしい。徹夜組だろう。大抵の大型クーラーが7~8分目埋まっている。
 
 私も空いている外れた場所で竿を出してみた。先行した両隣は入れ食いなのに、こちらはなかなか当たらない。ペースをつかむまで結構な空白時間があった。サビキを変え、釣り方を変えて何とかペースをつかむ。しかし、両隣並みとはいかない。何かが違うのだ。じりじりしながら2時間ほど釣って竿を畳む。後で数えたら30尾ほど釣っていたが、メスは一尾だけ。

 大混雑なので一級ポイントには入れないが、ハタハタは広く釣れているので、欲を出さなければそこそこは楽しめそうだ。


12月17日  とっておきの場所(地元漁港)で、ひっそりと

 我家には業務用の冷凍庫が一台あるが、これがハタハタで満杯だ。よせばいいのだが、それでも、また出かけてしまう。だからこれから釣ったハタハタは保存食にするしかない。まずはハタハタ鮓だ。金浦で大釣りした時のハタハタを使う。ブリコハタハタを7割ほど使った贅沢な鮓だ。甘酸っぱいブリコは絶品の肴になる。大樽一つの他にに、味噌が入れてあったプラ容器に一つを漬けた。コメ、麹を入れると10キロほどはあるはずだ。

 以下は12月6日のことである。

 残念ながら100%オスだった。

 今仕込みを終えたのはぬか漬け。とっておきの場所で、早朝と朝食後の各3時間ほど竿を出し100尾ほど釣ってあったものだ。酒田北港が爆釣だという情報は入っていた。しかし、あえて別の場所で釣ったハタハタだ。酒田北港のあの混乱、混雑ぶりにはどうしても違和感と怖じ気を感じてしまう。できるなら、そんなところには行かないで、たいして釣れなくても別の場所で釣りたい思ってしまう。
 この日のとっておきの場所は水深1.5mほどの何の変哲もない場所だ。早朝はサビキの食わせ釣り。朝食後は餌釣り。ハタハタ釣りは私のほかは一人いるだけだった。彼とは顔なじみだから適当な距離感が保たれていてストレスがない。人間関係の要諦は距離感。酒田北港や本荘マリーナのハタハタ釣りは、これを逸脱しているから違和感を感じるのだ。

 さて、ハタハタのぬか漬けだが、今は無いお袋は毎年漬けていたような気がする。しかし、これは塩辛くて子供の口には美味いものではなかった。だが、今になると懐かしい、郷愁の味だ。2、3日濃いめの塩で漬けてから、あらためてぬか床に漬けていく。重ならないようにハタハタを並べては糠を被せ、さらにその糠の上にハタハタを並べて糠を被せることを繰り返す。糠には適量のザラメと鷹の爪を混ぜる。2、3週間で漬け上がる。

 追記:

 今朝も午前5時ごろから、とっておきの場所で竿を出してみた。今日は初めから餌釣り。ヘッドランプで水中を覗く。昨日に比べたらかなり潮色が良くなっていて、水中の様子が見える。岸壁沿いに歩き回ってみたが、ハタハタの群れらしい影はない。とりあえず、昨日釣れたポイントに餌を落としてみる。なかなかアタラナイ。ようやく10投目を過ぎたあたりで待望の1尾目。しかし、その後もアタリは遠い。広く探り歩いたが1時間ほどで4尾の貧果。ハタハタはいなくなってしまったようだ。
 防波堤の外側の波も収まってきた。そちら側に群れで接岸する可能性は高い。時々、様子見に行ってみるつもりでいる。

 さて、爆釣続きの酒田北港だが、昨日TVで釣りの様子が放映されたという。今日の混雑模様が目に見えるようだ。酒田への買い物ついでに覗いてみるつもりでいるが、釣り道具は一切積みこまないと決めている。


12月18日  とっておきの場所

 とっておきの場所などともったいぶっているが地元の漁港の一部に過ぎない。ハタハタの群れが付く場所の何か所かは分かっているが、まだまだここは未知の釣り場だ。遮るものがなくて、暴風も大波ももろにぶち当たるから、カモメが騒いでハタハタ襲来を告げても、釣りにならない日が多いのも、この秘密の場所の泣き所だ。

 昨日は、探り当てた唯一の場所が不調だった。100尾も釣れば居なくなるぐらいの居つきのハタハタだったに違いない。捕れたのはオスばかりだった。しばらく居ついてメスの到来を待っていた連中かもしれない。

 その場所に午後4時ごろ再び行ってみた。と、先行者が二人いるではないか。場所は少し違うが、そこも過去に実績のあるポイントだ。遠くからでも釣り人の動きで釣れているいないは分かるものだ。ひっそりと他人のいない入れ食いタイムを楽しんでいるのが彼らの一挙手一投足にありありと出ている。近づいて、「入ってきているな~」と声をけてみるも、全く無視されてしまった。若者たちだった。邪魔者が来たなと云う敵愾心がむき出しだ。気持ちは分かるが・・・。
 ここは石が入っていて手前は根掛かりが激しい。彼ら二人はワーム釣りだ。この場所ではよい選択だ。私はサビキのチョイ投げで、まずはやってみる。しかし、アタラナイ。すぐに車まで引き返し、5.3mの磯竿を持ってくる。これで餌釣りだ。水深は1mもない。読み通り、ハタハタが順調に食いついてくる。
 しかし、ハタハタが掛かって竿を上げると出ている糸の長さが竿より短いのでハタハタははるか頭上でヒラヒラと舞う。足元は石積みだから不安定だ。竿を倒し、ハタハタを外す時、油断するとオモリが石と石の隙間に入って取れなくなってしまう。一苦労だ。
 午後5時のチャイムがなったら途端に食いが落ちて、15尾ほど釣って納竿。ワーム釣りの彼らからもアタリが遠くなったとボヤキが聞こえてきた。
 
 爆釣中の酒田北港の様子だが、昨日の昼頃、買い物帰りに寄ってみた。火力側の砂防と水路の火力側(北側)入り口付近で爆釣中だった。路上には片側駐車の車がびっしり。相変わらず肩幅間隔に並んでの釣りだった。


12月19日 酒田北港 ~ 地元漁港 ~  鳥崎旧漁港跡

 秘密の場所(地元漁港)が低調で今朝は酒田北港へ。水路に車を停めたのは午前4時ごろだったが、一級ポイント近くの駐車スペースは全部塞がってしまっていた。水路をのぞき込むと延々とヘッドランプが並ぶ。降り口近くに一人分のスペースが空いていた。そこで竿を出す。両脇はすでにスーパーの買い物かごにびっしりとハタハタを釣り上げている。右隣はコマセ袋らしいものを水中に沈めて連釣モード。期待して竿を出すも、私にはまったくアタラナイ。サビキ、餌釣りと変えてみるのだが状況は同じだ。左隣にもたま~にだが掛かってくる。釣れないのは私だけ。いたたまれなくてボウズで早々に退散する。

 自宅に帰りいつもの時間に朝食を取り、9時ごろに秘密の場所へ。岸壁に沿って、サビキ仕掛けを上下させて港内、港外とも広く探ってみたが全くアタリなし。ワームで好調に釣れていたポイントに戻りウキ釣りを試してみる。ここは根掛かりが多い。苦肉の策だ。しかし、ここも全く反応がない。
 100尾ほど釣った実績のポイントでもウキ釣りを試みる。幸先よく一投目で一尾が掛かったが、以後は沈黙が続く。そこに、地元のD氏がやって来て、鳥崎で上がっていると言う。即、移動。

 連釣中の4人の先行者の一番端に入れてもらう。ここも根掛かりの多い場所だ。まずはウキ釣りでやってみる。しかし、クサフグが邪魔をして釣りにならない。2尾釣って、サビキ仕掛けに変える。足元の浅場にも時々ハタハタがやってくるのが見える。ハタハタは確実に入ってきている。しかし、なかなかペースが掴めない。大釣りして帰った先行者の後に入ることができたがそれでも変わらない。さらには、たまに掛かったハタハタの数より根掛かりで無くしたハリ数の方が圧倒的に多い。
 またの根掛かりを機に納竿。10尾ほどの貧果。1mほどしか離れていない隣はほぼ入れ食い状態を続けている。その隣も、その隣もまずまず。その隣一番端っこの釣り人はほぼ私と同じペース。腕じゃない場所だと思いたいのだが・・・。
 
 鳥崎のポイントは、4~5人でいっぱいになるほど狭い。昔の漁港跡で、足元は不安定だし、出口近くは波をかぶるのでお勧めできる釣り場ではないのだが・・・。

2022年12月28日

季節ハタハタ釣り苦戦日記(2019年)前編

 11月24日 季節ハタハタ漁の予測発表

 今朝の魁新聞(秋田県のローカル紙)に待望の季節ハタハタ漁の予測記事が掲載された。それによると11月24日を挟んで前後3日間と早い予測になっている。これは史上まれな早さらしい。例年通り12月10日前後と予測して備えていた私は、急遽今日は仕掛けづくりに充てることにした。ここ2~3日ハタハタ起こしと言っても良いような猛烈な季節風が吹き荒れている。これに雷が伴えば確実に季節ハタハタ漁モードだ。

 準備は、段ボール箱に乱雑に投げ込んである春夏秋向けに作って余った仕掛け類をまず片付けることから始まる。古いリールも何組も入っている。どっか具合が悪くて実戦から遠ざけてあるものだが、捨てきれずにいるから、たまる一方なのだ。ルアーも結構な数が投げ込んである。手入れが悪いからフックは大抵サビだらけだ。

 今期は餌釣りを主体にするつもりだから、アジの餌釣りに使った仕掛けは流用できる。軸の長いキスバリもスキンを巻いて使うつもりでいる。餌釣りにはヤマメ袖バリ7~8号にハリスは1号~1.5号。ハリスは0.8号でも十分なのだが絡みが多くなるので太めにしている。幹糸は1.5~2号。これも絡みを少なくするために太めにしている。ハリス間隔は肘~片腕。仕掛けづくりは体の部位を物差し代わりにする。両腕を広げて一ヒロ。片腕+胸幅で矢引、などなどである。
 
 水深がない象潟漁港の船路や酒田北港では、渓流用のルアー竿を使うのでオモリはアユの転がしに使う2号のオモリを転用する。転がしに使用するオモリは丸い形をしていて比較的根掛かりが少ないようだ。
 水深がある場所や足元からやや離れた場所を狙うときは5.3m、オモリ負荷3号の磯竿を使っている。この竿の時は5~6号のオモリをぶら下げる。水深、潮の流れで適宜使い分けるので10号ぐらいまでのオモリは揃えてある。

 早ければ明日にも季節ハタハタはやってくる。さあ~、仕掛けづくりだ。


 11月27日 男鹿で季節ハタハタの初漁

 今年は底引き網漁のハタハタの好調が伝えられている。ハタハタ釣りオタクにはワクワクする情報だ。今朝の秋田魁新聞に男鹿での季節ハタハタ漁の初水揚げの記事が掲載された。600キロほどの水揚げで、まだ斥候隊のようだが、本体の回遊も2~3日後には確実にやってくるはずだ。
 季節ハタハタの回遊は北から順に始まる。ここ庄内は男鹿のそれからは十日ほど遅れるのが普通だ。隣接する金浦、象潟方面でさえ数日は早い接岸となる。
 しかし、昨年は違っていた。象潟・金浦も酒田北港も同日の12月9日だった。今年も油断大敵だ。ここ何日かはちょうど大潮が続く。特に木曜日辺りは時化の予報が出ている。木曜日か金曜日の午後の上げ潮時に期待だ。両所を行ったり来たりするつもりでいる。

追記
 今朝も6時を少し過ぎて、あたりが明るくなるころルアー竿を担いで地元の波止を歩いてみた。昨日サーフで男性の腐乱死体が上がったばかりなのでサーフは遠慮することにした。ちょうどその頃、私も近くで竿を振っていた。魚も釣れなかったが土座衛門にも遭遇しなかったから良しとしなければ。
 さて今朝の状況だが、やはり20人近い釣り人が竿を出していた。潮色は昨日に比べて澄んできた。しかし、枯れ葉が頻繁にフックに引っ掛かってくる。程よい間隔で並んだルアー釣りだが誰にも上がっていなかった。私も場所を変えながらルアーを引っ張ってみる。しかし、かすりもしなかった。
 ルアー釣りとアジ釣りを兼ねてやってくる釣り人が増えている。この日も数組いた。昨日はカゴ釣りで型の良いのが釣れていた。釣れるポイントはテトラの向こうで、5人ほど竿を出せばいっぱいだ。この日も割り込む余地はなく、私は諦めることに。
 今朝も顔なじみがカゴ釣りをしていた。布バケツを覗かせてもらったが17~8センチ級が10尾ほど入っていた。ポイントには入れればまだいけそうだ。今朝も彼はかなり早く釣り場に来ていたはずだが、先客が占拠していていつもの自分の場所に入れないでいた。彼を含めて2~3人で釣っていたころが懐かしい。


 11月28日 季節ハタハタ続々接岸

 いよいよ季節ハタハタ釣りの時期が来たようだ。昨日は、一昨日の男鹿に続いて、能代、八峰町、由利本荘市で水揚げがあった。庄内では夕べから強い季節風が吹き続けている。季節ハタハタを呼ぶ風だ。午後に大潮の上げ潮がくる。この潮に乗って他の地域でも季節ハタハタがやってくる確率は高い。今朝は、越境して象潟・金浦方面に向かうか、それとも思い切って本荘マリーナまで行ってみるか、いや酒田北港だ、・・・などと迷っている。

 昨日の庄内浜は季節風も止んで釣り日和だった。朝方はサゴシ狙いで波止に行ってみた。釣れていないこともあって釣り人はまばら。移動しながらルアーを投げてみるがかすりもしない。見回しても皆不発のようだ。早々に退散する。
 午後は上げ潮を狙ってアジのカゴ釣りに行ってみる。すでに、内陸からしょっちゅう出かけてくる顔なじみが入れ食いだ。20尾ほど入った肥料袋を見せてくれた。隣に入れてもらう。しかし、サバが一匹釣れただけでアタリのない状況が続く。場所替えだ。
 今の時期のアジ釣りは難しい。サビキによる違いも激しい。釣り方も微妙だ。私はコマセの節約のために、波の上下動などで自然にコマセが出るにまかせるようにしている。しかし、今の時期アジは、遠投して、時々竿先をあおってコマセを少しづつ撒きながら手前に引っ張てくる釣り方の方が確率がいい。地元の常連Oさんも顔なじみ氏もその釣り方だ。
 場所替えしてからはポツリポツリとアジが釣れだす。しかし、ほとんどが一尾掛けで、それもコマセかごに近い上バリだけに食ってくる。ウキなどの関係で私の場合は遠投ができないので流れに乗せてアタリを待つ釣り方を続ける。やはりご両人に比べたら釣れる間合いが長い。臨機応変釣り方、仕掛けを変えることが大事だ。
 釣果は、3時間ほどで30尾超。型は小さくて15~18センチが主体。内陸の顔なじみのお父さんは、50~60尾。地元名人Oさんのは確認しなかった。

今朝の秋田魁新聞の記事


 11月29日 金浦漁港

 季節ハタハタの接岸はその筋の予測通り早かった。金浦では一昨日(11月27日)から釣れだしたようだ。私も早速昨日の午後に行ってみた。現場に着くと駐車スペースは車、車。そして、盛んに竿が上がっている。東側の岸壁の中心付近に群れが集まっているようだ。もちろん、釣り人も群れている。割り込みは苦手だ。昨年大釣りしたあたりには誰もいない。そこで竿を出すことに。
 まず、足元を餌釣りで狙うも反応なし。ルアー竿に変えて皆がやっているようにチョイ投げでやってみる。これも不発。早々に集団の端っこに移動。しかし、私とすぐ隣は全く釣れない。クーラー満タンで帰る釣り人がもう少し(集団の)中に寄らないと釣れないよとアドバイスしてくれる。しかし、割り込む度胸がない。北側の岸壁は釣り人がまばらだ。遠投だがポツポツ釣れている。道具一式抱えて移動だ。

 場所替えからはほぼ入れ掛りになる。ただ、遠投しての釣りだから効率が悪い。底を引きずるようにして軽く竿をあおると引っ掛かってくる。100%スレだ。仕掛けはアジ釣りに使っていた自製のサビキ。シロギスのハリに白スキンを巻いてある。周りよりは確率が良いから、この仕掛けでもいけそうだ。手間暇はかかるが材料費は安い。今年のハタハタは去年のものより一回り大きかった。2~3年物だ。スレで掛かってくるので結構重い。

 時折竿をひったくるような小雪混じりの強風が吹きつける。遠投した糸が風で流される。着水したら竿を下げてすぐに巻き上げてたるみを取るようにする。これで隣とのおマツリ少なくなる。
 午後4時ごろからはサビキを咥えて上がってくるようになる。こんな時は餌釣りに切り替えたほうがいいのだがシャクリで十分釣れているのでそのままで続行。4時半ごろになるとアタリが遠くなる。隣におばちゃんが割り込んできたのを潮に竿を畳む。帰り際にハゲ皮の普通のサビキに変えてやってみたが釣れ具合にはっきりした変化は見られなかった。これは100円ほどの安サビキだ。

 結局、一番釣れているポイントには入れなかったが3時間ほどで66尾の釣果だった。メスは2尾だけ。象潟方面の情報だが、釣り人は誰もいなかった。良く釣れる灯台側の岸壁は、今年は釣り禁止にしたようだ。釣り人のマナーの悪さが理由だが、私でも納得できる。いつもこの時期になるとサビキの包装やらサビキの残骸やらが至る所に散乱している。毎年地元で毎日片付けでいたことも知っている。誰もが楽しめる釣りをしてもらいたいものだ。


 11月30日 金浦漁港

 昨日(11月30日)のことである。前日の好調に気を良くして、朝マズメを狙うべく出かける。金浦に着いたときは、空が少し明るんできていた。意外にも釣り人は20人にも満たなかった。いやな予感が。誰も動きが鈍い。釣れていないのだ。じっと待つのもなんで、散歩とばかりに歩き回ることにする。
 辺りがかなり明るくなった頃、竿が立ち始めた。その頃には横に3人組が並ぶ。かなりハタハタ釣りに自信がありそうなメンバーだ。竿を出すと遠投に確率50%で掛かってくる。そのうち、両隣が連釣し始めるとこちらは絶不調に。彼らの半分も釣れない。一時間も経たないうち時合が終わる。悔しさもあって潔く竿を畳む。釣果は2~3年ものが13尾。
 
 そして、午後に再挑戦。釣り場に着くと予想に反して釣り人はまばら。港内の入り口付近で遠投している釣り人にポツポツと掛かっている状況だ。昨日釣れたポイントには誰もいない。日によって群れのつく場所は変わる。割り込むのもなんで、私はまず前日のポイントで竿を出す。
 時折、飛ばされそうな突風が襲ってくる。車の中に暫く退避だ。突風が止んで再び竿を出すと、いつのまにかそばに寄ってきたご仁が、岸壁の縁に立つと危ないからと話しかけてきた。親切なアドバイスにしては強い口調だ。そのうち、どこで誰が落ちたとか、投げるならそっちはダメでこっちの方向だとか、すっかり説教調に。それもケンカ腰だ。いや~、世の中にはいろんな人がいる。そんなこんなで一匹も釣らずに退散した。

 金浦漁港で何人かと情報交換したが、西目漁港で釣れ始めたようだ。しかし、西目漁港では転落事故を受けてヘンスで立ち入りを禁止しているようだ。それでもヘンスを乗り越えて釣り人が入り込んでいるらしい。漁業権が設定されていない酒田北港に早くやってこないかな~。

 今日は昨日の不調を受けて新しい仕掛けを作ってみた。良く釣る釣り人の仕掛けを見ると、大抵ハリは矢島型だ。随分と前に買い込んであったアユの転がし釣りのハリがこの矢島型だ。これにフラッシャーとスキンを巻いてみた。明日は日曜日。混雑が予想される。明後日はこれの試し釣りだ。


 12月1日 秋田県南漁港巡り

 目覚めたら穏やかな天気だった。今日は日曜日。休むつもりが、むらむらとその気になって朝食後すぐに出発。まずは、象潟漁港へ。規制のかかっていない水路の東側に車を停める。規制されているはずの灯台側に4、5人、水路の東側にも4、5人と空いている。灯台側は釣れている気配がなかったが、こちら側は遠投の釣り人が3~5割ぐらいの確率で釣りあげている。私も遠投で。
 と、第一投目にヒット。幸先が良い。やはり3~5割ぐらいの確率だ。そのうち隣に一人釣り人が並ぶ。ちょっとポイントがずれているらしく、彼は2~3割ぐらいの確率だ。転々と根があって藻が生えているらしく10投目に一度は根掛かりだ。仕掛けの消耗が激しくて閉口だ。15尾ほど釣り上げたところで根掛かりし、仕掛けを交換している間に左隣との間に割り込みが入る。その少し前に右隣りにも割り込みがあったから風が出てきてからの遠投にはすこぶる窮屈だ。竿を畳んで退散する。黄色のアノラックを着たまだ若い人だった。路上駐車の車はどれも庄内NOだった。彼も私と同じ庄内人(私は生まれは秋田県大仙市。純粋の秋田県人。移住6年目)。情けない。地元の人は数が釣れないとなると出てこないのだ。秋田県人はおおらかだ。

 次は金浦だ。漁協の前に程よい間隔で並ぶのはイワシのコマセ釣りだ。ポツリポツリと15センチほどのマイワシが上がっていた。ハタハタ釣りは北側の旧漁港だ。釣り人の数だが平日の倍はいる。この日のポイントは南寄り。その場所だけがチョイ投げで6~7割の確率で釣れていた。竿を出さずに移動だ。


 次は平沢漁港。ここはテトラに乗っての釣りになる。この場所の釣りに慣れているらしい二人が、遠投して8割ぐらいの確率で上げている。そのすぐ沖では定置網を引き上げている最中だった。私も竿を出してみたが、一投目から根掛かりして仕掛けをロス。テトラの上なので足元もおぼつかない。分際をわきまえろだ。それっきりで竿を畳む。

 次に西目漁港へ。外海に面した堤防の上では数十人が重なるようにして竿を振っている。誰もが入れ食いだ。ダブル、トリプルも頻発だ。まさに爆釣の真っ最中。しかし、その場所に入るには「立ち入り禁止」の看板がぶらさがった鉄格子を二か所クリアしなければならないようになっている。最初の関門では有刺鉄線が巻かれた格子をくぐり抜けなければならない。これを無事通過すると第二の関門だ。2mを超す鉄格子をよじ登っていかなければならない。とても八〇キロ超の体重がある私には、その気になっても無理だ。大型クーラーは満タン。そのほかにゴミ袋に半分ほど詰めたものを持ち帰る釣り人もいた。離岸流が勢いよく流れて岸壁を洗っていた。ハタハタの活性が高いはずだ。指を咥えて竿を出さずに本荘マリーナへ移動だ。

 本荘マリーナは相変わらず人人で大混雑。ゆうに数百人はいそうだ。しかし、歩いてぐるりと巡ってみるもハタハタは全く釣れていなかった。西側に寄るほど好場所らしい。大型バケツに半分ほどハタハタが入っていたのもあった。時合には釣れたようだ。

 帰りがてら象潟を覗いてみた。まだ黄色のアノラックの割り込みご仁が頑張っていて、7~8割の確率で掛けていた。朝方いた人たちは誰もいなかった。こんなねっちこい人にはかなわない。明日からは平日だ。年寄りの世界だ。これからは象潟がねらい目かも。

 金浦漁港


平沢漁港

西目漁港

本荘マリーナ


 12月2日 金浦漁港

 何の魚でも、魚が釣れている時は朝早く目覚めて寝付かれなくなる。今朝も午前2時に目を覚まして、そのまま眠れなくなった。予定では早い朝食をとり、午前7時頃から竿を出すつもりでいた。しかし、ハタハタが夜陰に乗じて象潟漁港に入ってきているような予感がして、居ても立っても居られなくなり、ポットに熱い麦茶を詰め暗い中出発する。夜は水路を照らす灯り集まっていることが多い。そんな時は餌釣りも有効だ。オキアミも持参する。
 まずは象潟漁港で。大抵水路に向かう路上には何台か車が停車しているはずなのだが、今日は一台も無い。しめしめ独り占めだと喜んだまでは良かったが、30分ほどの間に足元でやせハタハタが4尾釣れただけ。チョイ投げも遠投も全く当たらない。思いっきりよく諦めて、実績のある金浦に向かう。

 金浦で竿を出したのは午前4時ごろ。ヘッドランプの灯りをチラチラさせながら20人ほどがまばらに散らばって位置についている。動きが鈍いところを見ると釣れていないようだ。とりあえず釣り支度を始めたら同じ並びの釣り人にアタリが出始める。皆足元ではなく遠投して狙っている。釣り場についてから気が付いたのだが、いつも使っている10号のオモリが根掛かりで全部無くなってしまっていた。少し重たいが15号のオモリをぶら下げて遠投だ。一投目、着底して糸のタルミを取るともう魚が掛かっているではないか。重いオモリは沈下速度が速い。スレで釣るときは効果的だと改めて思った。
 以降、3~5割の確率で釣れ続き、ピークには7~8割という釣れ具合だった。辺りが明るくなり本来なら一番魚の活性が高まる時間帯だったが、アタリが遠のいてしまった。群れが他の場所に移動してしまったに違いない。その時点で40~50尾ほどの釣果だった。

 ボツボツ引き上げようかと辺りを見回すと、対面の防波堤に上がって釣っていた釣り人が連釣しているのが目に入った。6分目ほどハタハタが詰まった布バケツを一旦空にして、私もその場所に向かう。先行の3人組に断りを入れて間に入れてもらう。ここもやはり遠投だ。一投目から連続して7~8割の確率で掛かってくる。たまに3年物のメスも混じる。昨日、あまりの混雑で、私はこの場所を素通りしただけだった。新群れが入ったらしく爆釣だったと云う。一晩過ぎてほとんどのメスが産卵を終えたようだ。腹がぺっちゃんこの魚が結構混じる。
 初めての場所なので根掛かりが多い。これも税金のうちだ。15号のオモリ3個に、他5~6号のオモリを9個(3個組にして使ったもの)取られオモリ切れ。ちょうど小雨が落ちてきだしたし、バケツもほぼ満タンになったので竿を畳む。この日は今年初の一束超えとなった。貴重なメスだがほとんど3年物で、12尾混じっていた。
 帰路、港嶋の側を通ると近くの防波堤に30人ほどが並んで竿を出していた。こちらにも群れが入ったようだ。金浦は今年大当たりだ。


 12月3日  金浦漁港

 今日も明日の予報も季節ハタハタがやってくる大荒れの絶好の天気具合だ。あまりにも悪天候だったらすぐに竿を畳んで戻るつもりで、いつもの時間に朝食をとり、国道7号線を北上する。車で我が家から象潟までは20分少々、金浦までは30分弱。酒田北港に行くのと大して違わない。まず、象潟漁港を覗いてみる。秋田Noと山形Noの車が各一台駐車しているだけで閑散としている。入場制限のない水路の東側に3人の釣り人が雨に濡れて竿を出していた。のぞき込んだらちょうど一人が足元で釣り上げたところだった。いけるかなと期待して眺めていたが後続はなし。金浦に移動する。

 まず金浦の港嶋の様子を見に行ってみる。10人ほどが風を避けて橋下に並んで竿を出していた。しかし、どの竿も上がる気配がない。即移動だ。連日釣れている旧漁港には悪天候にもかかわらず20人ほどがテンデンバラバラに散らばって竿を出している。見るとポツポツと上がっているではないか。釣り上げられたハタハタは強風にあおられて宙にヒラヒラと舞っている。
 岸壁に潮がぶつかって潮目が出来ている場所が空いていたのでそこに狙いを付ける。隣とはかなり離れている。両隣に気兼ねなしにマイ釣りができる。足元で釣れているようなので第一投目は足元狙い。着底して竿を持ち上げた瞬間にドシッと手元に重量感が伝わってくる。いつも通りのスレなので結構重い。以後は、群れが移動して時々空白の時間もあるが、群れが回ってくると8割ほどの確率で掛かり続ける。
 昨日と違って腹がペッタンコの魚は少ない。メスもそこそこ混じってくる。昨日のはほとんど3年物だったが、今日は2年物も混じる。予測通り新群れが入ったようだ。

 ちょうど西向きに立っているので冷たい季節風とそれに乗ったミゾレが、終始、顔を直撃する。時おり細かいアラレがやってくる。顔にもあたるので結構痛い。漁港の外には大きな白波が次々と押し寄せ、泡立ち真っ白だ。寒さ対策は万全にしてきたつもりだったが、使い古した合羽の隙間から入り込んだ雨水が浸みてきて寒い。私もだが釣り人は我慢強い。そんな中でも誰もが夢中で竿を振っている。

 足元でアタリが遠のいたらチョイ投げに変えてみる。これが的中して8割前後の確率が続く。足元、チョイ投げを繰り返し、そのうち布バケツが満タンに。入れてあった道具箱を出してクーラーに移し替える。6~7分目ほどあった。
 布バケツを空にして心機一転釣りを再開するが、一向にミゾレや冷たい雨が降り止まず更に寒さが身に染みる。まだまだ釣れ続いていたが、隣に割り込みが入ったところでその人に快く場所を譲り竿を畳む。

 昨日に続いて今日も束釣り。今日のはほとんどが産卵前の立派なハタハタだった。これなら威張っておすそ分けができる。とても我家だけでは消化しきれないので20尾ほどづつ袋に詰めて隣近所に配って回った。


 12月4日  金浦漁港

 12月2日に撮っておいたアクションカメラの映像を昨日編集してYoutubeにupした。アクションカメラなのでズームなどの機能は付いていないから動きのない画面には不向きなのだが、手のひらに入るぐらいの大きさなのでドライブ以外にも、山歩き、釣り、散歩に携行しては自分用の記録として楽しんでいる。
 さて、Youtubeのアカウントだが、takahashi eikouと釣魚迷の二つで登録してある。釣魚迷は中国語で「釣りキチ」を意味する。12月2日撮影の動画だが、これは象潟~金浦~平沢~西目~本荘マリーナと秋田県南の漁港を順に巡り、季節ハタハタ釣りの様子を撮ったものだった。これには数時間もしないうちに100件以上のアクセスがあり、季節ハタハタ釣りの人気を改めて実感したものだ。私の動画のほとんどは1年経ってもアクセス数が100件以下なのだ。
 その動画に、これも珍しくコメントが寄せられた。ポイントを公開するのは動画のマナー違反だという趣旨だった。季節ハタハタは上記の漁港にやってくるのは誰でも知っているし、むしろ知りたいのは混雑具合や規制などだろうと私は思っていた。釣れ具合などはその日その日で違うからあてにはならない。世の中様々な人がいるのは確かだが、自信をもって言われるとかなりオタク的な意見でも思わずとそうかなと納得したりするから面白い。
 私の釣り動画の撮影場所はほとんどが吹浦漁港だが、あまり、他人には来てもらいたくないので以前は庄内浜と称していた。背景を見れば知る人ぞ知るではあったが。
 吹浦漁港は数年前までは釣り人の数よりは圧倒的に魚の数が多かった。それが、山形新聞の釣り欄に毎週末吹浦漁港の釣況が載るようになって大混雑、釣果の配当率が随分下がってしまった。私も、山形新聞(取材先はトミヤマらしいのだが)にポイントを公開するのはマナー違反だと言いたくてずっと我慢していたところだったのだが・・・。

閑話休題


 昨日(12月4日)も釣りに行ってきました。象潟港の水路には、冷たい季節風にも、雨にも、ミゾレにも負けずに20人ほどが竿を出していた。前日と違って竿の動きが活発だ。スーパーの買い物かごに溢れんばかりに釣っている夫婦もいる。流行る気持ちで竿を出す。周りの釣れ具合なら入れ食いモードになるはずなのに、なぜかたまにしか掛からない。他の釣り人との差が開くばかりだ。所用で午後になったせいで釣り場に着いたのは干潮の底。新群れの猛攻も一段落する時合に。それでも周りではポツリポツリと上げている。試行錯誤の末やっとたどり着いた結論は、シャクリ方だった。ここのハタハタは仕掛けを下し、一呼吸二呼吸間を置くのがコツらしい。そしてコツコツと云う魚信やモタレで竿を立てる。これに気が付い時にはすっかり下火に。
 諦めて竿を畳み、帰路様子見がてら金浦港に行ってみる。と、手前の港嶋で入れ食い状態だ。釣り人は広く散らばっているがどこでも絶好調だ。急遽私も竿を出すことにする。釣り方は象潟で会得したやり方。この釣り方だとほとんどハリが口に掛かって上がってくる。
 この日はヘッドランプを持ってきていなかった。5時のチャイムがなるとさすがに暗くて手元がおぼつかなくなる。相変わらず、私も周りも入れ食い状態が続いていたが納竿。
 帰宅後、小分けして冷凍庫へ。この日の釣果は96尾。もう冷凍庫はハタハタ尽くしで満タン、次からはどうするか悩むところだ。新群れが入ったばかりらしくて数えてみたら大型のメスが21尾混じっていた。


