季節ハタハタ釣り苦戦日記(2018年)後編

 12月17日 象潟漁港

 午前4時ごろに小雨降る中家を出て酒田北港に向かう。未練がましいが、気になってしょうがないのだ。しかし、到着して水路を覗き込むも釣り人の姿はほとんどない。車はそこそこ停まっているから、中で様子見らしい。産卵ロープが張られた辺りで竿を出すも気配が全くない。早々に竿を畳み、象潟漁港へ向かう。

 水路左岸寄りの路上には2台先行車が停まっているだけ。空いている。突堤の方にもチラチラとヘッドランプの灯りが動いて見えるが数は多くない。水路に近づき様子を見ると、先端に入った釣り人は入れ食い状態だ。対岸もやはり先端付近では頻繁に竿が上がる。私は、昨日と同じ餌釣りで、その入れ食いの釣り人の隣で釣るも、昨日の様にはいかない。彼の1/3~1/5の確率だ。何が悪くて釣れないのか・・・。やはり、魚釣りは難しい。まだまだ、修業が足らない。

 そのうちさしもの入れ食いも終了し、彼も私並みの釣れる確率になった。時合終了と云うことで納竿。2時間ほど釣って20尾ほどだった。ストレスが溜まる。


 12月18日 象潟漁港

 実は、昨日の夕方にも象潟漁港へ行っている。朝釣りでの隣人との釣果の差に愕然としてあの手この手と攻略法を考えた末、まずは仕掛けを自作してみることにする。かつて船釣りに通っていたころ、三浦半島沿岸でのハナダイのウィリーシャクリ釣りに凝り、さまざまな工夫を凝らした仕掛けを自作して試していた。だから、ウィリー巻きは今も得意だ。雑多に釣り具が詰まった箱の中に、ウィリーはもとより、イナダ、メジマグロ釣りに使ったバケ用の魚皮も残っている。

 ハタハタ釣りでも、私はアジやカマス釣りで使う赤スキンのサビキを主に使ってきたが、周りを見ると結構大振りで派手な仕掛けを使っている。そこで、これも手持ちのチヌバリにラメ糸をウィリーで巻き、さらにその上をメタル光沢の蒸着フィルムで包んでみることにした。少しのシャクリでもハリ掛かりするように枝素の長さは極力短くもした。これは一時期狂ったカワハギ釣りでは常識。 

 今回はその自作の仕掛けを試すつもりもあった。象潟漁港の水路に着いた時はまだ明るかった。水路左岸に行く途中に車を停めたが、他に1台が停めてあるだけだった。昼間の釣り人は時合が過ぎて皆帰ってしまったらしい。要は、釣れていないということなのだ。
 前方の突堤にも人影はまばらだ。もう一人の釣り人は、投げ釣りで遠くのポイントを探っているが、釣れている気配はない。そのうち彼は引き揚げて行き私一人になる。
 私ではないが他の人が朝方入れ食いだった場所で竿を出す。しかし、全くアタリがない。魚が居れば掛からなくても、仕掛けに触る感触が伝わったりするものだが、それもない。チョイ投げも試みるも、これも反応なし。魚のいない時は新しい仕掛けのテストにもならないので、いつものラメ入り赤スキンでの餌釣りに戻す。魚が回ってきたのは暗くなり、街灯の光が海面を明るく照らすようになってからだった。しかし、次がなかなか来ない。そこそこの群れだと2~3尾は立て続けにアタルはずなのに・・・。

 また一人やって来たが、彼も先端からの投げ釣り。水路は私の独り舞台なので場所を移動しながら探り釣りだ。やはり、夜は灯りに寄るようだ。時折り、灯りの下で、姿は見えないが魚が餌を追いかけてきて水面に水紋を描く。ハタハタでなければ、小メバルだ。周りが闇に包まれるとアタリが増えてくる。しかし、なかなかハリ掛かりしない。反し付きで、ハリも小さい、普通のサビキを使う時のジレンマだ。
 雨が本降りとなってきて寒い。出かける前に風呂に入ってきたこともある。ようやく時合に入ったが風邪をひく前に退散だ。今回は痩せハタハタが5~6尾だった。

 この痩せハタハタだが、焼いても煮ても美味くない。なら釣りに行かなければいいのだが、いつかは新群れに当たりそうで出かけてしまう。そこで、この痩せハタハタを絶品料理にする方法を公開だ。捌くと分かるのだが、白身はアナゴによく似ている。だから、天ぷら、フライ、さらにはそれらの甘酢あんかけが結構いけるのである。
 下拵えはキスの天ぷらと同様に背開きだ。ヌルが強いので手こずるかも知れないが、頭と腹を取り除き、背開きにする。白子は捨てないで取って置き、適量まとめて衣をつけて揚げる。これも美味い。ともかく、まだ試していないなら絶対お勧めだ。美味い美味いと食べてあげるとハタハタも成仏だ。


 12月21日 象潟漁港 

 今朝は、渓流竿(尺アジ用に使っている超硬調子6mの渓流竿)で餌釣りをしてみた。午前5時ごろから始めたが、ここ象潟漁港では、こんな釣り方をしているのは私以外にはいない。アジのイサザ釣りのように、砂に混ぜたアミを時々撒いてやると効果的なはずだが、今回は無しにした。
 街灯の灯りで照らされた水面に向かって時々魚が浮いてきてパシャッと音を立てたりする。この素早い動きはおそらくメバルだろう。たまにゆらりと見える隠れする魚影はハタハタだ。ヤマメバリにSサイズのオキアミを付けて仕掛けを落としてやる。ウキ下は一ヒロ~一ヒロ半。すぐにウキにアタリが出て、ゆっくりとウキが沈んでいく。いきなり合わせずに、一呼吸おいて竿を立てる。アジ釣りでも同じだが、魚が餌を咥えても一気には引き込まず、大抵ゆるゆるとウキが沈み込んでいく。確実にハリ掛かりさせるには、ハリを飲み込ませるぐらいの方が良い。
 コマセをしないこともあってハタハタはすぐに移動してしまうらしい。次が来るまで結構間が空いてしまう。それでも、シャクリ釣り並みには間違いなく釣れる。強風で竿が煽られるようなことがなければ、浮き釣りもお勧めだ。
 辺りが白々と明るくなる頃が時合だ。場所による差はあるものの普通のシャクリ釣りにもアタリが活発になる。定置網を仕掛けに船が出ていく。海の様子を見にきて話しかけてきた漁師によると、釣り人の状況を見て網を仕掛けるのだとか。今年の季節ハタハタは小型だし、雄ばかりでメスが少ないとも言っていた。

 周りがすっかり明るくなりアタリが遠くなったので、今朝は場所が空いている投げ釣りに変えてみる。これは一投目からヒット。以後入れ食い状態となる。しかし、根掛かりが多い。たちまち仕掛けを4組失う。この釣りは根掛かりを防ぐ工夫がいる。途中で気が付いて、ハリ数を減らし、下ハリからオモリまでの間隔を長くする。これで根掛かりも殆どしなくなる。
 まだまだ釣れ盛っている8時半ごろに納竿。釣果はオスばかりだが60~70尾ほど。


 12月23日 ハタハタ料理二題


 この3連休は、ハタハタ釣りは休みだ。とてもあの混雑には耐えられないからだ。昨日地元の漁港で話を交わした釣り人によると、酒田北港も象潟漁港も大盛況だったらしい。酒田北港は水路の北側でポツリポツリ釣れていたらしい。その後に象潟漁港にも行ってみたが低調で、ここに移動して穴釣りに切り替えだと言う。
 地元漁港の堤防の上にはブリコ交じりのカモメの糞がいっぱい落ちていた。期待して水面を覗き込んで歩き回ってみたが魚影は見つからなかった。ハタハタはやって来て、港内に居つくことなくすぐに去ってしまったようだ。
 夕方散歩がてら行ってみた時はハタハタ釣りの格好をしている釣り人が一人いた。そばに行ってみると釣れていたのはカタクチイワシ。水面を覗き込むとたまにカタクチイワシが横切る。酒田北港の南突堤では青物が釣れていたらしい。このイワシの群れに青物が付いてきている可能性もあるが、唯一人竿を振っていたルアーマンにはアタリが無いらしかった。