12月5日 金浦漁港 ~ 象潟漁港 

 宅配便で

金浦漁港 港嶋

金浦漁港  本港

象潟漁港 水路

 思ったよりは風も酷くないし、雪も湿り雪で、道路には雪が全く無かった。夜中のコーヒーを飲んで出掛ける。象潟は素通りだ。灯台側は防波堤も水路も立ち入りが禁止されているので、水路では東側しか竿が出せない。場所は狭い。昨日から好調なので、話を聞きつけて、今日は混雑する恐れがあったからだ。

 金浦は釣り場が広い。そして、昨日は広範囲で好調だった。混雑しても場所はゆったり確保できる。竿を出したのは5時ごろ。いきなり入れ掛かりだ。風に乗って湿り雪が顔を直撃する。完全装備だが、手袋から突き出した指がかじかむ。めげずに間を空けた聞き合わせスタイルを繰り返す。最初オキアミ餌も試してみたが、サビキと大差がなかった。途中からサビキだけの仕掛けに交換する。ハリを咥えたのとスレのと半々。魚を取り込んで再投入した時の最初の聞き合わせで掛かる確率が結構高い。以前、群れを見ながら釣ったことがあるが、仕掛けが降りていくと急反転してサビキを追う姿をよく見る。多分、仕掛けが下りていく時のアクションが結構アピールしている可能性がある。

 対岸に5人、私の側は私一人。場所移動は自由だ。アタリが遠くなると移動して群れを探す。群れに当たると必ず数尾は立て続けに掛かってくる。しかし、同場所でずっと入れ食いというわけにはいかない。
 6時のチャイムが鳴り、辺りが明るくなるとやや間隔が空くようになってしまった。それでも、ポツリポツリと当たるからなかなか竿を畳むタイミングがつかめない。7時半ごろまで粘って納竿。

 帰路象潟に寄ってみる。3台の車が路上駐車していた。秋田Noではなくて山形Noと庄内Noだ。立ち入り禁止の灯台側は無人だが、水路の東側には5人の釣り人が並び入れ掛りの真っ最中だった。私も並びの端で竿を出す。先行者ほどではないが、いい食いだ。路上から竿を出したので先行者の端からかなり離れた位置に立っていた。5.3mの長竿を扱うので、後ろを通り抜ける車に配慮して横に竿を出す為だ。ところが、これも庄内Noの車で来た若者が挨拶もなしに割り込みだ。庄内在住だがいい振りこきの秋田県人の一人の私の気持ちは複雑だ。秋田県側の山菜が生える場所に駐車している車はほとんどが山形、庄内Noだったことを思い出す。山形県内では山菜が生える場所のほとんどが立ち入り禁止にされてしまうからだ。両者の気質は随分違うのである。
 
 20尾ほど釣ったあたりで根掛かりで仕掛けをロス。それを機に竿を畳む。もう冷凍庫は満タンだ。近所へのおすそ分けもしたばかりだ。秋田県の内陸部に住む中学の同級生に送ることに。それにしても、宅配便の料金は高い。


 12月7日 金浦漁港

 ともかく今年の象潟、金浦の季節ハタハタは魚影が濃い。それも、次々と新群れが入って来る。産卵前のハタハタはトロッとしていて旨い。お世辞も半分あるかなと思うが、おすそ分けした先々で「美味かった」と言ってくる。

 翌日になったが、昨日の季節ハタハタ釣りの状況UPだ。どうしても、行先は我家から一番近い象潟、金浦方面になってしまう。なんたって行くたびに束釣りだから、他に行く必要もないのだが。本場男鹿方面も、秋田方面もまだ本番とはいかないらしい。これは異変だ。

 地元酒田北港にも、吹浦漁港にも、鳥崎、女鹿にも、まだ季節ハタハタが入ったと云う情報はない。昨日(12月6日)も、夜中のコーヒーを飲んで暗い中を象潟方面へ向かう。今年はまだ暖かくて、積雪、凍結もないから移動は頗る楽だ。
 まずは手前の象潟港水路脇に車を停める。まだ5時前だというのに、やっぱりいるいる。10人ほどが竿を出している。誰もが入れ掛り状態だ。覗いていると次々と新手がやって来る。灯台方面が立ち入り禁止になっているから釣り場は狭い。これはダメだとばかりに、すぐに金浦に向かう。前日好調だった港嶋に車を付けて水路の東側で竿を出す。本命のポイントは西側だから、こちらサイドは混雑しない。対岸にはヘッドランプを点けた10人ほど並んでいたが、こちら側の先行者は一人。かなり前から始めているらしく、ハタハタがオイルバケツに半分以上入っていた。もちろん入れ掛りだ。

 私も、竿入れから入れ掛りが続く。特に大きな群れが足元に居ついた時間帯があって、仕掛けを投げ込む、着底して竿をあおる、もうその瞬間にハタハタが掛かっている状況が長く続いた。布バケツはすぐに満タンになり、道具箱をいれてあったクーラーに移し替える。そして、布バケツ1.5杯分でクーラーも満タン。積んであったゴミ袋を車から持ち出して、次からはこれに移し替えだ。ゴミ袋には布バケツ2.5杯分が入って口を閉める。時々群れが移動するのか途切れることがある。自分も移動しながら群れのいる場所を探す。先行者が帰って、私一人になったからできる芸当だ。これの繰り返しだ。夜が明けると続々と釣り人がやって来る。対岸には30~40人が並ぶ。こちら側は少なくて10人ほど。当初私が竿を出していたポイント辺りに竿が集中する。潮目が伸びてきていて、そこに潮がぶつかる所。皆さんよくご存じだ。やはり、誰もが入れ食いだ。
 ハタハタ釣りもアジなどのコマセ釣りと同じだ。仕掛けの上下動に反応して寄ってくる。根掛かりで仕掛けを交換している間に私の足元から群れが移動してしまったらしい。孤独の釣り師だからしょうがない。布バケツもまた満タンだ。潔く引き上げることに。

 帰宅して、100尾ほどを秋田県の内陸に住む親戚に、ご近所にも80尾ほどおすそ分け。それでも、移し替えたコンテナに半分以上残っている。まだ200尾超はありそうだ。
 なんだって冷凍庫は満タンだ。さてどう処理するかと頭を捻り、結局、ハタハタ鮓にすることに。今回は珍しことだがブリコが3割超も混じった。どれも3~4年物のりっぱな魚体だ。まずは頭と腹を取り除き、塩漬けにする。2~3日したら水にさらし、塩抜きと赤水とりをして、麹とご飯で漬け込めばいい。


 12月8日 金浦漁港

 

12月7日の記録
 
 午前中に仕掛けづくりを済ませ、昼食後金浦港へ様子見に。もう、釣ってきても処分に困るほどだから道具を積むのをよせばいいのだが、ついついその気になってしまう。港嶋の駐車スペースからはみ出た車が路上に連なっていた。道具を持って水路に掛かる橋を渡る。この橋の上からは港全体が見渡せる。いるいる。水路周りだけでなく港内全体に釣り人が。すごい人数だ。そして、どこでもひらひらと釣りあげられたハタハタが風に舞う。港全体に大きな群れが入り込み、回遊しているようだ。
 水路に降りて歩き回る。どの人も入れ掛り状態だ。覗くと、大抵大型クーラーにびっしりとハタハタが入っている。重そうに大型クーラーを肩にかけ戻る人もいる。依然として爆釣が続いているようだ。

 私は空いている港口に移動し竿を出す。ここでも頻繁に竿が上がる。しかし、濃い新群れではなさそうだ。2~3日居ついている群れのようだ。ここは長竿がいい。5.3mの長竿でサビキの食わせ釣りでやってみる。オモリを底に付けたままアタリ、モタレで釣る方法だ。これが的中して一投ごとに掛かってくる。スレでなくほぼ100%サビキを咥えて上がってくる。特に下から二番目のキスバリに白スキンを巻いたハリに良くかかる。次回は全部のハリをこれにしてみるか・・・。

 時おり南西方向から突風がやってくる。長竿があおられてアタリが取りにくい。今日は様子見。3時ごろに竿を畳む。二時間ほどだったが50~60尾の釣果。メスはただ一尾。

 帰路、飛蚊港にも行ってみた。かつてはここが本命だったが、今日は閑散としていた。象潟も覗いてみたが、10台ほどの車が路上駐車していて、5~6人が竿を振っていたが、誰にも釣れていなかった。
 狙いはやはり本港と金浦港嶋まわりのようだ。ただし、くれぐれも地元住民に迷惑がかからないように気遣いを。

2022年12月24日

季節ハタハタ釣り苦戦日記(2018年)後編

 12月17日 象潟漁港

 午前4時ごろに小雨降る中家を出て酒田北港に向かう。未練がましいが、気になってしょうがないのだ。しかし、到着して水路を覗き込むも釣り人の姿はほとんどない。車はそこそこ停まっているから、中で様子見らしい。産卵ロープが張られた辺りで竿を出すも気配が全くない。早々に竿を畳み、象潟漁港へ向かう。

 水路左岸寄りの路上には2台先行車が停まっているだけ。空いている。突堤の方にもチラチラとヘッドランプの灯りが動いて見えるが数は多くない。水路に近づき様子を見ると、先端に入った釣り人は入れ食い状態だ。対岸もやはり先端付近では頻繁に竿が上がる。私は、昨日と同じ餌釣りで、その入れ食いの釣り人の隣で釣るも、昨日の様にはいかない。彼の1/3~1/5の確率だ。何が悪くて釣れないのか・・・。やはり、魚釣りは難しい。まだまだ、修業が足らない。

 そのうちさしもの入れ食いも終了し、彼も私並みの釣れる確率になった。時合終了と云うことで納竿。2時間ほど釣って20尾ほどだった。ストレスが溜まる。


 12月18日 象潟漁港

 実は、昨日の夕方にも象潟漁港へ行っている。朝釣りでの隣人との釣果の差に愕然としてあの手この手と攻略法を考えた末、まずは仕掛けを自作してみることにする。かつて船釣りに通っていたころ、三浦半島沿岸でのハナダイのウィリーシャクリ釣りに凝り、さまざまな工夫を凝らした仕掛けを自作して試していた。だから、ウィリー巻きは今も得意だ。雑多に釣り具が詰まった箱の中に、ウィリーはもとより、イナダ、メジマグロ釣りに使ったバケ用の魚皮も残っている。

 ハタハタ釣りでも、私はアジやカマス釣りで使う赤スキンのサビキを主に使ってきたが、周りを見ると結構大振りで派手な仕掛けを使っている。そこで、これも手持ちのチヌバリにラメ糸をウィリーで巻き、さらにその上をメタル光沢の蒸着フィルムで包んでみることにした。少しのシャクリでもハリ掛かりするように枝素の長さは極力短くもした。これは一時期狂ったカワハギ釣りでは常識。 

 今回はその自作の仕掛けを試すつもりもあった。象潟漁港の水路に着いた時はまだ明るかった。水路左岸に行く途中に車を停めたが、他に1台が停めてあるだけだった。昼間の釣り人は時合が過ぎて皆帰ってしまったらしい。要は、釣れていないということなのだ。
 前方の突堤にも人影はまばらだ。もう一人の釣り人は、投げ釣りで遠くのポイントを探っているが、釣れている気配はない。そのうち彼は引き揚げて行き私一人になる。
 私ではないが他の人が朝方入れ食いだった場所で竿を出す。しかし、全くアタリがない。魚が居れば掛からなくても、仕掛けに触る感触が伝わったりするものだが、それもない。チョイ投げも試みるも、これも反応なし。魚のいない時は新しい仕掛けのテストにもならないので、いつものラメ入り赤スキンでの餌釣りに戻す。魚が回ってきたのは暗くなり、街灯の光が海面を明るく照らすようになってからだった。しかし、次がなかなか来ない。そこそこの群れだと2~3尾は立て続けにアタルはずなのに・・・。

 また一人やって来たが、彼も先端からの投げ釣り。水路は私の独り舞台なので場所を移動しながら探り釣りだ。やはり、夜は灯りに寄るようだ。時折り、灯りの下で、姿は見えないが魚が餌を追いかけてきて水面に水紋を描く。ハタハタでなければ、小メバルだ。周りが闇に包まれるとアタリが増えてくる。しかし、なかなかハリ掛かりしない。反し付きで、ハリも小さい、普通のサビキを使う時のジレンマだ。
 雨が本降りとなってきて寒い。出かける前に風呂に入ってきたこともある。ようやく時合に入ったが風邪をひく前に退散だ。今回は痩せハタハタが5~6尾だった。

 この痩せハタハタだが、焼いても煮ても美味くない。なら釣りに行かなければいいのだが、いつかは新群れに当たりそうで出かけてしまう。そこで、この痩せハタハタを絶品料理にする方法を公開だ。捌くと分かるのだが、白身はアナゴによく似ている。だから、天ぷら、フライ、さらにはそれらの甘酢あんかけが結構いけるのである。
 下拵えはキスの天ぷらと同様に背開きだ。ヌルが強いので手こずるかも知れないが、頭と腹を取り除き、背開きにする。白子は捨てないで取って置き、適量まとめて衣をつけて揚げる。これも美味い。ともかく、まだ試していないなら絶対お勧めだ。美味い美味いと食べてあげるとハタハタも成仏だ。


 12月21日 象潟漁港 

 今朝は、渓流竿(尺アジ用に使っている超硬調子6mの渓流竿)で餌釣りをしてみた。午前5時ごろから始めたが、ここ象潟漁港では、こんな釣り方をしているのは私以外にはいない。アジのイサザ釣りのように、砂に混ぜたアミを時々撒いてやると効果的なはずだが、今回は無しにした。
 街灯の灯りで照らされた水面に向かって時々魚が浮いてきてパシャッと音を立てたりする。この素早い動きはおそらくメバルだろう。たまにゆらりと見える隠れする魚影はハタハタだ。ヤマメバリにSサイズのオキアミを付けて仕掛けを落としてやる。ウキ下は一ヒロ~一ヒロ半。すぐにウキにアタリが出て、ゆっくりとウキが沈んでいく。いきなり合わせずに、一呼吸おいて竿を立てる。アジ釣りでも同じだが、魚が餌を咥えても一気には引き込まず、大抵ゆるゆるとウキが沈み込んでいく。確実にハリ掛かりさせるには、ハリを飲み込ませるぐらいの方が良い。
 コマセをしないこともあってハタハタはすぐに移動してしまうらしい。次が来るまで結構間が空いてしまう。それでも、シャクリ釣り並みには間違いなく釣れる。強風で竿が煽られるようなことがなければ、浮き釣りもお勧めだ。
 辺りが白々と明るくなる頃が時合だ。場所による差はあるものの普通のシャクリ釣りにもアタリが活発になる。定置網を仕掛けに船が出ていく。海の様子を見にきて話しかけてきた漁師によると、釣り人の状況を見て網を仕掛けるのだとか。今年の季節ハタハタは小型だし、雄ばかりでメスが少ないとも言っていた。

 周りがすっかり明るくなりアタリが遠くなったので、今朝は場所が空いている投げ釣りに変えてみる。これは一投目からヒット。以後入れ食い状態となる。しかし、根掛かりが多い。たちまち仕掛けを4組失う。この釣りは根掛かりを防ぐ工夫がいる。途中で気が付いて、ハリ数を減らし、下ハリからオモリまでの間隔を長くする。これで根掛かりも殆どしなくなる。
 まだまだ釣れ盛っている8時半ごろに納竿。釣果はオスばかりだが60~70尾ほど。


 12月23日 ハタハタ料理二題


 この3連休は、ハタハタ釣りは休みだ。とてもあの混雑には耐えられないからだ。昨日地元の漁港で話を交わした釣り人によると、酒田北港も象潟漁港も大盛況だったらしい。酒田北港は水路の北側でポツリポツリ釣れていたらしい。その後に象潟漁港にも行ってみたが低調で、ここに移動して穴釣りに切り替えだと言う。
 地元漁港の堤防の上にはブリコ交じりのカモメの糞がいっぱい落ちていた。期待して水面を覗き込んで歩き回ってみたが魚影は見つからなかった。ハタハタはやって来て、港内に居つくことなくすぐに去ってしまったようだ。
 夕方散歩がてら行ってみた時はハタハタ釣りの格好をしている釣り人が一人いた。そばに行ってみると釣れていたのはカタクチイワシ。水面を覗き込むとたまにカタクチイワシが横切る。酒田北港の南突堤では青物が釣れていたらしい。このイワシの群れに青物が付いてきている可能性もあるが、唯一人竿を振っていたルアーマンにはアタリが無いらしかった。

閑話休題

 さて、釣ったハタハタの始末だが、ほとんどが小型でやせ細ったオスハタハタだから、そのまま小分けして冷凍庫に入れるのが常だ。正直なところ焼いても煮ても美味しくないのでたまる一方だ。冷凍庫の中は浜で買ったハタハタもあったりして、ハタハタ尽くしだ。これではハタハタに申し訳ない。そこで、釣りに出かけなかった昨日は前日釣った分(100尾近くあったが)を背開きにし、一部はフライに残りを冷凍にした。
 ハタハタの身はアナゴに似ている。だから、天ぷら、フライが美味い。それらのあんかけもいける。煮アナゴならぬ煮ハタハタも行けるかもしれないと思ったりしているが、これはまだ試していない。ともかく、今年のハタハタは小振りだ。捌こうとすると一大決心がいる。 さらに、暇に飽かせてハタハタ寿司(飯鮨)も仕込んでみた。三枚に下ろし、強塩に一晩ほど漬け込む。その後、水洗いと塩出しを繰り返す。水洗いは残り水が澄んで見えるまで繰り返す。これで、血やヌルが除かれて生臭さが無くなる。それをザルにあけて水を切り、三杯酢に丸一日漬け込む。あとは水を切って、一口大に刻み、予め塩を振って水切りして置いた大根と人参のみじん切り(イチョウ切りでも良い)、ユズ、寒こうじを混ぜて2~3日置くと出来上がりだ。

 地元の伝統的な作り方は、麹とご飯を混ぜて一月ほどねかせて作るが、私のは寒こうじを使う簡便な方法だ。我家では寒こうじも炊飯器の保温を利用した手作りで、肉、魚の熟成に、野菜の一夜漬けにと大活躍だ。
 料理はアイデア次第。神の魚「鰰」をより美味しく感謝して頂き成仏してもらうのも釣り人の心構えだ。


 12月24日 ハタハタの見釣り


 地元吹浦漁港に様子見に通っているが、昨日まではハタハタの群れを確認することが出来ずにいる。ハタハタが回遊するのは第一堤防の内側と第三堤防の外と内側。この港は東側を除き三方に遮蔽物がないから、季節風が強く吹き付ける日は釣りにならない。ハタハタが釣れるのは暴風雪が嘘のように止んで、束の間の凪が訪れた時に限られる。群れが入ると、堤防の上から黒い塊がゆっくりと防波堤の壁に沿って移動するのが見える。長い防波堤だがハタハタが溜まる場所も決まっている。新群れが入った当初は、産卵を控えて腹パンパンのメスが数釣れる。しかし、それも一昨年まで。去年も今年も、まだ、そんな群れを見ていない。

 潮が澄み気味の時はハタハタがハリ掛かりする様を上から見ることが出来る。密集した魚群だから落ちてゆく仕掛けに偶然引っ掛けられる魚もいる。しゃくり上げ時にスレでハリ掛かりするのもいる。最初に掛かった魚が動き回り、その時に別のがハリに引っかかることもある。見ていると面白い。仕掛けの近くで白い腹を見せてヒラをうつ魚もいる。これはハリを咥えに来た魚だ。ほとんどが傍にある仕掛けを無視したように泳いでいるのに、中には食い気を誘われて突然ハリに食いつく魚もいる。

 ハタハタ釣り初心者のころはやみくもにシャクっていたものだが、最近は誘ってハリに食いつかせて釣ることの方が多くなった。そうしないと釣れないと云うこともあるからだ。群れが濃い時はシャクって引っ掛ける釣りの方が数釣れる。しかし、最近は濃い群れに当たることが殆ど無くなっている。だから、力任せにシャクったんでは寄ってきたハタハタをかえって追い返してしまうことにもなり、釣果が上がらなくなってしまうからだ。

 極の釣り方だが、居残りのハタハタには餌釣り、それも渓流竿で浮き釣りすることもある。ただ、竿があおられる風が強い日や、潮が早い日は不向きで、その都度切り替えがいる。
 魚のことはカモメに訊けだが、ハタハタにおいてもそれは言える。今の時期、時化の海にカモメが乱舞する防波堤に乗ってみると、至る所にハタハタのブリコの混じった糞が残されている。今年も吹浦漁港でカモメの乱舞を何度か目撃した。ハタハタは確実に来ている。しかし、波が高くて、とてもその時は防波堤に上がれない。凪を待って出かけるのだが、いつも、カモメもハタハタも気配を消してしまった後だ。


 1月5日 酒田北港

  酒田北港でハタハタが釣れ続いている。私も5日と6日に行った。結論から言うと両日とも私だけは惨敗だった。
 5日は、現場着が午前5時ごろ。まだ、暗い。既に、南側2基目の風車の周りには5~6人の釣り人が入っていた。季節風が強く吹いていて、水路の外側防波堤はナイアガラ状態。入れ食い状態の隣が広く空いていたので、隣で竿を下ろす。しかし、釣れない。隣は相変わらず入れ食い状態だ。仕掛けを替えたり、餌を付けて見たり、仕掛けを下ろす位置をずらしてみたり、はてはシャクリ幅を変えてみたりするも状況は変わらない。ドツボにハマった感じだ。過去に何度も経験した嫌な時間が流れていく。

 空が白んでくると、さしもの隣人にもアタリが遠くなる。彼は、まもなく竿を畳んで帰っていった。2時間ほどの間に、布バケツの魚を二度もクーラーに移し替えていたから、100や150尾はあったに違いない。私は、痩せハタハタが4尾。その彼だが、帰り際におもむろに海中から水中ライトを引き揚げたものだ。

 その日は家に帰ってから反省とイメージトレーニングをし、昼食後に再び出かける。心乱れる人込みは避けて、ポツンと離れた場所に。まずは移動しながら探りり釣りだ。なかなかアタらない。何度か往復しているうちにようやく初ヒット。産卵のためのネットを張ってある場所だった。ここはひっかりが多い場所だ。だが、背に腹は代えられない。用心しながら釣る。飽きない程度に釣れる。特に特殊な釣り方をしている訳ではない。要は足元に魚が寄っているかどうかなのだ。それにしても、今朝のように、隣人とは2mぐらいしか離れていないのに、あちらは入れ食い、こちらはさっぱりと云うのはどう分析したらいいのか・・・。やはり集魚灯のチカラかな。。
 15尾ほど釣ったらパッタリと釣れなくなる。人が群れているあたりに行き、様子を見るも、食いは止まっている。今日はこれまでと納竿だ。

 1月6日 酒田北港

 少し早めに家を出る。現場着は午前4時半ごろか。やはり、2基目の風車の下で竿を出す。その辺りで竿を出している釣り人は5~6人。この日も、入れ食い状態の釣り人の隣に入る。隣との間隔は2~3m。ところが、この日も昨日と同じ最悪のパターン。隣は入れ食いなのに、こちらには全く釣れない。そのうち、一人がその名人のそばにぴったりとついて竿を出す。竿先の間隔は50センチほどだ。「俺にはできないな~」と呟きが口に出る。しかし、その度胸のある彼にもハタハタは微笑みかけなかった。彼もまた私と同じパターンだ。何が違うのか・・・。教えを請いたい心境だ。

 反対側には2人組がいた。彼らは煌々と水中ライトを輝かしている。徹夜組かも知れない。疲れているのか投げやりな竿捌きをしているが、それなりに釣れている。

 この日も周りが白んでくる頃には、名人たちの竿も沈黙し始める。先の名人も竿を畳んで帰っていった。何時ごろから釣り始めたかは知らないが、私が来てからでも50尾は釣っているはずだ。私も名人に習って早々に竿を畳む。小型の痩せハタハタ2尾だった。


 1月7日 酒田北港


 ことハタハタ釣りに関しては、他の釣りと違ってなかなか周りほど釣れないのでムキになっている。今までの経験(5年)では朝マズメと上げっぱなに食いが立つ。修業の為に日に2回は通うつもりでいたが、この日の朝は帰省していた娘を庄内空港に送っていかなくてはならず、10時ごろに上げ三分になる上っぱなを狙うことにする。
 朝の釣りが一段落した後で釣り場は空いている。見回すと、ポツンポツンと並ぶ先行者にそこそこ釣れている。釣れている隣に入って、自分だけ釣れないと云うのもみじめなものなので少し離れた場所で竿を下ろす。竿入れからしばらくはアタリがなかったが、いきなり入れ食いモードに突入する。仕掛けを下ろすたびに魚が触る感じが手元に伝わってくる。それまでとは全く違う。魚がいても仕掛けに触らなかったのか、それとも魚がいなかったのか・・・。この違いは何だろう。またまた、迷路に入ってしまう。

 入れ食いモードに入ると、着底して誘うと直ぐ食い、落とし込みでも食ってくる。竿先を静止させる待ちの間にもアタリが出る。もちろん、スレではなく、ちゃんとハリを咥えて上がってくる。釣れるハタハタは二年物中心で、三年物も混じる。今まで釣ったものよりは型が良くなっている。
 そのうち、周りが混雑して来たし、入れ食いモードもやや下火になったので新場所に移動。それまでの場所からは30mほど離れたことになる。ここでも竿入れから好調で、群れの濃さを実感する。数釣ることで食わせのパターンも安定し、迷いも吹っ切れた感じだ。食わせて釣るならシャープなシャクリは禁物だ。訊くような感じで竿を立てる。食いダナも重要だ。結構浮つくこともある。待ちの間隔もある。入れ食いが下火になったなら三~五カウントぐらい待ってから誘いを入れるのが良いようだ。
 納竿は午後一時ごろだったが、久々の束釣りだった。


 1月8日 酒田北港

 朝マズメを狙って午前5時半ごろに酒田北港に到着。先行者は3名。いずれも常連さんで互いに顔なじみの様だ。釣れている。彼らから3mほど離れた所で釣り始める。しかし、やはり私には釣れない。そのうち常連さんが6人に増える。言葉を交わしながら、誰もが好調に釣れている。釣り方も私とは全く違う。竿先を小刻みに跳ね上げるようにシャクリ続けている。仕掛けを盗み見るとハリの間隔も10センチほどと小さい。ハリは大きめのオーロラのフィルムに隠れて見えない。

 ようやく空が白んでくる頃から私のサビキにもアタリが出始める。それからは五投に三度の割で釣れてくる。もちろんスレではなく、食わせだ。夢中で釣って、布バケツが満杯(100尾超)になった午前10時ごろに納竿。1~2年物が主体で、昨日よりは小振り。傍に移動してきた釣り人が、常連さんの一群を見て「連中はガラガケの仕掛けを使っているよ」と囁いた。これで、自分だけが釣れなかった魔の時間のカラクリが腑に落ちたものだ。あ~嫌だ。嫌だ。
 帰宅後冷凍庫にしまい込む際に釣果を数えてみたら130尾ほどあった。卵を抱えた雌は、そのうち5尾しかなかった。


 1月9日 酒田北港 

 暗いうちに起き出して外に出てみる。雨のようなミゾレのような中途半端な粒が落ちてきている。冬にしては寒くない朝だ。それでも、季節風は冬本番の吹き荒れようだ。そんな天気でも釣りキチは出掛ける。今年の季節ハタハタ釣りは、道路に雪も無く、凍結もしない分楽だ。

 竿を出したのは午前6時頃。酒田北港は、まだ、暗い。さすがに、釣り人の数は少ない。私は大抵南側2基目の風車の辺りで釣ることにしているが、今朝は10人にも満たない。隣との間隔はゆったり。もっとも、いつものガラガケの二人は仲良く1mにも満たない間隔で竿を上下している。やはり、ガラガケは確率が良い。まだ、ハタハタは居残っている。

 今朝は餌を忘れてきてしまった。餌は寄せ餌の効果もある。かじかんだ指で餌を付けるのは厄介だが、無いよりはあった方が良いようだ。周りが気になる。チラチラと様子を見る。私よりは釣れる確率が高い様に見えてしまう。竿入れから暫らくは10投に1回釣れるぐらいだった。周りが白んできてようやく5投に1回ぐらいの頻度になる。ほんの一時だったが、入れ食いタイムあった。ハタハタは、やはり、1~2年物が主だ。

 ガラガケの常連さんが竿を畳む頃になるとアタリが遠くなってしまった。明るくなると、夜に風車の灯りが届く辺りに寄っていた魚が散ってしまうのかもしれない。ともかく、足元に魚が寄っている時は仕掛けを上下していると気配で分かるから面白い。

 相変わらずの雨模様。合羽を着ていても沁み込んでくる。正味一時間ほどで納竿。釣果は痩せオスが15尾前後だった。実は、昨日の午後釣りにも出かけている。上げっぱな狙いだ。この日も同じような釣況で、2時間ほどでやはり15尾ほどだった。私から10mほど離れた場所で釣っていた人は結構順調に釣っていた。竿捌きを見るとそれほど手馴れているとは見えないのだが何故か釣れるのである。彼の釣り方だが、6本バリのサビキに全部餌を付けて、柔らかい竿の竿先を殆ど動かさないで待つやり方だった。私よりは先に来ていたから、魚が餌につられて足元に寄っていたのかもしれない。あるいは、他に何かコツがあるかも知れない。まだ、まだ納得の行くハタハタ釣りが出来ないでいる。


 1月12日 酒田北港


 季節ハタハタ釣りは、季節風が吹き荒れ、雪が水平にぶっ飛んでいく中で竿を振るのが当たり前だ。大抵夜の暗いうちに釣り場に向かうから、吹雪で視界が悪かったり、道路が凍結したりもするから車の運転には神経を使う。しかし、今年は暖冬で楽だ。この3連休も、庄内の冬にしては穏やかな天気が続いている。

 酒田北港のハタハタの魚影は、相変わらず結構濃いようだ。今日まで三日連続で朝マズメ釣りに通っっている。今日は60~70尾止まりだったが、昨日、一昨日と束釣りだった。

 一昨日のことだが、夜明けまで絶好調だった。スキンのサビキにオキアミ餌を付けた訊き合わせ釣り。これが、夜明け前までは的中し入れ掛りだった。ところが、夜が明けてからは極端にアタリが少なくなってしまった。そんな中、新人がやって来て私の竿先に触れんばかりに竿を出して釣り始めた。そして、不調を私をしり目に、彼は入れ掛りを連発。当方はますます落ち込むと云う負の連鎖に。既に、布バケツに8分目ほど釣った後だから潔く竿を畳んで撤退。

 当然、横目で彼の一挙手一投足は研究済み。彼我の違いは仕掛けにあると踏む。彼は普通のハリ3本の胴付き仕掛けのエサ釣り。おそらく、ハリもハリスも小振りにしてあるに違いない。翌日に備えて、私も胴付き仕掛けを自製。春アジ、秋アジの餌釣り用に使っていたヤマメバリを使い、ハリス1号、幹糸1.5号。もちろん、この仕掛けを使うからにはオモリも竿も変えなければならない。竿は、渓流用のルアー竿。オモリは2号。水深が深かったり、潮が早かったりすると2号のオモリでは底立ちを取るのが難しくなるが食い込みは良いはずだ。これはギリギリの選択だ。


 1月13日 酒田北港 

 その仕掛けを持って勇躍朝マズメ釣りに。前日同様、混雑する水路を避けて新場所(温排水)で挑戦だ。ここは水深が2mほどしかない。のぞき込むとハタハタの姿が見えるほどだ。先行者が2人いた。水中ライトを点け、コマセをしながらの釣りだ。仕掛けは大ぶりのハタハタ専用仕掛け。その大ぶりのハリに、普通サイズのオキアミを付けている。

 嫌らしくない距離を保って隣で竿を出す。ハタハタを寄せてくれていたようで、竿入れから入れ掛りとなる。しかし、釣れるのは私だけ。諦めたのか先の二人は間もなく竿を畳んで引き揚げていった。しばらく一人で入れ食いを堪能する。夜明け近くになるとポツリポツリと釣り人がやってくる。水路と違って、この場所に来るような人たちは比較的のんびりしている。前日の名人は現れなかったが、2人は見た顔だ。専用の胴付き仕掛けは私だけ。やはり、この仕掛けに分がある。周りにはポツポツだが、私は相変わらず入れ掛りだ。その私にも、午前7時を回るころには、アタリが遠くなり納竿。
 小振りな1、2年物が主だが、自製の仕掛けが的中し、前日同様布バケツ8分目、120~130尾ほどの釣果。


 1月14日 酒田北港

 新しい仕掛けの効果を再確認したくて、早々と午前3時過ぎに自宅を出る。釣り場には20分ほどで着く。新場所には釣り人の姿は無い。風、波っ気がないのでヘッドランプを点けて海面を覗き込むと海底がすっきりと見える。しかし、ハタハタの群れは見えない。取り敢えず仕掛けを落とし込んでみる。まもなく、たまにだがチラホラと魚影が横切っていく。最初の魚を釣り落したせいか、その後はまったく魚影が見えなくなってしまう。諦めて水路に移動。いつもの南側2基目の風車下に陣取る。

 周りに釣り人は二人だけ。彼らから離れた場所で竿を出す。ここでは竿入れからアタル。好調に釣れているのを見て、一人が傍へ寄ってくる。大声でひっきりなしにしゃべくる引っ掛け組の一人だ。傍で、大きなシャクリを繰り返されるとせっかく寄っている魚が散ってしまう。彼から離れた位置に移動する。ここでも、活発にアタル。まだ、群れは濃いようだ。水面近くまで浮いてくるものもある。そのうちに、また、隣にシャクリ釣りの釣り人が幅寄せしてくる。ここで、また移動。しかし、もう、入れ掛りとはいかない。最後は、産卵用のネットが入っている場所まで移動。一時入れ掛りとなるも、明るくなるにつれてアタリが少なくなり、遂にはピタリと止まる。
 夜は風車の基台に設けてある照明にハタハタが集まっているようで、その付近で良く釣れている。胴付き仕掛けの夜釣りが確実かも知れない。


1月15日 酒田北港


 午前4時ころ水路に到着。車は少ない。10台ほど。水路に降りる。夜は光に集まるようなので風車のすぐ傍に釣り座を取る。近くに釣り人は他に一人だけ。自製の胴付き細仕掛けにオキアミSを付けてアタリを待つ。3~5カウント数えて竿先を上げて訊いてみる。モタレを感じたら竿を立てて合わせる。強く竿をあおるとせっかく寄ってきたハタハタを脅かしてしまう。そっとそっと竿を操作する。

 30尾ほど順調に釣れ続いたが、突然25センチ前後の魚の群れが頻繁に足元を横切り始める。餌を喰わせようと試みるも見向きもしない。釣り歴が長い私にも、何の魚か見分けがつかない。上から見ると細身だ。この群れの回遊を境にハタハタのアタリがピタリと止まってしまった。私が釣れているのを見て、隣にやって来た引っ掛け釣りの常連さんが竿を出していたが、この日はサビキに変えたらしい。そのサビキに、件の魚が掛かった。しかし、魚の判別がつかないらしい。見るとコノシロだった。

 寒い。足先が冷たい。今季一番の冷え込みかも知れない。一旦車に引き上げて暖房を点けて暖を取る。午前6時ごろまで車の中で過ごし、再び竿を出す。コノシロの魚影はすでに無かった。ハタハタは一投目から食ってくる。この時間になっても他に釣り人は2人だけ。6時を過ぎると、空が白んでくる。ヘッドランプの光が無くても餌付けが出来る頃になると、いつものように食いが止まってしまう。50尾ほど釣って納竿。ほとんどが15センチ前後の小型。

 帰路火力の北側の防波堤の脇を通って行くと、防波堤に10人ほどが上がって竿を垂れている。車を停めて様子を見ているとポツリ、ポツリと竿が上がる。車を降り、一番端っこに行き覗き込むと、いるいるハタハタが。居残りのハタハタの他に新群れと思われる大きな塊も見える。点々と泳ぎ回る居残りの組は黒く見えるが、新群れはやや白っぽい。明らかに体色が違う。

 すぐに車に取って返し、再び道具を取り出し釣り再開。餌に食いつく様が上から良く見える。仕掛けを落とし込むと食ってくる。この様子を見て、周りに釣り人が寄ってくる。友達の友達も、挨拶も無しに肩幅が触れる近さにまで割り込んでくる。仁義なきハタハタ釣りだ。めげそうになるも場所を厳守して粘る。このお父さんたちは、この年になるまでどんな環境で生きてきたのかと訝しくなる。自分の欲望を押さえながら周りとの折り合いをつけると云うのが自分たちの社会生活だった。たかが釣りだがされど釣りなのである。

 ここで2時間ほど粘るも、遂には周りのプレッシャーに負けて幅寄せのお父さんに場所を明け渡す。布バケツは八分目ほどハタハタで埋まっていた。今日も束釣り(100尾超え)だ。残念ながら、昨夕から天気は大荒れ。ここ数日はこの状況が続くようだ。時化が収まるまでハタハタが居残ってくれるのか。

1月20日
 驚くほど群れが濃いようだ。午前4時半ごろから竿を出したが、初めのポイント探しの時間を除き、午前9時ごろまで入れ食いが続いた。風車の灯りが届く辺りから探り始めたが、どのポイントでも直ぐに1、2尾は釣れるのだが、その後が続かないのだ。産卵用のネットを張ってある辺りも探ってみたがアタリさえなかった。結局、昨日偵察した時ポツリポツリと上がっていた辺りに見当をつけて餌を下ろすとすぐにアタる。この頃には釣り人の数も20人ほどに増えていたが、この場所は他の釣り人集団とはかなり離れている。マイペースで釣れる。釣れている時にすぐ傍に来られると、どうしても群れが右往左往して入れ食いのペースが乱れてくる。

 この日も竿は渓流用のルアー竿。3本バリの胴付仕掛けに2号のオモリ付ける。ハリスは1号。幹糸は1.5号。ハタハタならハリス0.6号、幹糸1号でもいけるが、仕掛けのカラミが多くなるので太めにしている。この道具立てだと出ている糸の長さが竿の長さよりもかなり長いので魚が掛かっても抜き上げが出来ない。適度にリールを巻き上げてから抜き上げることになる。
 リールをフリーにして仕掛けを送り込み、底立ちを取り、3~5カウント待って竿先をそっと上げて訊いてみる。その時に、竿先に微妙なアタリが出る。ゴツゴツとアタルことも無い訳ではないが極めてまれだ。所謂モタレで釣るやり方だ。直ぐにアタラナイ時は竿先を静かにあおって誘いをかけてみる。これが意外と効果的だ。

 ずっと入れ食いで周りをほとんど見ていなかったが、どこでもポツリポツリと云った感じで釣れていたようだ。餌釣りがほとんどで、中にはコマセカゴを付けている人も見かけた。コマセの集魚効果は期待できるが、出来ればイサザ釣りのようにコマセは別に撒くようにする方が良い様に思うが、自分では試していない。
 見釣りの時に良く分かるが、ハタハタは寄って来ても餌を目前にユータンすることが多々ある。警戒心を抱かせず、静かに餌を喰わせるのがコツなのだ。

 雨が断続的に降り続き、アタリも遠くなった午前9時に納竿。布バケツ7分目。100尾前後の釣果だった。2、3尾だがブリコハタハタが混じっていた。まだ、新群れも入って来ているようだ。

2022年12月23日

季節ハタハタ釣り苦戦日記(2018年)前編

 2018年12月9日には、すでに季節ハタハタの群れが酒田北港にやって来ていたが、そのことを知らなかった。何故なら秋田県の八森、男鹿に斥候隊の気配があったばかりだったからだ。例年なら、庄内浜は秋田県のそれらの地域から遅れること一週間から十日と云うのが常識だ。これは異変と言ってもいい。私の2018年度季節ハタハタ釣りの初出動は12月11日だった。偵察のつもりで象潟漁港へ向かった。

酒田北港に季節ハタハタの群れ

 次の写真は、釣具店「トミヤマ」のホームページからの転載である。

 これは、酒田北港に近い国道7号線沿いにある釣具店「トミヤマ」のホームページに、12月10日にアップされた情報である。酒田北港の水路にも12月9日の午後に第一陣が入って来ていたのである。私はこれを見逃していた。

2018年度の季節ハタハタ漁の漁獲は禁漁明け以降5番目の少なさ

 私がここ庄内に移住したのは2014年の4月だった。ハタハタは、私の様な秋田県生まれにとって思い入れが深い、冬の食卓に欠かせない魚だ。内陸育ちの私は経験がないが、その魚が群れになって海岸近くまで押し寄せ、誰にでも釣れると言う。移住当初から、釣り好きの期待はその時を思い描き膨らむばかりだった。
 その年の12月、念願だった季節ハタハタ釣りを初体験する。熱い思いが通じたのか、運よく第一陣の群れが入ったその日、その時に行き合わせた。初体験、見よう見まねながらも100尾を超す釣果に恵まれたのだった。
 しかし、翌年からは苦戦が続いた。それもそのはずでハタハタの漁獲量はその年を境に半減していた。以下は、秋田魁新報の記事である。


12月11日 象潟漁港 

 今日は昨日までとは違い風もなく時折陽が射す穏やかな天気。様子見だが、しっかりと道具は積み込んで、国道7号線を北上する。季節ハタハタは北から接岸する。
 まずは、象潟へ。水路が見えるあたりで釣りの帰りと思しき車とすれ違い、窓を開けて状況を尋ねてみる。「今日は波がないから食いが悪いよ。ん、昨日は釣れたな」とのこと。群れは一昨日(12月9日)の午後から入り出したと云う。

 水路の向こうに防波堤が見える。水路の出口付近に4~5人の釣り人が、防波堤には15人ほどの釣り人がいる。人数は少ない方だ。しかし、次々と釣り人がやって来て終いには身動きが出来ないほどの混雑に。
 一級ポイントは青灯のある防波堤側だ。目を凝らすと結構頻繁に竿が上がり、ひらひらと魚影が舞う。水路をぐるりと回り、防波堤への降り口に近い船着き場近くに路上駐車。漁師の邪魔にならない場所だ。

 灯台に近い方がよく釣れるが、私の対人距離感では割り込みは不可。止む無く、隣の若者の二人組に断りを入れて一番端に入れてもらう。彼らのうちの一人はまさに入れ食いだ。アンダースローで仕掛けを飛ばし、竿を立てるともう乗っている。私も期待に胸弾ませながらアンダースローを繰り返すが、まったく当たらない。なのに、隣の若者は二人して連発だ。
 誘い、仕掛け、ポイントなどなど盗み見て、出来る範囲で真似てみるも状況は全く変わらない。さらに悪いことに魚が釣れない分根掛かりが頻発する。彼らが去った後同じ場所を攻めてみたが「釣れない」と云う状況は変わらない。場所ではない。仕掛けも含めた釣り方が原因だが、経験不足は如何ともしがたい。嫌な時間が過ぎていく。 

 潮が動き出すようになって足元でも釣れ始める。空いていた私の左隣にも釣り人が並び、これが竿入れから入れ食いだ。それでも、右隣に割り込んだ釣り人が私同様釣れないからまだ救われる。
 そのうち、海中にハタハタの姿が時々見えるようになった。仕掛けが降りていくとハタハタが反転するようにしてサビキを追いかけていく。ハタハタは居る。あとは如何にハリ掛かりさせるかだ。しかし、アワセのタイミングがなかなか合わない。研究の余地ありだ。

 隣は入れ食いで、ほとんどがスレで上がってくる。私のはほぼ100%ハリを咥えて釣れてくる。この差は仕掛けの可能性大だ。私のはアジ釣りに使っていたハリに返しのあるサビキだが、彼らは返しのないハタハタ専用のサビキだ。それの方がハリ掛かりは良いはずだ。結局3時間ほど粘って放精済みの痩せた2年魚が30尾ほど釣れただけだった。
 帰路、浜売りの一袋1000円なりのハタハタを購入する。おばちゃんが「これが重いよ」と勧めてくれたのは1~2年魚の雄ばかりを集めた袋。2~3年魚主体の袋と持ち比べてみると確かに重く、家で計量したら8キロほど入っていた。しかし、これらは市場に出せない一番のクズだ。後で考えてハメられたと思ったが、飯鮨にする奴だからと自分を納得させる。


12月12日 酒田北港


 昨日、山形のローカルTV局の夕方のニュースで酒田北港の季節ハタハタ釣りが紹介された。5年振りに本格的な群れが入って来たと云う地元の釣具店のコメントもあった。
 酒田北港の季節ハタハタは、私が移住した年、これはまさに5年前にあたるのだが、季節ハタハタ釣り初体験の私にもほぼ入れ食いで釣れた。偶然も偶然、初体験のその日は第一陣がやって来た日でもあった。「今釣れだした」と入れ食いを連発する地元の釣り人の傍で、見よう見まねで100尾は釣ったはずだ。その中には4年もののブリコハタハタが結構混じっていた。それまでは本職の方の不漁が続き、大きいものは一尾1000円もしていたことがあったから、憧れのブリコハタハタを貪り食ったことを覚えている。
 その年は夢中になって釣り歩き、行く度に大釣りし、冷凍庫に入りきらなくなったこともあって、秋田県の内陸に住む中学の同級生などににも随分と送ってやったものだ。

 次の年は事前にイメージトレーニングもし、仕掛けも大量に買い込み、万全の準備を整えて臨んだが、酒田北港にはほとんど群れが入ってこなかった。止む無く秋田県側に幾度となく遠征を繰り返したが、これも絶不調。秋田県側の釣り場は酒田北港に比べたら狭い。よく釣れる場所には人々が割り込みを繰り返し、半身を突き出して竿を振るような状態になる。そんな人込みが苦手で端っこで釣ったこともあり、5尾だ10尾だで帰る日がほとんどだった。そして、それが去年まで続いていた。

 小雨模様の中、午前5時少し前に酒田北港に向けて家を出る。釣り場までは車で20分ほどだ。夜が明けるのは6時半ごろ。水路に建てられた風車の灯りが水面を照らしていて真っ暗ではないが手元で作業するには暗い。ヘッドライトは必需品だ。水路の長さは2キロはあるはずだ。ともかく長い。200~300人が並んでも、それほど窮屈ではないだろう。好きな釣り場だ。

 ここも良く釣れる場所とそれほどでもない場所とがある。釣れる場所を中心に、すでに50~60人が竿を出している。ハタハタは満遍なく釣れている。かなり大きな群れが入り込んでいるようだ。入れ食いを連発している人の隣が大きく空いていたのでそこに入れてもらう。しかし、こちらは入れ食いとはいかない。何かが違うのだ。これはかなり経ってから分かったことだが、仕掛けの下ろす位置が関係していた。その時のハタハタは壁に沿って移動していたのだ。40~50センチずれると釣れ方がガラリと変わることがよくある。仕掛けを下ろす位置は要注意だ。
 サビキの選定も重要だ。私の通常の仕掛けはラメ入りのスキン赤サビキ。これは、アジ、カマス用だが、ハタハタにも使っている。しかし、時間帯、潮色などで食いが極端に落ちることがある。今日も明るくなってから食いが落ちたのでハモ皮にチェンジ。

 チョイ投げして連釣する若手も居た。周りを見ながら釣り方を変えることもありだ。 新群れがどんどん入ってきているようだ。ブリコハタハタが結構混じる。オスも放精した後で痩せてペッタンコと云うこともない。美味そうだ。ただ惜しむらくは小型が多い。
 メスは2~3年物が、オスは1~2年物が主体だ。八時まで釣って、布バケツほぼ満杯。100尾前後はありそうだ。うちブリコは3割強。納竿した8時ごろには釣り人の数も100人は超えているように見えた。

 夕方も行ってみたが、釣り人の数は午前に比べたら激減し、数十人ほどが竿を出していた。しかし、どの竿にもハタハタは舞っていなかった。西風が強く、沖堤を波が乗り越えてて水路になだれ落ちてくる。。竿を出さずに退散する。

 今年のハタハタは例年になく小さい。10~15センチが主で、そんな大きさでも抱卵しているものもあった。資料に拠れば1、2年魚だ。ハタハタに何か異変が起きているようだ。


12月13日 酒田北港


 昨日は午前5時ごろに釣り場に到着したが、すでに時合に入っていた。この夜は寝ていて、霰、雷、風の音がうるさかった。外は大荒れだ。しかし、時化とともに新群れがやってくる可能性も大だ。今朝は一時間早めて出動だ。

 道路に雪は無かったが、時折り車の正面の窓に向かって水平にミゾレが吹き付けてくる。火力脇の道路を行くと堤防を越えてきた飛沫が窓ガラスを濡らす。左折して水路に沿って車を進める。時々、沖の堤防を乗り越えて波が滝のように水路に流れ込む。でも、この程度は序の口だ。この時期には水路の西にある沖堤に間断なく波がぶつかり、飛沫は沖堤の倍近くも高く跳ね上がり、それが崩れてどっと水路へ流れ込む様は珍しくないのだ。地元ではナイアガラと呼ばれている季節ハタハタの時期の風物詩だ。

 南側から数えて2本目の風車近くに車を停める。水路への降り口に近い駐車スペースはみな塞がっているが、そこから遠い場所はガラガラだ。悪天候のせいか駐車している車の数は昨日の1/3ほどだ。ズラリと見回して、釣れている場所の検討つけて水路に降りていく。私の距離感は、ハタハタ釣りの常識の4倍ほど長いから、なかなか思った場所には入れないことになる。この日は、風車により近い場所に釣り座をとる。

 周りに釣れていると言っても、思い出したころにポツリ、ポツリと釣れる程度。入れ食い状態だった昨日とは大違いだ。それでも明け方近くの回遊を期待して竿を出す。サビキはアジ用の赤スキン。
 昨日はヘチでよく釣れた。しかし、今日は、やや遠目で当たっている。チョイ投げに切り替える。これが正解で、入れ食いとまではいかないが、5回に3回は釣れてくる。
 ヒットするポイントはほぼ同じだ。この釣れ具合は周囲が沈黙しているだけに目立つらしい。そのうち3組の割り込みが入り、隣との間隔が私の本来の距離感の1/5ほどに狭まってしまう。両手を広げたら両隣にぶつかってしまう間隔だ。距離感は広くても寛容度は狭い私だ。こうなると気持ちに乱れが出る。さらに悪いことに、足元で釣っている隣人たちが連釣し始める。ますます苛立って調子が狂ってくる。悪いことは重なる。釣れ上がったハタハタを後ろに跳ね上げてしまったのでそれを取り込もうと向きを変えた拍子に転倒。したたか、コンクリートで膝を打ってしまった。身も心も、痛い、痛い。

 気持ちの乱れは釣りのリズムを狂わせる。その後、立て続けに3回も根掛かりさせる始末。こんな時は早々に切り上げるに限る。時合が来て足元でも釣れるようになっていたが納竿。時刻は午前9時を少し回ったところだった。今日は何ともすっきりしない釣行となった。さて、釣果の方だが、ほとんどが10~15センチ級の1、2年物。それも放精を終えてやせ衰えた雄ばかり。自宅に帰ってざっと数えたら70尾ほどあったが、ブリコは数尾混じっただけだった。


12月14日 酒田北港


 暴風雪警報が継続発令されている。寝る前は「もういいや。明日のハタハタ釣りは休みだ。」と自分に言い聞かせるのだが、夜中に目覚めるといつものことだが決心が揺らぐ。朝方になっても暴風雪警報が出たままだったが、付き合いで起きた家内とコーヒーを飲んだ後、午前4時半ごろ、おもむろに家を出る。外では強風が防風林を揺らすゴーと云う音が響いている。幸い道路には雪がなかった。車の運転は楽だ。
 昨日よりも天気予報が悪いせいか酒田北港の水路に沿って設けられた駐車スペースに車の姿はまばらだ。波風が半端ではない。波が沖堤にぶつかり空高く跳ねあがり、それが崩れて一気に水路に落下する。ワイパーを動かさないと飛沫で視野がかすれてしまう。 
 いつものように南側2基目の風車近くに車を停めて道具を車に置いたまま様子見に出てみる。堤防に上がると、突風に何度も体ごと持っていかれそうになる。水路に降りて、ワンスパンほど歩いてみる。昨日と違って人影はまばらだ。釣れている様には見えない。車に戻り、エンジンを掛けたまま釣れるまで待機だ。

 30分ほどしてから車を出て釣り場を覗いてみる。釣り人の動きが活発だ。ハタハタが釣れ出したようだ。取って返し、道具を持って水路に降り、降り口に近いあたりに釣り座を決める。
 仕掛けはラメ入り赤スキンのサビキ。今まで、暗いうちはこれが一番実績がある。足元から探り始めると意外に早く1尾目が上がる。放精を終えてやせ細った小型のオスだ。2~3尾釣れると間が空くパターンが続く。周りに比べて釣れていたせいか左隣に割り込みが入る。彼もポツポツ釣れ始める。何か自分の魚が横取りされているようで不快だ。
 そのうち釣れる間合いが長くなったので思い切って灯りが届く風車の近くに移動する。ハタハタは灯りに寄ってくる習性もあるようだ。街灯の光が届く象潟漁港の水路で、夕方から餌釣りで攻めて結構な数を釣ったこともあった。

 場所替えしてすぐに当たり始めたる。先行して釣っていた両隣並だ。この日はチョイ投げは不発だ。足元に近いところで釣れる。周りが薄っすらと明るくなると、それまでは尻尾などにスレ掛かりだったのが、しっかりとハリを咥えて釣れてくるようになる。
 しかし、あたりがすっかり明るくなるとアタリが遠くなってしまった。サバ皮オーロラに仕掛けを替えても変わらない。それでも、右隣だけは連釣を続けている。仕掛けが違う。様々な光沢のフィルムを重ねて縛ってある。いかにも釣れそうだ。(後で分かったがギャング釣りだった。キラキラフィルムはカモフラージュ。)

 手持ちのコマをすべて出し切っても状況は変わらないので午前8時ごろ納竿。釣果は尻すぼみで、この日は30尾前後だった。ほとんどが1~2年ものの雄。ブリコは1尾だけだった。次からは付けエサ(オキアミS)を持参しようと思っている。


12月15日 酒田北港 ~ 地元 ~  酒田北港

 暴風雪も一段落。酒田北港には釣り人がわんさかと押しかけるに違いないからと早めの午前4時ごろに現地着。予想した通り、水路に沿って設けられた駐車スペースは満杯状態。南側に広がる枯れ草が残る空き地にも車がズラリ。水路に降りて様子を窺う。もう、200人は居るかと思うような人の列が延々と続いている。調子は悪そうだ。ほとんど竿が上がらない。買い物かごに釣り上げたハタハタを入れている人が居た。近くによって覗き込む。50~60尾は入っている。この様子だと、すでに時合は過ぎた感じだ。

 いつものポイントは人がいっぱいで入り込む余地がない。何とか自分の距離感に合った他の場所を見つけて竿を下ろす。仕掛けはラメ入り赤スキン。下バリ2本にオキアミを付ける。直ぐにアタリ、これは行けるかと意気込んだが後が続かない。群れが薄いのか、スレてしまったのか。結局、しびれを切らして夜が明ける前に撤退。痩せた小振りの雄ハタハタ3尾の貧果だった。

 午後天気がさらに回復。家のなかでゴロゴロしていてもしょうがないので地元の漁港に行ってみる。波は3~4mとまだ高い。河口に近いあたりでかなりの数のカモメが乱舞している。流されて浮いているハタハタのブリコを狙っているのだ。防波堤の上にも驚くほど多くのカモメが羽を休めている。防波堤には打ち上げられたブリコも。確実にハタハタは来ている。しかし、どこにいるのか・・・。足元を探りながら先端近くまで行ってみるもまったく気配なし。
 諦めて別の場所に移動。ここは小さな船着き場跡。例年雄ばかりだが実績のある場所だ。先行者が一人竿を出そうとしていた。ポイントはテトラの隙間。よく根掛かりする。私は、別の場所から投げ釣りを試みたが不発。

 そのまま帰るのもなんで、性懲りもなく酒田北港へ。朝方ほどの人出はないが、まだ100人を超す釣り人が並ぶ。南側の一基目と二基目の間を覗くと餌釣りの人がポツポツと上げている。その周りも餌釣りだが、釣れるの3本の置き竿をしている彼だけ。そばにコマセカゴをぶら下げた釣り人がいる。しかし、彼には釣れない。微妙だ。この場所は足元に産卵用のロープが張られている。居残り組を釣るには良いポイントだ。20mほど離れた場所に空きを見つけて竿を下ろす。しかし、アタリは遠かった。周りを眺めてもほとんど釣れていない。結局、2尾釣りあげただけで撤退。第二陣の新群れに期待するしかないようだ。


12月16日 象潟漁港

 酒田北港は尻すぼみで、前日などは2回通って5尾。諦めて、朝方は地元の漁港で探り釣りするもまったく気配なし。夕方、やはり気になって再び地元の漁港を見て回るが、魚影はなし。その足で象潟漁港へ向かう。今日は日曜日。釣り場は大混雑のはずだ。そのため、そろそろ帰り支度を始める人も出てくる午後4時ごろに着くように見計らって出発だ。
 現場に着くも期待は外れて、一番の好ポイントである突堤にはまだ釣り人が鈴なりだ。そこはパスだ。いつものことだが水路は両岸とも空いている。それでも、沖に向かって左岸側はチョイ投げの釣り人が両腕を広げた間隔ぐらいで5人ほど並んでいる。いい場所に入った人は入れ食いだ。ただ、ポイントを外れると魚は釣れず根掛かりばかりになるから、ここを攻めるのは難しい。それでも、過去に少しそこから離れた場所でもそこそこ釣ったこともあったので、端っこに並んで釣り開始。しかし、投入を繰り返すもアタリはなく、そのうち根掛かりで仕掛けを取られてしまう。諦めて、ガラ空きの突堤側の右岸に移動する。

 途中には、突堤の釣り人の車が道の両脇にビッシリ。しょうがなくて、かなり手前に車を停め、しばらく歩いて水路へ。竿を出す頃には薄暗くなりつつあったので、灯りの下に釣り座を置き、サビキにオキアミを付けて餌釣りだ。去年は、この釣りが的中した。今回はそれの検証だ。この釣りはシャクルよりも訊き合わせになる。餌に釣られてか、ほどなくしてアタリが出始める。どれもばっちりハリを咥えて上がってくる。釣りとしては引っ掛けよりはこの方が後味が良い。

 入れ食いとはいかないが、飽きない程度に釣れてくる。そのうち、水路に沿うように強風が吹いてきたが、水路までは大きな波はやってこないので安心して釣りを続ける。気が付くと、周りに3人ほど釣り人が増えていたが距離感を気にするような間隔ではない。ゆったりとマイペースの釣りに専念する。
 正味2時間ほどの釣りだったが30尾ほど釣り上げていた。まずまずだ。しかし、惜しむらくは放精を終えた雄ハタハタ、それも小型の1、2年物ばかりだ。それでも、魚はそこそこ居残っているようなので、ここはまだ楽しめそうだ。

2022年12月23日

されどもマダイ釣り

 マダイ3キロ頭に9尾

 大瀬戸港和丸(長崎)からイサキの浮き流し釣りで出船。仕掛けを長めにとったせいか、はたまた、釣り座のせいか、私だけにマダイがバンバン釣れたのだった。
 風が強くて移動もままならず大島の島影に隠れるようにしての釣りだった。後に、乗っ込みダイの名所アジソネで船頭に聞いた話と一致する。「ここのタイは、15メートル以上に仕掛けを長くしないと食わないよ」と云った言葉と。

 私はタイ釣りがずっと苦手だった。というよりも敬遠してきた釣りだった。何故かと言うと、行っても大抵釣れないのである。小網代港のやまはち丸(三浦半島)が一時タイ釣りをやっていて、下浦沖に遠征した時だった。隣も、その隣も入れ食いモードに突入していると言うのに、私だけが蚊帳の外。その時は二度とタイ釣りはやらないと思ったものだ。この頃は、東京湾の中が何故かタイ釣りで賑わっていた。やまはち丸がホームグランドにしているあの広い相模湾にはタイのポイントもたくさんありそうなのにと思ったが、そうでもないらしかった。確かに、東京湾内には鴨居沖、竹岡沖、久里浜沖、下浦沖とタイ釣りの好ポイントが点々と続く。

 最初のタイ釣りは鴨居の二時丸から仕立てで出た。その頃、私は週刊つりニュースのかけだしのAPCで、紙面に自分の名前が載るのが嬉しかったにちがいない。釣ることと書くことに随分とのめり込むことになる。この日は、客一人と船頭一人の大名釣り。しがないサラリーマンだったから金に余裕があったわけではなかった。それも、まだ30代の若造だったから、分不相応な釣りだった。

 出がけに、同じ船宿で報知APCの野口清さんを見かけた。野口さんは週刊釣りニュースのAPCでもあった。大先輩である。固くなって挨拶をした記憶がある。江戸前の釣りでは野口さんの右に出るAPCはいなかった。その後、10年、20年とAPCをやっていて、野口さんとは随分と親しくさせてもらった。片親が私と同郷だったという縁もあった。年賀状のお返しにご家族の方から葉書を頂いて亡くなったことをはじめて知った。随分昔の話である。

 さて、二時丸でのタイ釣りだが、私はボウズ、船頭が1キロ前後のタイを一尾上げただけの惨憺たる結果だった。さらに、悪いことに、竿を船べりに立てかけて船頭が釣り上げたタイの写真を撮っていたら、竿が海中に引きずり込まれてしまったのである。鴨居はタイのテンヤ釣りで昔から有名だった。この釣りは、向こう合わせのコマセ釣りと違って結構難しい釣りだ。エサ付け、タナ取り、シャクリ、取り込みと、一連の習熟が要る。ど素人に釣れるわけがないのである。

 最初にタイらしいタイを釣ったのは城ケ島沖のイサキ場でだった。イサキを釣っていてぶつぶつと仕掛けが切られることが何度もあった。そこで釣れたばかりの活きたシコイワシを餌に落とし込むと、これが的中し、良型のマダイが釣れたのである。これは2キロ近くあったはずだ。このころになると、釣りの腕もかなり上がっていたようだ。ただ、工夫のない力任せの釣りは、その後も変わることがなかった。仕事が技術職で、常に工夫を強いられていたから、趣味の世界までそれを持ち込みたくなかったのだ.