閑話休題

 さて、釣ったハタハタの始末だが、ほとんどが小型でやせ細ったオスハタハタだから、そのまま小分けして冷凍庫に入れるのが常だ。正直なところ焼いても煮ても美味しくないのでたまる一方だ。冷凍庫の中は浜で買ったハタハタもあったりして、ハタハタ尽くしだ。これではハタハタに申し訳ない。そこで、釣りに出かけなかった昨日は前日釣った分(100尾近くあったが)を背開きにし、一部はフライに残りを冷凍にした。
 ハタハタの身はアナゴに似ている。だから、天ぷら、フライが美味い。それらのあんかけもいける。煮アナゴならぬ煮ハタハタも行けるかもしれないと思ったりしているが、これはまだ試していない。ともかく、今年のハタハタは小振りだ。捌こうとすると一大決心がいる。 さらに、暇に飽かせてハタハタ寿司(飯鮨)も仕込んでみた。三枚に下ろし、強塩に一晩ほど漬け込む。その後、水洗いと塩出しを繰り返す。水洗いは残り水が澄んで見えるまで繰り返す。これで、血やヌルが除かれて生臭さが無くなる。それをザルにあけて水を切り、三杯酢に丸一日漬け込む。あとは水を切って、一口大に刻み、予め塩を振って水切りして置いた大根と人参のみじん切り(イチョウ切りでも良い)、ユズ、寒こうじを混ぜて2~3日置くと出来上がりだ。

 地元の伝統的な作り方は、麹とご飯を混ぜて一月ほどねかせて作るが、私のは寒こうじを使う簡便な方法だ。我家では寒こうじも炊飯器の保温を利用した手作りで、肉、魚の熟成に、野菜の一夜漬けにと大活躍だ。
 料理はアイデア次第。神の魚「鰰」をより美味しく感謝して頂き成仏してもらうのも釣り人の心構えだ。


 12月24日 ハタハタの見釣り


 地元吹浦漁港に様子見に通っているが、昨日まではハタハタの群れを確認することが出来ずにいる。ハタハタが回遊するのは第一堤防の内側と第三堤防の外と内側。この港は東側を除き三方に遮蔽物がないから、季節風が強く吹き付ける日は釣りにならない。ハタハタが釣れるのは暴風雪が嘘のように止んで、束の間の凪が訪れた時に限られる。群れが入ると、堤防の上から黒い塊がゆっくりと防波堤の壁に沿って移動するのが見える。長い防波堤だがハタハタが溜まる場所も決まっている。新群れが入った当初は、産卵を控えて腹パンパンのメスが数釣れる。しかし、それも一昨年まで。去年も今年も、まだ、そんな群れを見ていない。

 潮が澄み気味の時はハタハタがハリ掛かりする様を上から見ることが出来る。密集した魚群だから落ちてゆく仕掛けに偶然引っ掛けられる魚もいる。しゃくり上げ時にスレでハリ掛かりするのもいる。最初に掛かった魚が動き回り、その時に別のがハリに引っかかることもある。見ていると面白い。仕掛けの近くで白い腹を見せてヒラをうつ魚もいる。これはハリを咥えに来た魚だ。ほとんどが傍にある仕掛けを無視したように泳いでいるのに、中には食い気を誘われて突然ハリに食いつく魚もいる。

 ハタハタ釣り初心者のころはやみくもにシャクっていたものだが、最近は誘ってハリに食いつかせて釣ることの方が多くなった。そうしないと釣れないと云うこともあるからだ。群れが濃い時はシャクって引っ掛ける釣りの方が数釣れる。しかし、最近は濃い群れに当たることが殆ど無くなっている。だから、力任せにシャクったんでは寄ってきたハタハタをかえって追い返してしまうことにもなり、釣果が上がらなくなってしまうからだ。