2022年12月22日

アジ釣りこぼれ話三題

 韓国でもアジはアジ
 
 韓国人も魚が好きだ。ソウルでも他の地方都市でも、飲食街では日本食堂の看板をよく見かける。韓国で、ハングルの看板の洪水の中に漢字が目に付いたら、それは日本食堂か中華料理屋だ。韓国は一時期漢字を捨てた。だから世代によっては漢字の読み書きが出来ない人も居る。

 街中で、看板に「日式」と書いてあれば日本食堂だ。これらの食堂は、何処も刺し身が売りだ。韓国は活魚の流通が日本よりも進んでいる。活けのヒラメ、ソイ、スズキ、ワラサ、スルメイカなどが店頭の大型活魚水槽で泳ぎ回っていた。それらは、市場へ行っても簡単に買える。
 韓国料理屋もそうだが、日本食堂も多種多彩な突き出しが売り物だ。まず、食べきれないほどの様々な料理が目の前に運ばれてくる。これは当地の習慣だ。突き出しが貧弱だと客は二度と来なくなる。突き出しは主人と料理長の度量と腕の見せ所だ。
 これを知っているから、韓国人を日本でもてなす時にはかなり恥ずかしい思いをしてしまう。日本では高級な店ほど小さな器にちょっぴりづづ料理が入って運ばれてくるからだ。
 日式の料理は魚介類が中心だ。活け造りの他に、煮物、焼き物、揚げ物となんでもあった。貝、イカ、タコなどの軟体動物はコチュジャンで和えたものが多かった。現地ではコマと言うサルボウガイやホヤもよく出てきた。種類がはっきりしないがフグもあった。フグの皮のコチュジャン和えがまた美味かった。ケジャンも突き出しの常連だった。これは活きたガザミをぶつ切りにしたものを甘目のコチュジャンで和えたものだ。マグロ専門店にも通った。冷凍マグロの刺し身が大皿で出てきた。カジキの白いトロの部分は、調子に乗って食べ過ぎると、翌朝必ず下痢をした。

 韓国では会社が用意してくれたアパートに住んでいた。もっとも隠れ家も、あってそちらに居るり時間の方が長かったのだが。与えられたアパートには日本語の達者なおばさんが住み込みで働いてくれていた。このおばさんが韓国の家庭料理を毎日つくってくれたから、今では韓国料理には全く違和感がない。韓国生活と縁が切れた今でも、時々刺激のある韓国料理が無性に食べたくなる時があって往生している。
 アパートは京畿道水原市と言う所にあった。ソウルから車で小一時間ほどのところだ。ここは三星財閥の企業城下町だった。水原市はカルビ焼きの本場でもあった。古い民家の庭で素朴な造りの卓を囲んで食べるカルビ焼きはなかなか情緒があってよかった。ここのカルビ焼きは、タレに漬け込んだ骨付きの肉を網の上に巻き物を広げる様にして焼く。両面が程よく焼き上がったら、店のものが裁ちバサミで食べ易い大きさにジョキジョキと切ってくれる。冷麺にも、この裁ちバサミが活躍する。最初の頃はこれがおかしくて何度も吹き出しそうになったものだ。異文化とはそんなものらしい。
 アパートのおばさんは頭のよい人だった。最初はいろいろ質問しながら日本料理もどきを造ってくれていた。しかし、そのうちだんだんと韓国料理が増えていった。最後はおばさんのペースに巻込まれて、大の韓国料理好きになっていた。
 このおばさんの一番の難題が魚料理だった。市場で買う魚は鮮度のばらつきが極めて大きかった。大半が冷凍モノだが、流通も保管も日本ほどは厳密に管理されていなかった。おばさんの買ってくる魚は大抵私の判定基準を満足しないのだ。辛うじて合格ラインに乗っかるのが、アジとカレイと縞ホッケしかなかった。それらも濃いタレの煮付けにして食べるのがやっとだった。アジは40cmもある大アジだった。そのアジだが、こちらでもやはり「アジ」だった。日本の植民地時代の名残りに違いない。
 一番の楽しみはキムジャンの頃に、仕込み中の白菜と食べる生牡蠣だった。塩漬けの白菜の甘さ、コチュジャンの刺激、生牡蠣の旨みがよく調和した。私は4度これを体験した。

 Aさんのこと
 
 Aさんは片足が悪かった。いつも引きずる様にして歩いた。彼との出会いは20代の後半だった。私よりは4、5歳上だっただろうか。痩せていて女のような優しい顔していたが、心や体に傷を持つ人が時折見せる居直りが気になることがあった。エリート社員ではなかったが、面倒見がいいこともあって、周りからは一目置かれる存在だった。
 私を最初にアジ釣りに誘ってくれたのが彼だった。会社の釣り会で知り合ったのが、そもそものきっかけだった。会社の釣り好きたちのほとんどは、社長が主催する社内の釣り大会にしか興味を示さなかった。そのことに関して、彼はおおいに不満を持っていた。「俺は行かない」と社内の釣り大会には大抵出ようとはしなかった。その彼が一人でせっせと通っていたのが、小柴港から出船するアジ釣りだった。
 月一回開催される社内釣り大会は、オーナー社長のポケットマネーで運営されていた。参加費は無料だった。道具代もただだし、弁当、賞品付きで、至れり尽せりだった。会社の幹部たちも揃って参加した。魚に関心がなくても、野心がある社員には絶好の社交場だった。社長が急逝してからは参加者は激減した。
 Aさんの釣りは欲のないものだった。何匹か釣れるとワンカップを取り出し、竿を放り出したままちびりちびりとやりはじめるのだった。1本飲み終わる頃には、もうこっくりこっくりと舟を漕いでいた。ゆったりとした、いい光景だった。「船代分ぐらいは釣らなきゃ」としゃかりきになっている自分が恥ずかしかった。

 帰路、小柴港にほど近い彼の家に立ち寄り、よく夕飯をご馳走になった。美人の姉が居ると評判で期待して行ったものだが、残念ながら一度も顔を会わせたことがなかった。おふくろさんがまた感じのいい人だった。早くにご主人をなくしたとも聞いたが、開けっぴろげで元気なおばさんだった。
 カワハギ釣りの帰りだった。鍋を囲んでカワハギとウマヅラハギとの違いを口角泡を飛ばしながら議論を始めたことがあった。たわいもない話である。「調理してしまえば、鍋でも刺し身でも違いはない」と言う結論だった。肝が美味いのだと言うこともこの時に知った。私は内陸育ちで、それまで魚のことはあまり知らなかった。
 Aさんは私より先に退職して自営の道を選んだ。その頃にはほとんど没交渉になっていた。会社の中で、些細なことでけんかをしたことが引っかかっていた。送別会にも出なかったような気がする。

 我々の時代は、まさに変化の時代だった。特定の価値観にしがみついているとたちまち置き去りにされた。周囲の変化に盲目的についていくしかなかった。周りの景色も、取り巻く人々も次々と現れては消えていった。
 今50代(当時)になってしまった。懐かしさやら怨みやら後悔やら感謝やらが記憶の中で錯綜している。

 牛乳盗人
 
 沖釣りを始めた頃は、横浜の金沢区に住んでいた。定宿がある小柴港までは京浜急行で2駅の近さだった。所帯を持ったばかりで1DKの貸しアパート住まいだった。経済的な余裕などなかったはずだが、何かに追いたてられるように毎月4、5回は海に出た。

 その頃の私の定宿は、小柴港の小金丸、久里浜港のムツ六、松輪港の棒面丸だった。小金丸は自宅から近かったせいもありよく通った。
金沢文庫駅で降りて、鎌倉時代の古刹称名寺へとたどる狭い小道を20分も歩くと海岸に出た。道の両側は閑静な住宅地だった。秋口には金木犀がよく香った。早朝の門前町はひっそりとしていつも静かだった。
 海岸に落込んだ崖を刳り貫いた暗いトンネルを抜けると、小柴の集落があった。底引き網漁の盛んな漁港で、赤貝、シャコ、カレイ、スズキなどがよく上がっていた。カレイやスズキは水槽に活けてあって、これを行き帰りに覗き込むのも楽しみの一つだった。
 活魚水槽を積んだトラックが狭い道を頻繁に出入りしていた。シャコは釜茹でされ、殻を剥かれ、木箱のきれいに並べられて出荷されていった。

 小金丸はアジ釣り専門だった。船頭は結婚したばかりのマモルさんだった。当時は空ッパリの胴付き仕掛けでアジを釣った。勿論コマセなどは使わなかった。魚探を見ながら群れを追いかけては仕掛けを降ろす忙しい釣りだった。
 船長の合図で一斉に仕掛けを降ろし、オモリが底に着いたら一気に巻き上げてくる。これの繰り返しだった。仕掛が降りる時にも食ってくるし、巻き上げている間にも食ってきた。2、3回も仕掛けを上げ下げすると魚はどっかに移動してしまう。「上げ!」で移動だ。
 初心者だったから、そんなには釣れなかった。ベテランは釣りのノウハウに関しては貝のように口が固かった。今みたいに釣り新聞も釣り雑誌も普及していなかったから、釣りの知識も乏しかった。釣りの腕前は遅遅として進歩しなかった。それでも、魚屋に並べてあった魚が足元のバケツの中で元気に泳ぎまわっているのを見るのは感動的だった。

 ある日、嫌なものを見てしまった。称名寺の通りは、いつもの朝と変わらず、人通りもなく閑散としていた。ただその日は珍しく先行者が一人居た。彼とは目鼻がはっきりしないくらい離れていた。勤め人のようだった。夜勤明けなのかもしれない。何駅か先に自動車工場があった。年格好は私よりも若そうだ。その彼が、道沿いの民家の門に近づくと、すっと腕を伸ばして何かを掴んだのである。いかにも自然な動作だった。と、天を仰ぎ見るように首を後に倒して、右手に掴んだものを飲み下す仕種をした。歩きながらである。
 それは配達された牛乳のようだった。飲み干してから、その男は近くの家の塀の上にその空き瓶を置いた。そして、ぐるりと首を廻して私の方を振り返った。相当離れていたが、一瞬目が合ったような気がした。「何だ!文句あんのか!」そう開きなおっているようにも見えた。
 私も20代の終わりになっていた。漸く、どうしようもない社会の仕組みに目覚め始めた時期だった。出来れば、いつまでも青二才でいたかった。しかし、現実はそれを許さなかった。一匹また一匹と自分の中に鬼を飼わなければ生きていけなかった。だからこそひたすら釣りに出掛けるしかなかった。自律神経失調症と診断されたのもその頃のことだった。

2022年12月15日

船でのアジ釣り

アジを知る(東京・相模湾の船釣り)

 キアジは不漁続き
 
 春先から初夏にかけて、久里浜や観音崎沖で幅広の中、大アジが釣れる。これが楽しみの一つだった。このアジは脂がこってりと乗っていて、刺し身やタタキにすると絶品だった。
 何時だったか、浦賀中央と描かれたブイの周りで大釣りしたことがあった。まだ、サビキ釣りが全盛のころだった。コマセカゴをオモリのすぐ上に付けること(下カゴ)が流行った時期でもあった。ミヨシに陣取っていたが、丁度潮先にあたったようだ。他の人の倍のペースで釣れた。入れ食いタイムは小一時間ほどだったが、30cm前後の良型が10尾以上も釣れた。くどいほど脂が乗っているアジもいることを、この時初めて知った。
 ところが、近年このアジがほとんど釣れなくなってしまった。このアジが釣れるポイントは水深が30~60mのところだ。いわゆる乗っ込みのアジらしいが、金色がかった体色をしていた。これがキアジと呼ばれるアジの中のアジなのだが、中には黒っぽい横縞があるのもいる。これは居着きのアジだと言われている。

 秋から冬にかけては、アジ場の水深は100m前後にもなる。ここで釣れるアジは大抵エラブタの辺りが黒いノドグロと呼ばれている種類だ。春は抱卵し、水深60m前後まで上がってくるが、この時期は水っぽくて旨くない。食べるなら秋から冬だ。この頃はノドグロも少しは脂が乗っている。しかし、キアジには逆立ちしても及ばない。

 湾内のアジ釣りは3月下旬頃から

 湾内では3月の下旬頃から、脂が乗った中、大アジが釣れ始める。しかし、近年はがっくりと魚が減ってしまった。安浦、走水、鴨居港の2、3の船宿がこのアジを釣らせてくれるだけになってしまった。走水や観音崎沖のポイントは潮が速い場所だ。潮が緩む頃合いを見計らって本命の場所を釣ることになる。
 随分と前のことだが、このアジをたくさん釣ったことがあった。幸せな気分で陸の方に視線を移したら、観音崎の小高い丘には山桜の花が点々と灯を点したように咲いているのが見えていた。この辺の山桜は4月10日前後に満開となる。この頃になると毎年このアジ釣りのことを思い出す。

 この時期の釣り場の水深は5、60mだ。大潮廻りは潮が速くてとても釣りにならない。走水沖は特にそうだ。ベテランたちは潮廻りを選んで釣行する。早出の船なら6時から8時ぐらいまでに潮止まりがあるある日を、午後船なら2時から3時ぐらいに潮止まりがある潮廻りを選ぶのである。小潮廻りは釣りやすい潮の日が多いが、概して釣れないものだ。マアジの25~30cm級が揃う。よく太っていて、脂の乗りは最高だ。早春は湾内の水温が未だ冷たくて、不安定な時期である。どうしても、ムラっ気が多くなる。
 だから、最近は安定して釣れる剣崎や富浦方面に走る船が多くなった。こちらは水深が80m前後とやや深い。釣れるアジは25cm前後の中アジが主体になる。釣った時は結構大きく見える。しかし、クーラーボックスに入れて氷水で〆ると、一回り小さくなってしまうのがここのアジの七不思議だ。まあ、沖合いで釣れるアジは大抵がそうだが。

 初夏は30m前後の浅場が狙い目

 アジの旬は初夏である。初夏になると岸近くの浅場の根周りでアジが釣れだす。久里浜港の入り口にいいポイントがあった。少年院の沖の辺りから大塚根にかけてがそうだ。ここいらの水深は、深い所でも30m前後しかない。
 釣れるアジは20~23cmほどだが、これが脂が乗っていて最高に旨い。釣れたてでも、包丁を入れると身が崩れてしまうほどトロトロだ。このアジの束釣りを堪能したこともあった。船上に居ると焼けるように暑い頃だった。
 三浦海岸側に入った東電沖にもいいポイントが何個所かある。根がごつごつしていて、ちょっと油断するとよく根掛かりした。ここは小型多かった。

 鴨居沖のカモメ団地の前の海も10から15mの水深しかないが、中、小アジ釣りの好ポイントだ。ここでは時期になるとヒラメやワラサが釣れる。凪ぎの日はボートでも行けるような近場だ。私も浦賀の首切り場の下から手漕ぎのボートで出て、岸よりのポイントを狙ったことがあった。夕マズメの一時だったが、何度か入れ食いを堪能した。

 竹岡沖も中、小あじ釣りの有数の釣り場だった。何の魚でもそうだが、アジもその年によって湧きが随分と違う。好、不漁が激しい。過去に、大地震があった年はアジの漁獲が多かったなどと言う統計もある。ここ数年アジの漁獲は減っているようだから地震の心配は要らない様だ。

 以前金谷前のポイントが全滅したことがあった。ここはアジがコマセに群がるのが見えるほど浅いポイントだった。原因は海底に溜まったコマセだった。釣り船から撒かれた大量のコマセが堆積して根が荒れてしまった結果だった。潮通しが悪い場所だとこんなことも起きる。

 相模湾は深場専門狙い
 
 相模湾の葉山・鐙摺港は、昔からアジ、サバ釣りで有名だ。私も入門当初はよく通った。一応外海なので、天候が荒れると結構なうねりが出る。台風シーズンと秋サバの時期は重なる。南の海にいる台風の余波で船がゆれ、丸一日マグロになっていたことも何度かあった。その時の排気ガスとコマセとサバの青臭い匂いが、今でも記憶に残っている。
 この辺りの船宿が狙うポイントは、葉山沖、三戸輪沖、城ケ島沖、二宮沖と広範だ。年間を通して80~110mの深場を狙う。狙いは中、大アジだが、釣り物が少なくなる晩秋から冬場にかけてが最盛期だ。
 釣れるアジはノドグロと呼ばれている類だが、秋から冬にかけては脂が乗って旨くなる。この時期は数も釣れる。一番難しいのが、2、3月の水温が低下する時期だ。魚が口を使わない日がある。
 住んでいる場所が東京湾側ということもあって、最近は行っていない。釣り物が増えたせいで、アジ、サバを専門に釣りに行く機会がぐんと減ってしまったこともある。

 冬場は金谷沖の小アジがお勧め
 
 金谷沖のアジはその昔将軍家への献上品でもあったらしい。ここで釣れるのは小アジだが、味がいいことでは知る人ぞ知るで有名だ。 神奈川県側から金谷港に行くには、久里浜港からフェリーを利用する。始発か第2便に乗れば出船時間に間に合う。船宿によっては、事前に電話を入れると金谷港まで迎えに来てくれることもある。
 ここは、湾奥の小アジが釣れなくなる冬場が狙い目だ。この辺は黒潮本流の影響で、冬でもそれほど水温が下がらない様だ。この近辺に珊瑚の群棲地があるのもうなずける。

 小アジだから15本バリのサビキ仕掛けで釣る。水深が20~30mと浅いし、タナも10m前後だから能率がいい。殆どが15~20cmの小アジだが、束釣りは当たり前で、ベテランは2束、3束と釣上げる。たまにだが25cm級の中アジもくる。
 良型は上層のタナで食ってくることが多い。ビシ釣りで、この良型を専門に狙う手もあるが、これをやるとどうしても数が落ちるので躊躇してしまう。
 小さいながらも適度に脂が乗っている。身が甘いのがここのアジの特徴でもある。背中が黄色の、正真正銘の黄アジだ。深場のアジとは一味違う。刺し身やタタキは勿論だが、塩焼き、唐揚げ、南蛮漬けと重宝する。この小アジは半身付けの握り寿司や押し寿司にしてもいける。

 湾内の中、大アジは底から1~2ヒロ、沖合いは3~4ヒロを釣る
 
 アジ釣りもタナ取りが釣果を決する。湾内の浅場のポイントと沖合いの深場のポイントでは、タナの取り方が違ってくる。久里浜沖や観音崎沖の30~60mダチだと、大抵底から1~2ヒロのタナで釣れる。
 大アジなどはむしろベタ底で釣れることが多い。これは潮の速さとも大いに関係する。ベタ底狙いのつもりでも、仕掛け自体は潮に流されて舞い上がった状態の時もあるからだ。
 ベタ底でコマセを撒く。そのまま糸を止めて待つ。潮の勢いでビシが少しづつ浮き上がってくる。仕掛けが丁度タナに運ばれたところでググッとくる。これが、湾内の潮の速いポイントで中、大アジの釣れ方だ。

 剣崎や富浦沖では、タナは通常でも3~4ヒロだ。コマセが効いてくると、6~7ヒロもタナが上がってくることもある。剣崎沖の沈船周りでは水面からタナを測る。底まで下ろすと根掛かりするからだ。海底の起伏が激しい場所で、船の移動に伴ってタナも変わる。だから、タナをマメに探る人が多く釣ることになる。このポイントには常に魚がついているらしく、ポイントに入れる日は大抵20尾、30尾と満足する数が釣れる。中アジが主体だ。湾内で釣れるアジに比べたら、残念ながら味は格段に落ちる。

 中アジは細はリスで
 
 アジは目のいい魚だ。潮が澄むと途端に釣れなくなることが多い。だから、ハリスの選定にも随分と神経を使う。この魚は潮が濁っている時が狙い目だ。
 今はクッションゴムなどもあるから、25cmぐらいまでなら1号のハリスで充分上がる。直ぐ撚りが来て頻繁に取り替えなければならないが、小アジなら0.8号でもいい。食い渋っているような日は極力細ハリスを使うようにする。しかし、サバが廻っている時は1.5号が限界だ。
 細いハリスにすると仕掛けの損傷が激しくなる。私はアジ釣りに出掛ける時は、通常でも仕掛けを20組は作っていく。オマツリしたら潔く自分から切ってしまうことにしている。オマツリ解きでぐずぐずやっていると、その場の人間関係までおかしくなるからだ。
 仕掛けが撚れてくると魚の食いも途端に悪くなるから、解いてもあまり意味がないこともある。しかし、ハリスの値段も馬鹿にならないから頭が痛いのも事実だ。

 掛かり釣りならトモに座る

 コマセ釣りはコマセが流れて来る位置に陣取った方が断然有利だ。掛かり釣りでは、船はアンカーロープに引っ張られて安定する。だから、必ず潮先は艫(とも)側になる。ただ、風が出てくると船を安定させる為にスパンカーを張る。この時船首は風が吹いてくる方向を向き、風向きと潮の流れとが合成された方向に船が動かされるので、一概には言えなくなる。
 魚は流れてくる餌に向かって泳いでいる。艫に向かってコマセは絶え間なく流れていく。アジはそのコマセに群がるから、群れは船首を頂点とする三角形に近い分布になる。流れの下手ほど魚影が濃くなる勘定だ。

 早起きは三文の得だ。早めに到着して、艫に近い釣り座を確保する。たくさん釣りたい人にはこれがお勧めだ。しかし、船宿によっては、前日から竿が立っていたりする。この業界でも官民の癒着がある。 
 私は、一番ミヨシに座ることが多い。そこだと、オマツリが多い時は増しオモリを付けてやれば仲間に入らなくて済む。釣果もさることながら、釣りの時ぐらい世智辛い人間関係から開放されたいとつい思ってしまう。船を流しながら釣る場合は、潮先は艫だミヨシだと一概には言えなくなる。念のために。

 ビシ釣り仕掛けはアジの型で使い分ける
 
 仕掛けの全長は2m、枝スの長さは30cm、枝スの間隔は60~70cm。2~3本バリ。これが中、大アジ仕掛けの標準だ。ハリス、幹糸とも、太さは1.5号か2号を使用する。

 鴨居沖の浅場で小アジを釣っていた時のことだ。他の客にはバンバン釣れているのに、あまり釣れていない私を見かねて、平作丸のヨッチャンが自分で作った仕掛けを渡してくれた。枝スの長さが10cm、枝スの間隔が40cmでハリ数が5本の仕掛けだった。これが的中して、交換した途端に入れ食いになった。この日のアジはコマセに突っ込んで来るような食いだった。それまでも、コマセカゴに近いハリに良く食ってきていた。コマセの煙幕の中に入るカゴに近いハリに食いつきが良かったのだ。
 

 走水沖は高級外道が楽しみ

  ヒラメ、平成4年7月16日、走水沖、全長75cm、重量4.95キロと書かれた魚拓が手元ある。これは、走水港を出たすぐのところにあるアジ場で私が釣ったものだ。
 潮の流れが速い走水沖では、潮が緩む潮時を見計らって看板の大アジを釣らせる。潮が速くなると、際(きわ)に戻り中、小アジのお土産釣りとなる。
 走水沖の沖合いのポイントはいつでも潮が速いので有名だ。ここは潮止まりの一瞬が勝負だ。潮が緩みだすと途端に魚がバタバタと食ってくる。緩んだとは言え、まだまだ潮は流れている。オマツリが続出だ。明らかにタイと思われるアタリがあった。しかし、途中でオマツリに巻込まればれてしまった。魚が食っているのに思うように釣りが出来ない、これがいつものパターンだ。

 ここら辺はヒラメも多い。最盛期にはこれを専門に狙う釣り人もいるほど、釣れる確率が高い。常連さんには、釣れるポイントに移動すると「...やってみな」と船長が耳打ちする。常連さんの既得権益だ。
 その日沖の大アジは絶不調だった。際(きわ)のポイントを転々としながら小アジを釣っていた。帰港間際のポイントが港前だった。ここで20cm前後のアジが入れ食いになった。と、ロープを引っかけたような鈍い重量感が手元に伝わってきた。
 ジリジリとリールを巻き上げに掛かる。それに連れて、その重い物体も少しづつ上がってくる。手元に伝わる重量感が、じわっとじわっと波動のようにゆっくりと変化する。魚にしては随分とのんびりした波長だ。水深は20mぐらいしかなかった。10mぐらいまでは、そんな調子が続いた。
 それからだ。激しい突っ込みが繰り返しやってきた。まるで大波にさらわれる時のような力強い引きだ。他の客たちも、この異変に気がついたらしい。注目の視線が痛いほどだ。ああ、いい気分だ。
 「もしかしたら....」全部は言わない。わざとぼかす。断言すると途端に逃げられそうで恐かった。

 水面に近くなると、突っ込みは更に激しくなった。体ごと持っていかれそうになる。アジ釣りの仕掛けだから、ハリスは1.5号だ。相手が突っ込んだらリールの逆転レバーをフリーにして、素早く糸を送り込んでやる。根に潜られたらアウトだ。突っ込みが止まったら、急いで巻きに掛かる。短気者が、耐えに耐えた。随分と長い時間に思えた。
 船頭がタモを抱えて側に仁王立ちになる。ボーと浮かび上がったのは、まさにモンスターだった。私には、それが畳一畳分にも大きく見えた。船頭が用意した大アジ用のタモには頭さえ入りそうになかった。船頭は大ダモを取りに急いで艫に走る。その間もモンスターは何度も海中へ突っ込もうとする。

 タモ入れをこんなに長く感じたのは始めてだった。ところが、船頭が繰り出したタモは見事な空振りになってしまった。「馬鹿野郎...」思わず出かかった言葉を飲み込んだ。運が良かった。そのモンスターは僅かにゆらっと体を震わせただけで逃げなかった。私には、船頭がわざと外したように思えてならなかった。この船頭は偏屈者で有名だった。
 かくして、そのモンスターは船上に取り込まれ、何度か足元でバタンバタンと最後の悪あがきを試みた。しかし、もう遅かった。それは確実に私のものになってしまっていた。
 私は膝ががくがくしているのを意識した。長く釣りをやってきたが、こんな状態になったのは初めてだった。まさに、偶然のそのまた偶然だった。

 7月に入るとジンタが釣れだす
 
 ジンタとはアジの幼魚の呼び名だ。大体5~10cmぐらいの大きさのものをこう呼ぶ。7月頃になると、近海ものが魚屋の店頭にも並ぶ。湾奥の船はこれをサビキ仕掛けで釣らせる。
 夏から秋口にかけて、釣り場が盤洲、中の瀬、大貫沖などの湾奥に形成される。この頃になると、キスの乗合船で青イソメの餌に食いついてくるようになる。サッパ、小サバ、カマスなども一緒に釣れる。初心者がワイワイガヤガヤやりながら釣るには最適だ。
 食べてそんなに旨いものではない。唐揚げか南蛮漬けにするぐらいしか料理方法も思いつかない。真面目にやると1束は釣れる。しかし、自然のものだから潮況によっては全く釣れない日もある。年による差も大きい。15cm前後に成長する秋口までこの釣りは続くが、その頃になるとイナダの群れが附くようになる。生きたアジを餌に、このイナダを狙うのがまた楽しみだ。

 小イサキにしろ、ワカシにしろ、このジンタにしろ、規制を設けて釣らない様にした方がいいといつも思っている。しかし、職漁船の引き網で一網打尽にされれば結局は同じことだ。かって、久里浜沖のハナダイが網で根こそぎやられたことがあった。魚が戻ってくるまで何年間もかかったことがあった。外房の方でも、そんなことがあった。網を引くと根を壊してしまうこともあるらしい。

 10月頃から中深場の中、大アジ狙いになる
 
 晩秋から冬場にかけては、観音崎、久里浜、浮島、富浦、剣崎沖の60~100mダチを狙う。25cm級の中アジから40cm級の大アジまで釣れる。完全な大アジ狙いだと数がでないから、中アジのポイントと交互に攻める。この釣りで苦労するのがサバ避け。40cm級の真サバなら大歓迎だが、30cm前後のゴマサバが多い。これは大抵痩せていてちっとも旨くない。これが中層で入れ掛かりになり、仕掛けがより深いアジのタナまで降りなくなってしまう。
 何とか底まで仕掛けを送り込みアジを食わせるのだが、巻き上げてくる途中で残りのハリにサバが食いつき、引っ掻き回されてしまう。サバは横走りして暴れる。せっかく掛かったアジも、これで大概振り落とされてしまう。よく、釣れあがったサバを船縁に叩き付けて鬱憤を晴らしている人がいる。気持ちは良く分かるが、周りで見ていてあまり気持ちのいい光景ではないものだ。

 サバはアジよりも水温に敏感だ。水温が下がると一斉に移動して、一匹も居なくなることがる。潮の濁りにも敏感だ。比較的明るいところを好むようだ。サバがアジの深ダナで釣れるのは、底潮が澄んでいる証拠だ。だから、アジの食いが悪いのは、サバだけのせいではないのだ。

 ビシの目とコマセの関係

 ビシが底に着く前にコマセが無くなってしまうようだとアジは釣れない。コマセカゴの選び方や使い方は非常に重要だ。イワシのミンチ用にはアンドンビシが一般的だ。アンドンビシには昔からの網目と最近開発された横目とがある。ビシの掃除に関していえば横目の方が楽だが、他の使い勝手ならどちらでも大差がない。
 水深によって大きさを使い分けるが、竿ビシ釣りの場合には5、60mまでなら100号を、それ以上深い所では130号を使う。手釣りでは27号程度の道糸を使うので糸ふけが大きくなる。この場合は150号を使用する。

 アンドンビシの供給元は何社もないから、網目の大きさは大体統一されている。ところが、ミンチのひきかたは各船宿で全部違う。一番困るのが水っぽいものと粘りっけのない奴だ。これだと、底まで届く間にコマセカゴの中が空っぽになってしまう。通常は冷凍のイワシを解凍しておいて、ミキサーでミンチにする。ところが、忙しい時は凍ったままのものをミンチにすることがある。これは溶けると下痢便のようなコマセになる。これを使う時は、凍ったままのをカゴに詰めたり、ビニールの小片でカゴの内側を覆ったりして、落下途中のコマセのロスを少なくするしかない。コマセを詰め替える為にビシを引き上げた時、カゴの中がすっかり空になっているようだとアジはまず釣れないと思った方がいい。

 タナの探り方(湾内)
 
 入門したての頃は「底ダチを取ったら1ヒロ上げてコマセを撒き、さらに半ピロ上げてアタリを待つ」と教わった。1ヒロは1.5mに相当する。人間の体で言えば、両腕を広げた長さに相当する。
 ヤビキと言うのもある。矢をつがえて、的に向かって構えた格好を想像すればいい。一方の腕は一杯に伸ばし、もう片方は握りこぶしが脇腹に来る。広げた片方の手の指先からもう一方の握った手の拳までの長さを言い、約1mに相当する。仕掛け作りも、人間の体のいろんな部分を基準にすることがある。

 最初の頃は、何も考えずに何処へ行っても言われた通りにやっていた。当時の仕掛けの全長は1ヒロだった。ダラッと垂れた状態なら、下バリは底から1m前後を漂っている計算になる。しかし、実際のところは、潮に流されて多少は斜めになるはずだから、もう少し上がっている可能性がある。

 当時は、中、大アジ釣りもサビキ釣りだった。オモリを底に着け、サビキの上部に付けたコマセカゴ(これはオモリなしだ)を限りなく底近くまで降ろしてやる。全長1.8mある仕掛けは袋状に弛む。そこでガサガサとコマセを振るのである。そして、聞くような感じで竿を立ててやる。アジは大抵この時にアタル。底から1m前後のハリに一番掛かってきたような気がする。
 逆さサビキが流行ったことがあった。オモリの直ぐ上にコマセカゴを附けるやり方だ。タナが低い大アジには向いていた。コマセを撒いたらフワッと仕掛けを弛ませてやるのがコツだった。
 最近はほとんどビシ釣りに変わってしまった。仕掛けの全長が長くなる傾向があるが、これは餌取り対策の意味合いが一番強い。仕掛の全長が変われば当然タナの取り方が変わる。至極当然の話だが、気が付いたのはつい最近のことだ。

 タナの探り方(沖合い)
 
 船頭の指示ダナは、通常3~4ヒロだが、コマセが効いてくる5~6ヒロまで上がってくる。水温や潮の濁り具合、天候も関係するから、最後は臨機応変に自分で探らなければならない。
 サバが底の方で釣れる時は、底潮が澄んでいる証拠だ。この様な条件の時はアジはあまり釣れないものだ。サバは水温にも敏感だ。潮が冷たくなると何処かへ移動してしまう。
 剣崎沖の沈船周りで釣る時は、底まで仕掛けを下ろすと根掛かりする事が多い。ここでは水面からタナが指示されるから、底までは降ろさない様にした方がいい。狙うタナによっても釣れるアジのサイズが違ってくる。大型の群れは上層にいる場合が多い。集中攻撃せずに、タナをいろいろ探った方がいい。
 同じポイントに入っていても、潮時によってタナが変わる。魚自体が移動する場合もあれば、船の移動に伴う水深の変化もある。食いが悪くなったらタナボケしない程度に、タナを探り直してみることだ。潮が効いてくると、アジのタナは上ずってくる傾向がある。
 ビシが舞い上がるほどの強い潮流の時もある。このような時は、底に着いたビシが浮き上がり、タナに到達した時点で食わせるようにイメージする。

 潮が濁ったらチャンス
 
 アジは目のいい魚だから潮が澄んだらお手上げだ。だから、時化後の濁り潮で荒食いしたりする。潮が流れない日も最悪だ。湾内では、潮廻りと潮の速さとは大いに関係がある。大潮だと上げ潮下げ潮がきつくなる。釣りにくいが、この方が魚の食いはいい。しかし、沖合いでは黒潮本流の影響も受けるので、そう単純ではない。我々素人には、なかなか読めない部分である。
 水温が急変した時も駄目だ。水温の変化は風がもたらす場合が多い。気候が急変した直後はアジ釣りには行かない方がいいかもしれない。アジは釣れだしたら、天候や潮が急変しない限り1週間ぐらいはそれが持続する。釣り情報を見てから駆けつけても、すぐいなくなるイカなどと違って充分に間に合うものだ。