 極の釣り方だが、居残りのハタハタには餌釣り、それも渓流竿で浮き釣りすることもある。ただ、竿があおられる風が強い日や、潮が早い日は不向きで、その都度切り替えがいる。
 魚のことはカモメに訊けだが、ハタハタにおいてもそれは言える。今の時期、時化の海にカモメが乱舞する防波堤に乗ってみると、至る所にハタハタのブリコの混じった糞が残されている。今年も吹浦漁港でカモメの乱舞を何度か目撃した。ハタハタは確実に来ている。しかし、波が高くて、とてもその時は防波堤に上がれない。凪を待って出かけるのだが、いつも、カモメもハタハタも気配を消してしまった後だ。


 1月5日 酒田北港

  酒田北港でハタハタが釣れ続いている。私も5日と6日に行った。結論から言うと両日とも私だけは惨敗だった。
 5日は、現場着が午前5時ごろ。まだ、暗い。既に、南側2基目の風車の周りには5~6人の釣り人が入っていた。季節風が強く吹いていて、水路の外側防波堤はナイアガラ状態。入れ食い状態の隣が広く空いていたので、隣で竿を下ろす。しかし、釣れない。隣は相変わらず入れ食い状態だ。仕掛けを替えたり、餌を付けて見たり、仕掛けを下ろす位置をずらしてみたり、はてはシャクリ幅を変えてみたりするも状況は変わらない。ドツボにハマった感じだ。過去に何度も経験した嫌な時間が流れていく。

 空が白んでくると、さしもの隣人にもアタリが遠くなる。彼は、まもなく竿を畳んで帰っていった。2時間ほどの間に、布バケツの魚を二度もクーラーに移し替えていたから、100や150尾はあったに違いない。私は、痩せハタハタが4尾。その彼だが、帰り際におもむろに海中から水中ライトを引き揚げたものだ。

 その日は家に帰ってから反省とイメージトレーニングをし、昼食後に再び出かける。心乱れる人込みは避けて、ポツンと離れた場所に。まずは移動しながら探りり釣りだ。なかなかアタらない。何度か往復しているうちにようやく初ヒット。産卵のためのネットを張ってある場所だった。ここはひっかりが多い場所だ。だが、背に腹は代えられない。用心しながら釣る。飽きない程度に釣れる。特に特殊な釣り方をしている訳ではない。要は足元に魚が寄っているかどうかなのだ。それにしても、今朝のように、隣人とは2mぐらいしか離れていないのに、あちらは入れ食い、こちらはさっぱりと云うのはどう分析したらいいのか・・・。やはり集魚灯のチカラかな。。
 15尾ほど釣ったらパッタリと釣れなくなる。人が群れているあたりに行き、様子を見るも、食いは止まっている。今日はこれまでと納竿だ。

 1月6日 酒田北港

 少し早めに家を出る。現場着は午前4時半ごろか。やはり、2基目の風車の下で竿を出す。その辺りで竿を出している釣り人は5~6人。この日も、入れ食い状態の釣り人の隣に入る。隣との間隔は2~3m。ところが、この日も昨日と同じ最悪のパターン。隣は入れ食いなのに、こちらには全く釣れない。そのうち、一人がその名人のそばにぴったりとついて竿を出す。竿先の間隔は50センチほどだ。「俺にはできないな~」と呟きが口に出る。しかし、その度胸のある彼にもハタハタは微笑みかけなかった。彼もまた私と同じパターンだ。何が違うのか・・・。教えを請いたい心境だ。

 反対側には2人組がいた。彼らは煌々と水中ライトを輝かしている。徹夜組かも知れない。疲れているのか投げやりな竿捌きをしているが、それなりに釣れている。

 この日も周りが白んでくる頃には、名人たちの竿も沈黙し始める。先の名人も竿を畳んで帰っていった。何時ごろから釣り始めたかは知らないが、私が来てからでも50尾は釣っているはずだ。私も名人に習って早々に竿を畳む。小型の痩せハタハタ2尾だった。


 1月7日 酒田北港


 ことハタハタ釣りに関しては、他の釣りと違ってなかなか周りほど釣れないのでムキになっている。今までの経験(5年)では朝マズメと上げっぱなに食いが立つ。修業の為に日に2回は通うつもりでいたが、この日の朝は帰省していた娘を庄内空港に送っていかなくてはならず、10時ごろに上げ三分になる上っぱなを狙うことにする。
 朝の釣りが一段落した後で釣り場は空いている。見回すと、ポツンポツンと並ぶ先行者にそこそこ釣れている。釣れている隣に入って、自分だけ釣れないと云うのもみじめなものなので少し離れた場所で竿を下ろす。竿入れからしばらくはアタリがなかったが、いきなり入れ食いモードに突入する。仕掛けを下ろすたびに魚が触る感じが手元に伝わってくる。それまでとは全く違う。魚がいても仕掛けに触らなかったのか、それとも魚がいなかったのか・・・。この違いは何だろう。またまた、迷路に入ってしまう。

 入れ食いモードに入ると、着底して誘うと直ぐ食い、落とし込みでも食ってくる。竿先を静止させる待ちの間にもアタリが出る。もちろん、スレではなく、ちゃんとハリを咥えて上がってくる。釣れるハタハタは二年物中心で、三年物も混じる。今まで釣ったものよりは型が良くなっている。
 そのうち、周りが混雑して来たし、入れ食いモードもやや下火になったので新場所に移動。それまでの場所からは30mほど離れたことになる。ここでも竿入れから好調で、群れの濃さを実感する。数釣ることで食わせのパターンも安定し、迷いも吹っ切れた感じだ。食わせて釣るならシャープなシャクリは禁物だ。訊くような感じで竿を立てる。食いダナも重要だ。結構浮つくこともある。待ちの間隔もある。入れ食いが下火になったなら三~五カウントぐらい待ってから誘いを入れるのが良いようだ。
 納竿は午後一時ごろだったが、久々の束釣りだった。


 1月8日 酒田北港

 朝マズメを狙って午前5時半ごろに酒田北港に到着。先行者は3名。いずれも常連さんで互いに顔なじみの様だ。釣れている。彼らから3mほど離れた所で釣り始める。しかし、やはり私には釣れない。そのうち常連さんが6人に増える。言葉を交わしながら、誰もが好調に釣れている。釣り方も私とは全く違う。竿先を小刻みに跳ね上げるようにシャクリ続けている。仕掛けを盗み見るとハリの間隔も10センチほどと小さい。ハリは大きめのオーロラのフィルムに隠れて見えない。

 ようやく空が白んでくる頃から私のサビキにもアタリが出始める。それからは五投に三度の割で釣れてくる。もちろんスレではなく、食わせだ。夢中で釣って、布バケツが満杯(100尾超)になった午前10時ごろに納竿。1~2年物が主体で、昨日よりは小振り。傍に移動してきた釣り人が、常連さんの一群を見て「連中はガラガケの仕掛けを使っているよ」と囁いた。これで、自分だけが釣れなかった魔の時間のカラクリが腑に落ちたものだ。あ~嫌だ。嫌だ。
 帰宅後冷凍庫にしまい込む際に釣果を数えてみたら130尾ほどあった。卵を抱えた雌は、そのうち5尾しかなかった。


 1月9日 酒田北港 

 暗いうちに起き出して外に出てみる。雨のようなミゾレのような中途半端な粒が落ちてきている。冬にしては寒くない朝だ。それでも、季節風は冬本番の吹き荒れようだ。そんな天気でも釣りキチは出掛ける。今年の季節ハタハタ釣りは、道路に雪も無く、凍結もしない分楽だ。

 竿を出したのは午前6時頃。酒田北港は、まだ、暗い。さすがに、釣り人の数は少ない。私は大抵南側2基目の風車の辺りで釣ることにしているが、今朝は10人にも満たない。隣との間隔はゆったり。もっとも、いつものガラガケの二人は仲良く1mにも満たない間隔で竿を上下している。やはり、ガラガケは確率が良い。まだ、ハタハタは居残っている。