 サバ避け対策
 
 誰でもサバよりはアジが釣りたい。しかし、大抵アジよりはサバの群れの方が優勢だ。それに、サバの遊泳層はアジのそれよりも高いのが普通だ。アジの遊泳層に仕掛けが届く前にサバが食いついてしまう。漸くアジが釣れても、巻き上げる途中でサバが食いつき暴れまわり、唇の弱いアジを振り落としてしまうこともある。

 サバ避け対策がいろいろと考えられている。まず、魚の目を引く夜光玉を外す。それでも駄目なら空バリにする。それで駄目なら1本バリにする。ハリも金ではなくて銀にする。などなど...。
 私はハリスの長さを長くするのも手だと思っている。食いしん坊のサバはコマセの煙幕に突っ込んでくる。コマセの煙幕にサバを引き付けておいて、ハリをアジの居るところまで運ぶやり方だ。もちろんこの時は1本バリにする。

 細ハリスにする作戦を考えた事もあった。サバが掛かったら直ぐ切れてしまう1号ぐらいの枝ハリスにする。そうすると、せっかく掛かったアジを振り落とされる事も無くなるだろうと考えたのである。いろいろ考えているだけでも、釣りに行った気分になり、無性に楽しくなる。

 付け餌の工夫を

 付け餌は紅染のイカタンが一般的だが、樹脂で作った人工のイカタンもある。釣り具メーカーに勤めている知人に切れ端を大量に貰った事があった。何度か使ってみたがそれほどインパクトがなかっので、使わずにいる。

 青イソメが非常に効果的な日がある。何でも青イソメは水中で光って魚の好奇心を引くらしい。私自身が潜ってこの目で見たわけではないので、確証はないが。

 春先、イサキ釣りの外道でアジがたくさん釣れる事がある。ウイリーもアジ釣りには効果があるようだ。サバもウイリーが大好きだ。だから、サバの多い日にはウイリーは使えなくなる。そうなると、イサキ釣りでもイカ玉の出番だ。イサキ釣りの場合は、赤くは染めていないが。

 大アジや外道のマダイに効果的なのが、イワシのミンチの中に入っている通称キモと謂われている小豆粒大の内蔵。これを暇な時にミンチの中から選び出しておいて使うようにする。筋肉質で硬いからハリに刺しても充分使える。

2022年12月14日

カワハギ釣りの大会で初心者の私が赤井三郎社長を負かした話

 赤井電機(AKAI)に途中入社したての頃、社内のカワハギ釣り大会に参加した。参加者にはハゼ、シロギス、カワハギなどの小物釣りでは都釣連の大会でも毎回上位入賞するような名人がゴロゴロ入っていた。
 この日は城ケ島が集合場所だった。船頭を入れて3、4人しか乗れない小型船に分乗して、城ケ島周りを攻めることになった。参加者は全部で30人ほどはいただろうか?
 私はそれまでカワハギの顔も見たことがなかった。その私が7尾釣上げて優勝してしまったのである。夏の潮で、海は茶色に濁っていた。潮が濁っているとカワハギはあまり釣れないものだ。それまでの私は渓流釣り師だった。カワハギ釣りにはヤマメや岩魚釣りに通ずるところがあったようだ。

 社員にとって、赤井社長は一代で大田区の町工場を東証一部上場企業につくりあげた神様のような人であった。新入社員の私は、その赤井さん(誰でもさん付けで呼ぶのがこの会社の社風だった)の手から直に優勝カップを手渡され、握手までしてもらったのだった。結構感激したことを覚えている。この時の赤井さんの手が女のように案外ふっくらとして軟らかかった。このことが随分と印象深かったらしく今でもはっきりと覚えている。
 赤井さんは、ドルショックの年のクリスマスイブに志賀高原のホテルで急死した。まだ50代の働き盛りだった。戦地で掛かったマラリアの後遺症で心臓が悪かったらしい。会社では様々な噂も流れたが、週刊誌は彼の個人的なことは書かなかった。我々一般社員も、等々力の豪邸に焼香に行った。隣は児玉誉士夫邸だった。

 その後赤井電機は急坂を転げ落ちるようにして衰退していった。銀行筋には玉ねぎの皮をむくように資産を剥ぎ取られ、再建の名目で送り込まれた名うての乗っ取り屋たちが会社を引っ掻き回し続けた。多くの幹部たちは彼らに擦り寄り、遺産を食いつぶし、会社の寿命を縮める手助けをした。
 そんな状況下でもAKAIは20年近くも生き長らえた。しかし、今は(当時)香港企業に買収されて、更に転がされ、名前こそそのままだが得体の知れぬ会社に成り下がってしまった。
 赤井氏は、生前何度か等々力の豪邸に我々独身社員を招待してくれた。その時は貿易部の女子社員なども一緒だった。彼流の粋な計らいだったが、それがきっかけでカップルができたと言う話は聞かなかった。
 壁にはめ込まれたガラス棚には竹竿の逸品が、それこそ、ごそっと飾られていた。その中の何本かは、あの世で活躍しているはずだ。

2022年12月05日

イトウサンとのこと~和竿と川崎堀之内~

 カワハギ釣りに高価な和竿の効果を説く人も居る。しかし、その違いが分かるには何十年もかかるらしいから、私などには無縁のことかもしれない。それでも、私は1本だけだがカワハギ用の和竿を持っていたことがあった。セミ鯨の穂先の付いた奴だった。捕鯨が禁止されて、鯨のひげも手に入りにくくなっていた時代だった。金沢八景の駅裏の釣具屋で、月給の3割近くもはたいて買ったものだった。

 そのうち手入れが面倒くさくなって、イトウさんに上げてしまった。イトウさんには一度だけだが借りがあった。それがずっと尾を引いていたから、竿を手放した時は正直ホッとして肩の荷が下りた感じだった。
 イトウさんは多少アル中気味なところがあった。自称大森の今は無いが老舗料亭の御曹司ということになっていたが実際のところはわからなかった。彼は遊び人で、大森、川崎と、随分とはでに遊び歩いていたようだった。私も一度川崎の堀之内に連れて行かれて、遊ばせてもらったことがあった。こんなことは自前でするのが常識なのだが、事の成り行きでご馳走になってしまったのである。これがずっと後まで、胸につっかえたままになっていた。この時、私の相手になったのが年増のお世辞にも美人と言えない女性だったので、この種の遊びはこれが最初で最後の経験になってしまった。
 競馬もそうだった。最初に買った馬券がゴール寸前まで当たりだったのが、土壇場でひっくり返ってしまったのだった。競馬も、これっきりでやめにした。

 当時勤めていた会社の近くに、彼が釣具店を出したのが知り合うきっかけだった。彼は一人住まいだったが、時々たどたどしい日本語を話す女性が訪ねてきていた。大森の飲み屋で働いている女性で、形式的に夫婦になっているだけだと彼は言い訳した。奥に上がり込んで、彼女の手作りのキムチをご馳走になったこともあった。
 こんな裏通りに店など出しても売れるかしらとサラリーマンの私が心配するほどの立地条件だったから、すぐに店を畳む羽目になってしまった。客の来ない釣具店の店先は、毎晩きまって宴会場に変わった。酒に卑しい釣り仲間がいつもとぐろを巻いていた。心有る人たちは次第に彼から離れていってしまった。彼がかわいそうで見ていられなかったからだ。
 彼は寂しい人だった。離婚歴もあったようだ。大森界隈に住んでいるという年老いた母親に引き合わせてくれたこともあった。その気で見れば料亭の御隠居さんに見えなくもなかった。しかし、それ以上に何か訳ありに見えてしょうがなかった。

 そして、イトウさんはその店舗を売り払い、横須賀の海岸端にある私の団地に移ってきたのだった。それまで、彼は1、2度釣りの帰りに我が家に立ち寄っていた。その時から、ここが気に入っていたらしい。
 引っ越してきた時には別の連れが居た。やはり大森の飲み屋で働いていた女性で、今度は日本人だった。「未だ他人の奥さんだ」と彼は悪びれる風でもなく彼女を紹介した。
 やがて、酔っ払って深夜でも構わず私の家を訪ねるようになった。彼は昼に仕事をしなくても暮らせる身分だった。勤め人の私には翌日があった。周りの目も気になった。私は意図的に彼から遠ざかっていった。
 それから私も仕事を変え、日本に居ることも少なくなっていた。お互い同士歩いて3分ほどの距離だったが、すっかり彼の存在が私の中から抜け落ちてしまっていた。そのうち彼が私の近所から居なくなっていたことは知っていたが、暫くして「イトウさんが亡くなったらしいよ」と人伝に聞いた。その頃には、私も彼の気持ちが漸く理解できる年頃になっていた。悪いことをしたと後悔の念が残った。

2022年12月05日

カワハギ釣りにハマる訳有り

カワハギを知る
  カワハギとウマズラハギの違い

  カワハギもウマズラハギも5、6月が産卵期だ。この時期はイサキだアジだイカだと、私の好きな魚が釣れるのでカワハギ釣りには一度も出たことがない。それでも、イサキ釣りをしているとウマズラハギのキロ近い大物が外道として時々掛かることがある。この時期のウマズラハギは、肥えた肝と卵で腹がパンパンに張っている。傍で漁師が巾着網でわざわざ捕っているほどだから、商品価値は充分ある。これを活魚として出荷すると結構いい値が付くとも聞いた。


 ウマズラハギは悪食だ。動物性、植物性にかかわらず何でも食べるらしい。内臓は独特の臭い匂いがする。だから、釣上げたらすぐに頭の付け根に包丁を入れて、腹側に折るようにしながら内臓ごと頭を切り離して捨ててしまうようにする。
 残った身の方は海水でよく腹の中を洗い流してから、クーラーボックスに入れる。勿論卵や肝は残しておく。このように釣上げてから素早く下処理をしておけば、身や肝が臭くなることはない。
 この産卵の時期のウマズラハギは、脂が乗ると言う表現はオーバーだが何となくしっとりした身になるし、肝はしつこいくらいに脂が乗っている。これを甘辛く煮付けて食べると精力がついたような気になってくる。
 カワハギは冬場にもてはやされる魚だ。寒くなれば寒くなるほど肝が肥えてくる言われているからだ。しかし、我々が釣ってくるのは小型が大半だから、肥えたとは言えたいした大きさではない。1尾から取れる肝の量などたかが知れている。煮ている間に溶けてなくなってしまう。
 味自慢の店を紹介するTV番組で見るカワハギ料理に平気でウマズラハギが使われていることがある。特に関西以西がそうだ。板前がもったいぶって講釈していたりすると腹が立ってくる。かの地ではカワハギとウマズラハギの違いがないのかと思ってしまう。関東ではカワハギとウマズラハギとの間には大名と足軽ぐらいの開きがある。
 私自身はそんなに持ち上げるほどカワハギが高級魚だとか旨い魚だとは思っていない。ただ、釣りの対象魚としてはなかなか面白いと思っているだけだ。

 25cm級は3年もの

  漁師から聞いた話だが、カワハギは1年で15cm、2年で20cm、3年で25cmに成長すると言う。沖釣りの対象になるのは、20~25cmだから2、3年モノを釣っていることになる。
 例年、西風が吹いて水温が下がる11月頃になると、ワッペンサイズと言われる15cm級の小型のカワハギの束釣り情報が連日釣り欄を賑わせる。夏場は浅場に散っていたカワハギの当歳魚が水温の低下とともに深場へと落ちていき、特定の場所に集まってくる。そこを釣るのである。
 東京湾では竹岡沖が有名だ。極秘スポットとして鴨居沖のボート釣り場ポイントがある。一軒だけボート屋さんがあるが、この時期は予約しないと乗れないぐらいに混雑する。束釣りは当たり前だ。釣るには忍びない大きさなのだが普段なかなか釣れない魚だけに、カワハギ釣りの初級の愛好者たちは「今こそ敵討ちだ」とばかりに釣りまくるのである。
 ただし、釣趣はあまりない。カワハギ釣りは釣れないからこそ釣り人は燃える。簡単に釣れてしまうカワハギ釣りは、もうカワハギ釣りではないのである。失礼だが、この辺の機微は女性と似ている。

 アワセは体全体で

 竿先にモゾモゾとアタリが出たら、すかさず体を反らせ、体全体でアワセルようにする。腕でアワセルよりもこの方がアワセのタイミングが速くなるからだ。カワハギのアワセは、間一髪を争う厳しいものなのである。
 赤井電機(AKAI)時代の話だが、故赤井三郎社長がこの釣りを好んだこともあって、カワハギ釣りが随分と盛んだった。私も海釣り入門したての頃に、社内のカワハギ釣り大会に初参加して、優勝したことがあった。並み居るベテランを打ち負かしての優勝だった。中学生の頃から渓流釣りをやっていて、魚信でアワセル釣り方が体に染み付いていたのが活きたようだった。

 8:2調子の胴のしっかりした竿

  カワハギ竿は先調子が常識だ。理由は、胴に乗るようだと、その分アワセが一瞬遅れてしまうからである。8:2調子が一般的には好まれるようだ。しかし、場合によっては軟らかい竿が効果を発揮することもある。これは、食い込みがいいからである。特に、アタリが明確に出る浅場ではお勧めだ。初心者には、棒のようにぶっきらぼうな竿の方が、アタリは取り易い。

 夕方に荒食い

 秋のカワハギは、夕方に荒食いをする。日中ずっと食わなくて、諦めて少し早めに竿をたたんだら、帰港間際にバタバタと入れ食いになったりすることがよくある。小一時間ほどで10尾、20尾と釣れたりする。船頭も釣れない日には遅くまで粘ってくれる。釣りたかったら最後まで諦めないことだ。チャンスは何時来るか分からない。

 底50cm以内がタナ

 カワハギは海底近くを泳ぎ回っている魚だ。底から50cmぐらいの間を、2、3秒間隔で竿をあおりながら誘うのが一般的な釣り方だ。何時うまく餌がおちょぼ口に吸い込まれるか分からないし、吸い込まれても瞬時に吐き出してしまうことがあるので気が抜けない。
 ウマヅラハギはカワハギよりやや上の方で釣れることが多い。ウマが多い時は、速く仕掛けを降ろすことと、仕掛けを海底に這わせるような感じで釣ればいい。
 外道としてはベラが圧倒的に多い。西の方では珍重される魚のようだが、関東ではあまり喜ばれない魚である。砂地ではトラギスも釣れる。これは天ぷらにすると結構いける。キダイや小型のイシダイも釣れる。小型だがタコもよく釣れる。

 リールの巻き上げは糸を緩めずに

 カワハギの口腔は非常に固くできている。だから、アワセが弱いと針が刺さらないことがある。カワハギは釣上げられる時、がっしりと歯を噛み締める習性がある。その為、ハリが刺さっていなくても釣上げられてしまうことがある。
 カワハギは巻き上げてくる途中でシャープな多段引きを楽しませてくれる。時々フワッと軽くなったりする。これがカワハギの特徴だが、この時に手を休めたり、糸を緩めたりするとバレてしまうことがある。引っ張られている時は必死に歯を食いしばっているのでハリ掛かりしていなくても上がってくるが、糸が緩んだ瞬間口の中の物を吐き出してしまうからだ。巻き上げる時は、常にテンションが掛かっているようにする。

 アサリ剥きから

 カワハギ釣りは早起きから始まる。船宿に着くと、アサリを積み上げた洗面器を股間に挟んで、船客たちはアサリ剥きに余念がない。これが出船前の船宿のいつもの光景である。
 殻付きで1キロも剥けば充分だ。バターナイフのような専用の殻を剥く道具も貸してくれる。慣れない人でも、1時間もあれば1キロはわけなく剥ける。値段は5割ほど高いが剥き身でも買える。
 カワハギ釣りは、このアサリ剥きから始まる。河岸払いし、海上に出て船がスカンパを上げている間に海水を汲み、ザルに開けた剥き身の上からそれを何遍もかけてヌメリを洗い流しておく。特に冬場は指が凍えてヌルヌルしたアサリはハリに付けにくいものだ。

 仕掛けの予備は多めに

 その年にもよるが、秋口にはサバフグの猛攻に悩まされることがある。これが食いだすと仕掛けがいくらあっても足らなくなる。あの丈夫な一枚歯をガチガチと摺りあわせて、ハリスを片っ端から食いちぎってしまう。
 岩礁地帯を狙うので、根掛かりが格別多い釣りだ。同じ仕掛けを使いつづけているとハリ先も鈍くなる。仕掛けを交換する回数も、ほかの釣り物に比べたらはるかに多くなる。

 潮先が断然有利

 カワハギ釣りは船を潮の流れに乗せてゆっくりと流しながら釣る。だから、新地、新地と釣れる潮先が絶対的に有利だ。スミイカやシロギスなら、遠方に投げた引きずってくる釣り方もあるが、岩礁地帯を釣るカワハギ釣りではそうもいかない。それでも、潮上に座った時は、多少足元から離れたところに仕掛けを投入してみるのも効果があるものだ。一日のうちで潮先は大抵一度ぐらいは変わるものだから、自分に釣れない時でも腐らずにじっと潮時を待つことも必要だ。

 集器は必要か?

 一時期、仕掛けの上部に集器なるチャラチャラした物を附けることが流行した。メキシコ貝の薄片を貼り付けた長方形の小さな板だったり、金属板に表面処理を施した物だったりと様々な物が店頭に並んでいた。これらは、水中でヒラヒラと動いて、カワハギの興味を引くと言うのが謳い文句だった。
 その時は伝染病のように瞬く間に広がったが、その後はやや沈静化したようだ。最近は板の替わりにカラフルな浮き玉を多数連ねたモノを使用している人も見掛けたりする。釣りの世界も流行り廃りが結構激しいところがある。マダイ釣りの水中浮きなどもその典型だった。流行の裏に大抵仕掛け人が居るものだ。
 カワハギ釣りのテクニックの一つにタルマセ釣りなる方法がある。故意に仕掛けを弛ませて釣るやり方だ。仕掛けにテンションが掛かっていない分餌の吸い込みがよくなる。集器を附けると、仕掛けが上下する間に袋状に弛む瞬間がある。これがタルマセ釣りと同じ効果を生む。勿論、効能書通りに魚の注目を引く要素もある。要は、イワシの頭も信心からである。

 落とし込みは迅速に!
 
 カワハギの水中遊泳能力は感心の一語に尽きる。彼らはドラエモンのタケコプター並みに上下左右にと変幻自在に泳ぎ回っては餌を掠め取っていく。なかなかハリに掛からないのは、あのおちょぼ口のせいだ。あの可愛らしい口でエサを吟味するかのように、何度も出し入れを繰り返す。ヘラブナの就餌行動によく似ている。だから、奴っこさんが餌を吸い込んだ瞬間にアワセてやらないとなかなか釣れないのである。
 エサを盗られる危険性が一番高いのが着底時だ。オモリが底近くの遊泳層を突き抜け、すとんと海底に届くと糸ふけが出る。釣り人は急いで糸ふけを取る。そして、底ダチを確認してから誘いの動作に入る。この間が一番無防備な時間だ。
 カワハギは初めて目にする珍味に、何の警戒もせずに飛びついてくる。ところが、糸は弛んだ状態だから、アタリが竿先になかなか出難いのである。時々、糸ふけを取った瞬間にググッときて慌てさせられたりする。これは偶然アワセのタイミングが合い、空アワセが的中した時だ。落とし込みと糸ふけを取る動作は迅速にやるに限る。

 餌の付け方は?

  アサリの付け方も重要だ。カワハギは餌を吸い込んだり吐き出したりして、餌を上手に失敬する。餌付けが悪いと、吸い込んだ時に餌だけが簡単に外れてしまう。
 釣り場に着く前にアサリの剥き身は海水ですすぎ、ぬめりを取っておく。釣りの最中は絞ったタオルの上に数個づづ並べておく。表面が乾いてかじかんだ指先でも餌付けが楽だ。
 まず吹管にハリを通す。その後ベロを縫い刺しにし、縫い終わったらハリ先を軟らかいワタの部分に隠すように埋め込む。これで餌付けはバッチリだ。
 餌の点検をこまめに行うことも大事だ。敵は餌取り名人だ。知らぬ間に餌が無くなっていることなどしょっちゅうだ。餌が残っていても安心は出来ない。べラなどに突っつかれた餌はボロボロになっている。ヒモが出ていれば、そこを咥えて餌だけを吸い込んでしまう。上げてみて、餌が垂れ下がっていたら必ず付け直した方がいい。

 誘い方

 アタリを待って合わせる普通の釣り方のほかに、タルマセ釣り、タタキ釣りなどがある。タルマセ釣りはわざと糸ふけを出して、餌の吸い込みを良くする釣法だ。まず、竿先を目の高さに上げた状態でオモリが底に付くようにする。その状態から竿先を水面スレスレ迄下げて、仕掛けにタルミをつくってやる。2、3秒待って、スーっと竿先を目の高さまで聞き上げてくる。この時にモゾッと竿先に異常を感じたら、体を大きく仰け反らせて合せてやる。腕ではなく体全体であわせるのがミソなのである。
 タタキ釣りは竿先を間段なくチョコチョコと上下させて、誘いを繰り返す。誘い幅は大きくても枝スの2倍までぐらいまでとする。枝スの長さが10cmなら15~20cmで充分だ。これは誘いの効果もさる事ながら、餌を加えた瞬間を即座に感知できる利点がある。

 アタリの取り方

  浅場と深場ではアタリの出方が違う。20m前後の浅場なら、微妙な前アタリまでよく分かる。竿先にモゾモゾと押え込むようなモタレが出る。ここで、大きく体を仰け反らせてアワセてやるのが基本の型だ。
 軟らかい竿を使っていても、浅場だと前アタリがよく分かる。だから、食い込みのいい軟調の竿を好んで使うベテランも多い。しかし、深場だと微妙な前アタリを感知するのは至難の業だ。誘いをかけて、糸にテンションが掛かったところでモタレを感知してアワセることが多くなる。ゴツゴツと竿先に来てからだとアワセが間に合わないからである。
 初心者には、弾力の少ない棒のような竿の方がおすすめかも知れない。固い竿は遊びが少ない分アワセのタイミングが早まるからだ。
 カワハギ竿は全長2m前後のものが多い。深場では長ければ長いほどアワセが効く。しかし、長いと、その内に持ち重りがして、腕が疲れてしまう。

 ハリは小さい方がいいか?

  カワハギ専用のハリが何種類か市販されている。1号よりも小さいハリもある。しかし、通常では1号で充分だ。あまり小さいとハリ掛かりが悪くなる。11月頃に木っ端カワハギが荒食いするが、この時は0.8号に落としてもいい。
 カワハギ釣りは底を釣るせいか、ハリ先が意外に早く摩耗する。爪の甲に当てて引っかいてみた時に、ハリ先が滑るようだったら交換時だ。

 巻き上げは手を休めずに

  巻き上げている最中に突然フワット軽くなる。これも、カワハギの特徴だ。ここで決して手を休めないことだ。更にスピードを上げて一気に巻き上げるようにする。再び手元に重量感が戻ってきたら、通常の巻き上げ速さに戻してやる。
 巻き上げ時には、常に一定のテンションが掛かっていることが重要だ。カワハギは口腔が固い魚である。歯を食いしばると、テコでも開けられない状態になってしまう。だから、カワハギはハリ掛かりしていなくて、ただハリを咥えただけで釣上げられることがしばしばあるのだ。そんな掛かり具合の時に、何かの拍子で噛み合わせた歯を開いてしまうと魚はそのまま逃げてしまう。糸を緩めた時に、よくそんなことを経験する。

 外道の餌取り

  半分齧りかけの餌が残っていれば、それはベラなどの外道が突っついた証拠だ。こんな時は、タイミングが合わないなどと落胆することはない。カワハギならそっくり餌が無くなっているはずだ。外道で腕試しをしながら、じっくりと潮時を待つことだ。
 餌が垂れ下がったりしていると、敵の思うつぼだ。餌は音もなく吸い込まれてしまう。

 時化後は出船を見合わせる

  時化後は水温が急に下がったり、濁りが出たりする。こうなると、カワハギは海底の岩礁に張り付いて、あまり餌を追わなくなる。
 そんな条件の時には、根掛かり覚悟でオモリより低い位置に餌が来るようにする。オモリの直ぐ上から長めの枝スを出すとか、小型テンビンを使ってキス釣りの仕掛けのようにしてもいい。
 一番いいのは出船しないことだ。分かっているけどやめられないのが道楽だからムリかな?

 本当に旨い魚か?

  冬のカワハギは絶品だと言われている。特に、肝が美味いと皆が口を揃える。肝和えなどと得意になってひけらかす人も多い。私もやってみたが、生臭くてとても食えたものではなかった。 産卵期の5~6月が最高に旨いと書いてある資料もあった。たしかに、イサキ釣りの外道で釣れる1キロもあろうかと思われる腹パンパンの大ウマヅラの肝は、肥えて食べ応えがある。
 しかし、冬にしろ夏にしろ旨いとまで感動した記憶は一度もない。白身魚で淡泊なカワハギ料理は玄人すじに人気のようだ。

 以下は、70代の今の私のカワハギ料理感である。カワハギの活け造りは絶品であると思っている。釣り上げてクーラーに入れて持ち帰ったのとは雲泥の差なのだ。身は透明、食感も食味もフグと変わらないのではないだろうか。肝も臭みはない。淡白だが旨味がある。今は船に乗ってのカワハギ釣りはしないが、行ったなら活けに近い状態で持ち帰りたいものだ。

2022年12月01日

長崎大瀬戸オオダテのヤリイカ釣り

 図鑑を調べたら、日本近海のヤリイカは12種類あった。今日のイカは、ケンサキイカの中でも小型のメヒカリ型かなと思っている。外套長16センチ、墨袋の近くに発光器官を持つとあった。

 ケンサキイカにはもう一種あって、ゴトウ型と言われている。これは外套長が35センチ、かなり大型のイカである。写真の中央縦縞のある魚は初めて釣ったが、図鑑で調べたらヨコスジフエダイとなっていた。

 この日は、西海市大瀬戸港「和丸」から午後5時出船。釣り客は4人。一路オオダテの釣り場へと向かう。航程は一時間弱。釣り場に着いてもまだ明るい。船はアンカーを固定して、全員片舷から竿を出す。浮き流し釣りと同じだ。贅沢な釣りである。

 集魚灯が点灯するまではイサキが主だ。浮き流し或いは胴付きと思い思いに第一投。私は迷った末、胴付きに。仕掛けは4ヒロ、4本バリ。長い方がエサ取りの猛攻を交わす効果があることは分かっているが、手返しを考えてオーソドックスな仕掛けにする。ソコダチを取り、やや早い潮の流れを考慮して3メートル底を切る。これが夜炊きの基本。

  一投目から良型のイサキがヒット。型は25センチ超。しかし、産卵後とあってスマートな魚体だ。あと一月もすれば体力を回復し美味くなるはずだ。エサ取りが多い。イサキまでエサの配分がいかないようだ着底してすぐ当たるようでないと釣れない。ポツリポツリと5~6尾上げたところで集魚灯に灯が入る。浮きスッテ6本を1メートル間隔にした仕掛けに交換。タチは30メートル。下から低速で巻き上げてくる。と、25メートル付近で竿先にゴツゴツト明確なあたり。魚ほどでもないが途中の引き込みなかなかだ。胴長10~15センチ級が一荷と幸先の良いスタート。以後、タナがどんどん上がり、17メートルから10メートルになる。10メートルのタナで入れ食いとなる。タナに仕掛けを落とし込み、そのまま舟の揺れで誘う感じでアタリを待つ。と、ゴツゴツと竿先振れる。スローで巻き取りにかかる。さらにゴツゴツと追い食いしてくる。たまに3尾掛けもあるが一荷釣りが多い。
 深夜にかかる頃から潮の流れが猛烈に速くなる。糸が45メートルも出ていくようになってしまった。それにつれてイカの乗りも悪くなる。仕掛けが船から遠くへ流れてしまうからだろう。集魚灯の真下にいる人だけがコンスタンに上げている。光が遠くまで届くせいかもしれない。釣りは本当に微妙だ。

 イカの猛攻がおさまってからイサキ釣りに転向。が、これも不調。中型のイサキに混じって15センチ級のアジが釣れてくる。早々にイカ釣りに戻る。結局、潮がたるみ始めても前半のような入れ食い状態にはならず、午前4時に納竿。一睡もせずに釣り続けたことになる。
 ヤリイカは71尾の釣果だった。殺しを入れて、濡れ傘にかぶせる傘袋に収納して持ち帰っ

2022年11月27日

長崎のヤリイカ(ケンサキイカ)釣り

 

 いわゆる九州地域で言うヤリイカ釣りをしてみようと思いながらぐずぐずしていて、いつしか10年近くになっていた。仲間がいないのと、勝手が分からないのとで、二の足を踏んでしまうのだ。それが、長崎はアジソネのマダイの乗っ込み釣りに一緒した仲間からお誘いがかかり、渡りに船と会社を2日休んで釣行した。こちらで言うヤリイカはケンサキイカの事である。食して絶品、時期になると長崎市内の大抵の居酒屋では水槽で泳ぎまわるこのイカを活け造りで出してくれる。
 釣り船は、新三重漁港の「はつしお丸」。大きな船で、船足も速い。ポイントを訊いたら、「話しても分からないよな」と軽くかわされた。出船は、午後4時。野母崎、樺島を左手に見て船は進む。航程は1時間ほど。野母崎のある長崎半島南端がくっきり見えているから、ガタ釣りのポイントよりは、余程近場だ。
 まだ、明るい中、船長はパラシュートアンカーを投入。「三日連続だから寝るわ」と、そそくさとエアコンの効いたキャビンに消えて行った。

 常連さんらしい二人連れがミヨシに、我々はトモ側に左右二人づつ分かれて釣ることに。暗くなるにつれて、ポツリポツリとイカが上がる。私以外は電動リール。竿受けに固定して竿先を見ているだけだ。
 最初は、タナ固定と見間違えて、そのような釣り方をしていたら、私だけが蚊帳の外。思い余って船頭に尋ねたら、タナ付近を巻き上げ巻き上げするのだと言う。確かに、戦友たちの電動リールは低速巻き上げモードで動いている。竿も違う。竿先が細くなっているマダイのムーチング釣り用に変える。

 水深はリールの水深計で70m。船長の話では90m。下はガタのようだ。海底からジリジリと超低速でリールを巻き上げてくる。アタルと竿先が小刻みに上下し、やがてゴツゴツと手元に引きが伝わってくる。竿を立て、糸が緩まないようにテンションをかけながら、ゆっくりリールを巻き上げて追い食いを誘う。
 最初は60m前後であたっていたが、イワシの群れが船に付きだしてからは10m~30mのタナでよく釣れるようになる。そうなると、仕掛けは40m前後まで落とし込み、それからジリジリと誘いあげてくる。
 12時が過ぎるころから入れ食い状態で、5本ヅノに4尾~5尾というのが何度もあった。ハリス、幹糸が3号だったので、糸が重さに耐え切れずに結び目から切れたことも2度ほどあった。
 フグの猛攻も激しかった。浮きスッテがかじられてブサブサになるわ、仕掛けを切られるわで散々な目に。4人分を補充する羽目になり、数十本用意してあった予備の浮きスッテが底をつく始末。

 途中、スコールのような雨が来て、一時中断。それが30分ほどで上がって、再開。この雨の後が絶好調。多点掛けの入れ食いで、疲れた体を休ませる間もない。
 相変わらずイワシの群れが船の周りを狂ったように走り回る。シイラもたまに姿を見せる。そのうちイワシの群れに変化が起きたと思ったら、2mを超すアオザメが船の周りを悠々と泳ぎ廻り、船べり近くにも寄って来たりする。釣り上げられるイカを狙っているのだ。うまくイカを咥えてかすめ取るらしい。2度ほど仕掛けを取られてしまったが、竿は無事だった。イカ好きには病み付きになりそうな釣れっぷりで、中・大型中心に70尾超の好釣果だった。 