 今朝は餌を忘れてきてしまった。餌は寄せ餌の効果もある。かじかんだ指で餌を付けるのは厄介だが、無いよりはあった方が良いようだ。周りが気になる。チラチラと様子を見る。私よりは釣れる確率が高い様に見えてしまう。竿入れから暫らくは10投に1回釣れるぐらいだった。周りが白んできてようやく5投に1回ぐらいの頻度になる。ほんの一時だったが、入れ食いタイムあった。ハタハタは、やはり、1~2年物が主だ。

 ガラガケの常連さんが竿を畳む頃になるとアタリが遠くなってしまった。明るくなると、夜に風車の灯りが届く辺りに寄っていた魚が散ってしまうのかもしれない。ともかく、足元に魚が寄っている時は仕掛けを上下していると気配で分かるから面白い。

 相変わらずの雨模様。合羽を着ていても沁み込んでくる。正味一時間ほどで納竿。釣果は痩せオスが15尾前後だった。実は、昨日の午後釣りにも出かけている。上げっぱな狙いだ。この日も同じような釣況で、2時間ほどでやはり15尾ほどだった。私から10mほど離れた場所で釣っていた人は結構順調に釣っていた。竿捌きを見るとそれほど手馴れているとは見えないのだが何故か釣れるのである。彼の釣り方だが、6本バリのサビキに全部餌を付けて、柔らかい竿の竿先を殆ど動かさないで待つやり方だった。私よりは先に来ていたから、魚が餌につられて足元に寄っていたのかもしれない。あるいは、他に何かコツがあるかも知れない。まだ、まだ納得の行くハタハタ釣りが出来ないでいる。


 1月12日 酒田北港


 季節ハタハタ釣りは、季節風が吹き荒れ、雪が水平にぶっ飛んでいく中で竿を振るのが当たり前だ。大抵夜の暗いうちに釣り場に向かうから、吹雪で視界が悪かったり、道路が凍結したりもするから車の運転には神経を使う。しかし、今年は暖冬で楽だ。この3連休も、庄内の冬にしては穏やかな天気が続いている。

 酒田北港のハタハタの魚影は、相変わらず結構濃いようだ。今日まで三日連続で朝マズメ釣りに通っっている。今日は60~70尾止まりだったが、昨日、一昨日と束釣りだった。

 一昨日のことだが、夜明けまで絶好調だった。スキンのサビキにオキアミ餌を付けた訊き合わせ釣り。これが、夜明け前までは的中し入れ掛りだった。ところが、夜が明けてからは極端にアタリが少なくなってしまった。そんな中、新人がやって来て私の竿先に触れんばかりに竿を出して釣り始めた。そして、不調を私をしり目に、彼は入れ掛りを連発。当方はますます落ち込むと云う負の連鎖に。既に、布バケツに8分目ほど釣った後だから潔く竿を畳んで撤退。

 当然、横目で彼の一挙手一投足は研究済み。彼我の違いは仕掛けにあると踏む。彼は普通のハリ3本の胴付き仕掛けのエサ釣り。おそらく、ハリもハリスも小振りにしてあるに違いない。翌日に備えて、私も胴付き仕掛けを自製。春アジ、秋アジの餌釣り用に使っていたヤマメバリを使い、ハリス1号、幹糸1.5号。もちろん、この仕掛けを使うからにはオモリも竿も変えなければならない。竿は、渓流用のルアー竿。オモリは2号。水深が深かったり、潮が早かったりすると2号のオモリでは底立ちを取るのが難しくなるが食い込みは良いはずだ。これはギリギリの選択だ。


 1月13日 酒田北港 

 その仕掛けを持って勇躍朝マズメ釣りに。前日同様、混雑する水路を避けて新場所(温排水)で挑戦だ。ここは水深が2mほどしかない。のぞき込むとハタハタの姿が見えるほどだ。先行者が2人いた。水中ライトを点け、コマセをしながらの釣りだ。仕掛けは大ぶりのハタハタ専用仕掛け。その大ぶりのハリに、普通サイズのオキアミを付けている。