2022年11月17日

シーズン本番を迎えるヤリイカ釣りを語り尽くす

 9月頃になるとスルメイカが釣れなくなり、イカ専門の船宿は小型だがヤリイカ狙いに切り替える。他に釣りモノが無いから仕方が無い。ところが釣り始めは意外と良型が混じるのである。この良型は、標準的なイカの産卵時期から多少外れた時期に生まれた少数派のイカのようだ。だから、あまり長くは続かない。
 ヤリイカのツノは大きさに関わらず11cmのものを使用する。本来なら、体長に合せた長さのツノを選ぶ方がいい。だから30cm前後の良型を効率よく釣ろうと思ったら、14cmの方が適している。しかしこれだと、数が釣れる中、小型のヤリイカには不向きである。数を釣るなら11cmなのだ。本当はヤリイカには細身のツノがいいのである。以前はあったが、今は買うことが出来なくなってしまった。

 例年9月頃になると小田原方面から釣れ始め、鎌倉の腰越、長井沖、城ケ島沖へと釣り場が広がっていく。初期の釣り場の水深は、100~120mと比較的浅い。だから入門には向いている。
 この頃釣れるヤリイカは胴長が10~15cmぐらいの小型が多い。波っ気のある日などは相当のベテランでも、1尾乗ったぐらいでは見逃してしまう。しかし、数が意外にまとまるので楽しみなところがある。いい日は30尾、40尾と釣れたりする。

 イカは1年魚だ。一潮毎に大きくなる。11月、12月になると胴長が30cmを超す大型も釣れるようになる。釣り場も城ケ島沖から剣崎沖、洲の崎沖、沖の瀬へと移っていく。水深も日が高い日中は、150mと深くなる。時には200m近くまで仕掛けを降ろしてやることもある。このように深くなると底狙いだけでは釣れなくなる。海底から数10mも上がった中層で乗ることが多くなる。タナを見つける作業が入ってくる。

 2月一杯ぐらいまでが釣り期だ。この頃に大きな群れが洲の崎沖や沖の瀬方面に頻繁に回遊してくるようになる。産卵の為のようだ。いい日に当たると、50~60尾も釣れたりする。胴長が40cmを超す大型も混じるようになる。これらはオスのイカだ。メスはせいぜい15cm止まりだ。メスイカの大半は、この時期抱卵している。抱卵したイカは栄養分が全部卵に行ってしまうのか、身がぺらぺらに薄くなるほど痩せている。
 特大のオスイカもやせ細り、胴の真ん中を持つとぐにゃりと折れ曲がってしまう。刺し身にすると変に白っぽい色で、トウが立ったように固くて味も無い。

 100m前後の水深は端物狙いに最適だ。長井、城ケ島沖では、ワラサ、ブリ、大ダイが、沖の瀬方面ではメダイ、ヒラマサ、大ダイガかなりの高確率で狙える。大型の三つ又サルカンに長さ1ヒロの仕掛けを結び、イカのエンペラの先とロートの先端にそれぞれハリを打つ。タナはオモリが5~6m底を切った辺りだ。ワラサでも大ダイでも、足下に入れば一発で食いついてくる。向こうアワセだから慌てることはない。竿先が大きく水中に引き込まれたら、おもむろに竿を立てればいい。
 朝方と夕方が狙い目だ。イカが釣れないと端物狙いに切り替える人が居るが、これでは釣れない。端物はイカの群れに付いている。イカがポツポツ釣れている時でないと端物も釣れない。

 沖の瀬や洲の崎沖は黒潮本流の影響を受ける。急潮や二枚潮は日常茶飯事だ。糸が流されてタルミが出ると、乗りが分かり難くなるし、オマツリも増える。職漁船では、細くて水切れがいいワイヤーが道糸として使われるほどだ。ワイヤーは高価だし、錆びるし、キンクしたら使えないなど扱いが難しいので、我々釣り人向きではない。
 今は丈夫な新素材の道糸が開発されているから、3号ぐらいのものを使う手もある。細いと潮の影響は少なくなる。

 *当時は新素材と言うとテトロン糸だった。今はPEラインの1号程度でも十分かも知れない。

 通常ヤリイカは海底近くに群れている。オモリを底に着けたまま仕掛けをタルマセ気味にして釣ることが多い。これだとシャクらなくてもアタリが明確に出る。1尾アタッタら糸を緩めないようにして、そのままで追い食いを待つ。ソロリソロリと巻き上げてきてもいい。ただ、端物が廻っていると、せっかくの獲物が失敬されることもある。
 仕掛けが降りる途中で止まることがある。中層でスルメイカが乗った場合に多いが、ヤリイカも同居していることがあるから慎重に巻き上げる。サバなど群れの時もある。これもイカと同居していることが多いから心して釣る。

 水深が150mを超すようだと、底から20mぐらいまでは探った方がいい。シャクリは聞くような感じでソフトに行う。効果的なのが2、30m一気に巻き上げて、そこから仕掛けを落とし込むやり方だ。これが周囲のイカの注意を引くらしい。オモリが着底し、仕掛けがフワット弛むと、すかさずイカが乗ってくる。

 イカは最初に目の前に来たツノに群がる。だから、皆それを知っていて我先に仕掛けを投入する。船が流れていく方向に関しても同じだ。いの一番に群れと遭遇する潮先が断然有利だ。群れが小さくて、ポツポツと拾い釣りになる場合などは、この差が特に顕著に現われる。
ポイントによって潮の流れる方向は大抵決まっている。ヤリイカが釣れる冬場は、ほとんど毎日北風が吹く。船はスパンカの働きで、風向きに船首を向けて安定する。だから、通いなれるとその日の潮先が大体分かるものだ。
 深場釣りはオマツリがつきものだ。最前部か最後部か、右舷か左舷かを読んで釣り座を選ぶようにする。しかし、競争はし烈だ。一番に到着しても、夜の間に竿が立っていたりする。


 冬の太陽は傾くのが早い。海底の日暮れはもっと早いはずだ。日が傾く頃になると、ヤリイカは100m前後の比較的浅場に上がってきて、大きな群れを作る。凪で、時間一杯釣れる日はこの時間帯が楽しみだ。
 大抵1時間前後の短い間だが、イカが狂ったようにツノに飛びついてくる。ポイントが限られるから、船同士の競争もし烈だ。どの船も、我先にポイントへ突っ込んでいく。一旦流しきると、全速力で潮上に戻っていく。まるで戦場だ。

 この時手前マツリなどしてもたもたしたら、すぐに周りと5、6尾の差が付いてしまう。多点掛けが勝敗を決する。ところが追い食いをさせるタイミングがまた難しい。欲張って長く持っていると、せっかく掛かったイカが外れてしまったりする。
 昔は4時ごろまで釣らせてくれた。最近は3時半上がりになった。入れ食いタイムが訪れるかどうかの微妙な時間帯だ。釣り船業界もサラリーマン化してきた。釣れても釣れなくても規定の時間海の上に漂っていればいい時代になった。

 最初は竹串にシコイワシを串刺しにして釣る仕掛けだった。黒ムツ釣りの時に遊び半分で試みたものだった。根魚釣りはシコイワシの確保が大変だ。港には必ず船宿専用のイケスがあったものだ。
 ヤリイカを専門に狙うようになったのはプラヅノが開発されてからだ。最初の頃は9cmのプラヅノもあった。このツノが小型には一番乗りが良かった。カンナも細かった。その頃はグングン力まかせにシャクル釣り方だった。だから、カンナが伸びてよくばれた。特に良型が来ると一発だった。
 大型には細身の18cmのツノが良かった。しかし、小型には見向きもされなかった。そんなこんなで、11cmに落ち着いたようだ。
ガス糸を巻いたりもしてみた。頭だけに巻いて変化を付けてみたこともあった。しかし、今一つ優位性が無かった。工夫も釣りの楽しみの一つだ。

 ヤリイカは興奮してもスルメイカのようには赤くはならない。所々が赤く変わるだけで、大部分は金色に輝いている。その金色の皮膚を通して、内臓が薄っすらと透けて見える。まさに、自然が造った芸術品だ。
 最近の釣り舟には、海水を汲み上げてそれぞれの釣り座まで分配する装備がついてるものもある。ヤリイカの時期は涼しい季節なので、少数なら活かしたまま家まで持ち帰ることも出来る。
 私の場合は、三浦半島の船宿からだと車で30分ほどの距離だ。大き目のビニール袋に海水を汲んでその中に入れて運ぶと、他に何の仕掛けが無くても活きて持ち帰ることが出来る。大きなゴミ袋に2、3尾が目安だが、海水を少量にして空気をたくさん入れるのがポイントだ。活きた奴を、手早く皮を剥き細切りにすると、飴色半透明の身がキューとまるまる。足と耳がまた美味い。
  釣りをやらない人に、この活きたヤリイカを見せると必ず感動してくれる。さらに食べてみて、その美味さにもう一度感動する。ヤリイカが取り持つ近所付き合いは盤石だ。
 

 竿は軟調子がいい。ヤリイカの触腕や身は意外に軟らかいものだ。スルメイカとは大分違う。だから、力まかせにあおったり、強引に巻き上げたりすると簡単にばれてしまうことがある。シャクリもソフトにやるので腰の強い竿は不要だ。6:4ぐらいのやや胴調子のもの方が具合がいい。イカがチョコチョコ触る。けれどもハリ掛かりしてくれない。そんな時には軟らかい竿に歩がある。
 冬には毎日のように季節風が吹き荒れ、船は結構揺れる。そのような時でも、竿の曲がりがクッションの役割をしてくれる。使うオモリは120号だが、負荷オモリ60号の万能竿で充分だ。

 ヤリイカは焼いても煮ても、あまり身が固くならないイカだ。調理すると、甘みはあるが味は極めて淡泊だ。歯が弱い人や淡泊な味が好みの人にはお勧めだ。しかし、味が今一つ足らないと言う人には、タレに一工夫が必要だ。そんな口には、甘辛煮や味噌田楽などもあう。
 しかし、釣りたてのヤリイカは何と言っても刺し身が一番だ。大きな耳や短い足は、刺し身で食べると身の部分よりも旨い。耳は皮を剥ぐが、足はそのままぶつ切りにしてワサビ醤油で食べる。さっと湯がくと甘みが増す。明太子、トビッコ、シシャモッコと和えてもいい。ウニ味噌や唐辛子味噌にもあう。
 ヤリイカの肝はほんの少ししかない。これを集めて作った塩辛を、伊豆の富戸の船宿でご馳走になったことがあった。初めてだったせいか、何とも微妙な味だった。
 刺し身を、軽く塩を振って一晩熟成させたスルメイカの肝と和えてもいい。これは酒の肴にぴったしだ。寒中で数日間乾燥させる。飴色半透明のスルメが出来上がる。剣先イカみたいに軽い味に仕上がる。
 イカ類はそのまま冷凍保存が出来るから大漁の時は楽だ。冷凍にしても、結構長い間そんなに味は変わらない。我家では、釣ってきたものは水洗いなどせずに、そのまま2、3尾づつビニール袋に入れて冷凍保存する。なんせ、ヤリイカ釣りをした日の夜はいっぱい飲んで直ぐにバタンキューだから。
 漁師は、皮を剥き、内臓も全部取り去り、切れば直ぐに食べられるようにしてから冷凍庫に仕舞い込む。皮目や内臓から色が落ちて、見てくれが悪くなるからだ。漁師のやり方が正解かもしれない。

 まだ、久里浜沖の120~150mダチで黒ムツが釣れていた頃の話だ。だから、20年以上(当時)も昔の話だ。この頃は深場釣りが沖釣りをやる人のステータスだった。黒ムツの他にも、キンメダイ、アコウダイ、沖メバルが人気だった。
 黒ムツの好釣り場は何と言っても沖の瀬だった。当時は船足が遅かったので、沖の瀬や布良瀬まで行くには随分と時間がかかった。松輪港や三崎港からでも2時間はかかったような気がする。一部の船宿は遠征釣りと銘打って、客を随分と集めていい商売をした。

 潮が速くて釣りが出来る時期が限られていた。黒潮の勢力が弱まる冬場が狙い目だった。運がいいと4、5キロの黒ムツにも見参できた。足を広げると1mもあるタカアシガニも時々上がったりした。
 私は未だ入門したての頃だった。潮が速い日は底ダチがとれなかった。糸をフカシ過ぎて、他人とオマツリするは、根掛かりさせて貸し道具の道糸を200mも流してしまったりと散々だった。しかし、当時は客筋が違っていた。「またか」と嫌な顔はするが良く助けてもらった。喧嘩腰で釣りをするような人は一人も居なかった。
 その後一時釣りブームが起こり、猫も杓子も釣りに出るようになった。客が急増した。この頃から雰囲気が次第に悪くなった。言葉づかいの荒い、人相の険しい人種が幅を利かせるようになった。これが今でも尾を引いている。
 知的水準の高い人があまり来なくなって、釣りはゴルフなどより一段も二段も低く見られるようになってしまった。まあ、今のTVの釣り番組の低俗さ加減を見ればうなずけなくも無いが。
 この深場釣りで、たまにヤリイカが釣れてくることがあった。そこで、焼き鳥の竹串の一端にカンナを結び付けて、シコイワシを串刺しにした仕掛けで狙うようになった。ムツ釣りの仕掛けの上2本を竹ヅノにした両狙いが一般的だった。特に好調だったのが、初春の久里浜沖。40cmを超す大物が結構釣れた。。数を釣るなら11cmなのだ。

2022年11月16日

長崎大瀬戸江の島群礁の大イサキ

 4月8日(平成24年)。大瀬戸・和丸から3名で出船。「4時に来てください」と、前夜電話があった。日本海を横断して抜けた大型の低気圧のために、4、5日強風が吹き荒れ、ようやくの出船だった。
 一人が遅れて4時半近くになっての河岸払いだったが、無風の海を船は滑るように一路五島灘・江の島群礁へと進路をとる。航程は一時間ほど。何しろ初めてのポイントだけに、期待がはふくらむ。帰宅後、インターネットで検索したら、江の島群礁は石鯛釣りの聖地となっていた。さもありなんと思うほど、ごつごつした岩礁が林立しし、潮が逆巻き、魚の付き場としては最高のポイントに見えた。すでに他の船がいた。一番のポイント入っているはずだ。遅刻の客がうらめしかった。

 イサキは第一投目から食ってきた。やや小ぶりで25センチ前後だ。私の釣り座はオオドモ、船頭の隣の釣り座だった。さすがに船頭は手返しが速い。私の3倍のペースで釣り上げる。最少は、20、30メートル離れた近場であたっていたが、だんだん150メートル以上も離れたあたりで食いだす。瀬に潮がぶつかり、白波がたっているポイントだ。たった一人の手巻き派には、極めて不利な条件だ。
 ポツリポツリだが、30センチ超の大型イサキが食ってくる。前回の松島廻りで釣れたイサキよりはほっそりしているが、ともかくでかい。
 船頭とオマツリをしたときに仕掛けを盗み見たら、小ぶりなチヌ用の銀バリを使っていた。幹糸、ハリスともに、私よりは細仕掛けだ。ミヨシの常連さんは、一尾掛けがほとんどだが入れ食いに近い釣れ具合だ。完全に置いてきぼりだ。おそらく、仕掛けの差に違いない。食いの悪い時のために、2号ー3号の仕掛けも準備した方がよさそうだ。ちなみに、この日の私の仕掛けは、3号ー5号、4号ー5号の2種類。この時期だから乗っ込みのタイが混じるだろうと、イサキ釣りにはやや太めの仕掛けを用意してあった。しかし、結果的にはこれが敗因だったようだ。
 急流のような潮が終始流れて、ベラが掛かるとくるくる回るために仕掛けがよれよれになってしまう。その撚りを取らないで船上に仕掛けを転がしておくとテキメン糸が絡んでしまう。ウキがすぐにポイントを外れるので仕掛けの上げ下げも速くしないとならない。浮き流し釣り初心者の悲哀をひしひしと感じる。
 ポイントが変わるたびにタチが変わるので、その都度浮き下の調整をする。しかし、常連サンたちには水深の指示がいちいちなかったから、多分、食いダナは決まっているに違いない。これも、初心者の悲哀だ。
 結局、私の釣果は10尾だったが、うち6尾は30センチ級の大型イサキだった。竿頭はクーラー2杯に満タンということだったので、40尾前後の釣果と思われる。
 まだまだ、研究の余地のある浮き流し釣りだ。 

2022年11月12日

長崎大瀬戸沖角力灘の夜焚きイサキ

 7月16日(平成23年)の午後6時長崎港を河岸払い。まだ、周囲は明るい。三菱重工の神の島、香焼のドックの巨大なクレーンを仰ぎ見ながら女神大橋をくぐり、長崎港を抜け、右に舵を切り、一路、角力灘に進路をとる。海上から見ると、長崎から外海、大瀬戸へとたどる方向には切り立った崖と山並みが幾重にも連なり、昔はさぞ難所だったことを思わせる。かつて、外海は隠れキリシタンの集落であった。

 船は一時間以上かけて大角力、小角力の島影が間近に見えるポイントに到着。魚探で海底の地形を見ながら、山タテをして投錨。いよいよ釣りの開始だ。オリジナルのハナダイコマセシャクリ竿2.1mにデプスメーター付き中型の良軸リールを取り付ける。自家製の仕掛けは、ハリス3号30cm、ハリス間隔は1m、幹糸5号。ハリはイサキバリの10号、5本バリ仕掛け。魚探の指示は水深40m。大潮とあって、潮の流れが急だ。道糸が斜めに出ていく。デプスメーターの指示は45m。まだ、周囲は明るい。餌取りの猛攻で、たちまち餌が無くなってしまう。それでも、艫では、さっそく良型のイサキが上がる。

 まもなく、黄昏て、船に灯がともる。暗くなると餌取りは姿を消す。イサキの夜焚きは初めての経験だ。昼釣りのセオリー通り広くタナを探るがアタリなし。シャクリながら誘いをかけてみるが、これも不発。迷路に入り込む前に、地元の人にタナや釣り方を教えてもらうことに。底が食いダナらしい。まずは、置きザオで様子を見ることに。船の揺れぐらいが丁度いい誘いになることがあるからだ。仕掛けの全長分を切ったタナで、置きザオにしてあたりを待つ。と、ゴツゴツと竿先を跳ね上げるようなアタリ。途中の引きも重量感たっぷりで、姿を見せたのは30センチ近い良型の本命・イサキだ。東京湾や相模湾では、終日釣っても2~3尾混じる程度の良型だ。

 後は、このタナで入れ食いが続く。ゴツゴツに素早く反応するとハリがかりが極端に悪くなる。ハリが飲み込まれる確率が格段に高くなるが、一呼吸置いてから竿をタメてやる方が百発百中だ。時折、25~30cmの幅広のマアジも混じる。イサキもアジも今が旬だ。コマセカゴは、数回入れ直しして空になる程度に穴位置を調整。釣れてくるイサキは、どれも25~30cの良型揃いだ。
 食いが落ちたらタナの修正だ。潮の緩急で、デプスメーターの値と実際の水深との誤差が大きく変わるからだ。また、イサキは、コマセが効いてくると、上層へと移動するとも言われている。刻々と変わるタナの調整を如何に素早く修正するかがイサキ釣りコツだ。最初のタナから、さらに3~4mほど上げてアタリを待つ。これが的中して、再び入れ食い状態に。ほとんど休む間もない。潮がたるみ、また食いが一段落したところで、さらに3~4mタナを上げる。と、いきなり、大型のアタリ。巻き上げ途中でドラッグが滑る。これは、35cm級の特大イサキ。しかし、後続がなく、一端休憩。船上で大の字になって仮眠だ。二時間ほど寝て、再び釣り開始。

 仕掛け分だけ底を切って置き竿にする。ガクガク来て、竿を引き寄せたら根がかり。強引に引き離すと25cm級の良型アラカブ(カサゴ)。仕掛けが底を這っているようだ。さらに、1mほどタナを上げる。ここで、また、入れ食いが続く。基本は、底から仕掛けの全長分タナを切ることのようだ。時間を忘れて釣りに没頭していて、ふと、上を見上げると、星がまたたいているのに、バックがかすかな青空になっていた。いよいよ夜明けが近いようだ。やがて、辺りが明るくなり、太陽が外海の山並みをみるみる越えて顔を出す。一時食いが立ったが、餌取りが増えて納竿。途中で数えることを止めたほどの大釣りだった。

 おそらく40尾前後の釣果だったはずだ。船から上がって直ぐに3軒にお裾わけ。今日は、魚を捌ける家庭が少なくなっているから、相手を選ぶにも気遣いがいる。相手によっては、ウロコを落とし、腹を出してからお届けすることも。イサキの腹はまだ小さかったから、まだまだ、旬のイサキ釣りが楽しめそうだ。

2022年11月12日

コマセシャクリ釣りでの棚の探り方

 コマセシャクリ釣りには広くタナを探れる利点がある。タナ取りが不得手な人にはうってつけだ。通常は指示ダナの上下5mぐらいの範囲を探る。シャクリのスパンはリール半巻き分が標準だ。中型のリールだと5、60cmに相当する。竿先を水面近くまで下げてから、軽くちょこんと竿が水平になるくらいまであおってやる。この衝撃でコマセがぱっと散る。
 そして、竿先は反動でワンテンポ遅れてじわっと持ち上がってくる。この戻りが腕の力でなく、竿の反発力でなければ誘いの効果が半減する。ここがこの釣りの一番大事な所だ。


 コマセの出具合も重要だ。シャクリ二往復で、コマセカゴがほぼ空っぽになるぐらいが丁度良い。潮の速さや水深によって、穴の調整が同じでもコマセの消耗が変わってくる。コマセが入っていないままでは、いくら誘ってやっても魚はまず食ってこない。
 大型狙いや食い渋り気味の時はドバドバコマセを撒いてやると効果があることもある。この釣り方だと、当然コマセの詰め換えは忙しくなる。また逆に置き竿にして、ポロポロとコマセが出る状態で待っているとよく釣れることもある。その日によってケースバイケースだから、いろいろ試してみるしかない。


 マダイが食うポイントでは底からシャクリを開始する。マダイのタナは通常底から5mぐらいまでだ。この間は小幅なシャクリにし、インターバルはやや長めにとるようにする。
 ハナダイと両狙いなら、底から3mから15mの間を探る。イサキのタナは、通常底から10m前後だ。しかし、日によっては20m近くも上がることがある。釣れなくなったら、時々で良いが水面近くまで探ってきた方が良い。これも海底の起伏に関係するから、各ポイントでほぼパタンが決まっている。
 底近くに新手が控えていることもある。たまには底からもシャクリ上げてきて、食いダナに誘い込むこともテクニックとして必要だ。

2022年11月09日

エサの選択は?

 イサキのビシ釣りにはイカ玉が一般的だ。アジ釣りには食紅で染めたものを使うが、なぜかイサキ釣りには白いままで使う。アズキ粒ほどの大きさに細かく切ってある。サイコロ状に切ってあるのが多いが、大型には短冊状が良いとも言われている。短冊状に切ったものは何となくシラスを連想させる。
 擬餌としては、ハモ皮、夜光パイプ、ウイリーがよく使われる。ハモ皮にはオーロラと称して、アルミなどの薄膜を蒸着して表面が虹色に輝くように処理をされたものもある。蛍光紫の染料で染めたものもある。これは海水中で、ボーッと紫色に光って見えるらしい。
 夜光パイプは、ハリの軸が丁度入るくらいの太さのものが良い。ハリの軸長の倍くらいの長さに切断する。一端は斜めに切り落とし、反対側からハリを刺し込む。こうすると、形が子エビやシラスに見えてくる。
 ウイリーは黄色、黄緑系統が良い。針先に近いところまで巻きすぎないことだ。刺さりが悪くなる。イカ玉と併用すると安心感がある。
 大型にはオキアミ餌が効果的なこともある。下バリだけを空ッパリにして、それにオキアミを刺す。残りの上バリは全部ウイリーだ。餌取りの多い時でもこれでバッチリだ。

2022年11月09日

イサキ釣りはタナ取りが命

 イサキ釣りはまずその日のタナを探り当てることから始まる。ポイント毎にタナは大体決まっている。知っている場合は、そのタナ下3ないし5mから5~10mのレンジを探り始め少しづつ範囲を狭めていく。最近は船長がその都度タナを指示してくれるから楽だが、それはあくまでも目安だから、最終的には自分で自分のタナを見つけなくてはならない。
 昔は船頭は知らん振りだった。常連さんもそうだった。常連さんは今でもそんな傾向がある。下手に尋ねると露骨に嫌な顔をされたりする。


 松輪瀬の指示ダナは20m前後だ。しかし、実際は10m前後までタナが上がることもある。もちろん20m前後に魚がいないわけではないが、確率の問題である。魚の大きさでもタナは微妙に違う。ポツポツと釣れているからと安心しないことだ。常に隣近所の釣れ具合を視野に入れておく。自分より上手がいたら、広くタナを探り直すことだ。
 タナが決まったら、その前後2mぐらいを集中的に釣れば良い。松輪瀬のイサキも大型ほど上層にいる。私の経験では、水面から7から8mぐらいで良く釣れる。釣り始めとコマセが効いてからではタナが変わってくる。コマセが効くとタナはどんどん上ずる。
 潮の流れの緩急でもタナ取りが違ってくる。松輪沖は特別潮通しが良い場所だ。道糸が斜めに出て行く。潮止まりにはそれが真下にスルスルと降りていく。三角形の辺の計算ではないが、同じ水深でも糸の出は随分と違ってくる。
 テンビンの先の3から4mの長さの仕掛けも同じだ。潮が速ければ仕掛けは水平方向に流される。潮が止まると下方に垂れ下がる。タナ取りは厳密に考えると頭が痛くなる。最後は経験からくる勘が頼りだ。


 一般的なビシ釣りだと釣りのパターンがある。まず、船長のタナ指示よりハリス分余計に沈めてやる。ハリスが3mとする。タナ指示が15mなら、18mまで仕掛けを沈めることになる。起点は必ず水面とする。起点の基準をコマセカゴにするか仕掛けの先端にするかで、数m違ってくる。他人と情報交換する時には、これを考慮しなければならない。
 18mから1mの間隔で竿をあおってコマセを散らしながら15mまで上げてくる。コマセは一気に撒かずにパラパラと少しづつ出るようにする。これでコマセの煙幕の中に仕掛けがすっぽりと入る計算だ。このままアタリを待つ。30秒も待てば充分だ。その間にコマセの煙幕は潮先に流されてしまう。魚の活性が良ければ大抵数秒でアタリがくる。
 暫く同じタナでやってみてもアタリがなかったら、指示ダナを中心に上下に3m前後範囲を広げて探ってみる。食いが悪い時は、アタル位置がバラバラなことが多い。どうしても迷いが出るが、最もアタる確率の高いタナを重点的に攻めるようにする。
 コマセシャクリの方が、タナに一点集中する必要がないので気は楽だ。

2022年11月09日

ウィリーのコマセシャクリ釣り

 イサキ釣りというと以前はビシ釣りかサビキ釣りだった。近年ビシ釣りの変形であるウイリーのコマセ釣りがかなり普及してきた。
 昔これに似た釣り方にカッタクリ釣りがあった。ある地区の職漁師の釣り方で、ハモ皮の擬餌を何本も附けた仕掛けを上へ上へと手繰っていくやり方だ。関東ではあまり見かけない珍しい釣り方だった。
 私はイサキ釣りをサビキ釣りから始めた。それから手ビシになり、次は竿ビシにした。そして、今はコマセシャクリ専門だ。この釣り方だと、多少釣り方やタナを変えるだけで、マダイ、ハナダイ、イシダイ、クロダイ、イナダ、アジと何でも釣れる。終日手を休めずにシャクリ続けるので、アグレッシブな釣り人にはピッタリだ。
 ウイリーのシャクリ釣りは、元々ハナダイ釣りの為に開発されたものだ。リズミカルにシャクリ上げてきて、魚を誘い上げながら釣るやり方だ。この釣りのポイントは、シャクリあげた後の竿の戻りと一瞬の止めにある。
 イサキ釣りの場合はこの止めをハナダイよりは長くする。

2022年11月09日

冬場の居つきイサキは絶品

 ヤリイカ釣りに熱を上げていた頃は、冬場にイサキ釣りに出掛けるなど思いもしなかった。冬場にイサキを釣らせる船宿も少数派だったこともある。探せば良い釣りをやらしてくれる船宿があるものだ。最近はすっかりこの冬場のイサキ釣りが病みつきになってしまった。
 平塚沖、茅ヶ崎烏帽子岩沖、佐島沖の亀城根、長浜、小網代沖の定置網周りと相模湾にポイントが集中している。これは水温の関係だ。冬場、相模湾は黒潮本流の影響で、東京湾ほど水温が低下しない。


 お目当てはキロ級のジャンボイサキだ。体高も20cmもある見事な奴だ。一見伊豆諸島の沖合いで釣れるアオダイに見える。10mから15mの浅ダナでガツンと当たる。一瞬竿が引っ手繰られそうになる。これを確実にモノにするには2号のハリスでも不安だ。
 しかし、どうしてもイサキは細ハリスに分がある。長竿に細ハリスというのも一つの手だ。大イサキの引きはシャープだ。何度も激しく突っ込む。顔を見るまでハラハラドキドキだ。
 自宅でこの大イサキを捌くと、腹に白い脂肪の固まりが一杯詰まっている。腹身の切り口にも白い脂肪の層がのぞいている。刺し身にすると身は透き通るようにきれいだ。コリット身が締まっていて、それでいて脂が乗っている。もう、うなるほど美味い。


 アラは残さず潮汁にする。汁の表面にはしっとりした脂が浮いてくる。白身魚の上品な旨さにコクが加わり絶妙だ。刻みねぎと生姜汁を少々入れるだけだ。味付けは天然塩が良い。
 大型は、根の上では上層に、定置網周りでは下層にいるとも言われている。どのポイントでも中型が主で、大型はそんなに上がるものではない。数が出なくても大物狙いに的を絞るか、中型に的を絞って数で勝負するかはその日の状況次第だ。

2022年11月09日

沖の瀬のジャンボイサキ

沖の瀬のジャンボイサキ
 


 沖の瀬の80mダチにジャンボイサキのポイントがある。ここもそんなに広い場所ではない。10隻も釣り船が入るとははみ出してしまう。幸いここまで来てイサキを狙う船は少ないので、あまりその事は気にせずに釣ることが出来る。ここのイサキはともかくでかいのである。レギュラーサイズが35cm前後もある。
 ただ、外海にいるせいか魚体はスマートだ。抱卵ものでもペッタンコに見える。脂の乗りも少ない。だが、型が良いだけに5尾も釣ればクーラーの中は賑やかに見える。
 イサキ釣りは普通なら一個所に船を停めて釣る。しかし、沖の瀬は潮が速いので、船を流しながら釣る。イサキは根の上や潮上に附いている。だから、船がその場所を上手く通過すればバタバタと釣れる。いかに上手く魚のいる場所を通過するが、船頭の腕の見せ所になる。
 何隻もの船が入れ替わり立ち代わり同じ道筋を流してくる。魚探を覗いている船頭以外はどこで当たるか分からない。運が悪いと、コマセを詰め替えようと仕掛けを巻き上げた時に、バタバタと周りの人にきたりする。これは泣くに泣けない悲劇だ。
 船に魚が附いていれば、その後に入れても間に合う。イサキが船を追いかけてくる日などそう滅多にない。だから、大抵は慌てて入れ直しても間に合わないことが多い。
 全く釣れない。万策尽きて小便に立ったら、隣の客が大声で呼ぶ。漸く出始めた小便を途中で止めて急いで戻ると、置き竿の竿先がガタガタと揺れている。こんな事も良くある。食いが悪い時の置き竿の効用には、未だに納得できる理屈がみつからないでいる。こんな事ばかりが重なって、置き竿釣法に宗旨替えをした仲間もいるほどだ。