 嫌らしくない距離を保って隣で竿を出す。ハタハタを寄せてくれていたようで、竿入れから入れ掛りとなる。しかし、釣れるのは私だけ。諦めたのか先の二人は間もなく竿を畳んで引き揚げていった。しばらく一人で入れ食いを堪能する。夜明け近くになるとポツリポツリと釣り人がやってくる。水路と違って、この場所に来るような人たちは比較的のんびりしている。前日の名人は現れなかったが、2人は見た顔だ。専用の胴付き仕掛けは私だけ。やはり、この仕掛けに分がある。周りにはポツポツだが、私は相変わらず入れ掛りだ。その私にも、午前7時を回るころには、アタリが遠くなり納竿。
 小振りな1、2年物が主だが、自製の仕掛けが的中し、前日同様布バケツ8分目、120~130尾ほどの釣果。


 1月14日 酒田北港

 新しい仕掛けの効果を再確認したくて、早々と午前3時過ぎに自宅を出る。釣り場には20分ほどで着く。新場所には釣り人の姿は無い。風、波っ気がないのでヘッドランプを点けて海面を覗き込むと海底がすっきりと見える。しかし、ハタハタの群れは見えない。取り敢えず仕掛けを落とし込んでみる。まもなく、たまにだがチラホラと魚影が横切っていく。最初の魚を釣り落したせいか、その後はまったく魚影が見えなくなってしまう。諦めて水路に移動。いつもの南側2基目の風車下に陣取る。

 周りに釣り人は二人だけ。彼らから離れた場所で竿を出す。ここでは竿入れからアタル。好調に釣れているのを見て、一人が傍へ寄ってくる。大声でひっきりなしにしゃべくる引っ掛け組の一人だ。傍で、大きなシャクリを繰り返されるとせっかく寄っている魚が散ってしまう。彼から離れた位置に移動する。ここでも、活発にアタル。まだ、群れは濃いようだ。水面近くまで浮いてくるものもある。そのうちに、また、隣にシャクリ釣りの釣り人が幅寄せしてくる。ここで、また移動。しかし、もう、入れ掛りとはいかない。最後は、産卵用のネットが入っている場所まで移動。一時入れ掛りとなるも、明るくなるにつれてアタリが少なくなり、遂にはピタリと止まる。
 夜は風車の基台に設けてある照明にハタハタが集まっているようで、その付近で良く釣れている。胴付き仕掛けの夜釣りが確実かも知れない。


1月15日 酒田北港


 午前4時ころ水路に到着。車は少ない。10台ほど。水路に降りる。夜は光に集まるようなので風車のすぐ傍に釣り座を取る。近くに釣り人は他に一人だけ。自製の胴付き細仕掛けにオキアミSを付けてアタリを待つ。3~5カウント数えて竿先を上げて訊いてみる。モタレを感じたら竿を立てて合わせる。強く竿をあおるとせっかく寄ってきたハタハタを脅かしてしまう。そっとそっと竿を操作する。

 30尾ほど順調に釣れ続いたが、突然25センチ前後の魚の群れが頻繁に足元を横切り始める。餌を喰わせようと試みるも見向きもしない。釣り歴が長い私にも、何の魚か見分けがつかない。上から見ると細身だ。この群れの回遊を境にハタハタのアタリがピタリと止まってしまった。私が釣れているのを見て、隣にやって来た引っ掛け釣りの常連さんが竿を出していたが、この日はサビキに変えたらしい。そのサビキに、件の魚が掛かった。しかし、魚の判別がつかないらしい。見るとコノシロだった。

 寒い。足先が冷たい。今季一番の冷え込みかも知れない。一旦車に引き上げて暖房を点けて暖を取る。午前6時ごろまで車の中で過ごし、再び竿を出す。コノシロの魚影はすでに無かった。ハタハタは一投目から食ってくる。この時間になっても他に釣り人は2人だけ。6時を過ぎると、空が白んでくる。ヘッドランプの光が無くても餌付けが出来る頃になると、いつものように食いが止まってしまう。50尾ほど釣って納竿。ほとんどが15センチ前後の小型。