冬の居着きのイサキは絶品
 


 ヤリイカ釣りに熱を上げていた頃は、冬場にイサキ釣りに出掛けるなど思いもしなかった。冬場にイサキを釣らせる船宿も少数派だったこともある。探せば良い釣りをやらしてくれる船宿があるものだ。最近はすっかりこの冬場のイサキ釣りが病みつきになってしまった。
 平塚沖、茅ヶ崎烏帽子岩沖、佐島沖の亀城根、長浜、小網代沖の定置網周りと相模湾にポイントが集中している。これは水温の関係だ。冬場相模湾は黒潮本流の影響で、東京湾ほど水温が低下しない。
 お目当てはキロ級のジャンボイサキだ。体高も20cmもある見事な奴だ。一見伊豆諸島の沖合いで釣れるアオダイに見える。10mから15mの浅ダナでガツンと当たる。一瞬竿が引っ手繰られそうになる。これを確実にモノにするには2号のハリスでも不安だ。
 しかし、どうしてもイサキは細ハリスに歩がある。長竿に細ハリスというのも一つの手だ。大イサキの引きはシャープだ。何度も激しく突っ込む。顔を見るまでハラハラドキドキだ。
 自宅でこの大イサキを捌くと、腹に白い脂肪の固まりが一杯詰まっている。腹身の切り口にも白い脂肪の層がのぞいている。刺し身にすると身は透き通るようにきれいだ。コリット身が締まっていて、それでいて脂が乗っている。もう、うなるほど美味い。
 あらは残さず潮汁にする。汁の表面にはしっとりした脂が浮いてくる。白身魚の上品な旨さにコクが加わり絶妙だ。刻みねぎと生姜汁を少々入れるだけだ。味付けは天然塩が良い。
 大型は、根の上では上層に、定置網周りでは下層にいるとも言われている。どのポイントでも中型が主で、大型はそんなに上がるものではない。数が出なくても大物狙いに的を絞るか、中型に的を絞って数で勝負するかはその日の状況次第だ。

2022年10月23日

早朝が勝負

 イサキ釣りは早朝が断然有利だ。松輪港からは早朝5時と7時半の乗合船が出ている。もちろん5時出船がお勧めだ。この時間の出船は、地元松輪港だけの特権だ。湾奥の乗合船が到着する8時ごろまでに、第一回のピークは大抵終了している。
 イサキ釣りも釣り座に左右される釣りの典型だ。コマセが流れていく潮先に陣取った人には逆立ちしてもかなわない。ところが、潮上には潮上の釣り方があるらしい。未だに教えてくれた人がいないので、私には未だに分からない。
 久里浜港「ムツ六」のみっちゃんの息子たちは、客がほとんど釣れない時でも連釣して見せてくれたりする。名人揃いの「ムツ六」の常連さんでもこれには敵わない様で、皆お手上げだった。
 潮が良く通る日の潮の変わり目がチャンスだ。早朝の出船時間に近い時刻に満潮や干潮のピークがある潮廻りを狙って釣行する。しかし、いやいや稼いで飯を食わなければならない身にとっては、そうそう魚の都合にばかり合わせていられないのも現実だ。
 松輪港の棒面丸には根魚釣りで随分と通った。25年以上も前の話だ。息子の千春さんに代替わりしてからTV、新聞で「棒面丸」の名が随分と売れた。新造船も次々と入れた。その頃から、私は行かなくなった。
 小網代港の「しんや丸」も老舗で、一時期随分と通った。よく釣らせもしてくれた。私も、新聞に盛んに書いたこともあった。しかし、ここもいろいろ考えさせられることがあって、いつしか足が遠のいてしまった。
 棒面丸の常連で、金田湾の民宿のおやじだった石川さんは潮焼けで船頭よりも赤黒い顔をしていた。この人は船宿子飼いのサクラのはしりだった。腕も経験もダントツで、釣果も普通の客とは桁が違っていた。毎日指定席の艫に陣取り、いちいち傲慢で一般の釣り客には鼻も引っかけないようなところがあった。20年以上も前の古い話だ。
 それに比べて追浜の長野さんや山崎さんは、若い私や周囲の客の面倒をよく見てくれた。彼らは二人とも炭坑離職者だとも聞いた。ゆったりとして、貫禄のあった鎌倉の山木さん、.....皆元気でいると良いのだが。
 この棒面丸から参加して、報知新聞社主催の沖釣り大会で優勝したことがあった。28歳の時だった。商品としてもらったクーラーボックスは使用頻度が高かった為何年も持たなかったが、優勝盾はつい最近まであった。
 その日は規定の黒ムツ3尾を釣ったのは私だけだった。前年も4位に入賞していた。今思えば、壮年の釣り師たちに混じって精一杯背伸びして、一丁前釣り師のつもりでいたようだ。

2022年10月23日

イサキ釣り

イサキを知る

 旬は初夏、しかし冬場の大イサキはもっと美味い。三浦の漁師は、濁って「イサギ」と発音する。以前は、旬の5月から8月頃が釣り期だった。近年は産卵明けの9月、10月を除いてはほぼ通念の釣り物となっている。
 旬のイサキは、釣れる場所にもよるがギロンギロンに脂が乗る。これがあのイサキかと驚くほどに美味くなる。年頃の娘の一瞬の輝きに似ている。身の色は、トロリとした乳白色で、とても奇麗だ。旬のマダイに比べても劣らぬ艶っぽさだ。
 特に、松輪沖から湾内にかけて釣れるイサキは、脂の乗りが最高だ。松輪沖の釣り場は解禁が6月1日と決められている。解禁後の松輪沖は、数十隻を優に超す釣り舟で連日大混雑する。
 船が多いので、昔の様には束釣りなどという幸運には出会えなくなった。それでも、日並みによっては30cmもある丸々と肥ったイサキが20尾30尾と釣れることがある。
 産卵直後のイサキはやせ細り、脂がすっかりと抜け落ち、不味くて食べられたものではない。このイサキが再び体力を回復し、美味くなるのが冬場だ。冬場は小網代沖や長浜沖の定置網に附いた大イサキをコマセで誘い出して釣る。この大イサキは網に附く海の小動物を餌にしている。冬場の大イサキはこってりと脂が乗り、その上身が締まっているから絶品だ。釣り場の水深は30m前後だが、タナは水面から10m前後だ。だから、掛けたら戦いだ。良型のマダイのような強烈な引きを見せる。ベテランでさえもハリス2号で切られてしまうことがある。
 小網代の「やまはち丸」から、このジャンボイサキを狙ってよく出船した。おじいちゃんとかっちゃんが魚担当の船頭だった。出船前におじいちゃんがボソボソと小さな声で状況を教えてくれる。おじいちゃんは背が低かった。その上少し腰が曲がっていた。屈み込まないと声が聞き取れなかった。孫が結婚し、曾孫が2人も出来た。それでも相変わらず現役だ。
 早めに小網代港に到着すると、定置網で取れた魚を積んだ船が帰ってくる。季節によってあがる魚が違う。アジ、イワシ、イナダ、スズキ、メトイカ、アオリイカ、ヤリイカなどが季節によって大量に捕れたりする。以前は我々でも、その場で買えた。随分安かった。魚屋や料理屋からの買い出し組みもいた。獲物は三崎の魚市場に出荷していた。定置網は航程10分ほどの近場にある。 
              
松輪沖は6月1日が解禁日
 
 松輪沖にはイサキが附く高い根が点在している。乗合船が未だ少ない時分だった。この根の周りにたくさんの職漁船が集まり、びっしりと並び壮観だった。漁師船はみなアンカーを打つ。一斉に右腕を上下させて魚を誘う。絵の様な光景だった。
 今は殆どの漁師が釣り船業に鞍替えした。イサキ10キロ釣るよりは、釣り客3人も釣る方がどれだけ楽で金になるか。今はもう詩情溢れる光景は消えてしまって、乗合船の大船団が先を争ってポイントに群がる醜い光景が展開されている。
 残った漁師も出漁回数がめっきり減った。魚は釣れないし、遊漁船の往来で落ち着いて釣りも出来ないからだ。釣り人を満載した大型漁船が狭いポイントを縦横に疾駆する。連休の高速道路にいる時と同じジレンマを感じてしまう。
 資源保護の為、松輪沖のイサキだけには解禁日が設けられた。解禁日の6月1日には、松輪港の船着き場の前の広場は車でびっしりと埋まる。松輪沖のイサキは最高だ。体高があり、金色に輝く魚体は見てもほれぼれする。味はもううなるほど美味い。
 ぶつくさ言うわりには、私もここのイサキにはベタ惚れなのでる。

2022年10月23日

3センチのミニスッテ

自作の3cmのミニスッテ


 マルイカ釣りには浮きスッテが一番だ。市販の浮きスッテには、サイズが3、3.5、4、5号がある。このツノは元々は西日本のシロイカなどを釣る為に開発されたものだ。中空のらっきょう型で、材質は比重の軽いポリプロピレンで出来ている。カンナは、足がちぎれ易いイカ向きにダブルになっているものが多い。
 本体のポリプロピレン樹脂はピンク或いはグリーンの蛍光染料で染めてある。外側は布で覆われていて、本体との間には薄く綿を詰めてある。イカが触腕を伸ばして抱き着いた時の感触を考えたものらしい。
 布は大抵二色になっている。カンナの附いている反対側を頭に見立てて、赤帽子とか白帽子などと呼んでいる。全体を白い帽子で覆い、帽子の境目に相当する部分に赤い帯の縫い取りをしたものもある。このツノが濡れると布が透けて、本体の蛍光色がジワッと浮き出てくる。この感じがイカにはたまらないらしい。
 三浦半島の周辺のマルイカには小型の3号を使う。しかし、小型のイカにはもっと小さい方が良い。本体の長さが5cmほどのガス糸巻きのミニ浮きスッテや、7cmの細身の布巻き浮きスッテも開発されている。それらに5mmサイズの目玉を附けて、小魚らしく見せたのもある。この目玉が結構威力を発揮するから不思議だ。
 私の秘密兵器はバルサ材を削って自作した超ミニヅノ。本体の長さは3cmしかない。これにガス糸やウイリーを巻く。このツノを使うようになってからはアタリの回数が驚くほど多くなった。良い日には5、60尾は釣れる。但し、釣れるイカは細かい。


時化前が狙い目


 スルメイカやヤリイカは時化後がねらい目だ。ところが、マルイカだけは時化後の1、2日間は全く低調になる。マルイカは浅場にいる。底荒れの影響を諸に受けるからかもしれない。しかし、やや時化気味の日はまた別だ。マルイカの活性も他の魚と同様に、波風があった方が高まる。浅場に乗っこんで来る時期は、岸近くの岩礁周りを狙う。だから、波風があるとちょっと危険だ。船が揺れてバラシも多くなる。それでも、こんな日に限って大釣りをする。

潮時


 何の魚でもそうだ。日の出や日の入りの時刻は朝マズメ、夕マズメといって魚の食いが一番立つ時だ。マルイカも例外ではない。出船時間の関係で乗合船では朝マズメを釣るのは難しいが、夕マズメにかかる時間帯は狙うことが出来る。
 日が傾く3時ごろになると、漁師の小船がマルイカを狙って何隻も出てくる。それを見ると釣れる頃合いが分かる。漁師の船が出る日はイカの乗りが好調な時だから期待できる。
 我々は帰港間際の30分からせいぜい1時間が勝負だ。この間は大入れ食いになる。船頭がそれまでわざと出し惜しみしていたのではないかと勘ぐるぐらいに良く釣れる。
 私は釣りから待つことを学んだような気がする。魚は釣れない時は何をしても釣れない。ひたすらその時を待つしかない。所謂潮時である。我々の人生と良く似ている。そんな時に無理をしたり、小細工をしたりすると命取りになることがある。

回転技


 マルルイカは回転業が得意だ。釣上げられてくる途中でジェット水流を吹き付けて、クルクルとコマのように回転して激しく抵抗する。捨て身の業だ。カンナに辛うじて挟まった柔らかい足も、これで簡単に千切れてしまう。
 水面近くもでこれをやらかす。これをやられると、目の前で一塊のスミを吐き出し、あっという間に水中にかき消えてしまう。水面まで巻き上げたら遊ばせずすばやく取り込むことだ。
 この回転業は強烈だ。巻き上げる途中でこれをやらかすと、下手な魚よりも強烈な引きを感じさせる。この時は引っ張りっこは厳禁だ。すぐ「ハイ、サヨウナラ」となってしまう。敵さんがこの手を繰り出したら、竿先を倒してイナスに限る。それでも逃げられてしまう。本当にこの釣りはストレスがたまる。

美味い!


 「イカ族の中では一番美味い!」私はそう思う。刺し身で食べると得も言えぬ甘みがある。ヤリイカにも似ているが少し違う。ん~。アオリイカとも違う。イカが小さい分、もっと甘みが濃厚のような気がする。歯ごたえにも透明感がある。これは、新鮮なスミイカに似ている。噛んだ時ぬかるみに突き刺さったような食感が全然ない。
 釣りたては、まず、刺し身に限る。サット湯がいてもいい。本当にサット湯がく。そうすると不思議だが甘みが増す。イカをサット湯がくのはプロの業だ。
 小型のものは時間が経つと身が柔らかくなる。帰宅したら、手早く捌き、その晩食べる分だけ残し、残りはラップして、すぐ冷凍庫にぶち込む。その際、数尾づつ小分けしておくことだ。後で取り出すのが楽だ。
 釣ったばかりのを天ぷらやバター炒めで賞味できるのも釣り人ならではだ。天ぷらが特に美味い。しかし、油が異常にはねるので一苦労だ。ゲソ天を揚げる時は、更に猛烈に油を飛ばすのでビビッテしまう。それでも食い気には逆らえず、長袖のシャツと水中眼鏡の重装備で、天ぷらを揚げにかかる。この時はいつも家族の嘲笑の的だが、その割に食べる時は争って箸を運ぶから面白い。
 天ぷらの味は美味いの一語に尽きる。上品な甘さもさる事ながら上がった色が良い。まるで雪国のおなごの肌の色みたいに乳白色をしている。
バター炒めも絶品だ。帆立貝と似た味がする。そう言えば、イカは貝の親戚だったよね。

2022年10月23日

もっとマルイカ釣りを

置き竿か?誘い釣りか?


 魚でも、イカでも、概して、大型は置き竿が良い様だ。私はじっとしている釣りが大の苦手だ。いつでもチョコチョコと道具に触っていないと安心が出来ないのだ。だから、小物の数釣りは得意だが、一発大物狙いはどうしても敬遠してしまう。
 さて、置き竿の話に戻るが、ハリスを60cmにもして釣っていた人がいた。彼は数こそ釣れなかったが、良型を結構上げていた。良型狙いならツノも大き目にした方がいい。ただ大き目のツノにはあまり小型が飛びつかないからそれなりの覚悟が要る。
 マルイカは日によって水面近くまで上がってくる。釣れたイカを追って水面に現れる元気者(フェミニスト?)も見かける。チョンチョンと竿先にアクションをつけながら誘い上げてくる。思いもかけぬ上層でガツンと来ることがある。油断大敵だ。
 タナが底ならタルマセ釣りも効果的だ。じりじりと5、6m巻き上げて、そこから一気に仕掛けを落とし込んでやる。オモリが底と届いても構わず更に糸を送り込んでやる。数秒待って、ソーと竿を立ててみる。ここで大抵ギュンギュンと来る。

ストレスだ!
 

 チビイカのやんちゃぶりには本当に手を焼かされる。5.6月の最盛期でも、釣れるのは胴長10から15cmの小型が多い。それでも釣り場の水深は10m前後と浅いので、海中の微妙なイカの動きが竿先にはっきりと出る。
 アタッても殆どが竿先をキュンキュンと弾いただけで、そのままいなくなってしまう。触腕を伸ばしてツノを引き寄せてみるが、異常を感じてすぐにツノを放してしまうようだ。
 寒天みたいに柔らかい触腕が問題だ。ツノに引っかかっても、ロートから水を勢いよく噴射し、それを引き千切って逃げてしまう。いわんや、竿を跳ね上げて強く合わせたりすると、足だけが釣れてくる。アタリがあったら竿をタメ、引き込んだら逆らわずに竿を送り込むぐらいの繊細さが要求される。
 漸く底から離れても、船が引っ張られた瞬間に外れてしまう。更には、水面に顔を出し、船中に抜き上げようとすると目の前でポチャンと海に落ちてしまう。マルイカ釣りで必ず経験するイライラさせられる情景だ。
 キュンキュント派手なアタリがあっても、取り込んだのはせいぜい2.3割という日もある。それでもいい日には4,50尾は釣れるからたまらない。

投入はいの一番に
 

 船頭は魚探で反応を探す。(もっとも、当時は魚探にイカはうつらないとされていた。多分海底地形などを目安にしていたのだろう。)そして、群れの上に船を停める。待望の第一投目だ。潮上の釣り座に与えられる唯一の公平なチャンスだ。もちろん、仕掛けの投入は他人より速い方が良い。
 船は風と潮の流れに合わせて流されていく。新地、新地と釣れる潮先(潮が流されていく方向。船もその方向に流されていく。)の釣り座が有利なのは言うまでもない。二投目になると、潮先に比べ潮上はイカとの出会いのチャンスがぐんと減る。イカと仕掛けの出会いはまず潮先から始まるから当然だ。
 浅場の釣りなら、スミイカ釣りと同様に遠くまで仕掛けを投げてやるのも手だ。しかし、大抵は根がゴツゴツしたところを釣るから根掛りの危険性は大だ。だから、このやり方はポイント次第だ。

2022年10月20日

マルイカ釣りを語り尽くす

マルイカのプロフィール

 東京湾ではスミイカ釣りの外道として1、2月頃から釣れ始める。相模湾ではヤリイカ釣りが下火になる3月頃からシーズンインとなる。相模湾では、ヤリイカと一緒に、長井沖や城ケ島東沖の70~80mの比較的深いポイントから釣れだす。水温が上がる5、6月頃は、沿岸近くの水深10m前後の浅場まで入り込んでくる。小網代沖や城ケ島周りがいいポイントだ。そして、7月頃になると、又7、80mの中深場へと落ちていく。
 マルイカという名前が定着したのも最近のことだ。元来三浦の漁師の間ではメトイカと呼ばれていた。通年、小イカは定置網には入っていた。網から上がった小イカはなよなよしていて、直ぐに皮が剥がれてしまう。あまり見てくれは良くない。これを見るとメト、メトと呼ぶ理由が分かるような気がする。
 ところが、胴長20cmにもなると、商品価値がグーんと跳ね上がる。ヤリイカをやや丸くした体型だが、金色にアズキ色の斑点を散らした外観は年頃の娘のように輝いて見える。このぐらいになると魚屋の店頭に並び結構な値段が附く。
 しかし、我々に釣れるのはなぜか15cm前後の小型が多い。更に不思議なことには、季節が進んでも釣れるイカのサイズはほとんど変わらない。抱卵したイカも見かけない。大きくなると何処かへ行ってしまうのだろうか?
「メトイカでは如何にも不味そうで...」と船宿のおやじは言う。一時期はアカイカの見出しで客を集めていたこともあった。しかし、伊豆の島廻りで取れる正真正銘のアカイカとは明らかに違う。結局マルイカに落ち着いた。
 「昔、6、70cmもあるベンケイが随分と釣れたっけ」と小網代の船頭は懐かしがる。どうもこのベンケイがアカイカの可能性もあるが、真偽のほどは分からない。外房大洗などでは、マルイカとアカイカの両方が釣れるらしい。
 アカイカは何と言っても伊豆諸島が本場だ。式根島に磯釣りに行った帰りに、餌に使った残りのイカを土産にもらって帰ったことがあった。若かったから、我々は船旅に飽きて船上でこのイカを刺し身にして宴会を始めてしまった。周りにも振る舞ってあげたら大好評で、女の子にも随分とモテた。ついでに、石物の餌に持っていったサザエの残りもイシダイではなく我々の腹に収まることになった。

2022年10月20日

さらに、イカヅノの話を

 その日の釣果は、落とし込みの速さ、タナ取り、手返しの速さ、釣り座、そして当たりヅノの有り無しで決まる。その日の当たりヅノを早く見つけて、素早く対応することが好漁につながる。 ところが、当たりヅノは毎日違うし、一日の内でも時間帯によって違ってくる。人間の目で見て、同じ模様同じ色でも、良く乗るのと乗らないのがあるから不思議だ。普段から実績のあるツノを貯め込んでおくのも手だ。人間の目には何だか分からないが、良く乗るツノには何かがきっとあるはずだ。


 鉛ヅノはガス糸が汚れたり、綻びてきたりしたら自分で巻き直して使う。三崎漁港近くの漁具屋にはガス糸も豊富に置いてあるし、ガス糸を巻く簡単な機械も置いてある。漁師がしょっちゅう出入りしているので、情報収集も出来る。ガス糸を巻くには可変速機能の附いた電動ドリルを使っている人もいる。
 カンナの材質はステンレス製で錆びにくくなっている。ところが、実際は錆が出てくる。折れるものもある。先が折れ曲がったものは刺さりが悪くなる。硬いものに押し付けて曲がりを直したら、目の細かいダイヤモンドやすりで研いでおく。
 カンナの付け替えは素人にはなかなか難しい。蓮根をぶつ切りにしたような治具もいる。曲げ棒もいる。ようやく巻き上げてカンナの曲げに入ると、グズグズと糸が緩んでしまう。
 カンナには0.6、0.7、0.8、0.9の4種類がある。ツノのサイズやイカのサイズや種類に合わせて使い分ける。「最近は漁師でも巻けない人が多いよ。年寄りは目が悪くてだめだし」三崎港の漁具屋での会話だ。
 通常使う鉛ヅノは、4、(5)、6、8号の数種類だけだ。使われるカンナのサイズは4号が0.6、5~6号は0.7、8号が0.8~0.9である。カンナは細い方が乗りが良い。しかし、釣れるイカの大きさに会わない細いものだと、使用中にカンナが伸びて逃げられてしまう。
 ムギイカには4号、ニセイカと初期のスルメイカには6号、盛期の大型には8号が標準だ。イカが好むガス糸の模様や色は、その場の条件で変わる。基本は赤/白、赤、濃茶/黄、濃茶/緑、濃茶、濃青、青、ピンクなどだ。
 鉛ヅノは手釣り用で、仕掛けのツノ数は普通10本以上だ。まず、基本の全色を混ぜて様子を見る。当たりヅノの傾向が分かったら、それらの色を増やしてやる。
 下バリ2.3本はプラヅノにすると底ダチが取り易くなるし、底に着いてからうっかり糸ふけを出してしまっても、すぐに仕掛けが団子になることもない。


 竿釣りにはプラヅノが一般的だ。ツノの結び方は、手釣りは直結式だが竿釣りは枝バリ式(ブランコ仕掛けとも言う)だ。鉛ヅノと同じような形をしているが、本体が樹脂で出来ているらっきょうヅノがある。これは竿釣りのブランコ仕掛けにも使える。しかし、一般的には細長い棒ヅノが使われる。棒ヅノはポリカーボネート製で、染料で様々な色に着色してある。蛍ムラと呼ばれる薄紫色の蛍光染料で着色したものが、最も乗りが良い様だ。内部に米粒ほどの気泡が見える。これはわざわざ入れたもので、不良品ではない。この泡がポイントなのだ。泡の形状、位置などによって乗りがものすごく違う。
 何度か使うと、表面に傷が出来たり、汚れの皮膜が出来たりして乗りが悪くなる。そうなったら、歯磨きペーストや目の細かい研磨砥粒で磨いて表面の艶出しを行う。研磨砥粒はDIY店で買うことが出来る。
 プラヅノの形状は多彩だ。しかし、大抵ミラー面の全反射を応用する構造が多い。毎シーズン、各メーカーが新形状のツノを開発し、市場に投入してくる。イカよりも釣り人の嗜好を考えたものもあるから、他の人の評判を聞いたりして慎重に選んぶ方が良い。
 基本は、細い円筒状の丸棒だ。その他には、断面が三角形や菱形のものも効果があるようだ。これらはプリズム作用があるので、キラキラと輝き、集魚効果を発揮するようだ。
 色の選定に関しては、未だにこれと言った結論が出ていない。潮が濁っている時や周囲が暗い時は、ピンク、赤、橙の赤系統と蛍ムラを、潮が澄んでいる時は青、濃青、透明、蛍ムラが良い様だ。乗り渋り気味なら、蛍光グリーンや蛍光黄緑を1本混ぜてみる。これが意外に的中して、1尾づづだが入れ掛かりなどと言うこともある。ところが、欲張って、2、3本更に増やしてみたら、全然乗らなくなったなどと言うこともあった。ツノ選びは本当に難しい。
 プラヅノのサイズは、11cm、14cm、18cmの3種類の中から、イカの大きさに合わせて選ぶことになる。ムギイカには11cm、中型には14cm、大型には18cmとなる。

2022年10月18日

竿釣りはシャクリよりも落とし込みで乗せる

 仕掛けが降りていく途中で、フワット糸ふけが出ることがある。これは竿釣りでも手釣りでも同じだ。枝スにイカヅノを結び付けてあるブランコ仕掛けだとカンナの開きが下を向くから、イカが引っ掛かかのは分かる。しかし、角が直結式の手釣りの場合は、カンナの開きは引っ張られる方向と逆で常に上を向いている。イカが抱き着いてもするりとクグリ抜けてしまうような気がする。
 ところが、確実に途中で仕掛けが止まる。イカはがっしりとイカヅノを抱え込んでしまって離さないかららしい。10本足を絡ませてツノに抱き着いているイカの姿を想像すると不気味な気もする。
 竿釣りだと、昔は一途に上から下へとシャクリあげてきたものだった。ところが、最近は落とし込みで釣ることが多くなった。この方法は、中層を狙うのにはすごく楽な釣り方なのである。
 船頭のタナ指示は、20~30mの幅があるのが普通だ。その範囲を断続的にリールにストップを掛けながら仕掛けを落とし込んでいく。突き抜けたら急いで巻き上げて、再び同じ動作を繰り返す。これだと手返しも良いし、群れの移動が早い時などは打ってつけだ。
 通常1、2投でポイント移動となるが、稀にイカの群れが船に着くケースがある。こんな日は船はほとんど流しっぱなしになる。最初は中層で釣れていても、段々タナが深くなったり浅くなったりする。だから同じタナで釣れなくなたら幅広く探ってみた方が良い。
 魚はコマセが効いてくると上へ上へと上がってくるがイカは逆のような気もする。脅えてより深く潜る傾向があるのかも知れない。もちろん、上へ上へとタナが上ずってくることもあるから臨機応変に対応しなければならない。
 手釣りの場合は伝統に則り上へ上へと手繰り上げるしかない。手釣りの醍醐味は追い食いにある。手繰る度に、一パイまた一パイと乗ってくる感触にはしびれてしまう。手繰っているとどんどん重くなってくる。船縁に張り渡したパイプを擦る道糸がキユッキユッと悲鳴を上げる。横向きだと重くて引っ張り上げられなくなる。海側に向きを変えて綱引きだ。
 中オモリがガツンとパイプに当たる。水鉄砲が炸裂する。船上に転がったイカはブシュッブシュッと騒ぐ。赤く体色を変えて威嚇する。船底は足の踏み場もない。こんなクライマックスも何度かあった。

2022年10月18日

イカヅノの蘊蓄


イカヅノも様々。

鉛ヅノに巻いてある糸は?

 イカヅノの選定は難しい。色、模様、ツヤ、形状(水中でのツノの動きに関係する)で、乗りが微妙に違う。これが万能だと言うものはまずない。時期により、日により、時間帯により、潮(濁りや速さ)の条件により一定しないのが普通だ。配色も重要だと言うが、私には確たる事は分からない。小網代の船頭から「アタリヅノは一番上に」と言うことは聞いたことがある。
 鉛ヅノには2色ないし3色の色変わりの糸が巻いてある。巻いてある糸はガス糸と言われている。その由来は糸の製法にある。製造工程の最後に、表面をガスの炎で焼いて、毛羽を焼き切ってある。だから、布地に織ると表面に光沢が出て、絹のような高級感が生まれる。
 イカヅノに巻いたものでも、光の当て方で微妙な光沢が見える。この光沢が重要だ。繊維が空気の粒を抱き込み、これが水中で表面に気泡となって付着する。水と空気との屈折率の違いで、界面で微妙な光の選択的な反射や透過が起こる。これが集魚効果を生むらしい。
 自分なりに解析してみるのだが、確信はない。自然界で起こる現象の多くは、人知を超えている

プラヅノが刺激するのは食欲か?性欲か?


 プラヅノのどこが良くて飛びつくのか?全く持って不思議だ。餌と見てなのか、異性と見なしてなのか、まだ定説がないようだ。ムギイカは11cm、ニセェイカと初期のスルメイカは14cmが、盛期の大型には18cmが定番になっている。
 色はブルー系統が無難なようだ。長井港の老舗の船宿の専用仕掛けは、蛍光紫、ブルー,濃ブルーの3種類だけの配色で構成されている。こんな割切り方もあるのかと感心する。稀だが、蛍光のグリーンにだけ乗ってくることもある。この辺の仕組みは、人間の頭で考えてもさっぱり分からない。釣りは経験的な要素が多すぎる。
 プラヅノの材質はポリカーボネートだ。韓国製や安物は透明度が悪いので見て直ぐ分かる。これは再生剤が多く混入されている為だ。透明度の悪いものや、表面に艶のないものは格段に乗りが悪くなる。

トトスッテはそのものズバリ
 
 魚の形をしたトトスッテは、何となく分かる気がする。ルアーそのものだ。腹部にはバランス用の鉛まで埋め込んである。これがある為、海中では水平に浮くようになる。バランスオモリを入れないとカンナの附いている方が重くなるので、ルアーは太刀魚になってしまう。
 夏場のビールビン級にはこれが有効な時がある。ハリスを30cmほどに長くとり、中層でユラユラさせてやる。大型魚が掛った時のような強烈なアタリが来る。
 ボデーを布で包んであるタイプもある。イカは結構獰猛なところがある。硬いツノを鋭い口でがりがりやるので、ハゲ坊主にされてしまうことさえある。
 スルメイカとサバを一緒の樽に入れておいたことがあった。サバに足やエンぺラを食いちぎられたら気の毒だと樽を覗き込んだら、サバの方がドテッ腹を食いちぎられて青息吐息だった。その時、イカの三白眼と目が会ってぞっとしたことがあった。カラスで噛み付かれると、人間の指でも肉がこそげ落ちてしまうから、持つ時は要注意だ。

浮きスッテはイカが抱き着いてもずるっと滑ってしまう


 浮きスッテに至っては、考えてみると何とも奇妙なものである。赤い帽子や緑の帽子が魚らしさを演出するのだろうか?ボデーと布の間には薄い綿の層がある。「触腕が゙触れた時の感触をよくする為だ」と言う説が一般的だ。しかし、誰もイカから直接聞いたわけではないから、本当のところは分からない。
 「綿を入れてあると、吸盤で吸い付くことが出来ないでしょう。だから、ずるっと滑ってカンナに突き刺さるんですよ」韓国の釣り具メーカーの会長さんが新説を披露してくれた。この説が一番説得力があるような気もする。
 浮きスッテはスルメイカ釣りには普通使わない。しかし、マルイカやアカイカには必需品だ。ボデーの材質はポリプロピレンで、樹脂の中でも浮力が大きい部類に入る。中が中空になっていて、更に浮力が大きくなるように工夫されている。
 安物は製造工程上の理由で、穴が空いている。ここから海水が入るので、浮きスッテの本来の機能を為さなくなる。

2022年10月17日

盛夏のスルメイカはビール壜サイズも

 夏が近づき、成長するにつれ、イカは100m前後の深場へと移動していく。夏場の海水面温度は20度を超える。スルメイカは比較的低水温を好むから、水温が低く安定している深場が快適な生活環境なのだ。長井、城ケ島、洲の崎、剣崎沖が主なポイントになる。
 ニセェイカからスルメイカになるとプラスチックの棒ヅノ(通称プラヅノ)の出番になる。使用するプラヅノは14~18cmが標準サイズだ。プラヅノは11、14、18cmの3種類が市販されている。
 形状はメーカーによって様々だ。基本はあくまでも泡入りの丸棒だ。ツノを選ぶ時は、あまり形状に気を取られない方が良い。各メーカーとも、イカよりは客を釣る為に開発努力をしているところがあるからだ。
 ベテランは、この水深でも手釣りにこだわる。この時期は、まだまだ固まった群れに遭遇するチャンスが残っているからだ。しかし、大抵の釣り人は竿釣りになる。竿釣りの仕掛けはブランコ式とも呼ばれる。10cmほどの枝スを5~7本ほど出して、それにプラヅノを結び付けたものだ。これだと、イカが掛ってから多少糸をタルマせてしまってもばれることはない。
 ところが、サバなどの魚が一緒に回遊している時は、それらを良く引っかけてしまう。魚が多い時は、手釣りのような直結式の仕掛けが良い。竿釣りで、プラヅノの直結式にすることもある。

 盛夏には更にポイントの水深が深くなり、日並みによっては150mを超すこともある。こうなると竿釣りの独壇場だ。この時期のイカはビールビンサイズに成長している。年の功で、このイカは簡単にはだまされなくなり、えらい気難し屋に豹変する。
 大きな群れを作らないこともある。泳層も広いので、中層魚を釣る時のようにタナを探るのがとても厄介だ。数が少ないので、スミイカ釣りのように釣り座によって釣果に偏りが出る。ツノは18cmの最長のものを使う。魚の形に似せたトトスッテが意外に効果的な日もある。
 これだけ大きくなると身が硬くて刺し身向きではない。生きているうちに手早く裂いて、船上干しにするのが一番だ。この頃には、行き違うどの釣り舟も、干したイカの満艦飾をはためかせている。職漁船でさえそうだ。
 塩っ気は干す前に浸した海水だけだ。これが、イカの甘みと旨みを引き出す丁度良い塩加減になる。この船上干しを心待ちにしている友人も多い。しかし、それほど潤沢には作れないのが現実だ。これは貴重品なのだ。
 9月に入ると小型のヤリイカが混じるようになり、徐々に主役が交代する。

2022年10月17日

スルメイカの攻略法

時化後を狙え!