 帰路火力の北側の防波堤の脇を通って行くと、防波堤に10人ほどが上がって竿を垂れている。車を停めて様子を見ているとポツリ、ポツリと竿が上がる。車を降り、一番端っこに行き覗き込むと、いるいるハタハタが。居残りのハタハタの他に新群れと思われる大きな塊も見える。点々と泳ぎ回る居残りの組は黒く見えるが、新群れはやや白っぽい。明らかに体色が違う。

 すぐに車に取って返し、再び道具を取り出し釣り再開。餌に食いつく様が上から良く見える。仕掛けを落とし込むと食ってくる。この様子を見て、周りに釣り人が寄ってくる。友達の友達も、挨拶も無しに肩幅が触れる近さにまで割り込んでくる。仁義なきハタハタ釣りだ。めげそうになるも場所を厳守して粘る。このお父さんたちは、この年になるまでどんな環境で生きてきたのかと訝しくなる。自分の欲望を押さえながら周りとの折り合いをつけると云うのが自分たちの社会生活だった。たかが釣りだがされど釣りなのである。

 ここで2時間ほど粘るも、遂には周りのプレッシャーに負けて幅寄せのお父さんに場所を明け渡す。布バケツは八分目ほどハタハタで埋まっていた。今日も束釣り(100尾超え)だ。残念ながら、昨夕から天気は大荒れ。ここ数日はこの状況が続くようだ。時化が収まるまでハタハタが居残ってくれるのか。

1月20日
 驚くほど群れが濃いようだ。午前4時半ごろから竿を出したが、初めのポイント探しの時間を除き、午前9時ごろまで入れ食いが続いた。風車の灯りが届く辺りから探り始めたが、どのポイントでも直ぐに1、2尾は釣れるのだが、その後が続かないのだ。産卵用のネットを張ってある辺りも探ってみたがアタリさえなかった。結局、昨日偵察した時ポツリポツリと上がっていた辺りに見当をつけて餌を下ろすとすぐにアタる。この頃には釣り人の数も20人ほどに増えていたが、この場所は他の釣り人集団とはかなり離れている。マイペースで釣れる。釣れている時にすぐ傍に来られると、どうしても群れが右往左往して入れ食いのペースが乱れてくる。

 この日も竿は渓流用のルアー竿。3本バリの胴付仕掛けに2号のオモリ付ける。ハリスは1号。幹糸は1.5号。ハタハタならハリス0.6号、幹糸1号でもいけるが、仕掛けのカラミが多くなるので太めにしている。この道具立てだと出ている糸の長さが竿の長さよりもかなり長いので魚が掛かっても抜き上げが出来ない。適度にリールを巻き上げてから抜き上げることになる。
 リールをフリーにして仕掛けを送り込み、底立ちを取り、3~5カウント待って竿先をそっと上げて訊いてみる。その時に、竿先に微妙なアタリが出る。ゴツゴツとアタルことも無い訳ではないが極めてまれだ。所謂モタレで釣るやり方だ。直ぐにアタラナイ時は竿先を静かにあおって誘いをかけてみる。これが意外と効果的だ。

 ずっと入れ食いで周りをほとんど見ていなかったが、どこでもポツリポツリと云った感じで釣れていたようだ。餌釣りがほとんどで、中にはコマセカゴを付けている人も見かけた。コマセの集魚効果は期待できるが、出来ればイサザ釣りのようにコマセは別に撒くようにする方が良い様に思うが、自分では試していない。
 見釣りの時に良く分かるが、ハタハタは寄って来ても餌を目前にユータンすることが多々ある。警戒心を抱かせず、静かに餌を喰わせるのがコツなのだ。

 雨が断続的に降り続き、アタリも遠くなった午前9時に納竿。布バケツ7分目。100尾前後の釣果だった。2、3尾だがブリコハタハタが混じっていた。まだ、新群れも入って来ているようだ。

2022年12月23日