 イカの大釣りを経験するのは大抵時化後だ。どうも、時化後イカは固まって大きな群れを作る傾向があるようだ。時化に追われて外海から新群れが入ってくることもある。エサが少ない外海から入って来たイカは腹を空かしている。だから、擬餌だろうが何だろうが見境無しに飛びついてくる。しかし、この群れも湾内の豊富な餌に飽食すると、擬餌には見向きもしなくなる。「それらしい反応はあるけんどノラネーよ」となる。
 3月から4月にかけて吹く南西風がニセイカの大集団を運んでくることがある。沖の瀬や洲の崎沖で最後のヤリイカが釣れる時期だ。そんな日にうまく当たると束釣りも夢ではない。こんな時は、仕掛けが底まで降りていかないものだ。イカが中層で飛びついて仕掛けを止めてしまうからだ。
 5月の湾内では「無風でヨ、ボヤボヤと暑苦しい日がヨケーノンダベヨ」と、突然逝った鴨居の又エム丸の船長が教えてくれたことがあった。

濁り潮や朝夕は鉛ヅノ

 ムギイカ用のツノは4匁(ニセイカは6匁。マイカは7から8匁)が標準だ。ニセイカクラスが混じるようだと6匁にする。潮が澄んでいる沖合いは別として、比較的濁り潮が多い湾内は鉛ヅノのほうが安定して好釣果が望める。特に、朝夕の暗い時間帯に威力を発揮する。
 鉛ヅので重要なのはガス糸の色である。蜂の子と呼ばれる黄色と黒の段だら模様は囮ヅノであり、かつ万能ヅノにもなるので必ず入れたい色でもある。
 乗り渋り気味の日には、変わった色のツノに集中して乗ることが多い。逆に、乗りが活発な時はあまり色を選ばないものだ。赤/白、ピンク単色、水色単色、青/白、赤単色、青単色などが定番だ。使っていると汚れてきたり、色が褪せてくる。そうなると格段に乗りが悪くなるので、あたらしく糸を巻き直すことになる。
 竿釣りの人はボデーが樹脂製のものを使う。外見は鉛ヅのと変わらないが軽く出来ている。だから竿釣りでも扱いやすい。釣果は、棒状のプラヅノの方が安定している。

移動の足が早い時は竿釣りが断然有利

 イカは目の前にイの一番に降りてきた仕掛けにわっと群がる。手釣りに比べて竿釣りの方が仕掛けは早く降りていく。だから、群れが小さい場合や移動の足が速かったり、潮の流れが速い時には竿釣りが断然有利になる。
 自分の手釣りの仕掛けはまだ降りる途中なのに、竿釣りにはもうイカが乗っている様な状況が続くことがある。こんな日は思いっきり良く竿釣りに変える手もある。しかし、私の経験では、じっと我慢して手釣りのまま一発逆転を狙った方がいい様な気もする。濃い群れに当たった時は、竿釣りだとツノ数が少ない為数が意外に伸びないものだ。ここは思案のしどころでもある。

2022年10月16日

スルメイカのプロフィール

 漁期或いは大きさで、ムギイカ、ニセイカ、マイカなどと呼び分ける。ムギイカは、早春小麦が花穂を出す5月前後に釣れることからそう呼ばれている。
 東京湾では、ムギイカは早い年だと2月頃から顔を出す。この頃のものは「鉛筆」と呼ばれるように、胴長が10cmにも満たない小型が主体になる。イカの生態は意外と知られていない。産卵期は8、9月頃とも言われているし、群れごとに年に4回ぐらい時期をずらして産卵するらしいと言う説もある。
 イカは一年魚で、普通は産卵を終えると死んでしまう。大型のイカは、釣り上げるといつでも抱卵している。人間どもと同じで、イカも年中発情期ではないかと言うのが釣り師の実感だ。
 東京湾では、ムギイカのポイントはアジのそれと重なる場合が多い。アジ釣りの船でポツリポツリ掛かるようになって、ようやくムギイカの乗合船が出るようになる。何と言っても、ムギイカ釣りは手釣りが有利だ。初期は群れが濃い。15本ヅノに16尾も17尾も掛ってくることさえある。これは決して法螺ではない。1本のツノに2尾同時に抱き着いてくるからだ。
 この時期の水深は、せいぜい50mどまりだ。タナは大抵底から20m前後だが、早朝や曇天には水面近くまでツノを追いかけてくる。遊泳層が非常に広い。だから、ツノ数が多い手釣りは、泳層を広く探れるので絶対に有利だ。水深が浅いので手返しでも、竿釣りに負けることはない。
 ニセイカは、ムギイカ釣りの時期に釣れる胴長20cmクラスの中型のスルメイカの呼び名だ。おそらく、通常のムギイカの誕生時期より2、3ヶ月早めに生まれた群れなのだろう。ニセイカの群れが濃い年はスルメイカの当たり年だと言われていて、夏イカまで好漁が続く傾向がある。
 ムギイカの最盛期は5月で、この頃になると胴長が15cmほどまでに成長している。東京湾だけでなく湘南や長井沖などでも最盛期を迎え、早朝4時の乗合船まで出るようになる。何といっても、この釣りは早朝が有利だ。束釣りの報が飛び交うのもこの時期だ。
 初夏の頃になると、それまでは50mどまりだった釣り場の水深が100m前後と深くなる。盛夏にはビールビンサイズまで大きくなる。この時期は20尾も釣れば大漁で、だんだん数は釣れなくなる。9月の下旬頃からやりイカが混じるようになり、主役が交代する。
 近年はスルメイカの呼び名が定着したが、漁師などの業業関係者はマイカと呼んでいた。スルメイカという呼称の定着は遊漁の繁栄と職漁の衰退を反映しているともいえる。

2022年10月16日

イカの塩辛パート2

 先のやり方は、お客さん向き。自家用の作り方はこうだ。肝をズボッと抜く。胴体は背骨が入っていない側を縦に切り裂く。身を開き、残った内臓を取り除く。卵や白子が入っていることがある。これは珍味だから捨てないで取っておく。そのままワサビ醤油で食べても美味しいし、塩辛に入れてもいい。
  肝付きの足は、カラスを取り、縦に包丁を入れて開いておく。目と脳みそを取り除くのは、先の場合と同じだ。肝の先には餌袋が附いているが、これがパンパンに膨らんでいることがある。これは取り除いておく。
 後は、開いた身と足を笊の上に並べ、パラパラと塩を振り、冷蔵庫に入れて余分な水っ気を取る。丸一日ぐらい経ったら取り出し、身も足も肝も食べ易い大きさにぶつに切りして混ぜ合わせる。 もちろん皮は附いたままだし、スミ袋もそのまま入れる。掻き混ぜるとスミ袋が破けて黒くなる。3、4日これを冷蔵庫に寝かせておくと、能登名物のイカの黒造りに劣らない塩辛が出来上る。
 イカズミは健康に良いとされている。雑菌を押さえる殺菌効果もあるようだ。だから、塩辛が長持ちする。実際、イカズミが入っていると醗酵の進み具合も遅くなるようだ。スミの微粒子が腸壁にへばりついた老廃物を吸着してそのまま排泄されるから、腸内の掃除にもなる。たくさん食べると、翌日は確実に黒いうんこが出る。
 塩辛の旨みは、皮などに附いている微生物の作用によるところが大きい。皮が附いていると見てくれも悪いし、歯に絡み付いて食感も悪い。しかし、味はこちらの方が格段に上だ。野趣もある。

2022年10月15日

イカの塩辛

 まずは、足をワタごと抜き取る。足の付け根に指を差し込み、身につながる部分を指先を使って剥がす。エンペラ(耳)同じだ。耳の付け根に指を差し込み、身に沿うように指先でなぞると皮が剥がれてくる。耳は完全に切り離さないで、付け根が皮目一つで身とつながっている様にする。そして、剥がした耳の先端を掴み、足の付け根に向かって一気に皮を引く。そうすると、胴体の皮に縦に切れ目が出来る。そこから左右別々に身と皮の間に指を入れて皮をはがしていく。
  剥き終わったら包丁で切り下げて身を開き、内側に附いているエラや外套膜などの内臓を取り除く。身の内側にも薄い皮がある。これも食べる時に歯に触るから爪でつまみ出しながら取り除いておく。タオルで擦ると楽にとれて効率的だ。次いで、 足から肝を包丁で切り離す。切り取る前に肝の表面に附いている墨袋を破かない様に剥がし取る。足の部分は、まず目の間に切り口を附け、指先で目と脳みそを取り除く。次いで付け根を縦に切り裂き、足を開いた状態にする。足に附いているイボイボは指でしごいて取り除く。エンペラは真ん中に縦に筋を入れ、そこから左右に皮を剥がしていく。
 それらを笊に並べ、上から軽く塩を振る。この塩加減がポイントだ。薄い塩味が、自家製の塩辛の身上だ。くれぐれも、塩の量は少な目にすることだ。追加は後でも出来る。この笊を一晩冷蔵庫の中で寝かせる。
  翌日冷蔵庫から取り出し、刺し身を作る要領で身も足も耳も細かくおろしていく。身と足や耳の部分とはべつべつにしてもいい。それに肝をまぶして、更に冷蔵庫で熟成させる。肝の量を多くするとねっとりとコクのある塩辛が出来上がる。
 3日から1週間ほどで、食べ頃になる。塩が薄いので、醗酵がどんどん進む。直ぐに食べきれない時は、小分けして冷凍庫に保管しておく。1ヶ月ぐらいなら風味は変わらない。
 保管の際に大事なのは、空気と触れさせないことである。空気に曝しておくと、肝の脂分が脂ヤケを起こして風味が落ちてしまうからだ。タッパーウエアや空き瓶に入れて密閉しておく。キムチやコーヒーなど匂いの強いものが入っていた容器は、臭いが移るので使わない様にする。

2022年10月15日

イカ刺し

 イカ刺しは鮮度が身上だ。一晩置いて食べる方が美味いと言う人もいる。しかし、私は(細胞)が生きているイカが最高だと思っている。醗酵して旨み成分のアミノ酸云々は、塩辛や干しスルメの場合だ。イカ刺しの歯ごたえの爽快感と甘さは、皮目にちょうちんが明滅している鮮度の良いイカを調理してこそ味わえる。
 イカは生きている時には心模様で体色を変える。刻々、白くなったり赤くなったりする。釣上げて、ツノから外そうとぐっと握り締めたりすると褐色になるが、これは威嚇している状態だ。この時下手に足の付け根の近くを持ったりすると、体を反転させて指に噛み付いてくる。
 釣れたらすぐにクーラーボックスの中の氷水(海水)で〆る。直接氷水に浸けると色が白くなるので、ビニール袋に入れ密閉してからにする。こうすると、自宅に帰った後も、未だイカの表面の茶褐色の斑点は、呼吸に合わせたかのように縮んだり広がったりする。このイカの表面を軽く指で押してみる。サーと付近の色が変わる。このような状態でないと、イカは鮮度が良いとは言えない。
 イカ刺しを作る時に大事なのは、外の皮だけでなく更にその内側にある薄皮(甘皮)も剥いでやることだ。これが残っていると歯に引っ掛かり食感を損なう。耳と足も刺し身でいける。
 イカ刺しのたれは塩辛くない方が良い。居酒屋で5、6切れ食べるのと違って、釣り人は大皿一杯食べる。市販のそばつゆを薄めて使うといい。薬味にはおろし生姜が合う。このタレに浸けて、うどんやそばを食べるようにつるつるといく。まさにイカ素麺だ。イカ素麺の時はなるだけ細く切ると美味い。
 ムギイカや中型のイカは身が柔らかく甘みもあり、逸品だ。キムチのもとで和えたのも辛党にはたまらない。明太子、タラコ、トビッコ、シシャモッコなどと和えても美味い。

2022年10月15日

スルメイカの沖干し

 これもイカが生きているうちに開かないと色の良いものが出来ない。生きている奴だと、皮目が奇麗なチョコレート色に仕上がるが、死んだイカだと白っぽくなってしまう。
 包丁の刃先を上向きにして、足の付け根から耳の方に向かって一気に切り裂く。肝に附いている墨袋は破らない様に慎重に剥ぎ取る。墨が附くと仕上がりが汚くなって価値が半減する。指で肝を耳側から引き起こすように剥がしていく。足の付け根まで剥がれたら一気に抜き取る。この時も、肝の袋を破かない様に注意する。


 足の付け根にも縦に切れ目を入れて開く。カラス、目、脳みそも奇麗に除く。バケツに汲んだ奇麗な海水の中で、身の内側に附いているエラなどの内臓をよく洗い落とす。此れを船上に張り巡らされた紐にぶら下げて天日干しにするのである。
 洗濯挟みがなくても平気だ。足の付け根で丁度折れ曲がるので、そのままぶら下げておくことが出来る。初めは皮目が外側を向くように吊るす。耳の先まで完全に切り裂いておかないと、その部分に水が溜まって乾きが悪くなる。表面が乾いてきたら裏返しにする。
 切り取ったカラスは日当たりの良い場所に、別に並べて干しておく。この部分はイカが最も良く動かす部分だ。コリッとしていて味も濃厚だ。干しあがったものは、さっと炙って酒の肴にする。
 帰りの船上で取り込むのだが、重ねる時は皮と皮が重なるようにする。身は奇麗な白色だから、皮が触れたままだと長い時間おくと色が移ってしまうからだ。


 この生干しは、その晩に食べるのが最高だ。軽く炙って、醤油などはつけずにそのままの味を堪能した方が良い。染み込んだ海水の味は豊潤だ。イカの甘さ、美味さが一層引き立つ。
 1週間分ぐらいは残して、後は首を長くして待っているノンべーにクール便で届けてやる。それが地酒の逸品に化けて出ることもあるからこたえられない。
 この沖干し造りは忙しくて本当はやりたくないというの本音だ。イカ釣りは置き竿というわけにはなかなかいかない。常に竿を上下していなければならない。仕掛けの投入が遅れるとイカはそっぽを向いてしまう。船が移動を繰り返す合間のちょっとした時間を利用するしかない。
 イカを捌いている最中でも、船のエンジン音がスローからバックに変わったら、そのイカを放り出しても釣り座に戻らなければならない。こんなことをしていると釣りに集中できないので、私は沖干し造りはあまりしたくないのである。しかし、食い気に負けてやはり造ってしまうのである。

2022年10月12日

スルメイカの沖漬け

 生きているイカをそのままタレに漬け込む船上料理で、これは釣り人か漁師にしか出来ない。蓋付きの大型容器にタレを詰めて船上に持ち込む。タレは各人の秘伝がある。一般的には、ミリン、醤油を等量づつ混ぜて作る。これに、各人の好み、思い入れで、酒やワインや唐辛子などの隠し味を加える。
 船上でタレを即席で作る人がいるが、一旦沸騰させてから使うのが正しいやり方だ。酒やワインのアルコール分は一度飛ばさないとくどすぎる。
 釣れたらイカは片っ端からタレに放り込む。直ぐと言っても、チョイの間空バケツに入れておいて、水を吐き出させた後からの方が良い。そうしないと、タレが海水で塩辛くなってしまう。イカが死んでしまうとタレの廻りが悪くなる。生きているうちにタレに入れるのがポイントだ。
 自宅に帰ったら、1尾づつラップに包んで冷凍庫に保管する。食べる時は凍ったまま筒切りにしてイカの形にしてで盛り付ける。野趣溢れる食べ方だ。特に肝が珍味で、ウニよりもコクがあって美味い。冷凍の肝をスライスしたものを軍艦巻きにすると最高だ。

2022年10月12日

マダイ釣り余話

長崎県西海市大瀬戸沖で(大瀬戸港和丸にて出船。ウキ流し釣り)

同日の釣果 3キロを筆頭にマダイが9尾

釣れない釣りは釣りではない

 マダイは世間でも折り紙付きの高級魚だ。特に、旬の味は最高だ。 釣り人の中には、シーズン中はこの魚だけを追いかけている人もいる。しかし、一般の釣り人はそうはいかない。釣れもしない魚に入れ揚げるほど、気持ちにも金にも余裕がないからだ。
 私もそうだ。それでも、シーズンには2、3度出かけてみることにしている。釣れないのは覚悟の上だが、まず納得するほどは釣れた試しがない。釣れないと練習にもならないから、腕もちっとも上達しない。毎年振り出しから始める状況が続いている。
 この魚は、船中の特定の人にだけ集中して釣れる傾向がある。群れているわけではないし、元々数の少ない魚だから、どうしても、まず潮先の仕掛けに食ってくる。大部分の釣り人は、指をくわえて空で戻ることになる。私は釣れない釣りは嫌いだ。

正統派はエビエサのシャクリ釣り
 
 鴨居沖はマダイ釣りの本場だった。ここのは手ばね竿を使ったエビ餌のシャクリ釣りだ。孫バリの附いた独特のタイテンヤを使用する。だから、鴨居沖から中に入った海域ではマダイのコマセ釣りは禁止されている。
 今ではこの釣りをやらせてくれるのは、1、2の乗合船か、あとは仕立船しかない。この釣り方だと、500gにも満たないような小物はほとんどかからない。だから数もあまり釣れない。一日粘ってもカタを見れば良い方だから、釣り人にもかなりの辛抱がいる。だからこそ、釣れた時の感動は大きいのかも知れない。
 秋ダイの時期には毎年1、2度は出掛けていた。終日、手ばね竿を頭上一杯シャクリ上げる動作を繰り返すのだが、単純に見えてなかなか奥の深い釣りだった。釣りをかなり経験している人なら、一度やるとこの独特な釣趣に大抵ははまるらしい。私はこの釣りでは未だにマダイのカタを見ていない。

ウイリーのコマセシャクリ釣法はマダイの資源を枯渇させる

 産卵を控えた旬のマダイは食べて最高だ。この時期は身に脂が廻り、しっとりした乳白色になる。刺し身で食べると、何とも上品な脂の旨みが舌を和ませてくれる。
 腹身のところなどは、白い脂が厚い層になっている。ここやカマや頭の部分は酒蒸しが一番だ。箸で摘まむと半透明な脂がプルプルと揺れる。口に入れると、フワッと脂が広がる。白身魚の脂は全然しつこくない。いくらでも食べられる。

 乗っこみの時期は大型の釣れる確率が高くなる。黒ずんだ色は乗っこみのマダイの特徴だ。ぽってりと肥えて、胴回りも一団と丸みを帯びて見事な体型になる。2、3キロになると格が違ってみえる。この時期は、泳層もかなり上がる。タナとりが重要になる。ハリス分プラス5m上までは探ってみたい。外海から湾内に入ってくるので、年によってムラがある。他の魚と同様、年々減少傾向にある。本当に寂しいことだ。

 産卵後のマダイは、別の魚かと思うほど不味くなる。美味いマダイを食べたいなら、次は秋ダイのシーズンまで待たなければならない。秋になると、それまで浅場にいた中、小型のマダイが深場へと落ちていく。そのタイが途中の通過点に集結したところを釣上げるのが秋ダイ釣りだ。
 釣り場の水深は50から60m。釣れるのは大きくても1.5キロどまりだ。この時期のマダイも脂が乗っている。餌が豊富な浅海で、越冬の為の体力造りを終えた魚たちだ。

 近年、この秋ダイをウイリーのコマセシャクリ釣法で釣らせる船宿や釣り人が増えてきた。この釣り方だと200~300gの小型がどんどん釣れてしまう。この釣法が普及してから、新聞の釣況欄に2桁の釣果が載る日が多くなった。サイズの表示もキロからグラムに変わってしまった。
 私もハナダイやイナダ釣りの高級外道として、ここ何年間はウイリーのマダイ釣りを密かに楽しんできた。最高は一日で13枚も釣ったことがある。この釣りは、一部の人の密かな楽しみだった。本当によく釣れるのである。
 ところが多くの人が、これをやるようになった。此れではいくら稚魚を放流しても追いつかないだろう。東京湾からマダイが消える日はそう遠くないのかもしれない。

スルメイカでヒラメが釣れた

 茨城に釣友のUさんがいる。畳屋さんだ。道楽で売り出した我社の釣竿を買ってもらった縁で交際が始まった。この人は竿を良く折ってくれるのである。現場を見たわけではないので文句も言えず、その都度無償で交換してあげていた。
 「お父さんは商売人向きでないね」とは我女房。全くその通りで、私の釣り具事業は2年ほどしか続かなかった。今は夢を買ったと自分で納得している。

 そのUさんに狭い我が家の畳替えをお願いした。わざわざ茨城から出てきてくれて、寸法取りに一回、工事に一回来てくれて、あっという間に終わってしまった。このマンションは築20年以上も経っていた。それでも初めての畳替えだった。
 当初は4、5年で買い換えるつもりでいた。それが、そのまま20年が過ぎていた。不動産価格が下落した今に思えば、買い替えなどしなくて本当に良かった。一生を家のローンに捧げる人生では救われない。

 ところでバブルではじけたあぶく銭は何処へ消えたのだろうかね?儲けたのは誰だったのかね?

 さてそのUさんだが、那珂湊や大洗からイカ釣りに良く出掛ける。彼が好きなのはゴウドウイカと呼ばれるイカだ。大きくなると5、6キロにもなる。イカフライ、イカリングなどのお惣菜は大抵このイカが使われている。別名をムラサキイカとも言う。しかし、鹿島灘で取れるのは700から800gぐらいだ。この位だと全く市場に出しても全く商品価値はない。

 身が柔らかいイカで、釣上げて暫く経つとホルマリンに漬けたように外観がしわしわになってくる。動かすと皮がベロンと剥けてくる。こんなイカでも、釣れる時は50尾だ100尾だと釣れるから、釣り人には結構人気がある。

 秋が釣り期だ。この頃になると、こぼれんばかりの釣り人を乗せた船が、夕方一斉に鹿島灘へと船出していく。「K丸がようー、1億何千万円の追徴課税をされたとよー」Uさんのぼやきだ。私もそうだが、同じ自営業者としては日銭何百万円はうらやましい限りなのである。

 このゴウドウイカのシーズンの前にはスルメイカが釣れる。沿岸の水深20から30mダチがポイントだ。Uさん、この釣りで3キロ近いヒラメを釣上げてしまったのだ。余程嬉しかったようだ。クール便でスルメイカ10尾ほどと一緒にそのヒラメの切り身を送ってくれた。「イカ釣りでヒラメを釣ったのはあんただけだんべよー」と船頭にからかわれたらしい。

2022年10月11日

ハナダイのコマセシャクリ専門だったS氏

 Sさんは私より5歳ほど年下だ。私が釣り具の通販をしていた時に、客として知り合った仲だった。彼は職場を抜け出し、事務所代わりにしていたワンルームマンションにわざわざ訪ねてきてくれたりした。
 私も体格は良い方だが、彼はそれ以上だった。恵比寿様のようなふっくらとしたデカ顔と布袋様のような太っ腹をしているが、そんな彼もこと釣りに関しては繊細で、まるで乙女のような気遣いを見せる。
「コマセシャクリしかやらない」と言うくらいだから、仕掛けや竿に関してもかなりうるさい。不精者の私が仕掛け作りに精を出すようになったのは、まさにSさんとの出会いがあったからだった。


 最初に彼に見せてもらった仕掛けが、0.5号のハリと1.2号のハリスで出来たものだった。当時私が使っていた仕掛けは船宿の標準品で、ハリが2号でハリスが2号とかなり大ぶりだった。これだけでも、釣果の差は歴然だった。
 あのパンパンに肉が詰まった指先で、老眼鏡を掛けなければ見失いそうな0.5号のハリにどうやってウイリーを巻いていくのかと首を傾げたものだった。よく見るとウイリーも色違いの糸を交互に巻き込んである芸の細かさだ。
 からみ防止のビーズ玉を使い始めたのもSさんだった。これも鼻くそほどのちっぽけな玉っころに開けられた小さな穴に1.5号だの1.2号だのハリスを通さなければならない代物だった。
 私は6本バリの仕掛けを2組作っただけでギブアップしてしまった。しかし、佐藤さんは未だにそれを使いつづけている。確かに、カラミが少ないだけに糸に撚りが出来にくく仕掛けが長持ちする。ハリスに撚りが来ると魚の食いは格段に落ちる。
 ハリの軸に蛍光塗料をコーテングした物をすぐ取りいれたのも彼だった。クッションゴムにも神経を使っていて、新製品が出ると必ず試していた。私は事務用品売り場で売っている幅広のゴムバンドを未だに使っている。100円も出すと10本は買える。


 私のところも、竿だけは通販を始めてから潤沢にあった。オモリ負荷30号のコマセシャクリ専用竿に、80号のコマセカゴをぶら下げると謂う過酷な使い方だったが、最初の試作品が1年ほどで折れた以外は5年目にはいった今でも健在だ。
 グリップがコマセで目詰まりしてカペカぺになったので、紙やすりで研磨したらその部分だけは新品同様になった。ヤスリかけの最中はコマセ臭くて閉口したものだ。5年分のコマセエキスが一気に発散された感じだった。
 リールにしても竿にしても、釣りから帰るとシャワーを浴びせるぐらいでたいした手入れもしないから金属部分にはすぐ錆が出てしまう。5年も酷使すれば充分元は取れているのだが、同じ金を出すなら船代にまわしたい方だから年中汚い道具を持ち歩くことになる。


 Sさんも、胴に乗る私の開発した竿が気に入ったようで、数ある愛竿の一つに入れてくれていた。彼のはオーソドックスなシャクリで、小幅でかつかなりソフトだ。潮や魚の食いに合わせてシャクリを変えることもあまりしなかった。これが結果的には彼のコンスタントな釣果を支えているようだ。
 釣況で様々にパターンを変えたくなるのが人情だ。特に不調な時はなお更だ。しかし、大抵は迷路か泥沼にはまり込むだけだ。彼が変化をつけるとすれば、シャクリの後の待ちのタイミングだ。潮が流れない時や高いタナで食う大型には待ち時間をやや大目に取っていた。
 竿も、潮の緩急と水深で使い分けていた。潮が速かったり、水深があったりすると軟調子の竿だと負けてしまうことがあるからだ。理屈は分かっているのだが、私は元々不精者だから、つい一種類で間に合わせてしまう。だが、そんな私でも予備の竿は必ず持つようにしている。

2022年10月11日

ハナダイの酒蒸し


 鰓と内臓を抜き取り、開いた腹部を流水で良く洗い流す。血合いも丁寧に除く。ふきんで水分を拭き取り、両面に軽く塩を振る。大き目の皿にハナダイを乗せ、上から日本酒かワインを注ぐ。酒の量は下側の皮目全体が浸る程度で良い。魚の上にハリ生姜を乗せると魚の臭みが無くなる。

 これを家庭用の蒸し器に入れて蒸すと出来上がりだ。蒸す時間だが、蒸気が上がり始めてから15分ぐらいも入れておけば充分だ。火からおろす時に、ちょっと醤油を垂らすと香りが良くなる。仕上げに三つ葉などの香味野菜を乗せる。

 ハナダイも30cmほどになると頭だけでも酒蒸しやカブト煮の材料になる。どちらも、酒の肴には絶品だ。目玉の裏のヌルヌルや唇付近のゼラチン質が特に美味い。

 春秋の旬のマダイならなお結構だ。カマや砂ずりも酒蒸しやカブト煮料理風にする。寒天みたいにプリプリした淡泊で上品な脂が舌の上でとろける。

2022年10月11日

一夜干し

 やや大き目のハナダイは一夜干しにする。一夜干しを上手に仕上げるポイントは塩加減に尽きる。白身魚と赤身魚では、塩加減に随分と差がある。当初、私はアジの干物を作る感覚で塩の分量を決めていた。

 珍しいものだから、出来上がったらすぐに冷凍庫に仕舞い込んで、何かの機会には親類や知人へ配っていた。ところが、田舎のおふくろが「塩辛いけどウメッケ。野菜と一緒に鍋物で食べダッケバ」と連絡をくれた。

 すぐに冷凍庫にしまってあるものを取り出して自分でも食べてみた。おふくろの言う通りだ。塩辛くて食べられたものではない。講釈たらたら自慢話付きで送ってあったから、なんとも恥ずかしくて、暫くは落ち込んでしまった。

 この魚は、硬い頭まで奇麗に開くには技量が要る。だから、気分次第では頭を落として開きにすることもある。或いは、カマスの一夜干しように頭をそのままにして背開きにする手もある。一夜干しにした頭は、熱湯を注ぐと素晴らしい澄まし汁になる。魚臭さが気になる人は三つ葉や柚を入れると良い。

 熱湯ならぬ燗をした酒を注げば、ハナダイの骨酒だ。骨酒にするなら塩はあまり振らない方がいい。

 干すのは冷蔵庫の中が無難だ。ハエもホコリもつかないからすこぶる衛生的だ。しかし、量が多いと、冷蔵庫担当の女どもが嫌な顔をする。そんな時は、竹で編んだ大ザルに乗せて夜間ベランダに出しておく。

 猫が出入りするような環境なら、釣具店で売っている専用ネットがお勧めだ。乾燥していて風のある晩なら、翌日の朝食に間に合う。

 乾きが悪いようだと、午前中は天日に当てたままにしておく。ザルの上にならべてある方はウンチバエの出入りが自由なので日中は冷蔵庫にしまい直した方が良い。取り込みの目安は、指で触ってもベタベタせず、それでいて生魚の弾力がある状態がベストだ。

 完成品はチャック付きのビニール袋に入れて、冷凍保存する。直接空気に触れたままだと、脂の乗っているものほど酸化が速く進み、味がすぐ落ちてしまう。はじめピンク色だった皮目もドドメ色になってしまう。


2022年10月10日

蒲田の電気屋さん

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 三浦半島久里浜港「ムツ六」が始めたハナダイ釣りが定着した。初めはサクラエビを使うエサ釣りだった。そして、コマセシャクリ釣りに行きつく。元祖「ムツ六」は釣り客が船からこぼれんばかりに賑わう。そして、同じ久里浜港「平作丸」が混雑が嫌いな私の定宿になった。その頃の一コマである。

 

 蒲田の電気屋さんの側には座りたくないとつい思ってしまう。彼のは、コマセカゴの上窓全開にして、水面から頭上まで一気にシャクリ上げることを繰り返す。だから、コマセは一回タナを探ると無くなってしまう。他の人は3回は探りを繰り返す。私たちの倍はコマセを使うから不公平この上もない。

 ところが、このシャクリが往々にしてぴったりと的中するから恐ろしい。そうなると不思議なことに、我々の紳士的なシャクリにはほとんど魚が掛らなくなるのだ。電器屋さんパワーで三軒両隣の魚まで吸い寄せられてしまうようで、船中には嫌な雰囲気が漂い始める。

 そのうち「まるで物量で勝負を仕掛けて来る米軍みたいだ」と陰口まで飛ぶ。彼のは仕掛けも大振りだ。ハリが2号、ハリスが2号と船宿の純正仕掛けだ。だから、魚が掛ると船縁に竿を当ててぐいぐいと容赦なく巻き上げる。大型のハナダイが掛ってもマダイが掛っても容赦せずに強引に巻き上げるものだから「切られた!」を連発する。アタリが途絶えた周りの客は、それを見て益々頭に血が上るのだった。

 色気を出して私も何度か真似てみたが、どうしてもこちらには釣れない。益々イライラしてくる。しかし、我々が釣れ盛っている時に、彼だけ釣れないこともある。釣りには理論的に解析できない部分が多々あるから面白いかもしれない。

 この人は他人に負けたくない性格らしい。釣果を尋ねる時は必ず相手に先に言わせてから自分の数を言う。だから、私は未だに彼に勝ったことがない。

2022年10月10日